世話焼きギャルとの物語(仮) 作:こってりラーメン
今世紀最大級に喉の通らない食事を終え、俺たち三人は食後のコーヒーで一息ついていた。
ふう・・・ようやく食い終わった。一食にあんだけ時間かかったの初めてだわ。それもこれもどこぞの誰かが食事中も圧という名のプレッシャーを与えてくるからだ。
というか、俺全く悪くなくない?なくなくない?だって、純情ピュアピュアな純真ハートを弄ばれた挙句、謂れのない暴行(机の下の件)だよ?あまりにも酷すぎて涙が出るよ。
そんなことより、純情ピュアピュアって日曜の朝にやってる女の子向けのアニメに出てきそうなフレーズだな。俺の時代は黒と白の女の子が手を繋いでもう片方の手のひらから2人で気功波を発射していたが、昨今の彼女たちはどうなっているのだろう。風の噂ではなんと五人に増えたこともあるそうな。さらには映画限定らしいが、歴代の戦士たちが勢揃いすることもあるらしい。その数なんと60人を超えるらしく、その光景は圧巻であると誰かが言っていた気がする。それだけ人数がいてもその道のプロには全てわかるものなのだろうか。だとしたらすげぇな。
と、ここまで変身少女モノのアニメについて語っていたものの、俺は初代しか知らない。いや、ほんとだよ?ハルト、ウソツカナイ。
「───────らクン?三浦クン!」
「え?」
「え?じゃないよ、急にボーッとして・・・どうしたの?」
「あ、いや、なんでもない。世界を守る少女たちは一体何人いるんだろう、って考えてただけだから」
「なんで今それ!?」
「あれ?そういえばなんでだろう?」
まあ、思い出せないということはそれほど重要ではないのだろう、と結論づけそこで思考を放棄した。
が、青葉さんが唐突に口を開く。
「2022年時点で72人っていう説があるみたいですよ〜」
「ほう・・・」
72人も戦士いたら俺だったら直帰するわ。いや、どう考えても無理でしょ。勝ち目ないじゃん。
「その中でも最強は初代のメンバーなんだとか〜」
「なにっ!?」
それは驚きだ。仮に戦士が72人だとしても、その中でも初代の少女たちが一番強いとは・・・・・・やはり何事においても初代というのは特別なものらしい。俺も一番最初に買ったオトナの本はずっと大事に勉強机の最下段の隠し底の下に違う本のカバーをつけてしまってある。仲間は増えたけどアイツだけは今も俺の特別だ。これからも仲良くしていこうと思う。
「いったい!」
「・・・・・・・・・」
やましいことを考えていることがバレたのだろうか、再び太ももに激痛が。犯人は先程と同様のようだ。
・・・・・・この人やっぱり超能力者じゃないの?なんでこんな考えてることバレるの?普段から大好きなアニメキャラとか見てニヤついたりしてるの気づかれて、なにあいつ気持ち悪いと思われないようにポーカーフェイスを心がけてるのに、めちゃめちゃ看破されるんだけど。ことごとく俺のスキルは彼女に通用しない。というわけで俺は今井さんはエスパー説を提唱したいとおも───────
「だから、痛いって!」
「三浦クンが変なこと考えるからでしょ!」
「・・・・・・なんで考えてることがことごとくバレるんだ」
「うーん、確かに三浦さん表情にはあんまり出ないですけど〜なーんかわかっちゃうんですよね〜」
「え?それ俺のプライバシー大丈夫?個人情報保護法適応されてる?」
とりあえず、俺の思惑が筒抜けなのはこの二人だけだと思いたい・・・・・・わりとマジで。じゃないと、恥ずかしさとかで死んじゃう。
そんな俺だけ滅多打ちな時間であったが、全員がコーヒーを飲み終わるのには丁度良かったらしく。
「あたし、ちょっとつぐと話があるので〜。なんだったら先に帰ってもらってもだいじょーぶですよ〜」
「・・・・・・うん、そだね。アタシたちはこの辺で失礼しよっか」
「ん」
「あたしの分いくらですか〜?」
「いや、いいよ。青葉さんは羽沢さんのところへ行っておいで」
青葉さんが自分の支払い分を払おうとするが、俺が待ったをかける。
それを見て驚いた顔の今井さんに若干思うところがないわけではないが、後輩の女の子にお金を出させるというのもいかがなものか。つまらない意地、というかプライドというのかもしれないが一応俺だって男の子なのだ。カッコつけられる時はカッコつけたいお年頃なのだ。これがカッコいいのかはわからないが。
「でも〜」
「大丈夫、今日食べた分くらいは払えるから。それより羽沢さんが待ってるんじゃない?」
「・・・・・・ありがとーございます〜。こーゆーのってどこがカッコいいのかわからなかったんですけど〜」
青葉さんはそこで一度言葉を止め。
「三浦さんがやるとちょっとカッコいいって思っちゃいました〜」
「・・・・・・!え、いや、その、どうもありがとう?」
「なんで疑問形なんですか〜」
「いや、どう反応していいかわかんなくて・・・」
「顔、真っ赤ですよ〜」
後輩の女の子に好き放題いじり倒されてぶっちゃけ恥ずかしすぎて死にたい。まさか後輩の女の子にもマイ純真ハートを汚されるなんて・・・・・・もうお婿にいけない。
そんな感じで退店間際でもバタバタしていたが、青葉さんの分と今井さんの分、そして自身の精算を終え今井さんと二人で青葉さんと羽沢さんに見送られて店を後にする。
ひとつ気になるのが精算の件以降、今井さんがずっと俯いたままということだ。
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
店の前で二人横並びになる。そこには会話はおろか目線のやり取りさえない。
羽沢珈琲店は商店街の中にあり、店の外は休日ということもあり往来が盛んで賑わっていた。
しかし、二人の間に流れる沈黙はまるで世界から二人以外の人間がいなくなってしまったかのような錯覚を起こさせるほどであった。このまま時が止まってしまうのではないかとすら思える時間の中、隣の少女が不意に口を開く。
「・・・・・・ねぇ」
「・・・・・・ん?」
「・・・・・・ちょっと歩こっか」
「・・・・・・ん」
彼女からのその提案に愛しの彼女からの誘いであるという嬉しさとこの先に待ち受ける出来事に対する漠然とした不安、そして彼女にこの沈黙を破らせてしまった申し訳なさで胸中は満たされていた。
そんな状態だから愛しいはずの彼女にもそっけない返事になってしまう。本当はもっと明るい幸せに満ちた雰囲気がいいのに。
あぁ。本当に。俺はこんな自分が・・・・・・大嫌いだ。