2回の表の薬師の攻撃。先頭は4番の山内だが
ズバアアンッ!!
「ットライーク!バッターアウト!!」
山内「くっ・・・!」
山内(なんつー伸びしてんだよ・・・!これで1年って反則だろ・・・!)
真ん中高めの真っ直ぐに空振り三振を喫した。
「よ、4者連続!?」
「なんつー真っ直ぐだよ!?」
「全く当たんねーぞ!!」
これには、観客は益々驚きの声を上げていった。
信二「ナイスボール足立!」
前園「エエ球や!どんどん攻めたれ!」
梅本「っしゃー!」
吉川「足立君凄い!」
唯「惇くーん!」
藤原「ナイスピッチ、足立君!」
青道側スタンドも大盛り上がりだった。
真田「ウチの打線が真っ直ぐ当たんないなんて、初めてっすね。」
雷蔵「ああ・・・マジ笑えねーよ。」
雷蔵と真田は、引き攣った顔を浮かべていた。
次の福田の初球
ズバアアンッ!!
真っ直ぐを投げた。
福田「な・・・何だよこの球・・・本当に1年かよ・・・」
これには、福田も引き攣った表情を浮かべながら御幸に呟くと
御幸「1年です。」
と返された。
福田「反則だろ・・・」
そう、福田は弱々しい声で呟いた。
そして
ズバアアンッ!!
福田(あ・・・当たる気しねぇ・・・)
またまた三振に打ち取った。
「ご・・・5者連続!?」
「足立が止まらねぇ!!」
「このまま一気にいっちゃえー!!」
結城「ナイスボール!」
亮介「ヒマで仕方ないよ。」
倉持「ちょっとは打たせろよ!」
伊佐敷「全然飛んでこねーからヒマで仕方ねーよ!!」
これには、バックもそう惇に注文つける程だった。
次の三野でやっと打球が前に飛んだが、ボテボテのセカンドゴロに終わり、3アウトチェンジとなった。
その裏の青道の攻撃は、7番伊佐敷のヒットから1点追加され、4-0となった。
3回に突入しても、惇の勢いは止まらない。
7番の渡辺は空振り三振。8番小林はキャッチャーフライ。9番大田は見逃し三振に終わり、この回も薬師は三者凡退となった。
その裏。先頭の亮介は11球粘り、インローのスライダーを捉えるもショートライナーに打ち取られ1アウトとなったが次の惇は
キーン
前に続いてツーベースを放ち一死二塁となり続く結城が
キーン
連続ツーベースを打ち5-0とした。
これを見た雷蔵は
雷蔵「ナベ~!」
キャッチャーの渡辺を呼んでピッチャー交代を指示した。
そして、背番号18ながら薬師の実質的エース、真田俊平がマウンドに上がった。
その瞬間、薬師の雰囲気が変わった。
クリス「間違いないですね。」
片岡「ああ。」
真田「1アウトランナー二塁・・・打席はパワーヒッターの5番・・・」
真田(マジで激アツ!!)
そう思い、真田は躍動感あるフォームで投げた初球は右バッターの内角に抉るシュートだったが
ガッ
真田「あっ・・・」
増子のエルボーガードに当ててしまい、死球を与えてしまった。
続く御幸も、この勢いに乗って決めようとしたが
御幸(な・・・!?)
チャンスに強い御幸がゲッツーに打ち取られてしまった。
ベンチに戻った御幸に対し
片岡「今の球は?」
と尋ねると
御幸「恐らくカットボール。」
と答えた。
栄純「カットボール?」
惇「バッターの手元で突然小さく曲がる変化球だ。球速はまっすぐとほぼ変わらず、バットの芯を外して打たせるボールだ。」
クリス「所謂ムービングの一種だな。」
栄純「!」
惇「左右の違いはあるが、お前にとっては良い手本だな。」
春市「うん。栄純君と違って意図してボールを動かしてるからね。」
これに
栄純「ぐぅ・・・」
悔し涙を浮かべた。
御幸「けど、まぁこんだけ早くエースを引っ張り出せたんだから、攻略の手はいくらでも見つかるさ。」
惇「そっすね。」
惇「栄純。お前には、お前の持ち味があんだろ。ああいうムービング使いになれるのを信じてっからな。」
惇「だから、頑張れよ!」
栄純「!あ、ああ!」
惇の激励に、栄純は元気を取り戻し
暁「・・・。」
暁も何か催促するかのように惇を見た。
惇「・・・お前もあんな感じに信頼されるように頑張ろうな。」
暁「・・・!」
すると、分かりやすく明るくなった。
御幸「この回の先頭は轟からだ。自分のピッチングをな。」
惇「うっす!」
倉持「奪三振ショー、期待してんぞ!」
亮介「でもたまにはこっちにもボール飛ばしてね。」
結城「リードしてるのはこっちだ。思い切り投げろ!」
伊佐敷「生きの良い雄叫び見せやがれ!」
そう言い、各守備位置に散った。
そして
『1番サード、轟君。』
「第2ラウンドだ!」
「前の打席では足立に軍配が上がった。この打席は!」
雷市が打席に立った。
雷市「打つ!ゼッタイに打つ!」
そう、雷市は勇んで打席に立った。
しかし
ズバアアンッ!!
雷市「っ!!」
初球の惇の真っ直ぐに、雷市は全く反応が出来なかった。
惇「悪ぃな、轟・・・」
そう、惇は呟くと今度も真っ直ぐを投げた。
そのボールも、雷市のバットは全く当たらず、空を切るだけだった。
惇(やっべぇ・・・体軽ぃ・・・)
身体が軽く、いつもより更にスムーズに指先に力が伝わっていき、ボールが走っていた。
そして
ズバアアンッ!!
「ットライーク!バッターアウト!!」
惇「シャアアアッ!!」
雷市を再び三振に打ち取り、今日2度目の雄叫びを上げた。
「うおおおっ!!また三振だー!!」
「スゲぇー!!マジスゲぇぞー!!」
「何㎞出てんだ!!」
御幸(たはは・・・こりゃあスゲぇな・・・受けてる俺もびっくりだわ・・・)
マスクを被ってる御幸も、苦笑いを浮かべていた。
太田部長「ぜ、絶好調じゃないですか、足立!!」
クリス「ここまでとは思いませんでしたね・・・」
片岡「ああ・・・」
片岡も、腕を組んで見ているが、背中は冷や汗でびっしょりだった。
そして
秋葉「くっ!」
続く秋葉はサードゴロ。
三島(くっ・・・当たらねー!!)
三島は空振り三振に終わり、またまた3者凡退となった。
雷蔵(・・・まさか雷市がこうも相手にならねぇなんてな。)
そうベンチで座って冷や汗を流しながら見ている雷蔵。
ベンチ内でも、重苦しい雰囲気が漂っていた。
しかし、そんな雰囲気を振り払うかの如く
真田「っし!」
真田も青道打線を抑えた。
5回に入り
キーン
惇「やべっ・・・」
先頭の山内が2球目のスローカーブをセンター前に運び、チーム初ヒットを放った。
小林「ナイバッチー!」
渡辺「こっからこっからー!!」
大田「続けー!!福田ー!!」
この初ヒットに、先程まで暗かった薬師のベンチが明るくなった。
これに、御幸はマウンドに駆け寄って
御幸「まだ点差はある。切り替えていけ。」
そう声を掛けた。
惇「いやぁ~、さーせん!でも、ちっと気持ち的に楽になったっすね。」
しかし、惇は特に気負っている様子は無かった。
御幸「なら安心だ。いつも通り、ねじ伏せてやろうぜ。」
そう言い、御幸は元の位置に戻った。
初ヒットで盛り上がった薬師だが
ズバアアンッ!!
「ットライーク!バッターアウト!!」
惇「うらあああっ!!」
後が続かずこの回無失点に終わった。
その頃、青道側ブルペンでは
パァン
丹波が肩を作っていた。
それを受けた宮内は
宮内(ここ最近じゃ、一番球が走ってる・・・)
丹波の状態の良さを感じていたのだった。
5回の裏の青道の攻撃は、真田の力投により0に抑えられてしまい、6回に入った。
6回に入っても
ズバアアンッ!!
大田「くっ・・・!」
大田(全く落ちてねー・・・!)
惇の真っ直ぐの伸びは落ちる事無かった。
そして
『1番サード、轟君。』
雷市との3度目の対決を迎えた。
雷市「・・・。」
しかし、この打席の雷市は、いつもの特徴的な笑いや勇んでいくような姿はどこにも無く、表情も強張っていた。
御幸(かなり硬い顔してんな・・・この様子じゃ、打ち取れるな・・・)
雷市の様子を見てそう思った御幸は、ミットをド真ん中に構えた。
惇「!」
御幸(完膚なきまでにコイツを打ち取れ!奴らの心をへし折るぞ!)
惇「・・・。」
この思いを察した惇は、ニヤッと不敵な笑みを浮かべ、初球真っ直ぐを投げた。
ズバアアンッ!!
雷市「!」
これに、雷市は空振り続く2球目
ズバアアンッ!!
同じ球、同じコースをまた空振り追い込まれた。
雷市(う・・・打たなきゃ・・・!打たなきゃ・・・!)
そう、雷市は構えるが、その姿は怪物スラッガーの如き雰囲気は最早無かった。
そして
ズバアアンッ!!
雷市「!」
「ットライーク!バッターアウト!!」
3球連続ド真ん中真っ直ぐに空を切り、空振り三振に打ち取られた。
雷市「あ・・・」
この瞬間、雷市の心は完全にへし折れてしまった。
その裏、これまで何とか青道打線を抑えていた真田だったが、先頭の結城にソロアーチを打たれたのを皮切りに一挙3失点してしまい、9-0になった。
そしてその次の7回の青道の守備で、惇はマウンドを降り、ベンチに下がった。
代わりにマウンドに立ったのは
結城「頼むぞ、丹波!」
亮介「頭触って良い?」
倉持「ヒャハハハ!!俺も良いっすか?」
丹波「ちょっ・・・!」
丹波だった。
御幸「点差ありますが、油断できません。確実に抑えましょう、丹波さん。」
丹波「ああ・・・」
そして、先頭の秋葉の初球は逆球だったがボールに力があったため、ファールとなった。
御幸(宮さんのアドバイス通り、ボールに力があった・・・!これなら・・・)
これに御幸は再び真っ直ぐを要求し、追い込んだ。
そして
「ットライーク!バッターアウト!!」
丹波の代名詞である縦のカーブで空振り三振に打ち取った。
次の三島も初球を打ったがセカンドゴロに終わり、次の山内は2球目を打ったが、高く上がったキャッチャーフライに打ち取った。
「アウト!ゲームセット!!」
この瞬間、青道のベスト4進出が決まった。
雷蔵(全ては・・・あのピッチャー1人にやられたな・・・)
薬師のベンチで、雷蔵は冷静にそう思い、ベンチの一角を見た。
雷市「・・・。」
そこには、惇に完膚なきまでに打ち取られてしまい、悔し涙を流している息子の雷市がいた。
「整列!」
「9-0で青道!礼!」
「「「したぁ!!!」」」
試合後の薬師
雷市「・・・ぐっ・・・」
雷市の涙は止まらなかった。
山内「もう泣くなよ、雷市・・・」
小林「お前が打てなかったんなら、諦めがつく!」
福田「誰も責めはしねーよ・・・」
それを見た3年生達は、決して彼を責めたりしなかった。
そして、1年半指導してもらった雷蔵に感謝の言葉を述べ
山内「真田!来年は監督を甲子園に連れてってやれよ!」
福田「秋葉!ミッシーマ!お前らだって俺達から見れば十分怪物なんだ!頑張れよ!」
真田や秋葉、三島にも激励の言葉を言った。
そして
小林「雷市!俺達は待ってるからな・・・」
福田「お前の名前が、全国に轟く時を・・・」
雷市にもそう激励の言葉を送った。
これに雷市は益々大粒の涙を流し、雷蔵も再スタートを切ろうと誓ったのであった。
投稿出来ました。
いつも通り結構駆け足で投稿しました。
お許し下さい(土下座)
ちょっと圧倒的過ぎたかな・・・(汗)
そ、それでは、また。