世話焼きギャルとの物語(仮) 作:こってりラーメン
青葉さんと羽沢さんに別れの挨拶をして店を出た後、どこか気まずい気持ちを両者ともに抱きつつ、今井さんに連れられてどこかへと向かっている。
昼食の時は告白の一件があったことを気にさせない感じで話せていたと思うのだが、彼女はそうは思っていなかったのだろうか。三人で笑い合っているときも彼女は俺のことを快く思っていなかったのだろうか。
・・・・・・いや、そんなことはないはずだ。俺が羽沢さんを気にしていた時に見せた素振り、やましいことを考えていた時に見せた素振り。そのどちらにも嘘はなかったように思う。まあ、そうやってわかったような判断ができるほど彼女の何を知っているわけではないのだが。
ところで彼女はどこへ向かっているのだろう、と思い思考を一時中断し今井さんへと目をやる。その足取りはどこかおぼつかなく寄る辺がない子どもを彷彿とさせた。
羽沢さんの店の前で言葉を交わしたきり二人とも口を開いていない。まあ、お互いに話していればこうやっていろいろ考える余裕なんてないのだけど。
しかし、この沈黙・・・・・・超辛いんですけど。もう帰りたい。なんで行くって言っちゃったんだよ俺。こういう雰囲気ほんとダメ。気まずすぎてついつい無駄なこと考えちゃう。具体的には、今井さんの私服やっぱり可愛いなとか、でも露出多いよなとか。生足綺麗だな、などもある。
・・・・・・と、いかん。ついそっち方面に意識が持っていかれがちだ。けど、フラれたとはいえ好きな女の子と休日に出かけて私服姿を拝んでるんだよ?仕方なくない?思春期男子なら一生の思い出にしようと頭の先からつま先まで見て脳内保存に全力を注ぐじゃん?じゃんじゃん?
そんなバカなことを考えているうちに目的地に到着したらしい。前を歩いていた今井さんが立ち止まる。
・・・・・・あっぶなかったぁ。しょーもないこと考えてたせいでぶつかるところだった。いや、もしかしたら某アニメのハーレム主人公みたいにラッキースケベが起きたかもしれない。そう考えると一生に一度の千載一遇のチャンスを逃した気がして軽く絶望する。
いやまあ、現実にそんなことしたら即通報ものだけどね。あの主人公はプロだから通報されないだけだから。倒れこむフリして男子の夢を揉みしだいたり、桃源郷に顔を突っこんでゼロ距離で堪能したり。桃源郷に顔埋めれるって前世でどんな得積んだら体験できるんだよ。あー、うらやまけしからん。
今井さんは若干挙動不審だった俺に疑問を抱いたようだが、すぐに元通りの状態へ。
「・・・・・・ここに来たかったんだ」
「ここは・・・」
今井さんに連れられて辿り着いたのはとある公園であった。
彼女はそのまま園内へと足を進める。俺も置いていかれないように先へ行ってしまった彼女を気持ち早歩きで追いかける。
追いついた頃には彼女は二つのブランコのうち一つに腰掛けて、少しブランコを前後に動かし両足をプラプラさせていた。
俺はそんな彼女を横目に見ながらブランコの周りを囲っていた小さい鉄棒のような柵へ腰掛ける。彼女の隣に行くことも考えないでもなかったがそれは俺にはとても勇気のいることで。今はこれぐらいの距離感が丁度良いように思う。お互いのためにも。
今井さんの隣のブランコは誰も使う者がおらず心なしか哀愁のようなものが漂っていたが、それに気づいているのかいないのか今井さんが突如口を開く。
「・・・・・・さっきはゴメン」
さっき、というのはどれのことを指すのか。コンビニでの一件か、それとも店での一件か。謝罪の範囲が広すぎて何に対する謝罪なのか判断が難しかったがおそらく両方に対しての謝罪だろう。
「・・・・・・俺もなけなしの勇気を振り絞って今井さんに告白したわけだし気にしてないって言ったら嘘になるけど、そこまで目じくら立てるほどのものでもないからそんなに気にしなくていいよ。こうやって謝ってくれたしね」
「でも・・・」
しかし、彼女はこのままでは気が済まないようで。
何かいい落とし所はないだろうか、と考える。
そして、しばし熟考した後に俺が出した結論は───────
「・・・・・・じゃあ、一つお願いがあるんだ」
「うん、なんでも言って。アタシにできることなら精一杯お返しするから」
そう言った彼女の顔は真剣そのもので、俺が何を言っても全力でそれを実行してくれようとするのが痛いほど伝わった。
しかし、あまり人と会話する機会がないこともあり、ましてやその会話の相手が好きな女の子であり、さらにはその子にお願いをきいてもらうというコミュ力が皆無に等しい俺にとっては天国のような地獄のようなシチュエーションのため緊張も相まり、その一言が中々出てこない。
それでも彼女は俺の言葉を急かすようなマネは決してせず、きちんと俺が自分の意思で自分の言葉で伝えるのを待ってくれていた。
───────あぁ、彼女のこういうところが俺は。
「───────俺と連絡先を交換してくれませんか?」
俺のそのお願いにどんな無理難題を要求されると思っていたのか、少し呆けたような顔をする彼女。
一体どれくらいの時間そうしていただろう。10秒か1分か、はたまたそれ以上か。
沈黙を破ったのは彼女だった。
「・・・・・・ぷっ!アハハ!どんなこと言うのカナ〜って思ってたら連絡先の交換!?しかもなんで敬語なの!?・・・・・・あ〜、やっぱり三浦クン面白いね☆」
彼女はひとしきり笑い終えると、そんなふうに俺の評価を下す。
・・・・・・おい、なんで笑うんだよ。しかもどこが面白いんだよ。そこで笑われるとなんかわけもわからず俺が恥ずかしくなってくるんだけど。死にたくなってくるんですけど。
やっぱり彼女のことは許さないでおこうと固く心に誓っていると、彼女から返事がなされる。
「・・・・・・モチロンいいよ。交換しよっか、連絡先☆」
そうと決まれば行動は早かった。二人して連絡アプリを起動させ、互いの連絡先を交換する。
俺の数少ない連絡先一覧に今井さんの連絡先が追加される。それだけのことなのになぜか心臓の鼓動を刻むリズムが早くなった気がする。
あ、ていうかアカウントの写真、変とか思われないかな?名前・・・は普通に本名登録してるだけだから大丈夫だとして・・・・・・やばい、なんかいろいろ気になり始めた。もし今井さんに変とか思われたら・・・・・・
「これが三浦クンのアカウントなんだ・・・・・・ふふっ、本名フルネームなんだね」
「え、それが普通じゃないの?」
「まあ、中には本名がバレないようにしてる人もいるし、それが堅苦しく感じちゃう人もいるってこと。アタシも名前しか登録してないし」
確かに彼女のアカウント名は下の名前のみになっている。
・・・・・・なるほど。確かに本名フルネームは字面から堅苦しさを感じないでもないし、フレンドリーさというのは大事なのかもしれない。ま、どっちでもいいや。気が向いたら変えよう。
そうやっていろいろ話したり連絡先を交換しているうちに日が暮れ始める。
「うーん!・・・そろそろ帰ろっか☆」
「陽も落ちてきたしそうしようか」
と、俺はここで一考する。
・・・・・・ちょっと待てよ。まだ陽が落ちるまでには時間があるが、これは帰り家までとは言わずとも家の近くまで送っていったりした方がいいのか?いや、お互いの関係性を考えるとあまり良くない気もする。え、ほんとにどうするのが正解なんだ?あ、これやばい。どうしよう。
俺が悩んでいる間に今井さんは公園の出口付近に辿り着いており、遠くから声がかけられる。
「ほーら、なにしてんの!」
え、ちょ、早くない?なんでそんなさきさき行っちゃうの?
俺は公園に入ってきた時と同じように彼女に置いていかれないように少し早足で彼女のもとへと急ぐ。
そして、彼女の隣に辿り着いた時に。
「・・・・・・モチロン送ってくれるんでしょ?」
「え・・・?あ、あぁ、もちろん。俺なんかがボディーガードになるとは思えないけど」
なんなら意気揚々と立ち向かって瞬殺されるまである。やられちゃうのかよ。
というか、この場面知っている人に見つかると何か誤解を生みそうだがそれは大丈夫なのだろうか・・・・・・まあ、今井さんと俺じゃ釣り合うわけないし、そもそも皆そういう目で見ないか。精々、美人のストーカーぐらいだろう。あれ?ダメじゃない?どっちにしてもダメじゃない?
しかし、そんな悩みも隣を歩く彼女の横顔を見るとちっぽけに思えるのだからなんとも不思議だ。
行きしなとはうって変わってどこか幸せそうな彼女の横顔を見ていると心底思う。
───────あぁ、そうだ。俺はこういう彼女を好きになったんだ。