世話焼きギャルとの物語(仮) 作:こってりラーメン
そして羽丘は共学です。
人気が無い校舎裏に一人の男子生徒と一人の女子生徒の姿。
男子生徒の方はパッとせず、顔立ちも整っているわけでは決してなく、平たく言えば彼程度そこら辺にいるとでも言えばいいだろうか。
一方、女子生徒の方はどうだろうか。彼女は見た目から言って派手だった。長く伸ばされた茶髪。耳から下がっているウサギのイヤリング。そして、恐ろしく整った顔立ち。
そう。言わば鏡のような二人であった。
その二人が現在向かい合っている。
男子生徒は酷く緊張しているようで視線や雰囲気に落ち着きがない。
反対に、女子生徒の方はこういった場に慣れているのか落ち着き払っている。もっと言えば、分かりづらいが困ったような雰囲気を放っている。
そして、その空気を破ったのは男子生徒だった。
「い、今井さん!ぼ、僕とつつつ、付き合ってください!」
噛み噛みであったが、そこに込められた想いは図るべくもない。
彼の挙動や雰囲気からも彼の言葉に嘘がないことは容易に推測できた。
─────しかし、それでも思い通りにならないこともある。
「気持ちは嬉しいんだケド・・・ゴメンね。アタシ、今は他にやらなきゃならないことがあるから」
今井、と呼ばれた女子生徒はそれだけ言い残し彼の横を通りその場を去っていった。
残されたのは茫然とした男子生徒、三浦
今井さんに見事にフラれた日の翌日。
学校へ向かう俺の足取りは非常に重かった。
何これ。地面に縫いついてんじゃないのこれ。ぜんっぜん進まないんだけど。
心の中で愚痴を零しながら、歩き慣れた通学路をゆっくりと進んでいく。
すると前方で楽しそうな声が聴こえる。誰の声なのかはすぐに分かった。
俺は一瞬だけ彼女の方を見て、すぐにまた視線を地面に戻す。
一瞬だったので確信はないが、隣にいたのはおそらく『
だから、告白の呼び出しするのもすげー大変だったんだよなぁ。何日も何日もタイミングを窺ってやっとだったのに・・・
そこまで思い返してしまえば連鎖的に昨日の告白もフラッシュバックする。
今井さんのやらなきゃならないことってやっぱりバンド、なのかな・・・。
昨日、彼女が口にしていた言葉。やらなきゃならないこと。恐らくそれは彼女が行っているバンド、『Roselia』のことではないのだろうかと勝手に予想する。
現在、今井さんと連れ立って歩いている湊さんもRoseliaのメンバーだ。今井さんがベーシストで湊さんがボーカル。
思えば彼女に惹かれるようになったのは最初に行った彼女たちのライブだったように思う。
確か・・・そうだ。今井さんにライブのチケットもらって、よければ観に来てよ、なんて言われて。
女の子に声をかけられることも、ましてや話したこともほとんどないため若干、挙動不審になってしまったのを憶えている。
でも彼女は、そんなこと気にした様子もなく、なんでそんなに緊張してるの〜?なんて笑って言ってたっけ。
もちろん、チケットは俺一人に渡されたものではない。他にも何人かに配っていた。
でも、その時見た彼女の笑顔は俺にライブに行こうと思わせてくれる力があった。
それだけは確かだった。
あれから学校に着くまでずっと下を向いていたり、周りの景色を意味もなく眺めてみたり。とにかく今井さんを視界にいれないように無意味な努力していた。それでも、移りゆく視線の間にチラチラ今井さんを見てしまうのは仕方ないことだと思いたい。だって、男の子だもん!・・・・・・すいません。もうやりません。ごめんなさい。
そんな気持ち悪い俺を待っていたのは、大して話したこともないクラスメイトの一人である男子生徒だった。
「おっ、三浦。おはよう」
「お、おはよう」
ちくしょう・・・普段喋らないやつに急に話しかけられるとびっくりしちゃうだろうが。思わずどもっちゃったよ。
「─────?まあ、いいか。お前今日、日直だぞ」
「さんきゅ」
それだけ言って男子生徒は教室から出ていった。
にしても・・・あいつ名前なんだったっけ。まあいいか。多分もう話すことないだろうし。あったとしても名前知らなくても済むような会話しかしないだろ。
そう思って自席に向かおうとしたが、日直の相手を確認するのを忘れていたことに気づく。
日直ってなんで二人なんだろうな。ぶっちゃけ一人でもできなくはなさそうなのに。まあ、なるべく生徒同士を関わらせたいっていう学校の思惑なのかもな。全然喋ったこともない人とペアになるの地獄だから正直一人にしてほしい。黒板消してる無言の時間とか超気まずいんだよなぁ。三時間目あたりからペアの人どっか行っちゃうし。いや、それでも消すんだけど。
そんな日直という制度に文句をつけながら相手を確認して腹の底から何かが這い上がってきたのを感じて、自席に向かう。
そこにははっきりと『今井リサ』と書かれていた。