ウマ旅! ~第四回ウマ娘短編合作~   作:サイリウム(夕宙リウム)

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突如始まった冬旅行。果たして3人はどのような旅をするのだろうか?
※この物語はノリと勢いと変態によって支えられています。




4:マイネルハイウェイとゴールドシップとアグネスデジタルの冬旅行

「冬旅行・・・ねえ。ゴルシちゃんは行きたい場所がごまんとあるが、行く相手がいないのだぜ。あ~どうしよう・・・。」

 

 理事長による突然の冬旅行、通称「ウマ旅!」の発表から一夜開けたこの日、ゴールドシップは寮のベッドでもぞもぞ動きながら1人呟きつつ惰眠を貪っていた。

 今日は土曜日。同室のメジロマックイーンは既に練習に行ってしまっている。ベッドの中で寝返りを打ちながら、1人旅の相手を考えていた。

 

「スペはスズカと一緒に行くだろうし、テイオーはルドルフとだろうな。マックイーンはイクノさんと、ウオッカはなんだかんだ言いながらスカーレットと出かけるだろう。キタはダイヤとだな。『お~いゴルシ、開けろ~』ドンドンドンそうなると、アタシは行く相手がいないな。誰かについていこうかな。『いるのは分かっているんだよ~。返事しろ~。』ドンドンドンそれとも、いっそのこと誰か強引に連れてきてでも行こうか。『しらばっくれるのか~?』ドンドンドンいいや、それはアタシのポリシーに反するぜ。『無視するなら10秒カウントした後にドアを蹴破るぞ~。』ドンドンドンジャスタはエデンを見つけるといって1人で旅に出ちまったし。『蹴破られたくなけりゃ早く出てこ~い』ドンドンドンドンドンはてさて誰と何処に行こうか・・・ってさっきからうっせえんだよ!誰だよアタシの安眠を妨害しているヤツはよお!ノックは一回で十分だっての!何回もやらなくても聞こえるわい!!!」

 

 しかし、安息の時は突如として何者かによる連続ノックで妨害されてしまった。流石に考え事をしている時にドアを何回もノックされるのはゴールドシップでもキレる。寝間着のまま帽子を被らずにドスドスと苛立ちを隠さずに大股で歩いて行ってドアを思いっきり開けた。

 

「何処の誰だよ!朝からドンドン五月蠅いの!って・・・」

 

 苛立ちを隠せないゴールドシップはつい怒鳴ってしまったが、急にトーンダウンしてしまった。何故なら、

 

「よ~っすおはようゴルシ。目は覚めたかい?」

 

 ゴールドシップより少し身長の高いウマ娘、マイネルハイウェイがいたからである。マイネルはゴルシの所属するチーム・スピカの最古参で、いわば先輩にあたる。急な先輩の訪問なら畏まるのも無理はない。

 

「お、おはよう、マイネル。ってか、何でハンマー片手にそこにいるワケ?」

 

 だが、この状況には流石のゴールドシップも疑問を感じざるを得ない。何故なら、マイネルハイウェイはハンマー片手にそこに立っていたからである。何故自分を起こしに来ただけなのに、ハンマー片手にそこにいるのか、美浦寮所属の筈なのに何故栗東寮にいるのか、不思議でならなかった。これに対し、マイネルは

 

「ああこれ?ゴルシはドアを簡単に開けてくれないと思ったからさ、一応の時を考えて持ってきたんだ。寮長には使用の許可もらっているしね。いざという時にはこれ使って突入するつもりだったよ。まあ、杞憂に終わったからよかったんだけどね。」

 

「いいや、流石にアタシでもそんな酷いことはしないぞ。」

 

「そう?」

 

「うん。」

 

 ゴールドシップが開けてくれないと考えての装備だった。流石に過剰すぎである。これにはゴールドシップも苦笑いするしかなかった。

 

「んで、今日は何の用?」

 

 早くこの状況を脱し、オフトゥンにダイブして二度寝を決め込もうと考えているゴールドシップは早く本題を言ってもらってマイネルハイウェイには帰ってもらおうと考えていた。朝からこれである。周りの目線が徐々に集まりつつある。ゴールドシップでもこの奇特なやり取りを朝から見られるのは色々と恥ずかしい。

 

「あ、それはね、」

 

 マイネルは一呼吸置いた後、こう言った。

 

「一緒に旅しない?」

 

「ふぇ?」

 

と。

 この言葉を聞いた瞬間、ゴールドシップは「何でアタシと?」という疑問が芽生えた。

 

 

 

「んで、旅に行くって、何処に行く予定なんだ?日本?外国?それともゴルゴル星?」

 

「まあまあ落ち着いて。旅行先は逃げたりしないから。」

 

「おめー知らないのか?旅行先って実は逃げたりするんだぜ。これを知らないとは、さてはモグリだな?」

 

 所変わってここは栗東寮の食堂。ゴールドシップはテーブルを挟んでマイネルハイウェイと一緒に何処に行くのか話し合っていた。少し時間が経ったところでゴールドシップのテンションも戻ってきたらしく、いつも通りの調子に戻っていた。

 

「ゴルシ、旅行先はダーツで決めようと思う。」

 

「おおダーツか!ゴルシ流ダーツ投擲術564段の見せ所だな!!!」

 

「あーだこーだ言い合うより、ダーツの女神に賭けた方が面白くない?」

 

「おう、そりゃそうだな!」

 

 マイネルは、旅の目的地を提案で決めるのではなく、ダーツの確立に委ねることを提案してきた。ゴルシはいつも通りのテンションである。

 

「ということなんだけど、どう?ゴルシがいいならダーツで目的地を決めるけど。」

 

「おう、いいぜ!ダーツでもピンボールでもなんでもかかってこいだぜ!!!」

 

「了解。ダーツの的ができたらその時は呼ぶね。」

 

 ゴールドシップもノリノリということで、旅の目的地はダーツで決めることになった。

 

「それともう一点。」

 

「ん?」

 

 ここで、マイネルはもう一点提案をした。

 

「今回の旅は、ただ旅してそれで終わり、というわけじゃないんだ。知っていると思うけど、旅の内容をレポートと写真を提出しなければならない。どうせなら、ただ単に写真を撮るより、その道のプロに任せた方がいい。つまり、いいカメラマンが必要になる。そこで、私たちの旅を記録してくれる子を誰か私の独断で1人連れていきたいんだけど、それでもいい?」

 

「おう、構わないぜ。ちゃんとアタシたちのかわいい姿をしっかりと写してくれるのならな!」

 

 マイネルが提案したのは旅の記録をしてくれる子を連れていくということである。今回の「ウマ旅!」は旅行後にレポートと写真を提出する必要がある。その写真があまりにも酷すぎると目も当てられない。そこで、写真を撮影してくれるウマ娘を1人連れていきたいとマイネルは考えていたのだ。これに対し、ゴルシは即答。特に問題なく話は進んでいった。

 

「ところでマイネル。」

 

「ん?」

 

「後ではちみー奢って。」

 

「まあ確かに押しかけちゃったしね。分かったよ。」

 

 この後はちみーを奢ったマイネルだった。

 

 

 

 翌週、ダーツの的ができ、カメラマンも確保できたとマイネルから連絡があったのでゴールドシップはマイネルハイウェイの部屋に向かうと、部屋に大きなダーツの的が置いてあった。

 

「ゴルシ、待っていたぞ。」

 

 部屋にはマイネルハイウェイと、

 

「はあああああ推しのゴールドシップちゃんが目の前に!・・・はあ、しゅき。」

 

 恍惚とした表情の『変態』アグネスデジタルがそこにいた。

 

「オーケーマイネル、ダーツの的は十分に凄い。このアタシでも惚れるほどの出来だな。でだ、今ひとつお前に問う。何でアグネスデジタルがここにいる。まさか彼女がそのカメラマンだとは言わないよな。」

 

 これにはゴールドシップも困惑しっぱなしである。何故マイネルの部屋に変態ことアグネスデジタルがいるのか、全くもって理解できない。

 

「ゴルシ、彼女が今回のカメラマンさ。」

 

「今回、この旅におけるお2人の行動記録を依頼されたアグネスデジタルです!推しの素晴らしい写真をたくさん撮るのでよろしくお願いします!」

 

 アグネスデジタルが得意げに答える。

 

「うっそだろおい。」

 

 これにはゴールドシップもびっくり。思わず虚空を見つめてしまった。というか、さっきからゴールドシップはびっくりしてばっかりの気がする・・・。

 

「というわけで、はい、ダーツ。」

 

 完全に心ここにあらずという状態のゴールドシップに、マイネルがダーツを1本渡した。

 

「というわけで、回すから当ててね~♪」

 

「ちょっと待て展開が早すぎるんだが?!心の整理もされてくれないのか?」

 

「知っているかゴルシ、心の整理は3秒で終わらせないとプロじゃないぞ。」

 

「マイネルの鬼、ヘチマ、しめじ!」

 

 ゴールドシップもびっくりの展開で的が回り出す。もうこの時点でゴールドシップのSAN値はほぼ0である。

 

「ああもう、なるようになれっ!」

 

 ゴールドシップは半ばヤケクソにダーツを投げる。ウマ娘の馬カ力で投擲されたダーツは見事に刺さった。

 

「どれどれ、どうなっているのかな?」

 

 ダーツの当たった位置を確認する3人。そこには

 

「スウェーデン」

 

 の位置にダーツが刺さっていた。ちなみに、スウェーデンのすぐ右に「ゴルゴル星」、すぐ左に「エデン」と書いてあったのを見て、少し悔しく感じたゴールドシップであった。

 

「というわけで、旅行地はスウェーデンに決定しました~どんどんぱふぱふ~♪」

 

「イエ~イ!」

 

 ハイテンションな2人に対して、ゴールドシップは既に疲労困憊である。これから、旅行にもついて行けるのか不安になってきたゴールドシップであった。

 

「マイネル、アタシはもう、ダメかもしれないぜ・・・」

 

「ゴルシ・・・。はちみー奢るから許して。」

 

「濃いめ硬め多めで。」

 

「はいはい。」

 

「マイネル、はいは一度で十分。」

 

 ちなみに、この後はちみーを飲んでテンションが戻ったのはまた別のお話。

 

 

 

 翌日、マイネルハイウェイは理事長室にいた。訪問目的は理事長に旅行の参加申請をするためである。今回の旅行に参加するには、用意された所定の申請書に書いて提出するものとなっている。なお、受付開始した瞬間に用意した申請書が秒で消えてしまい、事務課が増刷に追われてしまったという話がある。それくらい、周りは旅行に餓えていたのである。当時担当に追われた事務員は

 

「あれは、獲物を狙う獣の眼そのものでした。」

 

と、このウマ旅!単行本刊行に合わせて担当記者の乙名史記者に語っている。

 話は申請に戻るが、マイネルハイウェイはダーツで旅行先を決めた日に速攻で2人に署名をしてもらい、こうして申請書を理事長に提出しに来たというわけである。

 

「というわけで、よろしくお願いします。」

 

「受領!くれぐれも旅行先で迷惑を起こさぬよう!よい旅になることを祈る!!!」

 

「ありがとうございます。」

 

 申請書を無事に理事長へ手渡したマイネルハイウェイは理事長室を後にした。彼女が部屋から去った後、理事長が急に慎重な面持ちで語り出した。

 

「たづな、」

 

「はい、なんでしょう?」

 

「今受領したこの旅、非常に素晴らしい物になることを私は期待している。しかしだ、この旅は同時に、大きな波乱を巻き起こすかもしれぬ。」

 

 かつてないほどに真剣な表情で悩む理事長の目線の先には、先ほどの申請書があった。そこには、

 

長期外出申請書

 

宛先 日本ウマ娘トレーニングセンター学園理事長秋川やよい様

 

申請内容

 年末の旅行「ウマ旅!」において年末ダーツの旅に赴くため、本申請書を提出する。

 なお、年末ダーツの旅にかかる費用は全て貴学園に請求するものとする。

 

申請日 2021年11月23日

 

申請者氏名 ゴールドシップ 印

      アグネスデジタル 印

      マイネルハイウェイ 印

 

これより下には記入しないこと

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理事長印 理事長秘書印 生徒会長印 生徒会副会長印

 

 と書かれていた。

 

 

 

 数週間後、3人はタクシーに揺られて空港へと向かっていた。マイネルハイウェイは外の景色を眺めながら、この日に至るまでを振り返っていた。ちなみに、ゴールドシップは夜更かししていたせいか、爆睡中。アグネスデジタルは2人に挟まれる形で座っているので、尊死している。

旅行地はダーツで決めたものはいいものの、詳しい旅行先は

 

「このマイネルハイウェイ様がまるっと決めちゃうから問題ないYo☆」

 

 と、マイネルが独断で勝手に決めようとしていたので、急遽ゴールドシップがマイネルハイウェイを拉致連行して3人で目的地の検討をしたり、ゴールドシップの旅行準備が全く進まなかったので、マイネルハイウェイが

 

「スペ、スズカ、ウオッカ、スカーレット、キタ、ダイヤ、テイオー、マックイーン、そしてデジタル、やっておしまい!!!」

 

 と、ゴルシがいつもやる例の方法で誘拐連行して買い物に連れて行かせたりなどと、非常に濃い数週間だった。

 

「おーいマイネル、ついたぞ。早く下りないとそのままトレセン学園に送り返すぞー。」

 

「ごめんゴルシ。今下りるよ。」

 

 なんてもの思いに耽っていたらいつの間にか空港に着いていたようだった。ゴールドシップに急かされ、マイネルハイウェイは急いでタクシーから降りる。

 タクシーから降りると、魂は再インストールされたものの未だに恍惚とした表情のアグネスデジタルと、何故か眉をひそめて怪訝な顔でこちらを見つめるゴールドシップがいた。

 

「ゴルシ、どうしたの?何処か機嫌が悪そうだけど。」

 

 怪訝な顔をするゴールドシップにマイネルが話しかける。ちなみに、このような表情をするときのゴルシは基本的に本当に機嫌が悪い。何ならそれを嫌と言うほど経験している。

 

「いや、マイネル。別に機嫌は悪くない。ただ、気になることがあってだな。」

 

 ゴルシは一呼吸置いてこう言った。

 

「下りる場所間違えてねえか?国際線ターミナルとは全然場所が違うぞ。」

 

 そう、私たちが下りた場所は空港の国際線ターミナルではなく、何故かそことは全く違う場所だったのだ。

 

「ああ、そのことね。場所はここで合っているんだよ。」

 

「本当か?」

 

「うん本当。」

 

「アタシはそんなこと聞いていないぞ。」

 

「2人には話したはずだったんだけどね。まあいいか。ゴルシは物忘れ激しいときがあるし。この際に改めて説明しますか。」

 

 思い出したようにぽんと手を叩くマイネルハイウェイ。そこで、改めてここがどこなのか説明することにした。丁度施設の名前が書かれたネームプレートがすぐ真横に合ったので、彼女はこの場所について説明した。

 

「ここは東京国際空港国際線ビジネスジェット専用ゲート、つまり、プライベートジェット用の搭乗口だよ。」

 

 そう、ここは羽田空港として知られる東京国際空港の国際線におけるプライベートジェット用のターミナルだったのだ。

 

「うっそだろおい・・・」

 

 この言葉にゴールドシップはただただびっくりするしかなかった。何故なら、プライベートジェットという言葉は知っていたが、まさか自分がそれに乗ることになるとは思いもしていなかったからだ。乗るのは文字通り石油王やセレブなどの大金持ちで、トレセン学園のウマ娘でも流石に縁が無いと考えていたからである。

 ちなみに、アグネスデジタルは

 

「国際線ターミナルでウマ娘ちゃんを見ることができない・・・あう。」

 

 ウマ娘を見ることができなくて少ししょんぼりしていた。

 

「大丈夫大丈夫。今は見られないけど、旅行先ではたくさんのウマ娘と出会えるから。」

 

「ならば大丈夫でしゅ!」

 

 私が旅行先ではたくさんのウマ娘と出会えると言うと、テンションが復活した。本当に彼女のウマ娘愛は素晴らしいものがある。

 

「それじゃあ、魅惑の世界旅行へレッツゴー!」

 

「おー!」

 

「ワクワクしてきたぜ!この感情は火星に行ったとき以来だから緊張してきちゃったな。」

 

 三者三様のリアクションでターミナルに入っていった3人だった。

 

 

 

「よし、出国手続き完了っと。ってゴルシ、なんでそんなにガチガチなの?いつもらしくないよ。ほら深呼吸してリラックスリラックス。」

 

 出国手続きが完了し、専用ラウンジで待機していた3人だったが、ゴールドシップだけがやけにガチガチだった。

 

「いや、アタシってこういうセレブの空間って何か慣れないんだよ。だって、このような場所って文字通りのお金持ちが使う場所だろ?そんな場所にアタシがいてもいいのかな・・・って思ったら緊張しっぱなしでさ。・・・ていうか、何で2人は全然緊張していないのさ。」

 

 雑学に強いゴールドシップは、勿論プライベートジェットについては知っていた。しかし、知っているのと実際に利用するのとでは話が違う。一般人からすればまず来ないであろうこの空間に完全に慣れていないゴールドシップだった。

 これに対し、マイネルハイウェイとアグネスデジタルはいつも通りのリラックスした表情で椅子に座っていた。

 

「まあ、逆に私はワクワクしているけどね。こんな場所普通はまず使わないし。」

 

「たくさんのウマ娘ちゃんに会うことができるということが確定した時点でもう緊張などは吹き飛んでしまっているので問題ありません!」

 

 この状況に慣れる2人が少しだけ羨ましいと思ったゴールドシップだった。

 

 

 

 しばらく待合室で待った後、3人は飛行機に搭乗するため、空港内を車で移動していた。本来ならば、こんなに長距離を車で移動することはない。しかし、マイネルハイウェイ曰く、どうしても特殊な機体のため、空港内を移動せざるを得ないらしい。

 車に揺られることしばし、目的地に着いた。しかし、下りた瞬間、マイネルを除く2人は驚愕した。

 

「おいおいおいマジかよ・・・。」

 

「私もここまで大きいものは見たことがないです・・・。」

 

「やはり写真で見るのと実物を見るのとでは全く違うねえ。」

 

3人が発した言葉はそれぞれ違ったが、驚きを隠せていないことが窺える。なぜなら、そこにいたのは世界最大の総二階建て旅客機、エアバスA380-800だったからだ。

機体はパールホワイトで、垂直尾翼にはモスグリーンでURAのロゴが、そして機体側面にはJapan Umamusume Racing Association とロゴと同じくモスグリーンで書かれていた。

 

「おいマイネル、まさかじゃないけどな、これ、旅行のためだけに買ったのか?」

 

 ゴールドシップは驚愕の表情でマイネルに質問した。URAがこんなに巨大なプライベートジェットを持っているとは聞いたことがない。まさかだとは思うが、この旅行をするためだけにマイネルが買ったのではないかと考えての発言だった。実際、予算は全て理事長のポケットマネーから拠出される。だから、理論上不可能ではないのだが、まさかマイネルハイウェイがここまでやるとは思ってもいなかった。

正直この読みは外れていてほしいなと思っていたが、その読みは見事に覆されることとなる。

 

「これ?そうだよ。もっとも、この旅行が終わったらURAとトレセン学園に寄贈することを前提にして購入しているけどね。勿論、ロゴの使用と機体の購入は予めURAに許可を取っているよ。」

 

「マジかよ・・・」

 

 あまりの言葉に何も言えないゴールドシップであった。まさかマイネルがここまでやるとは予想していなかったのだ。ある意味で脱帽状態だ。しかも、ゴールドシップは本日3度目の衝撃を味わうことになる。

 機内に足を踏み入れると、なんと中が飛行機だとは思えないくらい豪華だったのだ。1階部分に普通のエコノミークラスはなく、全てがファーストクラス。しかも、2階は完全に何処かの邸宅なのかと言わんばかりの豪華さを誇る。豪華なソファーとテレビがしつらえられたラウンジにあらゆるカクテルを作ることができるバー、なんならシャワールームまで備えられている。ここが飛行機だと言われないと家でないかと錯覚するばかりの豪華さだ。

 豪華な設備に驚きっぱなしのゴールドシップ。これに対してマイネルハイウェイとアグネスデジタルは既にこの極上の機内を堪能しつつあった。マジであの2人のメンタル構造どうなってんだと疑いたくなるゴールドシップだった。

 

 

 

 機体は特に何の問題もなく離陸し、一路スウェーデンの首都ストックホルムに位置するストックホルム・アーランダ空港に舵を取った。

 シートベルトのランプが消灯した後、ゴールドシップがマイネルハイウェイに話しかけてきた。

 

「なあマイネル。」

 

「んあ?」

 

「確か2階のテレビ、マイネルがちょろっと言っていたけど、映画を見ることができるんだよな。」

 

「うん、そうだよ。世界中のあらゆる映画のみならず、様々な番組を見ることができるよ。」

 

 そう、このプライベートジェットにあるテレビには世界中のありとあらゆる映画やウマ娘レースなどが収められている。そして、それをいつでも見ることができるのだ。

 

「よっしゃ、それなら映画鑑賞会やろうぜ!折角スウェーデンに着くまでに時間があるんだしよ。」

 

 ここで、ゴールドシップは映画鑑賞会を提案してきた。道中は長い。そこで、様々な映画を見ることを提案してきたのだ。

 

「お、いいね。デジタルはどう思う?」

 

「お二人と一緒に映画を見ることができるという夢のようなシチュエーション!嗚呼考えただけで昇天してしまいそうでしゅ・・・!ぜひ見させて下さい!!!」

 

 アグネスデジタルも了承したので、3人で2階に上がり、ソファーに腰掛けた。

 

「っと、上映会の前に・・・」

 

 ここで、マイネルはスタッフを呼んだ。この機には、3人の専属スタッフが付いており、いつでも可能な限りの要望に応えてくれる。

 

「にんじんコーラ3杯とポップコーン3つをお願いします。」

 

「畏まりました。」

 

 そう、映画鑑賞に必ず必要なマストアイテム、それはにんじんコーラとポップコーンである。やはりこれがないと映画鑑賞は始まらない。

 

「お待たせしました。にんじんコーラとポップコーンです。」

 

 しばらくして、にんじんコーラとポップコーンが3人の下に届いた。

 

「よし、じゃあ映画鑑賞といきましょうか!」

 

 そして、3人だけの豪華な映画鑑賞会が始まった。ちなみに、映画の選択は1本終わるごとにそれぞれが映画を選択していった。ゴールドシップは主にホラー映画、アグネスデジタルはウマ娘が数多く出る映画、そして、マイネルハイウェイはハリウッド映画を選択していった。

 途中、ホラー映画を視聴中に何故か選択したゴールドシップ本人が

 

「ギャー怖すぎるー!こんなに怖いって聞いていないよーーー!!!」

 

 とマイネルハイウェイに抱きついてきたり、同時にマイネルハイウェイに抱きついてきたアグネスデジタルの頭を

 

「大丈夫。怖くない怖くない。ほら、深呼吸。」

 

 と脊髄反射で撫でたら、

 

「ああ、マイネルしゃんに頭を撫でてもらえるなんて、幸せすぎましゅう・・・アウッ」

 

 とホラー映画なのに昇天してしまったりしていた。マイネルハイウェイは全く気にしていなかったが。

 アグネスデジタルの選んだウマ娘映画は恋愛からコメディまで多岐にわたっていた。勿論、デジタルは視聴する度に尊死していたけど。マイネルハイウェイとゴールドシップは顔を見合わせて

 

「いつも通りだな。」

 

「いつも通りですね。」

 

 と同時に言ったりもしていた。

 ちなみに、ハリウッド映画はどれも泣けるものばかりだったので、3人は涙腺が崩壊していた。それはもう涙出っぱなしなくらい。

 そんな3人の機内食は、まさかのフルコース。前菜からメインディッシュまで、全てちゃんとした皿の載せられて出てくるという豪華さ。それを見たマイネルハイウェイ以外の2人は

 

「マジかよ・・・。飛行機に乗ってフルコースが出る何て夢のようだぞ。いいや、これは夢に違いない。」

 

「こんなに豪華なフルコースを頂くのは生まれて初めてです!デジタルは幸せなウマ娘です!!!」

 

 と、びっくり仰天していました。勿論、マイネルハイウェイもびっくりしていたが。

 とまあ、そんな時間を過ごしていたら、もうあっという間にスウェーデンが近づいてきました。時が経つのは早いものです。そうして、3人はスウェーデンに足を踏み入れたのだった。

 

 

 

「というわけで、スウェーデンに着きました~♪」

 

「いえ~い!!!」

 

「アタシはもう眠いぜ。あんたら何で元気なんだよ・・・。」

 

 というわけで、着きましたスウェーデン!場所は首都ストックホルムに位置するストックホルム・アーランダ空港。なお時間は午後の5時。既に日は沈んでいる。マイネルハイウェイと同士デジタルは所謂深夜テンションでとても元気だが、ゴルシちゃんは完全に舟をこぎかけている。それもそのはず。本来なら日本は午後11時なのである。ゴールドシップが舟をこぐのも無理はない。

 

「ほらほらゴルシ、寝ちゃダメだよ。寝ちゃったら怒られちゃうでしょ・・・って、寝ちゃっている。」

 

 と思ったら、既にゴールドシップはマイネルハイウェイの肩にもたれかかってすやすやと寝息を立てていた。よほど疲れが溜まっていたのだろう。あと、恐らくだが時差ボケも少し入っているのかもしれない。

 

「全く、仕方のないお嬢様だね。」

 

 マイネルハイウェイはそういうと、ゴールドシップをお姫様抱っこして運ぶことにした。アグネスデジタルには申し訳ないが、タクシーに乗るまでは3人分の荷物を持ってもらうことにした。タクシーを呼び、マイネルハイウェイたちは今夜の宿に向かった。道中、ゴルシは『マックイーン・・・』と呟いていた。何かいい夢でも見ていたのかもしれない。

 今日と明日の宿はスウェーデンでも歴史のある5つ星ホテル。建物の中から外まで、全てが豪華な調度品で揃えられている。まるで王宮のようなロビーには様々なアンティークの品々がそこかしこにある。

 部屋もとても豪華だ。ベッドにはピンと張られた純白のシーツが敷かれている。部屋全体には暖かみのある色合いで整えられており、5つ星ホテルに相応しい部屋となっていた。

 今回予約したのは3人部屋。マイネルハイウェイはまずゴールドシップの服を寝間着に替えた後にベッドに寝かせ、自身もシャワーを浴びてから寝間着に着替えた。明日からはスウェーデンの各地の様々な名所を巡ることになる。少し時間は早いが、床に入ることにした。

 

「じゃあデジタル、今日は夜も遅いですし、寝ましょう。」

 

「はい!」

 

 マイネルハイウェイとアグネスデジタルはベッドに入り、電気を消した。

 

「おやすみ、ゴルシ。」

 

 電気を消した後、マイネルハイウェイはすやすやと寝息を立てるゴールドシップの髪を撫でた。ちなみに、その光景を見たアグネスデジタルは

 

「あああああマイネリュしゃんが寝ているゴルシしゃんの髪をそっと撫でている!おっほおーーーーーーー!!!しゅきでしゅ!!!!!」

 

 スウェーデン初の尊死を遂げていた。

 

 

 

 翌日。今日からスウェーデン観光の始まりである。

 

「いや~今日から念願のスウェーデン観光ですな~。私が考えた良好プランの見せ所ですな。」

 

 マイネルハイウェイはホテルのレストランで朝食を食べながら得意げに頷く。

 

「いや、アンタの考えた旅行プラン全然良好じゃなかったぞ。何なら、完全に無謀な計画だったじゃないか。寧ろ必死になって旅行プランを考えてくれたアタシとデジタルに感謝すべきだと思うぞ。」

 

「うぐっ。」

 

「マイネル、そういう所だぞ。」

 

「す、すみません。」

 

「大丈夫大丈夫。次から気をつければいいんだからよ。」

 

「わかった。」

 

 しかし、隣にいるゴールドシップに思いっきり突っ込まれる。実際、マイネルハイウェイが考えた旅行プランは確かにスウェーデンにおける名所をほぼ網羅していたが、距離が大きく離れていたり、そもそも一日で巡るには数が多すぎたりと、無理のあるスケジュールとなっていた。そのため、ゴールドシップとアグネスデジタルが旅行プランを見直し、無理のないスケジュールを組み上げたのである。

 ちなみに、アグネスデジタルはというと・・・

 

「朝からマイネルちゃんとゴルシちゃんの尊いやり取りを見ることができて眼福でしゅ。」

 

朝から尊みの境地に入っていた。

 

 

 

 まず最初に訪れたのはストックホルムにあるヴァーサ号博物館。ここには、1628年の処女航海でストックホルム港に沈没した王室の軍艦、ヴァーサ号が展示されている。このヴァーサ号は、沈没から333年後の1961年に引き上げられ、長い復元の時を経て1988年から展示されている。

 この船を見たときに抱いた感想、それは

 

「綺麗・・・」

 

「なんて優美な船なんだ・・・これが本当に400年前の船かよ・・・・・」

 

「か、格好よすぎでしゅ・・・」

 

 よくしゃべるあの3人が完全に言葉を失うほどの美しさと荘厳さを持ってそこに佇んでいた。

 船体は数々の彫刻で飾られており、この船の豪華さにより一層華を添えている。本来あったはずの極彩色の塗装は長年の月日を経たことで色褪せてしまい、今では茶褐色一色だが、それでもこの船から滲み出るオーラはとてつもないものがある。

 この船が本当に約400年もの間海の底で眠っていたということが信じられないほどの美しさだ。

 しばしの間言葉を交わすこともなくこの船が持つ独特の魅力に惹かれ、見入ってしまった3人であった。

 

 

 

「いや、何て言えばいいんだろう。ただただ、あの船は何か違う。絶対的な何かがそこにあり、私たちに何か語りかけてくるようだった。」

 

「流石にこのアタシでも言葉が出なかったぜ。何か、強大な力に謁見しているような、そんな気持ちになるくらい、あの船は凄かったぜ。」

 

「私もです。特にあの彫刻群に一番驚きました。あんな船は漫画や映画でしか見たことがありません。でも、そこにある彫刻の数々の素晴らしさと言ったらもう・・・本当に言葉が出ないとはこんなことだと思います。そういえば、約400年も前に掘られたウマ娘ちゃんの彫刻を見つけたときは昇天しかけました。いや、昇天しました。」

 

 ヴァーサ号博物館でヴァーサ号の魅力に釘付けになった3人は、レストランで昼食をとりながら、ヴァーサ号について感じた感想をそれぞれ述べていた。共通していたのは、ヴァーサ号がとてつもない魅力を持つ船だと感じたことである。

 ちなみに、今いるレストランはガムラスタンと呼ばれるストックホルムの旧市街にある。名前をパッと聞いただけではガラムマサラに聞き間違えそうなこの場所は、ストックホルムの真ん中にあるスターズホルメン島と呼ばれる島にある地区で、中世の建物と町並みがそのまま残っている。路地は複数に入り組んでおり、一歩足を踏み入れれば、そこはまるで迷宮のような路地と荘厳な町並みが出迎えてくれる。

 昼食を取った3人は、このガムラスタンを散策することにした。

 

「こっちには雑貨屋さん、あっちには喫茶店、あそこにはケーキ屋さんがあって、あ、あとあそこでクリスマスマーケットもやっている!どこから巡ろうかな~♪」

 

「というかマイネル、お前、何か食いたいだけじゃないのか?何だかパックイーン化が進んできているぞ。少し体重に気をつけたらどうだ?」

 

「ゴルシ、細かいことは気にしちゃダメダ~メ。」

 

「そういう問題じゃないんだけどなあ・・・。」

 

 マイネルハイウェイは完全にウキウキである。ゴールドシップが体形について気にするよう注意するが、そんなことは知らないと言わんばかりに2人を連れて店巡りを始めた。

 

 

 

一方その頃・・・、熱海温泉にて。

 

「誰がメジロパックイーンですか!私はメジロマックイーンですわ!!!」

 

「?どうされたのですか、マックイーンさん。」

 

「ハッ!い、いえ。何でもありませんわ。ただ、どこからか謎電波を受信したようでして・・・」

 

 ゴールドシップのマイネルハイウェイに対する注意を受信したマックイーンとそれを不思議がるイクノディクタスの姿があった。

 

 

 

「ふ~♪みんなへのお土産も買えたし、スウェーデンならではのスイーツも食べることができたし、最高だったな♪」

 

「お前さん食い過ぎじゃねえか?それで夕飯入るのか?」

 

「ゴルシ、大丈夫だよ。なんたって、スイーツは別腹だもんね。」

 

「大丈夫かなあ・・・。」

 

数時間で、マイネルハイウェイたちはガムラスタンにある様々な店を巡った。トレセン学園のみんなへお土産を買ったり、スイーツのお店を見つけるとすかさず実食しながらお店巡りを続けていた。

 

「お、そうだ。」

 

 ここで、ゴルシが何かを思いついたような顔をし、こう言ってきた。

 

「路地裏巡りしてみないか?」

 

と。

 

「いや、今更何でなのさ。別にメインストリートは巡ったんだし、もういいんじゃない?」

 

 これに、マイネルハイウェイは苦言を呈した。何故なら、ガムラスタンの裏路地は複雑に入り組んでおり、下手すると迷子になるからだ。何ならお土産の袋が両手に下がっている。今からさらに散策するのはちょっと気が引けた。

 

「分かっていないな~マイネルは。いいか、こういう裏路地っつうもんはな、迷子になってなんぼなんだよ。迷子になっていざ道を振り返ると、そこには見たことのない景色が広がっているもんなんだ。」

 

 しかし、ゴールドシップは裏路地で迷子になってこそ、その街の別の姿が見えると説いた。

 

「じゃあまあ、ゴルシが言うなら。」

 

 マイネルは渋々という形で裏路地に足を踏み入れた。今度はゴルシが2人を率いる番である。

 

 

 

「うわあ・・・!!!」

 

「これは・・・確かに凄いです!」

 

「だろ、アタシの言ったとおりだろ?」

 

 しかし、実際に裏路地に入ってみると、そこはまさしく別世界。人通りの多い表通りとは違い、裏通りは人通りがほとんどなく、静寂のみがその空間を支配していた。基本的に道幅は狭く、場所によっては90センチしか幅のないところだってある。ただ、中にはこぢんまりとした店の看板もちらほら見える。こんな裏路地にも店が出ているのか、と驚いたマイネルハイウェイであった。

 この日はガムラスタンを巡った後にホテルに戻り、次の日に備えて早めに寝ることとなった。

 

 

 

 翌日。この日初めて訪れた場所はストックホルムコンサートホールである。ロイヤル・ストックホルム・フィルハーモニー管弦楽団率いるクラシックコンサートの本拠地として有名だが、このコンサートホールはもうひとつの方で世界的に有名なコンサートホールとして知られている。それは、

 

「いや~、これがストックホルムコンサートホール。流石ノーベル賞の授賞式が行われるだけがあるぜ。余裕の豪華さだ、格が違うよ。」

 

そう。ゴールドシップが言ったように、スウェーデンが誇るノーベル賞授賞式の執り行われる場所なのだ。現在、マイネルハイウェイたちはガイドツアーでコンサートホールを回っている。

このコンサートホールは経歴だけなく内装も豪華だ。各所に飾られている彫刻はスウェーデンを代表する作家の作品で、壁や柱にも装飾が施されている。

昨日のヴァーサ号博物館に続き、内装の豪華さと経歴に驚きっぱなしの3人だった。

 

 

 

次に訪れたのは、ノーベル博物館。ノーベル賞の聖地とも言える場所で、ノーベル賞に関する様々な情報がたくさん展示されている。ちなみに、建物も歴史のあるものとなっている。なお、本日の昼食もここのレストランで取る予定だ。

実は、ここをリクエストしたのはあのゴールドシップ。雑学に強いゴールドシップは、更なる知見を求めるべく、この博物館に行きたいとリクエストしたのだ。

 

「なるほど、これがアルフレッド・ノーベルの前半生・・・。ふむふむ。」

 

「いやあ、この知識は初めて知ったな。今後何処かで使えそうだぜ。」

 

「ウマ娘ちゃんがそこかしこに!日本のウマ娘ちゃんもいいですけど、スウェーデンのウマ娘ちゃんもかわいい・・・はあ、しゅき。」

 

 3人とも、館内の展示品を全て説明も含めて見て回っていた。どれも非情に素晴らしいものばかりで、3人のノーベル賞に対する知見がより深まったと言えるだろう。だが、この博物館の特色はそれだけではない。なんと、この博物館のレストランでは、ノーベル賞の授賞式後の晩餐会で出されるアイスクリームを食べることができるのだ。しかも、そのアイスクリームには通称「ノーベルチョコレート」と呼ばれる、ノーベル賞のメダルを模したチョコレートが付いている。さらに、このチョコレートはこの博物館と晩餐会が行われるストックホルム市庁舎でしか購入することのできない「限定商品」なのだ。

 そうなったら、限定という言葉に弱い日本人は何をするか。答えは単純明快である。

 

「「「このチョコレートください!!!」」」

 

 ノーベルチョコレートをお土産に買うことである。

 

 

 

 ノーベル賞について知見を深めることができただけでなく、さらにノーベルチョコレートをお土産に買うことができた3人は、本日最後の目的地、ストックホルム市庁舎へと向かった。

 ここは、ノーベル賞の授賞式の後に行われる晩餐会とパーティーが開催される場所として知られている。「青の間」と呼ばれる場所で晩餐会が、「黄金の間」と呼ばれる場所でパーティーが開催される。なお、これらの場所はツアーに参加しないと見ることができない。

 いざツアーに参加し、青の間と黄金の間を見た3人は、この旅で何度目か分からないほどの驚きに襲われた。

 

「青の間って言うんだけど、全然青くないんですね。」

 

「なんだな。こりゃゴルシちゃんもびっくりだぜ。」

 

「青と言うけど実は青灰色。そこのシブさがまたいいですねえ!」

 

 青の間は、実は青色の空間ではない。青というのは青灰色の石畳から来ているのだ。普通のレンガが壁の装飾に使用されている。しかし、天井の高さと相まって、ある種独特な魅力を放つ場所となっていた。

 

「逆にこっちは文字通り金色なんですね。」

 

「金どころか柱まで全て金色じゃねえか。こりゃ相当時間がかかったんだろうな。」

 

「あ!モザイク画の中にウマ娘ちゃんを発見!!!」

 

 黄金の間は、文字通り柱も含めて壁面が黄金色のタイルで装飾されている。黄金色のタイルと、そのタイルアートが織りなす空間の素晴らしさにしばし時を忘れて魅了されていた。

 この日の晩飯は、市庁舎にあるレストランで頂く。このレストランでは、ノーベル賞の授賞式後に行われる晩餐会で出されたメニューと同じ物を食べることができる。要予約だが、マイネルハイウェイは折角スウェーデンまで行くならば食べてみたいと考え、予め予約していたのだった。

 絶品料理に舌鼓を打ちつつ、この日の観光は終わりとなった。翌日は最終日をなる。果たしてどのような日になるのだろうか。ちなみに、このレストランで料理を頂くため、メジロマックイーンにテーブルマナーをみっちり扱かれたのはここだけの話である。

 

 

 

 3日目。この日がスウェーデン観光の最終日である。なのだが・・・

 

「おいマイネル、何でアタシたちはサウナの中なんだ?」

 

「え、そりゃ寒中水泳するからだけど?」

 

「そう簡単に言ってくれるけどさぁ。アタシ寒いの苦手なんだよ。それ分かってやっているの?あと水着のサイズどうやって測ったんだ?完全にピッタリじゃねえか。」

 

「いや。初めて知ったけど。あとサイズは目測だよ。見れば大体3サイズが分かるんだよね。私。」

 

「ああそう。ならいいんだけどさ、何で寒中水泳やろうと思ったわけ?」

 

「いや、北欧と言ったら寒中水泳かな、と思ってさ。」

 

「発想が安直すぎだろ!」

 

「いや~それほどでも~。」

 

「褒めてないっ!あとお前の目測変態すぎだろ!!!」

 

 寒中水泳のために水着を着て絶賛サウナの中で暖まっていた。ちなみに、アグネスデジタルは

 

「うへへ。ウマ娘ちゃんと寒中水泳。うふふ。」

 

 と、完全に絶好調だった。ちなみに、マイネルハイウェイは緑と赤のフリルがついたビキニ、ゴールドシップは赤と白のビキニ、アグネスデジタルは赤と青と黄のフリルがついたビキニを着ている。なお、水着のサイズはマイネルが目測し、2人に合うものを見繕ってきたのだった。何ならこの日渡したのである。ゴールドシップがびっくりするのも無理はない。

 

「そういやさ、」

 

「ん?」

 

 ここで、ゴールドシップが質問した。

 

「何でアタシと組んで旅行しようと思ったんだ?別に他にも友人はいただろ?」

 

 ゴールドシップが言うとおり、マイネルハイウェイはゴールドシップ以外にもたくさん友人がいる。しかし、その中で何故自分を選んできたのか、気になっていた。

 

「ああ、そのことね。簡単なことだよ。」

 

 マイネルハイウェイはそう言うと、自然な流れでアグネスデジタルを自分の膝の上に乗せた上で、こう言った。

 

「ゴルシが自分にとっての初めての後輩だったからだよ。それ以外には何もないよ。」

 

「初めての・・・後輩。」

 

「そ。私は一応トレーナーさんが戻ってきてからのチーム・スピカの最古参メンバーだけど、その私に初めてできた後輩がゴールドシップ、貴女だったんだよ。スピカの後輩はいっぱいいるけど、私にとって初めての後輩は、ゴルシ、貴女しかいないのよ。最初に出会った時から、イタズラするとき、エアグルーヴから逃げるとき、仲良く説教を受けるとき、初めてレースに出走するとき、G1に初出走するとき、初勝利したとき、初G1制覇したとき、負けたとき、その全てで感動と悲しみを分かち合った。」

 

「マイネル・・・」

 

「ゴルシのどんな悩みでも、私は聞いたし、逆に私の悩みもたくさん聞いてもらった。何より、私が怪我で走れなかった分の夢も載せて走ってくれたように見えたんだ。だから、この旅について発表されたとき、ゴルシしかいない、あの子とならいい旅ができるな、と思ったから呼んだんだ。長くなっちゃったけど、これが理由だよ。」

 

 マイネルハイウェイがゴールドシップを呼んだ理由、それは自身にとっての初めての後輩チームメイトだったからだった。この頃のチーム・スピカはトレーナーとマイネルハイウェイ、そしてゴールドシップの3人だけ。だから、どんな時も常に喜び合い、悲しみあった。そんな盟友とも言える彼女と一緒に旅をする以外、マイネルハイウェイの頭の中には選択肢はなかったのだった。

 それを聞いたゴールドシップは、

 

「マ“イ”ネ“ル”、“あ”り“が”と“う”~“」

 

 号泣してマイネルハイウェイに抱きついた。

 

「マイネル、アンタがそこまで考えてくれていただなんてアタシは分からなかった。そう考えると、アタシは本当に幸せなウマ娘だよ。マイネル、この旅に誘ってくれて本当にありがとう。」

 

マイネルハイウェイは、そんなゴールドシップの頭を泣き止むまでずっと撫で続けていた。なお、アグネスデジタルはマイネルハイウェイとゴールドシップに挟まれる形になったので、無事に尊死していた。

 

 

 

 しばらくして、ゴールドシップが泣き止み、アグネスデジタルが復活したところで、3人は外に出て寒中水泳することになった。

 しかし、ゴールドシップは寒いのが苦手なので、マイネルハイウェイに押される形となっていたが。

 

「いいか、マイネル、押すなよ。絶対に押すなよ!」

 

「はいはい。絶対に押さないから大丈夫だよ。」

 

「はいは一回で十分だ!本当に押すなよ!!!」

 

 ゴールドシップは絶対に押してもらわず、自分の力で水に入ろうと思っていた。だがしかし・・・

 

「はいどーん。」

 

「ちょわっ、まだ心の準備が!!!」

 

 心の準備が済む前にマイネルハイウェイに押されて冷たい水の中に落とされる形となってしまった。

 

「なんだ。ちゃんと入れるじゃん。」

 

「うっせいやい!マイネルが突き落としたんだろうが!」

 

「ハテサテナンノコトヤラ」

 

「マ~イ~ネ~ル~。やりやがったな~。お返しだ!」

 

「ちょわっ!!!」

 

 マイネルハイウェイに突き落とされたゴールドシップは、お返しと言わんばかりにマイネルハイウェイの腕を引っ張って冷たい水の中に引きずり込んだ。

 

「ちょ、何してくれんのよ!」

 

「へへっ、これでおあいこだぜ。」

 

「だったら水をかけてやる!それっ!!!」

 

「やったな!お返しだぜっ!!!」

 

 水の中に引きずり込まれたマイネルハイウェイは当然ながら怒り心頭である。最早逆ギレなのだが、お返しと言わんばかりにゴールドシップに水をかけた。それに対する形でゴールドシップも水をかけ返す。2人とも手加減抜きの本気である。

 

「ウマ娘ちゃん同士の水のかけ合い、これは参加するしかないです!」

 

 そこへ、アグネスデジタルが飛び込んできて、水のかけ合いとなった。ウマ娘はどんなことでも勝負になると途端に強くなる。水のかけ合いも真剣そのもの。この後、サウナに戻るまでひたすら水をかけあったり、泳いだりした3人だった。

 

 

 

 いよいよスウェーデンの地を去るときが来た。時間は夜の9時。勿論、帰るのはちょっぴり寂しく感じた3人だったが、意を決して飛行機のタラップを登り、スウェーデンの地を後にするのだった。

 なお、帰りの機内ではほとんど寝ていた、何故なら、帰る前にあれほど寒中水泳でバ鹿騒ぎしたのだ。疲れも相当溜まっていてもおかしくない。そして、日本に着いたのは日本時間で午後4時。その後、寮に戻った3人はその日は速攻で布団に向かい、泥のように眠った。

 ・・・実はこの日、マイネルハイウェイたちが帰ってくる前にもう1機のURAロゴが施されたエアバスA380が羽田に降り立っていたのだが、それを3人が知るのは後のことである。

 

 

 

 あの旅行から数週間後。理事長室で秋川やよい理事長は頭を抱えていた。

 

「あああああどうしたものか。」

 

「理事長、どうかされましたか?」

 

 秘書の駿川たづなが聞く。

 

「うむ、たづな。良いニュースと悪いニュースがある。どちらから先に聞きたい?」

 

「では、良いニュースから。」

 

「うむ。良いニュースはだな・・・」

 

 理事長は一言置いた後、こう答えた。

 

「実は、マイネルハイウェイ君、ゴールドシップ君、アグネスデジタル君が纏めてくれたレポートはどれも素晴らしい。そして何より、アグネスデジタル君の写真がとてもいい物ばかりなのだ。これぞまさしく理想のレポートというやつだろう。」

 

 そう、マイネルハイウェイたちが纏めたレポートはとても読みやすく、それでもってアグネスデジタルが撮影した写真はどれも写りがよいものばかりだったのだ。まさしくレポートのお手本とも言うべき仕上がりだった。

 

「では理事長、悪いニュースというのは。」

 

「うむ、実は・・・というより、この請求書を見た方が早い。」

 

 そう言い、理事長はたづなに書類の山を渡した。

 

「こ、これは?」

 

「これは、マイネルハイウェイ君たちがこの前の旅行で使用した費用の請求書だよ。」

 

 そう言う理事長の表情は、とても曇っていた。

 何が理事長をこうさせたのか、たづなは、請求書をそれぞれ確認していった。

 

「こ、これは・・・」

 

 そこには、学生が旅行で使うにはあまりにも高すぎる金額が書かれていた。一番高かったのは、旅客機調達費用だ。エアバスA380 2機を合わせて1000億円。1機あたり500億円である。旅の後URAに寄贈するということを考えても、流石にやりすぎだと見られてもおかしくない額だ。

 このあまりにもおかしすぎる額面に、たづなでさえも開いた口がふさがらなかった。

 この後、2機のエアバスA380はこの後予定通りURAに寄贈された。そして、この後、中長距離向けの旅客機の調達も行われ、海外遠征などで数々の名ウマ娘を送り届け、その勝負の行方を見届けることになる。

 

 

 

 なお、マイネルハイウェイたちはお土産をみんなに配ったが、その途中で

 

「私はメジロパックイーンではないですわ!メジロマックイーンです!!!」

 

 と言ったメジロマックイーンに関節技を決められたりしたが、それ以外は特に何事もなく配り終えた。

 最近だと、マルゼンスキーが、時折「タッちゃん」ではなく、「ジェメちゃん」と呼ばれる真っ赤で黄色のラインが引かれた車に乗っている姿が目撃されているのだとか。

 理事長に提出したレポートも無事に理事長経由で旅行会社の方へと引き渡され、「第1回ウマ旅!」に掲載された。なお、ボリュームが凄まじいので、他のレポートに比べて少し厚みがあった。

 なお、この旅行を機に理事長とたづなさん、そして生徒会中枢の胃薬の量が増えたのはこの旅行のせいではないと思う。多分・・・。

 さて、「第2回ウマ旅!」が開催されることになったら、マイネルハイウェイたちはどのような旅をするのだろうか。これからが楽しみである。

 

 





はじめまして。Budd Pioneerと申します。まずは、このような作品を読んで下さり、ありがとうございます。
 スウェーデンには実際に行ったことはありませんが、自分が行くなら最低限これらの観光名所を巡ってみたいです。これらの他には、アーセナル戦車博物館にも行ってみたいです。
 また、今回は金に物を言わせて購入したエアバスA380(ロールス・ロイス トレント970搭載モデル)はもう製造が終了していますが、こちらの世界線はまだ製造を継続しているという前提で書いています。
 実は、今回の行き先であるストックホルム・アーランダ空港にはエアバスA380は飛来実績はないと思われますが、滑走路の距離などはクリアしていると思うので、着陸しても問題ないと思い、今回は着陸させてみました。着陸できなかったらすみません。ちなみに、羽田空港には飛来実績があります。
 この旅は、主人公がマイネルハイウェイ、ゴールドシップ、そしてアグネスデジタルとなっています。
 マイネルハイウェイは、自分が馬を好きになるきっかけを与えてくれた子です。戦績は5戦1勝で、2度の屈腱炎により競馬を引退してしまいましたが、その後は乗馬として余生を送っています。自分は幼い頃にこの子に会っており、馬を好きになるきっかけを作ってくれました。一番下に彼女に関する設定が書いてあります。
 最後に、この作品を読んで下さり、本当にありがとうございました。



マイネルハイウェイ

誕生日:3月28日
毛色:青鹿毛
身長:176
B:97
W:61
H:93

 この話の主人公。アメリカ生まれ日本育ちで、額にコンマ型の独特な星を持つ。ウマ娘の中でも色々と大きい方にあたる。それこそ、二度見されるくらい。
 元チーム・スピカ所属だったが、怪我によりサポート科に転科し、今は障害バ術を専攻している。
 右耳にグリーンとレッドのリボンを巻いている。
 ゴールドシップほどではないが、いつもいろんなことを考えては周りをも巻き込んでいくウマ娘。あと、イタズラ好き。

マイネルハイウェイのヒミツ
 実は、有マ記念のモデルとしてポスターとPV(勝負服着用)に出演したことがある。
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