ウマ旅! ~第四回ウマ娘短編合作~   作:サイリウム(夕宙リウム)

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この小説にはタイキシャトルと同世代のオリジナルウマ娘が登場します。
ヒントは最低人気からの下克上。
ウマ娘化が苦手な方はご注意下さい。




3:Winter friends

 

 

ある日、理事長から学園生へと連絡された旅行企画。

学園内が企画を利用した旅行の計画で沸くなか、一人誰にも声をかけずにいるウマ娘がいた。

 

(ヘリオスさんが空いてましたらご一緒させていただこうかとも思いましたが………まあ、パーマーさんがいるでしょうし私には縁のない話ですか)

 

「Hey,ヤマト!Are you free now?」

「………えっ?」

黒髪に目元まで隠れる長髪、一見すれば何処にでもいる普通のトレセン学園生の予定は。

こうして唐突にカウガールウマ娘に引きずられるようにして決まったのである。

 

行き先、スキー場。

目的、ウィンタースポーツ体験。

参加者、タイキシャトル·ヒシアマゾン·ヒシアケボノ───ダイタクヤマト。

 

Winter friends 著:嵐山三太夫

 

「Yeeeeeeeeeeahhhhhhh!!Wonderful winter!ユキヤコンコ!」

 

見渡すは白、黒、白、雪に閉ざされましては晴天快晴、真っ青の空の下。

最後だけ覚えたての怪しげな日本語が混じりながらも、初の寒さもスノーボード初体験も知らぬと云わぬばかりに斜面を爆速で滑降するこの娘が、マイル戦に敵なしウマ娘などと誰が信じようか。

 

アメリカはケンタッキー生まれ、雪など見たことも無し、はしゃぐ姿はまさしく大型犬のよう。

 

遅れてその背に止まれ速度を落とせとまるで心配性の母親のようなことをのたまいながらこれまたアメリカ生まれの女傑が追いかけ。

 

これがスキーなんだね!ボーノ!と珍しいはしゃぎ方をしながら先の二人よりもゆっくりと、まるで雪だるまがそのまま動き出したかと思わんばかりのふわふわスキーウェアに身を包んだ、こちらも実はアメリカ生まれの名前負けせぬビッグサイズウマ娘が滑り降りてゆく。

 

かたや最後方の私はと言えば、生まれも育ちも日ノ本なれば名前も日本らしい純国産ウマ娘である。

それが何故斯様なメリケンウマ娘に囲まれて雪山でスキー板なぞ履いているのか。

 

初めまして皆様。

同行者のはしゃぎっぷりについていけぬ凡庸黒髪ウマ娘、名をダイタクヤマトと申します。

 

──実績や名声だけで結果が決まるのならこの世はちっとも面白くなんかない。

 

逆転や番狂わせが、

 

想定外と誤算こそが、

 

ありふれた日々を思わぬ色彩で彩るのだ。

 

何処かに潜む、次の「まさか!」を待つとしようか。

 

(URA 名ウマ娘の肖像 ダイタクヤマトより)

 

そりゃあ私とてトレセン学園にてしのぎを削ってきたウマ娘、見てくれは凡庸なれど短距離を逃げて勝ってきた速さ自慢。

短距離最速を極めるGⅠ、スプリンターズSを最低人気で逃げきり呵呵大笑してみせたことも御座いますが、さりとてこのはしゃぎようについていくためにはレースでのスピードなど微塵も関係なく。

 

雪を見て倒れこみごろごろと転がりまるで大型犬のようにはしゃぎ回ったこの旅行の発案者にして同級生、タイキシャトルが慣れぬスノーボードでさんざ転けては転がるのを見てたはずがあれよあれよという間にコツを掴めばいつのまにやら猛スピードで滑っていくのを呆然と見やるばかり。

ああこれこそ天才というやつかと妙に納得すればタイキの雪を払い落としてやっていたヒシアマゾン殿がこれまた面倒見の良さで無茶をせぬか心配して追いかけて。

ヤマトちゃん!私たちもいこー!と気勢を上げて一つ大きくストックを振って真っ直ぐ降りるヒシアケボノの背を追えば、追い付いてみれば何故か雪合戦を始めている始末。

はてこやつら一体どこからこの活力が来ているのかと首をかしげれば、おやあの白くて丸いものは雪玉では───

 

「ちょ、タイキ!いきなりなにしてんだい!」

「アハハッ、ヘッドショットデス!さあさあ、スノーボールファイト開戦デース!」

「雪合戦!?ボーノ!面白そう!負けないよー!」

「ああもう、アケボノまで乗っちまって………ヤマト?大丈夫かい?」

 

「───ふ、ふふふ、ふふふふふ」

 

「………What's?ヤマト、目がコワイデスヨ………?」

「あ、あれ?ヤマトちゃん?」

「………ん?あっ、髪が上がってるじゃないか!」

 

「上等ですこの豆台風どもめ───全員雪に沈めてくれましょうぞ」

 

数十分後。

雪面未経験のウマ娘が経験者に敵うわけがないだろうと無惨に雪まみれにされ顔から倒れ伏したウマ娘3人を見下ろし勝利に勝ち誇るウマ娘がいたとか。

 

ダイタクヤマトのヒミツ①

実は、本気の勝負の時は前髪を上げる。

 

虚しい勝利を納めてからしばし。

空腹を訴えたタイキの提案を受けて、ゲレンデの敷地に用意されたかまくら内で先の戦いの勝者である私が所望した鍋料理をヒシアケボノが腕を振るっちゃうよー!と気合いを入れて持参した食材で特製鍋を用意し。

美味なるその鍋を堪能しながらも量の多さにいささか苦しみながら完食し、スキーコースへと戻ってきたときのことである。

 

()()()()()()………?」

「そうなんです!どうしても人数が足りなくて、このままじゃ参加出来ないんです!」

 

私達を呼び止めたこのウマ娘達、なんでもウマ娘による「雪合戦」に参加したいのだが人数が足らず困っているのだと言う。

 

この雪合戦とはルールを定め競技要素を盛り込んだもので。

障壁を設置したコート内で雪合戦を行い、事前に用意した雪玉を使いきるまでに雪玉を当てた人数と、コート陣地内に設置されたフラッグの奪取によって3セット勝負でポイントを競うものらしい。

参加できるのは1試合7人、前衛と後衛に分かれておりフラッグを奪取しに相手陣地まで行けるのは前衛のみである。

事前作成の雪玉のケースは前衛が取りに行けない場所にあるため、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

それだけならウマ娘と人混合でもいけるのではと思いきや、雪玉のスピードが速すぎて防具の上からでも衝撃を受けたりウマ娘が身体能力でごり押しして突撃するせいで試合が荒れるためウマ娘の部が作られたのだとか。

 

電撃的進攻の何が悪い、行き先に投げれば当たるだろうと問えば止まれずに相手と接触し押し倒してしまった事例があるとのこと。

これは我々も納得せざるを得なかった、速度の乗ったウマ娘に衝突されればいくら下は雪でもかなり痛いだろう。

 

さて隣を見れば既にタイキとアケボノは目を輝かせ、寮長らしくいつの間にかルールを確認しているアマゾン殿もやる気十分の様子。

そしてすがるような目で見てくる雪合戦選手達。

なればこそ、こうなっては私に選択肢など無く。

 

かくして、地元のウマ娘と共に我々4人は競技雪合戦に参加することと相成ったのである。

 

さて配置決めである。

ファストドロウの要領か雪玉を投げるのも早く精度も高いタイキをエースストライカーに攻めかかるつもりだったのだが、いざ見ると雪玉を防ぐ障壁は正座してなんとか身体を隠せる程度の高さしかない。

これではただでさえ身長が大きなタイキとアケボノは前に出ては不利である。

アケボノは既に皆を応援するよー!雪玉いっぱい送るからねー!と後衛になるつもりらしく、せっかくなんだから地元の子が出るべきだろうとアマゾン殿もまずは後衛に。

ここで私はタイキに援護を任せ、私が最前列を、残り2人がその後列につくことを提案。

この案は採用され、タイキは後衛よりに布陣することとなった。

 

さて全員が後衛の陣地ラインであるバックラインに並び、審判のホイッスルを待つ。

アウト判定の宣告とルール違反確認のために番号の書かれたゼッケンを着て待つ我々は、まるでゲートの開放を待つかのよう。

 

そして、審判のホイッスルが一度鋭く吹かれ。

 

「─Are you ready?」

 

私が雪煙を吹き上げスタートダッシュから姿勢を低くしヘッドスライディングの要領でコート中央の障壁に取り付くのと。

相手チームへのアウトの宣告が2()()響いたのは同時のことであった。

 

何の事はない、ホイッスルと共にラインから僅か前進したタイキが後衛から手渡された雪玉をコンマ数秒でリリース。

目にも止まらぬ早撃ちが相手前衛と後衛1人を撃ち抜いただけである。

我々からすればタイキならやれるだろうということで驚きは無かったが、相手側は最初の援護を出だしから妨害された上いきなり2人もアウトにされたことで動揺しているようだ。

お陰様で相手から雪玉が飛び始める前に残りの2人も布陣し、後衛から転がされてくる雪玉を此方へと送ってくれている。

 

先手を取ったタイキは既に相手から集中的に雪玉を投げ込まれ、フラッグの周りを慌てて逃げ回っている。

対して障壁後ろの私の元へは加減が難しいのか、さらに後ろにまばらに着弾するばかり。

これ幸いと送られた雪玉を拾い集めた私は、空へ向かって雪玉を放り上げた。

───数秒後、相手側からアウトの宣告。

 

さて、これで人数差は3人。

タイキから目を離させるためにも押し込む。

 

「城に取り付かせるなどと、私も甘く見られたものです」

 

前髪を上げ露になった目は、ギラリと貪欲な光を放った。

 

かくして何回かメンバーの配置を変えつつ試合をこなし、結果相手全員をアウトにしたりフラッグ奪取に成功したりたまにギリギリの勝負になったりしながらも、無事優勝を勝ち取ったのである。

 

「ンー、ベリーエキサイティング!楽しかったデスネ!」

「そうだねえ、戦略もきちんと考えなきゃいけなかったし面白かったじゃないか」

「えへへ、私も皆が楽しそうでボーノ!だよっ!」

宿泊先のホテルの部屋にて。

あの後も散々遊び倒し、もう既に皆くたくたのはずだがまだまだ元気が有り余っているらしい。

こ奴ら本当にスプリンターか、アマゾン殿は分かるが何処からこの体力が来ると戦慄しているとふとタイキが私を見ていることに気がついた。

 

「ヤマト、Did you have a good time today?」

 

ふと思う。

私を何故誘ったのか、その理由をきちんと聞いていなかったと。

 

「とても。………タイキ、何故私をあの時誘ったのですか?」

 

まあそりゃ疑問に思うだろう、とヒシアマゾンは考える。

そもそも、行き先自体はタイキシャトル自身が希望した行き先ではあるが、同行者は元々アメリカ出身の自分たちだけのはずだったのだ。

シーキングザパールと予定が合わず、なら3人で行こうかと考えていたところ彼女が引っ張ってきたのがダイタクヤマトだった。

 

ヒシアマゾンはタイキシャトルというウマ娘をよく知っている。

ヒシアケボノは多くの人を幸せにしたいという信条がある。

だから彼女の同行に何一つ意見は出さなかった。

ヒシアマゾンとしては大はしゃぎするであろうタイキをある程度は相手できるという目論見もあっての事だったが。

 

タイキシャトルは孤独を嫌う。

彼女が求めるものは同期のサイレンススズカのような孤高の速さではなく、競い合える仲間であり、ライバルであり、友人だった。

だからこそ、ダイタクヤマトという同期を知りたかったし、誰かに知っておいて欲しかった。

 

誰よりも速く、強く駆け抜けた。静かなる武者を。

 

「ソウデスネ………理由はいくつかアリマス。」

 

でも、きっと一番の理由は。

 

「ワタシが、ヤマトとフレンズになりたかったカラデス!」

 

なんだそりゃ。

そう思うと同時に力が抜けた身体から、ふと笑いが込み上げてきた。

 

「く、ククク、くふっくふふふ………」

「What's!?」

「ああもう、ホントにタイキらしいですね………くふふふ」

 

そうだねぇ。ホントにタイキらしい。

ボーノ!やっぱりタイキちゃんらしいよね!

ミナサン!?

 

つられた二人が笑いだし、疑問符でタイキが顔を埋め尽くす。

 

なんだかよく分からない内に来てしまった旅行だったけど。

この先きっとこの日を何度も思い出すだろう。

 

「忘れませんよ。………だからタイキ。貴方も私を忘れないで下さいね」

 

この後タイキが拗ねてしまい、機嫌を取り戻すまで時間が掛かったものの。

年頃のウマ娘に話題が尽きることはなく。

普段の消灯時間を過ぎても、部屋の灯りは中々消えなかった。

 

────明日は何をしようか。

降って沸いた楽しい休みは、まだ続く。

 

後日、秋川理事長の元へ届けられた写真には彼女達4人を模して並べられた雪だるま、雪合戦に参加した地元ウマ娘達との集合写真、かまくら内での食事の様子など───そして、はにかみながらも満面の笑みを見せるダイタクヤマトが写っていた。

 

 

 







<あとがき>
お楽しみ頂けましたでしょうか?
元々はパールとタイキで旅行して貰おうかと思いましたが、それだけでは単純だなと感じ。
じゃあ同期で誰かに行って貰おう、でも誰出そうかと思った時に、史実でタイキの勝てなかったあのレースで勝った馬を出そうと考えたのがオリジナルウマ娘「ダイタクヤマト」の誕生でした。

最低人気からの大激走、これ以上ない下克上を決めた彼はしかし、最後は行方不明になってしまっています。
だからこそ誰かの記憶に残って欲しい、彼を知って欲しいという思いを込めてタイキに誘って貰いました。

因みに雪合戦はマジで公式連盟がある、れっきとしたウィンタースポーツです。
気になった方はヤマトの史実共々、ぜひ調べてみてくださいね。
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