でも次の話はもっと遅くなると思います…。(エルデンリング)
「…クソッ…!何処も彼処も通れないとは…。」
私は今曜獣から逃げている。安全な場所を探し、廊下を走り続けては、見かけた扉が開かないかどうか試してみるという作業を繰り返している。とはいってもあれから結構時間が経っているので恐らく逃げ切れただろうが、油断はできない。しかしながらまた新しく問題が増えた。逃げたまでは良かった…だがそのせいでプーロとはぐれてしまい、その上逃げた先はどこもかしこも八方塞がり。理由は曜獣だったり扉が溶接されていたりと様々だ。
こんなことになるなら逃げずに隠れてその場をやり過ごせば良かった…。
~※~
「ねぇR、図書館についたらニンゲンのことについても教えてくれないかな…?本で読んだことはあるけど、それでもまだまだ知らないことがあるし…それにもしかしたら、知らなかったとはいえ貴方になにか失礼なことをしてしまうかもしれないし…。いいかな…?」
この新しい友人は曜獣の中ではかなり賢い方だろう。言葉を覚え、喋る。おそらくだが読み書きもできるだろう。そして礼儀正しい…のは元の性格などの影響だろうが、まあ兎に角、彼のことに関しては興味が尽きない。図書館に着いたら彼のことについてレポートでも書いて纏めてみるのもいいかもしれない。
「あぁ、勿論いいとも。しかし君はやはり賢いな。人間の言葉を理解し喋れるとは…。他の黒曜獣も君の様に喋れるのか?」
「いや、喋れるのはボクだけだよ。ボクは元々外の世界に興味があったからね。でも群れの皆は興味がなかったみたい。前に皆にも言葉を覚えさせようと文字を書いた紙を持って読み聞かせてみたんだけど…まあ…結果は失敗だね。それに喋れる様になってからは元々変わり者だったからか、群れから追い出されちゃったし…。」
彼が喋れるのは生まれつき知的好奇心が高かったのが理由らしい。
突然変異や進化の類とも受け取れるが…。
こういった存在から生物は進化していくのだろう…。非常に興味深い…。
そんなこんな話しているうちに廊下を抜け、バルコニーに辿り着いた。かなり高所にある為、風が強く、やたらと物が散乱していた。
おそらくここも暴動の際にバリケードでも作られたのだろう。散乱している大量のダンボールや鉄のコンテナは名残だろうか。私達はそれらを協力してどかし、何とか反対側扉まで辿り着いた。
その時だった。私たちが入ろうとしていた扉から一匹の曜獣が姿を現したのは。
灰色のヒョウ柄の体毛。こちらを見る碧眼。その眼は私の方をしっかり捉えている。獲物を逃すまいとする肉食獣の眼と相違ない。
「…! R!逃げて!」
プーロがそう叫び、それと同時に私は踵を返し、もと来た道へ走り出した。ダンボールの山をかき分け、入ってきた側の扉へ再び入っていった。扉へ入る瞬間、プーロがあの曜獣を食い止めている姿が見えた…。
すまないプーロ…しかし今は身の安全を確保せねば。彼の行動を無駄にするわけにはいかない。
~※~
「さてどうしたものか…。」
私は一先ず身の安全を守る為、唯一何らかの事情で塞がれていなかった会議室に入った。
扉を開け中に入り、そして速攻で扉を部屋にあった長いテーブルで塞いだ。取り敢えずこれで安心…かどうかは分からないが、一先ず腰を下ろせそうだ。次に部屋の中の安全確保だ。…見渡した限り何もいなさそうだが…油断は出来ない…。
しかし警戒していてもどうしようもないと思い立ち、転がっていた椅子を立たせ、座り込み今後どうすべきかを考える為、状況を整理する。今私がいるのは会議室だ。考えを巡らせるには丁度いい…。
「…駄目だな…。あまりいい考えが思いつかない…。」
考えを巡らせたが、結局この状況を打開するような策は浮かばなかった。そもそも相手は曜獣だ。強固な鎧を身にまとっていても隙間から侵入して寄生してくるような生物だ。そんな性質を持つ上、以外と移動速度も速く、擬態能力もあり、極めつけは並みの人間よりも力が強く知能も高い…。
そしてそんな奴らがこの部屋の外に、いや、この建物中に大量にいる。本当に匙を投げたくなる状況だ…。こんな時珈琲の一杯でもあればいいのだが…まあそんなものはなく…。
埒が明かないと私は腰を上げ、会議室を見て回る事にした。何か気になるものでも見つけてなにか思いつくかもかもしれない。
…とは言っても本当に気になりそうな物は特にない。気になったことはこの部屋が他の部屋と比べ綺麗なことくらいか。当時は誰もこの部屋に居なかったのだろうか?椅子や長机は転がっていたり、本来の位置からずれていたりはするが、比較的小奇麗な状態だ。
会議用のプロジェクターやその映像を映すプロジェクターシートも無事のようだ。
「…? プロジェクターの電源がついている…? …!映像が映し出されただと…?」
何気なしに見ていたプロジェクターだが、おかしなことに気づいた。
電源が入っており、起動していたのだ。不審に思い、調べようと近づいた瞬間プロジェクターが動き出し、映像を映し始めた。
「…聞こえているか? 聞こえていたら返事をしてくれ。」
プロジェクターシートに映し出された映像。そこに映っていたのは一匹の曜獣だった。赤い瞳、全身は白い毛に覆われ、獣耳は垂れている、曜獣としては何らおかしいところはない。だが他の曜獣と違うところが幾つか見受けられる。
一つ目は言葉を話していたこと。映像はリアルタイムで映し出されているようで、今も映像の中の彼は動いている。という事は今の声は彼が出したものなのだろうか。恐らく間違っていない筈だ、他の点と合わせて見ていけば…。
二つ目はその容姿だ。映像の彼はガスマスクを着けており、白衣らしきものを羽織っている。明らかに普通の曜獣ではなく、プーロのような知性を持った存在だ。でなければあのような格好をするだろうか。しかも身に着けているものはこの研究所で非常時や実験をする際に、着用が義務付けられていたものだ。現に私も同じものを着けている。
三つ目は言わなくても分かるが、機械を扱っている事だ。プロジェクターを遠隔起動するなど、そこら辺の曜獣ではとても無理だ。何よりあの問い掛けからして、こちらの動きを知っていた可能性がある。でなければこんなにピンポイントで会話に持ち込んでいるはずががない。
これは一体どういう事なのだろうか。…取り敢えず返事を欲している様なので声を掛ける。
「…あぁ、聞こえている…。早速で悪いが幾つか質問がしたい。君は何者だ? 見たところ曜獣のようだが。」
映像の彼へ問い掛ける。彼は少し悩んだような、困ったような顔をし、答えた。
「…この姿では知らないのも無理はないか…。私の声に聞き覚えはないか? …まぁ、知っている声とは少し違うかもしれないが…。」
彼の声に聞き覚えがあるか…無いといえば噓になる。私がこの研究所で最も仲が良かった人物…。…まさか…彼なのか…? 可能性はある…。というより、他の曜獣にしてはおかしな点と併せて、もう確定しているようなものだろう…。
「K…。お前か…?」
彼はその答えを待っていたと言わんばかりに微笑み、問いかけに答えた。
「あぁ…そうだとも…こんな姿になってしまったが。」
原作では冒頭で主人公が走っていた廊下とか会議室なんてないです。この小説独自の…というよりは捏造設定です。