3年校舎
丹波「やっぱり、まだ肩の状態良くなかったんだな。」
クリス「ああ。完全に治るまでは、もう少し時間が掛かりそうだな。」
クリス「けど後悔はしてない。俺を選手として試合に出してくれた監督には感謝してるよ。」
それを聞いた丹波は、複雑な顔だった。
クリス「後はお前らが・・・俺達の夏をどれだけ長くしてくれるかだな。俺は裏方として、チームに貢献していくよ。」
そう言い、クリスはその場を後にした。
これに丹波は
丹波(バカヤロー。何が後悔してないだ。最後の夏・・・俺はお前とバッテリーを組みたかったんだよ。)
本音を心の中で呟いたのだった。
2年校舎
「亮介さんの弟はまだ分かるとしても、何であの沢村が一軍なんだよ。」
「あの試合だってクリス先輩がいなきゃボロボロだったし、セットプレーも出来てねーんだぞ、アイツ・・・」
「アイツ入れるぐらいなら他の先輩を入れてあげれば良いのによ。」
「やっぱ監督って鬼だよな・・・」
「俺達も簡単に切り捨てられたりして・・・」
これに
前園「アホかお前ら。」
「ゾノ・・・」
前園「俺らは常に甲子園を目指すチームなんやぞ。来年以降のチームを支える選手をベンチに入れるなんてよくある事やろーが!」
「分かってるよ、そんな事・・・けどお前は・・・お前は悔しくねーのかよ・・・」
前園「悔しいに決まっとるやろ!けどな・・・一番悔しいはずの3年の先輩達が、誰1人欠ける事無く今朝の練習に揃っとったんやぞ!!」
「「「!」」」
前園「もう1年チャンスのある2年の俺達が、ゴチャゴチャ文句言うとる場合か!悔しかったら、頑張るしかないやろ!!」
前園はそう一喝した。
これには
「「「・・・。」」」
愚痴っていた3人は黙って下を向いた。
前園(頑張るしか・・・)
前園「見とれよ!俺は来年、絶対に生き残ってやるからな!!」
そう、前園は決意を込めた顔で言ったのだった。
2-B
御幸「・・・。」
御幸は、スコアブックを真剣に見ていた。
そこに
倉持「御幸!真剣な面して、何見てんだよ?」
倉持「この前の黒土舘戦のスコアブックか。お前ホントそれ見るの好きだよなぁ。ヒャハハ!」
倉持が現れた。
御幸「まあ、これも仕事のうちだからな。」
倉持「正直言って俺も、この短期間で沢村がここまで化けるとは思ってなかったけどなぁ。」
倉持「まぁ・・・全部クリス先輩が引き出したんだろーけど?」
倉持「けどアイツ、ちゃんと切り替えられんのかよ?昨日の晩もずーっと泣いてやがったしよ!」
回想
栄純『グスッ・・・グスッ・・・』
惇(まだ泣いてんのか・・・)
倉持『うるせーな!いつまで泣いてんだ!!』
回想終了
倉持「アイツはどう見ても、足立と同じで気持ちで投げるタイプのピッチャーだろ?足立はともかく、これからに影響が出なけりゃ良いけどよ!」
これに
御幸「切り替えてみせるさ・・・この俺がな!」
御幸は自信を浮かべた笑みで言った。
倉持「!」
これに倉持は
倉持「言ってろコノヤロー!!テメェのそういうとこが鼻につくんだよ!」
御幸「はっはっはっ。そりゃどーも。」
倉持「褒めてねーよ!」
そう怒鳴ったのだった。
1-C
「おー日直。赤チョーク補充しとくっちゃよ。」
「卜部兼好、俗称吉田兼好の『徒然草』は、『枕草子』『方丈記』と並んで、日本三大随筆の1つだな・・・」
この日の1-Cは、少し違った。それは
栄純「・・・。」
栄純が教科書を開いて、授業を受けているという事だった。
惇(コイツ・・・なーんかやな予感が・・・)
吉川(なんか・・・沢村君。一軍に上がって変わった?)
吉川(ずっとエースになるって言ってたから・・・もっと喜んでると思ったけど・・・)
吉川(朝からちゃんと授業受けてるし、一度も居眠りしてないし、事件だわ・・・これは。)
(ワシの熱意がやっとコイツにも伝わったか・・・)
惇(いや、ちげーから・・・)
信二「おいアレ・・・大丈夫なのか?」
惇「さあな・・・まあ、確かに朝起きてから変だったけど、アイツなりに色々考えてんだろ。」
信二「成程・・・馬鹿なりにってやつか。」
惇「まあな・・・」
そう、惇と信二は小声で話しながら栄純を見ていた。
そして、練習が始まると
栄純(今やれる事を全てやる・・・それが・・・俺がクリス先輩に出来る唯一の恩返しなんだ!)
栄純「だりゃあああ、負けるかあ~!!自分に~!!そして野球に~!!」
栄純はタイヤを引きながら気合の入った表情で走っていた。
春市「気合入ってるな栄純君。やると決めたら迷わず突き進む。あれが栄純君の凄い所だよね。」
それを見た春市が素直に言うと
暁「・・・。」
春市(あ・・・ちょっと加速した。)
惇「・・・ちょっとペース上げっか。」
春市(足立君も・・・)
惇と暁は、感化したのか少しペースを上げた。
春市(僕ももっともっと頑張らないと!)
春市も続いたが
春市(結局、一度も目を合わせてくれなかったな・・・兄貴・・・。お前には一軍はまだ早いって思われてんのかな・・・)
亮介に避けられてる事に少し疑問を抱いたのだった。
栄純「おっしゃ~!後10本!!」
この様子に
御幸「はっはっはっ。余計な心配だったみてぇだな!あのヤロー・・・今まで以上に気合入ってんじゃねーか!」
倉持「・・・ちぃ。」
御幸は笑いながら見ていた。
クリス「そうでなきゃ困るさ・・・常に前へ進む姿勢。それこそが、沢村の一番の武器だからな。」
御幸「クリス先輩。」
クリス「だが・・・少し危ういな・・・」
御幸「え?」
クリス「アイツにはこの先、覚えなきゃならない事が山ほどあるんだ・・・俺達がしっかりコントロールしてやらないと、潰れるまでやりかねないぞ。」
御幸「そうっスね。手加減知らずの馬鹿ですからね。」
クリス「ああ・・・止まる所を知らない馬鹿だからな。」
倉持「ヒャハハハ!!褒めてんすかそれ!」
栄純の練習姿を
太田部長「片岡監督。やはり丹波の調子がイマイチ上がらない事が、投手をもう1人ベンチに入れた理由ですか?」
太田部長はそう片岡に尋ねた。
片岡「三振をいくつ奪ったとか、ヒットを何本に抑えたとか、勝たなければ次のない高校野球に、内容の良いピッチングなど必要ない。」
片岡「どんな不細工なピッチングだろうが、勝負に勝てるピッチャー。それが俺の求めるエースだ!!」
高島「!」
片岡「そういう意味では、今このチームにエースと呼べる存在はいない。これからの合宿と大会中の実戦で、エースを育てていくしかあるまい。」
片岡「調子さえ良ければ、1年だろうがガンガン登板させるぞ!」
そう、片岡は言い切ったのであった。
投稿出来ました。
片岡監督の理想のエース像は、まさに的を得てますね・・・。
それでは、また。