元の世界でありふれたマスターは異世界で家族をつくる   作:nightマンサー

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第13話 戦闘、義娘、召喚

 

 

 

 

 

ーーー銃声が響き渡る。

 

俺の手に握られているのはハジメの『ドンナー』を深い蒼色にした同じタイプの銃であり、名は『ヴァッサー』。俺はハジメのように『纏雷』が出来ないので燃焼石による通常の銃だが、それでも充分過ぎる威力がある。

その銃弾が、小隊長の左脚の膝を抉り切断した。

 

「あ?ーーーーーーああぁぁぁ!!?」

 

一瞬の硬直後、左脚を半ばから失った事により、地面に倒れ込んで絶叫する小隊長。

他の兵達は何が起こったか分からず、しかし小隊長の左脚が弾け飛んだことだけは揺るぎない事実として認識し驚愕した。

 

「……なぁ、誰を犯すって?」

 

そんな中、俺の声がやけに響いた。

声に反応して小隊長含めた帝国兵達がこちらに視線を向け、同時に顔が恐怖に染まった。

隣のハジメもかなり驚いた様な顔をしているから、多分今の俺の顔は相当なんだと、まるで他人事のように思いながら再度小隊長に照準を向ける。

 

「誰の、妻を、犯すのを見せつけるのかと聞いているんだ!!」

 

 

ーーードパンッ!!

 

再度、銃弾が小隊長を襲う。

今度は右腕が抉り飛ばされ、再び小隊長が痛みと恐怖に絶叫する。

 

「あぁああぁぁぁぁ!?ぐぞぉ、お前ら!何してる!俺を助けろ!!こいつ等を殺せぇぇ!!」

 

「黙れ」

 

他の兵士達に助けを求めつつ殺せと命じる小隊長へ、更に1発。

今度は左腕を抉り飛ばされた小隊長は既に出血と恐怖により虫の息だ。

そうして最後は小隊長の眉間に照準をーーー

 

 

 

 

 

 

「我が夫」

 

瞬間、俺はモルガンに後ろから抱き締められた。

 

「モル、ガ、ン…?」

 

「私のために怒ってくれるのは、とても喜ばしいです。ですが、それに飲まれては今後貴方の傷になります」

 

モルガンの言葉に、怒りで昂っていた感情が落ち着いてくると同時に人を撃った事への恐怖が湧き上がってくる。視線を小隊長へ向けると、そこには恐怖で表情が酷く歪み白目を剥いた男の死体。出血死かショック死か定かではないが、ただ分かることは間違いなく、俺が殺したという事実ーーー

 

「お、俺、人を……」

 

死体と言う事実から目を逸らそうとするのを、モルガンが止める。

 

「我が夫、酷なことだとは分かっています。それでも、事実から目を逸らさぬよう。この先で、貴方の心が壊れてしまわぬ様に、ゆっくりでいいので受け止めて」

 

優しくも厳しい言葉に奮起され、俺は必死で現実を受け止めようとする。

 

 

 

 

 

そうして俺が落ち着いたのは、ハジメが他の帝国兵士達を始末仕切った後だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー草木も眠る丑三つ時。

 

紅いヒールを軽快に鳴らしながら【フェアベルゲン】をとある目的で散策しているのは妖精國女王の後継者ーーーバーヴァン・シー。

帝国兵を始末した後、カムの案内により樹海にある亜人族の国【フェアベルゲン】に到着した慎夜達は勿論歓迎されなかった。何せ慎夜達は人間であり、亜人からは悪印象しかない、更には逃亡した兎人族を連れて来たのだから当たり前だろう。しかし、襲ってきた虎人族を撃退後、事態を聞いた【フェアベルゲン】の長老の1人であるアルフレリック・ハイピストにより【フェアベルゲン】に招かれることとなった。

どうやら長老にのみ継承される口伝に迷宮攻略者を客人として扱う決まりがあったのだとか。無論長老の中には反発する者もいたが、ハジメがあっさりノックアウトして黙らせていたのは傑作だった。また迷宮があると思わしき大樹周辺は霧が酷く、次の霧が薄まる周期まで10日掛かるというので暫く【フェアベルゲン】に留まることになった。

 

(お母様なら、霧なんて快晴と何ら変わらない筈。なら理由はーーー)

 

割り当てられた寝床から離れた草木が茂る場所で、一人の男が蹲っていた。

 

「おい、こんなとこで何やってるクソザコマスター?」

 

「……バー、ヴァン…シー?」

 

そこに居たのは前世と今生における唯一無二のマスターの慎夜であるが、現在その顔色は悪い。

彼の現状はモルガンより聞き及んできたが、落ち着いたと聞いていたが想像より酷いものだとバーヴァン・シーは思った。

 

「そんな辛気臭い顔見せられると、こっちまで気が滅入るだろ」

 

「ご、ごめん。モルガンに言われて、受け入れたと思ったんだけど、少し虚勢張ったみたい…」

 

恐らく寝れないのに加え顔が酷いから此処まで抜け出してきたのだろうに、アタシの方が追ってきたのに酷い言い草である。

だが、こんないつもの軽口に返ってくるのは覇気の弱い声。

 

 

ーーーアタシにまで見栄を張ってんじゃねぇ

 

心配するから

 

瞬間、私はソイツの頭を引っ掴んで膝に乗せた。

 

「ちょ、え?バーヴァン・シー?」

 

「何1人で勝手にトラウマ作ってんだよ。

 

 

 

ーーーてめぇのトラウマは全部アタシがつくんだよ(・・・・・)。だから、それ以外で悩むなんてこと、許されると思うなよ、マスター?」

 

アタシの言葉に目を見開くマスター。

 

「取り敢えず、この状態をお母様に見られるまで続けてやるよ。こんな状況お母様に見られたら、きっついお仕置きされるかもなぁ?」

 

「……それは、確かに、怖い……なぁ…」

 

その言葉を最後にマスターの瞼が閉じ、次第に寝息が聞こえてくる。

 

「ったく、世話の焼けるクソザコ」

 

月明かりに照らされたマスターの寝顔を眺めつつ、起きた時、からかってやろうと心に決めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【フェアベルゲン】での10日はあっという間に過ぎた。

その間、俺は基本療養していたーーーモルガンや恵里が励ましてくれたが、多分1番はバーヴァン・シーだった気がするーーーのだが、その間に何故かハウリア族の皆が戦闘民族のような変貌を遂げていたり、シアが旅に同行することが決まってハジメに告白していたりと色々起きてた。

そうして現在、大樹の前までやってきたのだがーーー

 

「これがアルフレリックが言っていた石板か?」

 

「そうっぽいな」

 

石版には七角形とその頂点の位置に7つの文様が刻まれていた。その1つはオルクスの部屋の扉に刻まれていたものと全く同じものだ。

 

「ハジメ、裏側見て」

 

ユエに言われ石板の裏側、そこには、表の7つの文様に対応する様に小さな窪みが開いていた。

ハジメがその中のオルクスの文様の窪みにオルクスの指輪を嵌めてみると、石板が光りだし文字が浮かび上がる。

 

『四つの証、再生の力、紡がれた絆の道標。

全てを有する者に新たな試練の道は開かれるだろう』

 

「兄さん、これは……」

 

「4つの証は、多分他の迷宮の事だろうな」

 

「再生の力って……私?」

 

「いやそれだと不公平過ぎだろ。神代魔法の中に再生魔法みたいなものがあるってことじゃね?」

 

「恐らくそうでしょう。紡がれた絆の道標というのは……」

 

「それは恐らく亜人族の協力が得られるかどうかだと思います!普通亜人族に道案内してもらうって特例中の特例ですから」

 

「なるほど、結構条件多いな」

 

モルガンが居れば資格無しでも迷宮に入れるとは思うが、指定能力があるのならもしかしたらそれで攻略するかもしれないし無理に突入して不測の事態が起こるのも避けようということで、この迷宮は後回しにすることに結論づけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして先に【ライセン大渓谷】の迷宮を攻略するために、1度食料等の調達をするために近くの町へ行くことに決めた後ーーー

 

「早速で悪いけどシア、髪の毛くれない?」

 

「お、乙女の命より大事な髪をどうするつもりです!?」

 

言葉を端折り過ぎてシアから距離を取られていた。

 

「すまん、言葉足らずだった。一本でいいんだ」

 

「本数の問題ではなく、欲しがることが問題ですよ!?ハジメさんにならいくらでもあげますけど!」

 

「おい、しれっと俺を巻き込むな」

 

「あ、兄さんもしかして触媒にするつもり?」

 

恵里のフォローに相槌をうつ。

 

「触媒?もしかして、道中お聞きしたモルガンさんやバーヴァン・シーさんを召喚したという?」

 

「そうそう。俺とモルガンの髪で縁を、そしてシアーーー亜人族の髪の毛なら、バーヴァン・シーの時と同じで呼べる筈だ」

 

「亜人族ってことはもしかして、あのイヌコロ呼ぶってことか?」

 

俺の言葉にバーヴァン・シーは誰を呼ぶ気なのかピンと来たようだ。シアから一本髪の毛を貰い、召喚陣を地面に描く。

 

「バーヴァン・シーの思ってる人物だよ。まぁ正直気が多いって思われても仕方ないんだけど……あの結末知ってると、ね」

 

召喚詠唱(限定)と、今までモルガンとバーヴァン・シーを呼べたことを考えると、恐らくは2部6章のサーヴァントが呼べるというのが俺とモルガンの見解だ。

それを聞いた時に、やはりというか何というか…彼女達も召喚したいと考えたわけだ。

 

「私も、大事な家臣には幸せになってほしいというのが本望です。勿論、言わずもがな正妻は私ですが」

 

「ま、まぁ、お母様が良いなら……いや、本当にいいのか?」

 

「と、兎に角、始めるね!」

 

バーヴァン・シーの気が変わって邪魔されないうちに、青リンゴ液(仮名)を飲み干し、『召喚詠唱(限定)』スキルを発動させる。

 

「素に銀と鉄、礎に石と契約の大公。

降り立つ風には壁を。四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」

 

今回もバーヴァン・シーの時と同じく狂化の節は入れない。呼び出すクラスは最優と名高いセイバークラスだ。

 

「汝の身は、我と女王の下に。我が命運は、汝の剣に。

前世の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」

 

「汝、三大の言霊を纏う七天。

抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ!」

 

最後の詠唱を終え、召喚陣が眩く輝き辺りを覆い尽くし7人は目を覆った。

暫くして光が収まり召喚陣に目を向けると、一人の騎士が佇んでいた。

 

 

ーーー黄金に煌めくブロンドの髪と亜鈴の触角。

 

 

ーーー逞しい体躯にそれを包む鎧と大剣。

 

 

ーーー妖精國にてモルガンから妖精騎士ガウェインの称号を授かった忠臣。

 

 

 

「サーヴァント、セイバー。バーゲスト。

召喚に応じ参上致しました。

この命尽きるまで、マスターと女王陛下に忠義を尽くします」

 

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