ぐるぐるお目目からの圧のあるセリフ、好きです
名前の煌びやかさと反するように、彼女はいつも暗く重い空気を纏う。
なまじ見た目が整っているので、儚げな雰囲気に殺られて同情からプロポーズという爆速婚を狙う輩も大勢いる。
だが彼女は笑う。笑って、泣いて、断る。
情緒が安定しないのか、それとも、未来を想って憂いたのかは俺には分からなかった。
けれど、腹に巣食う病からなるものだと、涙を流す彼女を見た人間は理解した。
なんで自分が、どうしてアイツじゃない。
親友──自称だけど文句あるか──の俺は灯里から遂にそんな恨み言を一片も聞いたことがなかった。
だからこそ辛かった。自分の人生を余りに軽く見ているようで、何も出来ない自分を何度も味わっては、頬杖をついて空を見上げた。
いつか彼女が言った言葉。
『もう構わなくていいよ? 私もうすぐ死ぬんだから』
満面の笑みで、言葉を紡ぐ彼女に、俺は何も言ってやれなかった。
軽すぎた。あまりにも軽くて残酷で、なにも、なんにも感じなかった。
悲しいとか寂しいとか、本当に何も感じなかった。
それから、彼女は喋るのをやめた。
出来なくなった、という方が正しいのだろうか。
突然彼女の声は消えた。医者によれば、ストレスで声が出せなくなったんだと。
俺は、彼女にこう言われたように思えた。
もう、私に構わないで。
……また、そう言われたように感じた。
それから二年後。
病を患ったのは小学生五年の頃。
つまり今は中学生なわけで。
「おはよ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
日野灯里は、クソアホうるさい女子中学生に変貌していた。
「…うん、おはよう灯里」
「おはよ!!!!今日は寒いね!!私は平気だよ!!」
「聞いてないけどね」
サラサラの白混じった髪にすべすべの白肌、スレンダーな体(172cm)に大きな胸部装甲プラス太腿は不健康やら大病なんて意にも介さないという気迫を感じさせる。
なぜこうなった。
何度も思うがなぜこうなるんだあの儚げガールからよ。
突如回復した灯里は快活な姿を見せて病院の周りを走り始めた、俺を連れて。ふざけんな置いてけ。
医者はもう知らんと言ってどこかへ去っていった。灯里の両親はレモンかじったブルドックみたいな顔をした。
俺は走った。走って疲れて筋肉痛になって、息ひとつだけ乱しながらケロッとする灯里を見て俺もブルドックになった。
そして誓った。必ずやかの邪智暴虐な幼なじみを打倒してみせると。
喜びがなかった訳では無いがなんだか腹立つ。
そして今も腹が立っている。なぜか?
「見てみて!!私またテストで学年一位だよ!!!褒めて!!」
「わけわからんて」
「それとね!!スポーツ推薦も沢山来たよ!!バレー頑張ったから!!褒めて!!!」
「いやわけわからんて」
俺は沢山勉強した。
子供ながらに現実に項垂れ、だからこそ、いつか灯里のような子を出さないようにと『しょうらいのしょくぎょう』にも医者と書いたんだ。
間違いなく、あの頃の俺は本気も本気だった!
自分が不健康でどうすると!
体も鍛えた!母親にダンベルを強請った!
そして女子にそこそこモテるようになった!男の子の憧れ!シックスパァック!!
だが、灯里という怪物が復活した時、俺は泣いた。
一ヶ月にも満たない期間で学年一位の座をぶんどられ。
挙句筋肉ついてきたんだと腹を見せてきたと思えば範馬勇次郎を彷彿とさせる肉体美。
だが、それでも醸し出されるエロスは好きだ。
その時俺は知った、この世の理不尽さを、病み上がりのベット生活女の子に短期間で全て壊される悲しみを、何より才能を。
この世の中上手くいかないものだ、うごご……。
だがそこで諦める俺ではない。
人間の価値は性格や人脈人望でも決まるとも言うらしいとネットに書いてあったらしい。友達談だ。
俺はとにかく友達を作った。
メールの返信がおっつかないくらいに。幸せだった、やっと勝てたと実感が毎分毎秒湧いてきた。
だが、それも長続きはしなかった。
灯里の友達作りに一役買った為に、俺の努力の結晶たる友達たちに灯里を紹介した時、それは訪れた。
病院暮しだったため、突然の社会の荒波に怯えたのだろう、俺の服をつまみながら歩く彼女を見た俺の友達達は───
────あの子の連絡先教えて。
もう分かるもん、もういいもん、目で分かるもん。
血走ったようなギラついたような……確実に上品とは言えない目が俺に訴えていた。
ガキの癖に性の悦びを知るなよ、友達が居ることの喜びを知れよ。
そうして、俺の人望激アツ陽キャ生活は幕を閉じたのだった。
なぜだか次の日から死んだような目をしながら灯里を見るなり走り去るようになったが、アイツら大丈夫か、灯里になんかされたか?
なんにしてもいい気味だ、スカッとする。
しないけどな、がは。
「はぃぁぁぁ〜………」
「どうしたの!!幸せ逃げるよ!!なんかあったの!!」
「最近『嫌なことが多くてな』、お前を紹介してくれって男子が絶えないし、最近は女子まで出てきたし」
「……んーーーーーーーーーー??」
「なんなら昨日『殴られたしな』腹パンされたわ。覚えてるか?お前に猛烈アタックしてる金髪のやつ、篠崎だっけか」
「………ん〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜?????」
「……その口角上げながらのぐるぐる目で見つめるのやめろってば、こわいし………てかどうした、また腹減ったのか」
「今ね〜、私ね〜、とっても機嫌悪くなってる〜
イライラするんだ、すっごく胸がムカムカする!!」
「とりまクレープ食べるか」
「うん!!」
……って、
「お前手から血でてるぞ!? 救急箱持ってくるから待ってろ!!」
ホントもう!こういう抜けてるところも治っとけよ!!
「んー、ほんとだー」
「強く握りしめすぎたな、迷惑かけちゃったし、やだな」
「イライラする、な」
実は深夜前に書いてたりします。
俺は学べる男なんだ。
謎パワーってすげー!病気一発で治せんだもん!
ちなみにヒロインは人外じゃないです、ひゅーまん!