ミーナの娘   作:のんのんぶらぶら

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8000m→34m

どこか遠くから、風の音が聞こえる。

無限に続くトンネルの出口から、気まぐれに運ばれてきたそよ風のような。

 

(あれ、わたし落ちてる?)

 

なんで落ちてるんだっけ?

気がついた時には独りぼっちで……クロステルマンさんの孤児院でママと出会ったんだ。

でもママはお仕事ばっかりで、あまり一緒にはいられなくて……そうだ、それで軍人になったらずっと一緒にいられるって、ウィッチになって、それで、ネウロイと戦って、ミサイルが爆発して、倒して……あれ。

なんで倒したのにわたしが落ちてるんだろう……?

 

耳を澄ますとインカムから悲鳴のような、何か訴えるような、声が聞こえるような。

それは何か、何かとても大好きな声だったような。

 

「ミオ!ミオ!お願い返事をして!貴方までいなくなったら私!」

 

(母さん?)

 

そうだ、ママ……ママだ!

そんな、ママから離れたりなんてしないよ

あのね、ママ、わたしネウロイを一人でやっつけたんだよ!もう立派なウィッチなんだよ、ねぇ、ママ。

どうしてそんなに叫んでるの?もしかして、また坂本さんのことを思い出したの?

なんで、いつもミオナを見てくれないの。どうして、どうしてミオナをまた

 

「…ひとりに……ないで…」

 

絞り出すようにそう言うと、もう声が出ない。

身体中の何かが枯れ果てているんだ。

視界の端が赤く染まっていって、指の一本でさえ動かすことさえできないや。

 

(あっ、地面だ)

 

そう、気がついたら目の前が真っ黒になっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

暗闇の中は水だった。生暖かく、息苦しくもない。ここには不思議な安心感がある。

 

(……死んだの?)

 

ぱっとそう考えると、女の声が聞こえた。

 

「あなたは生きつづける」

 

音源の方へ視線を向けると、深い青色の光が滲んでいる。

それは遠くにあるが手を伸ばせば届きそうな距離。

 

「あなたは……?」

 

「わたしはあなたの使い魔」

 

「ここは?」

 

「あなたが欲しいものを得られる場所」

 

わたしの使い魔らしい青色の光は抽象的なことしか話さない。

だけど、私は不思議とその全ての意味が理解できた。

そうだ、ここでは感覚に際限がないから。

 

「存在しないないものを理解することができるのね」

 

「気がついたのね」

 

「あなたはわたしだったのね」

 

あなたは使いまで、ここはわたしの固有魔法が生んだ空間。

全ては繋がっているから、わたしは胎内であなたとこうして会うことができたのね。

でもわたし、ママに会いに行かないといけない。

このまま留まってたら、ママは生きる理由を無くしてしまう。

 

「あら、貴方の存在がミーナ・ヴィルケの生きがいだというの?」

 

青い光は人の顔を作り出し、わたしにそう訊いてきた。

わたしの願いを叶える使い魔の癖に、随分と安い芝居をするものだ。

 

「そう、だからわたしがこのまま、ここにいたらママは死んじゃうから、行かなきゃいけないの」

 

わたしは12歳の姿でそう言い放つと、青い光はニヤニヤしながら言った。

 

「期待を煽るつもり?でもそれは現実じゃないわ。傲慢な願望よ」

 

「傲慢で結構、それは過去に実現させる願望よ。わたしは願いを叶えるもの」

 

「どうやって?」

 

「それは貴方が考えることよ」

 

「使い魔ってつらいわね」

 

「なに被害者面してるのよ、もう終わらせた癖に」

 

「ばれちゃった」

 

「目が覚めると、わたしはここでのことを忘れるのでしょう?」

 

「えぇ」

 

「じゃあ、もう起きるわ」

 

そう言って、身を丸めて目を閉じる

ありがとうね。

 

 

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