その日の一軍の練習試合。一軍の相手は、埼玉の強豪校で、浦島学院とよく代表の座を巡って争う、華咲篤栄高校だった。
そんな強豪校相手に
ズバアアンッ!!
惇「シャアアアッ!!」
惇は快投を繰り広げ、御幸のミットの音と雄叫びが、グラウンドに響いた。
それと同時に、大きな歓声と拍手が沸き起こった。
惇「ふぅ・・・」
ベンチに戻った惇は、腰を下ろしてタオルで汗を拭った。
その時
御幸「ほらよ。」
御幸がスポーツ飲料の入ったドリンクボトルを差し出した。
惇「ああ、ありがとうございます。」
そう言い受け取った惇は、ボトルを押して飲んだ。その隣に、プロテクターを外した御幸が腰を下ろした。
御幸「今日もボールがキレてるな。悪くないぞ。」
惇「あざっす。」
御幸「次のイニングからあっちも3巡目だ。流石に何か対策を練ってくるだろうが、特に配球を変えるつもりはねぇ。このまま力で押していくから、とりあえず甘くならない様にだけ気を付けろ。」
惇「うっす。」
御幸「それと、今日も俺のサインに何度か首を振ったな。」
惇「何か問題でも?」
御幸「いや・・・何か理由があるのかなぁと思ってな。」
惇「先に言っておきますけど、別にカズさんのリードに不満があるわけじゃないっすよ。けど、俺マウンドで好きな球投げたいんすよ。我儘かもしんないっすけど、自由にいたいっすね。」
御幸「そっか・・・」
惇「ピッチャーとしても、後輩としても最悪かもしんないっすけどね。」
御幸「はっはっは。別に構わねーよ。それくらい我儘だと、俺もリードしがいがあるってもんだ!」
御幸「まあ取り敢えず、次のイニングもしっかり抑えようぜ。」
惇「うっす。」
そう言い、惇は再びボトルを押して飲んだ。
御幸(この我の強さ・・・左右の違いはあれど、アイツにそっくりだな。)
それを見た御幸は、白頭のサウスポーの彼を思い出していた。
太田部長「ここまで被安打2の10奪三振無失点・・・相変わらず素晴らしいピッチングですね!御幸との相性も良さそうですし!」
高島「しかし・・・今日も御幸君のリードに何度か首を振ってますね。大体は打ち取ってますが・・・」
片岡「恐らく、その時その時で自分が投げたいボールを投げているだけなのだろう。」
太田部長「た、確かに・・・御幸のリードに何度か振ってましたね。」
片岡「それに、時折何度か首を捻っていたな・・・。恐らく、今日は自分の感覚とは何かズレがあるのだろうな・・・」
そう言いながら、片岡は惇をチラッと見た。
そして、その試合は惇の快投で勝利を収めたのだった。
その日の夜
惇「そんじゃあ唯。コレ借りるわ。」
唯「良いけど、根詰めすぎないようにね。」
惇「わーってるよ。」
そう、惇は返すが
唯「・・・。」
唯は心配そうな表情を崩さなかった。
惇「ったく、そういう顔すんなよ。」
唯「だって、惇君心配なんだもん・・・」
惇「ったく・・・そんじゃあ、これで大丈夫かよ?」
唯「!」
そう言うと、惇は唯の頭を優しく撫でた。
唯「・・・うん。」
惇「ったく、お前は・・・」
そう言い、惇は唯が納得するまで撫で続けたのだった。
そして、唯が帰った後、惇は室内練習場で1人ビデオカメラを真剣な目で見ていた。
惇「・・・。」
そして、それを何度も見直して
惇「ああ・・・ここか。」
修正点が見つかるとすぐに立ち上がって、タオルを取って全身鏡の前に立ってシャドーピッチングを行いながらピッチングフォームを細かく確認した。
惇「ハア・・・ハア・・・」
1時間ほどやっていると
??「やはり・・・ここで遅くまで練習していたか。」
惇「あっ?」
背後から声がしたので振り返ると
惇「監督・・・」
片岡が立っていた。
片岡「今日のピッチング、100点満点中何点だ?」
この問いに
惇「・・・85点っす。」
惇はそう言った。
片岡「それは何でだ?」
惇「・・・何球か抜け球がありました。とりわけ7回の最後のバッターを三振に打ち取ったボールが特にそうでした。」
惇「結果オーライの最悪のボールでしたよ。」
そう言い、汗びっしょりの状態で凄まじい雰囲気を出しながら言った。
片岡「そうか・・・だが、あまり根を詰めすぎて無理をするな。お前の野球人生は、まだまだ続くんだからな。」
惇「うっす。」
惇「けど・・・やっぱ野球は楽しいっすね。」
そう言い、惇は先程の雰囲気を和らげ、端整な顔に笑みを浮かべながら言った。
片岡「そうか・・・その気持ちは絶対に忘れるなよ。」
惇「うっす。」
惇「そんじゃあ、もうちょっとだけ、シャドーやっても良いっすか?」
片岡「・・・ったく、良いだろう。ただし、俺が止めろと言ったら必ず止めろ。良いな?」
惇「うっす!」
そう言い、惇はシャドーを再開し、それを片岡は見守っていたのであった。
投稿出来ました。
完全オリジナル版です。
上手く書けたかな・・・?
それでは、また。