花より男子8(エイト)   作:角刈りツインテール

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パーティが始まりました。がんばれヒッキー。


016 依然として彼らの距離は変わらずに、祭りはフェスティバっている。

きらめく街 輝く夜

待ち侘びてない carnival night

 

 

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「うぅわ…」

「ほら邪魔になるからそんなとこでキモい声出してないで行くよ!」

嘘、今の声、そんなにキモかった?と未だ知ることのない自身のアイデンティティに戦慄しながら、同時に別のものに対しても畏怖の念を抱いていた。

今俺たちが立っている場所は———何を隠そう花沢類の家なのだ。

まーきの、で有名なあの花沢類である。

まーーーーきのーーーーッ!で有名などこかのお兄さんではない。

いや、これはもはや家とは言えまい。城だ。ディズニー映画に登場する城である。そういえば花沢から彼の親について聞いたことは無かったが、果たして何をしている人物なのだろうか。ここまで金持ちとなると道明寺同様に様々な企業に手をかけているのだろうか。

花沢類の両親、か。

あいつ同様ぽわぽわしてんのかな…。

まぁ、それはさておき、ついにこの豪邸に足を運んでしまった俺たちに今更帰るなんて選択肢は残されていない。というか牧野に奪われている。

悪意がない分道明寺より恐ろしい気がしてならないのは気のせいだろうか。

俺には分からない。

もう何も分からない。

「えー、マジで入るの?帰っちゃダメ?」

「ダメに決まってんでしょうが!」

諦め悪く、巨大な純白の扉の前でたじろぐ俺はきっと第三者目線で見るとかなり滑稽なものだっただろう。家で1人になったときに自殺したくなりそうな光景だったが、幸運なことに誰もこちらを見ていない。しかし、牧野だけは決して俺の帰宅を許さない。

別に決まっては無いと思うよ?

「てかなんでそんなに嫌がってんの」

「普通こんな家に入るのは嫌がるんだってばお前みたいに傲慢なやつじゃなかったら」

「うるせー!」

「いてぇ!」

殴られた。ついに暴力を振るわれた。今の八幡的にポイント低いぞ。

「はぁ…ったく」

ぐい、とネクタイを引っ張られて城の内部に入る俺の姿はこの場に不釣り合いそのもので、ついため息がこぼれ落ちる。まぁ俺の場合はどこにいても疎外されるし俺に釣り合う場所なんてもはや自室くらいしかないのだが。

ここまで777文字。そんなせめてもの幸運を噛み締めながら、ついにパーティ会場へ足を踏み入れる。

 

♦︎♦︎♦︎

 

後日談。というか、今回のオチ。

———であればどんなに楽だっただろうかと思わざるを得ない。が、ひとまず現実を見よう。

いくらここが夢のような場所であっても、現実を受け止めよう。

「……………はぁ」

案の定、ぼっちである。

俺はひとりで部屋の隅の小洒落た椅子に座ってチェリー風味の炭酸飲料を嗜んでいた。恐らくこの飲み物もかなりのお値段なのだろうが猫に小判というか豚に真珠というか。馬子に衣裳 馬の耳に念仏ぬかに釘 住めば都 うそ八百 河童の川流れというか。ここでケロロ軍曹が思い浮かぶあたり俺もかなりの庶民である。

庶民も庶民。

山田太郎である。

ちなみに今ここにいない牧野つくしはどうしたのか、という疑問を持つかもしれないが問われても答えは俺自身が最も知りたいことだから答えようがないのだ。そもそも俺にどんな質問をしてもキョドるだけだから控えてね。

「にしても広すぎんだろ…」

俺は視界をぐるりと一周させながら呟く。

一面、白、白、白。

城にしろ、このパーティ自体にしろ、素人目線でも分かるお金の掛け方に腰を抜かしそうだがそんなことをしている場合ではない(”しろ“だけにね)。

こんな場所で目つき悪い男1人とか警察呼ばれるわ。俺でも呼んでるまである。

「あら、変質者かと思ったら貴方だったのね」

比企谷くん、と。

人混みの中からいつか聞いたことのある声がした。続けて、その姿も視界にとらえる。

えぇっと…あぁそうそう。雪ノ下雪乃だ。

こいつも来てたのか。こんな場所には縁がないように見受けられるが…。

「えぇ、その通りよ」雪ノ下はため息を吐いた。「親の繋がりのせいで仕方なく来ることになったの」

「なるほどな」

言われてみればいつも殊勝な(いつも、と言えるほど話したこともないが一応クラスは同じだ)雪ノ下の表情に幾らかの翳りがあるように感じた。

疲労。もしくは、人混み酔い。ってところか。

「なんかほんと、すげぇよなぁ」

「何が?」

「なんつーか、俺の常識が綺麗に崩れ去ってるっつーか」

「…そうね。花より団子な貴方には到底理解できないものでしょう」

「何知ったようなこと言ってんだよ。俺の何を知ってんの」

「貴方みたいなゲスが勘繰っていることなんてお見通しよ」

「ゲスはどっちだ」

はぁ、と今度は俺がため息を吐く番だった。こいつと話すとなんか疲れる。それは向こうにしても同じことだろうに何故話しかけてくるのだ。何?俺のこと好きなの?ツンデレ?

「死ね」

ですよね。

「一応聞くけどお前、牧野ってやつの行方知らない?」

「あのぼっちの?」

「それを言うならお前もなんだが今回は置いておいて、まぁ多分そいつ」

「その人ならさっき有象無象にいじめられていたわよ」

「いじ…!?」

あいつまたなんかやったのか!?

ていうか名前を知らない人のことを無象無象って呼ぶなよ!そうして俺の周りには道明寺タイプの人間しか集まらないんだ!

脳内でそう叫びながら、実際はゆっくり静かによっこらせと立ち上がる。

「悪いな、急用ができた」

「そう。がんばってね」

彼女から一生出てくるわけがないと思っていた言葉に意表を突かれ暫く硬直した。にこりと微笑むその姿はまるで天使———女神———のようで———いやキモいな流石に。

「悪いな」

俺は足早にそこを離れ、本格的に牧野探しを始めた。

 

♦︎♦︎♦︎

 

10分ほど探し回った結果、牧野つくしはどこにも見当たらなかった。そこから導き出せる仮説はただひとつである。

「帰った…?」

嘘だろお前。




感想・評価などお願いします!

松潤繋がりということで99.9の深山大翔を出そうと考えているのですがどうでしょうか

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