その翌日、栄純は早速片岡に勧められたシャドーピッチングで練習をしていた。
栄純「右手のカベ。体のタメ。略して右のカメ。」
栄純「略して・・・」
その時
関「ボールいったぞ!」
栄純「え?」
ガシャアッ!
栄純の傍にボールが飛んできた。
栄純「ヒャー!だ・・・誰がこんな所まで飛ばしてんだ!?思わずヒャーって言っちまったじゃねーか!!」
飛ばした者の正体は
暁「あ・・・ごめん。飛びすぎた?」
栄純「お前かー!」
暁だった。
惇「うひょー!メッチャ飛んだなー、暁!」
暁の後ろで、惇はそう言った。
「おいおいなんだよ今の飛距離?」
「アイツ・・・打つ方も足立と同様怪物クラスかよ!」
これには、先輩達も驚きを隠せなかった。
太田部長「ホント・・・足立同様降谷も底が知れませんね。まさかバッティングがここまで良いとは。」
太田部長「あの長打力をベンチに控えさせておくのは勿体ないですよ。」
片岡「・・・。」
打ち終わった暁だが
暁(てゆーか速くボールを投げたい!)
ボールを投げれずイライラしていた。
それを見た惇は
惇「そうイライラすんな。もう少し待てば、投げさせてくれるよ。」
暁「・・・うん。」
そう暁の肩を叩いて言った。
惇「そうだ。なあ暁、練習終わったら俺に付き合え。」
暁「良いけど、まさか・・・」
惇「投げねーよ。」
暁「ガーン!」
惇「だからそう焦んなって。とにかく、練習終わったらな!」
そう言い、惇は打席に立った。
カキーン!
そして、惇も長打を連発したが
(しかし・・・何故こうも綺麗にレフト・センター・ライトに長打を打ち分けられるんだ・・・?)
惇の広角に長打を打ち分ける姿に、先輩キャッチャーは不思議そうに見ていたのだった。
槙原「ったく、1年のくせにバカスカ打ちやがって。イヤになるな。」
桑田「ああ。中学じゃチームを引っ張ってきた俺達でさえ、ココじゃあベンチ入りすら出来ねぇのによ。」
斉藤「しかも、その怪物みてーな奴らが・・・誰よりも努力しやがるからタチが悪い。」
槙原「ホント、敵わねーよな。どいつもこいつも馬鹿ばっかりで・・・」
桑田「けど・・・俺達だって後悔だけはしたくねェ。」
斉藤「ああ。例え試合に出られなくても、最後までコイツらと戦っていてぇよ。」
そう言ったが
槙原「・・・てゆーか、今更辞められっか!」
桑田「何のためにこんな苦しい練習3年もやってきたんだ!」
斉藤「俺なんか3年間、彼女も出来なかったんだからなー!」
槙・桑「「バカヤロー!それを言うんじゃねェ!!」」
槙原「オラオラ!もっと打ってこいよ、1年共がぁー!!」
斉藤「彼女出来ないくらい野球やれよコラァー!!」
桑田「つーか2年、声出てねぇぞコラァ!!」
スイッチが入り、声を張り上げた。
信二「何か急にスイッチ入ったぞ、先輩達・・・」
その様子を見た栄純は、クリスに言われた言葉を思い出した。
クリス『投手ってのはな、出られない選手も含め全てを背負ってマウンドに立たなきゃならないんだ。お前だけには、俺達の過ごした3年間を託したくない。』
そして、初日に監督に言った言葉を思い出した。
栄純『俺はエースになる為にここに来てるんだ!その気持ちだけは、誰にも負けるつもりねーっスから!』
それを思い出して
栄純「クソ・・・自分がスゲー恥ずかしい・・・」
そう呟き
栄純(認めさせるんじゃない。この人に・・・チームメイトに認められてこそエースなんだ・・・)
そう思った。
クリス「沢村・・・俺は先に上がるぞ。今日は巻物Bの日だ。全てのメニューを3セットずつやっとけよ。」
栄純「はい!!お疲れさんです!!」
そう言われ、上がったクリスだが
クリス(・・・最近、球を受けてくれと言わなくなったな。)
ちょっとだけ寂しいクリスだった。
しかし
栄純「あれ・・・今の良いんじゃね?」
栄純のシャドーを見て
クリス(あのシャドー・・・自分で考えて始めたのかもしれんが、体の軸が安定してきている。)
クリス(今のアイツには、ちょうど良いメニューかもな。)
そう感じたのだった。
そして練習後
暁「惇、来たけど。」
暁は惇の元へやって来た。
惇「おお。わりいな、急で。」
暁「構わない。それで、何?」
惇「爪見せてみろ。」
暁「・・・うん。」
惇「・・・大分治ってるみてーだな。」
惇「暁。これあげるから、使えよ。」
そう言い、惇が暁に渡したのは、アスリートネイルと書かれたネイルと爪ヤスリだった。
暁「・・・これって?」
惇「爪の手入れ用のだ。俺もお前もピッチャーだから、爪の手入れは絶対だ。手入れを怠ると、先日の練習試合みてーにまた爪割るぞ。」
惇「これを定期的に塗って、ヤスリで整えれば割れにくくなるし、しっかりとしたボールを投げられるぞ。」
暁「・・・分かった。ありがとう。」
惇「良いの良いの。それでやり方はだな・・・」
そして、惇は暁に爪の手入れの仕方を教えた。
夜
国立トレーニングで父親と一緒にリハビリを終えたクリスは、寮に戻ろうとしていた。
その道中のグラウンドで
??「それは俺のタイヤじゃねーか!!」
大きな声が聞こえたので見ると
暁「ココに落ちてた。」
栄純「勝手に使うんじゃねーよ!返せ!!しかもそれは、俺のスタイルだぞ!」
惇「はっはっはっは!!」
栄純「さては密かに憧れてやがったなぁ?」
惇「んなまさか・・・」
暁「・・・うん。」
栄純「何!?」
惇「え・・・マジかよ・・・!?」
惇と暁、そして栄純ら3人がグラウンドにいた。
すると
丹波「懐かしいな。」
クリス「丹波。」
丹波が現れた。
丹波「レギュラーを取りたい・・・ただそれだけ・・・。アイツらを見てると、昔の俺達を見てるようだな・・・」
丹波「クリス。ちょっと俺のフォーム、チェックしてくれないか?70球を超えると、どうしてもコントロールが甘くなる。」
クリス「・・・ああ。エースの座を守るのも大変だな。」
そして、丹波がシャドーを行い
丹波「どうだ?お前の肩の方は。大分良くなってきてるんだろ?夏までには間に合いそうか?」
丹波「お前が俺の故障に気付いてくれたから、俺はこうして今も投げていられるんだ。」
丹波「俺が一試合でも多く勝てば、それだけ夏も長くなる・・・。必ず一軍に戻って来いよ。」
そうクリスに言った。
それを聞いたクリスは
クリス「本当はお前だって気付いてるんだろ?1年のブランクを抱え、練習も早めに上がる。そんな俺にチャンスが与えられる程、青道は甘くないさ。」
そう丹波に言った。
丹波「・・・。」
クリス「けど・・・緊張しいのお前が言うようになったな。」
丹波「なっ!」
クリス「俺はお前がエースの座を守れるのか心配だよ。」
丹波「う、うるせェ!青道のエースの座は誰にも渡さん!!」
クリス「そう・・・その意気だ。」
その時、クリスは父のアニマルに言われた言葉を思い出した。
アニマル『このまま二軍の選手として引退し、オマエに何が残ると言うんダ・・・』
それを思い出したクリスは
クリス(親父の言う事は正しいのかもしれない。・・・けど・・・共に戦ってきた仲間がいる。俺はコイツらと一緒に笑って引退したいんだよ、親父・・・)
そう、心の中で呟いた。
その様子を偶然見た惇達は
暁「・・・あの2人でも、あんな風に笑う事あるんだ・・・」
栄純「ああ・・・」
惇「そうだな・・・」
それぞれの思いで見ていたのであった。
投稿出来ました。
クールだけど、クリス先輩の熱い仲間想いが伝わる言葉ですよね・・・。共に戦ってきた仲間と共に笑って引退がしたいという言葉は・・・。
例えそれが正しくても、仲間と一緒に過ごした思い出は決して無駄ではありませんからね・・・。
それでは、また。