元の世界でありふれたマスターは異世界で家族をつくる   作:nightマンサー

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第18話 ライセン大迷宮 中

 

 

 

 

 

【ライセン大迷宮】に轟音が響き渡る。

その轟音の原因は一人の美しい金髪の美女が、その手に持つ大剣で迷宮の壁を悉く粉砕しているからに他ならない。

 

「いやまぁ、これは何というか……凄いな」

 

俺の呟きは金髪の美女ーーーバーゲストが、まるで障子に穴を空けるかのような気軽さで、迷宮の分厚い壁を破壊する音にあっさりと掻き消された。

 

「あっはっは!相変わらずの馬鹿力じゃん!」

 

そんな俺の隣では、この作戦立案者であるバーヴァン・シーが大笑いしている。

 

「力技で迷宮の壁を破壊して、一直線に最奥まで向かうとは。こりゃ迷宮創ったミレディも涙目だろうな」

 

「バーゲストさん、すっごいパワフルだね」

 

「……シア、同じこと出来る?」

 

「ハジメさんから頂いた武器で、壁を壊すことは出来ますけど、流石に厳しいですよ…」

 

目の前の光景にハジメ達もそれぞれ感想を溢す。

その間もバーゲストは壁を粉砕、その余波で罠すら消し飛ばし、【ライセン大迷宮】は徐々に更地化が進んでいた。

 

「バーゲスト、休まず進んでるけど大丈夫?」

 

「ご心配頂きありがとうございます、マスター。ですが、この程度で疲れていては妖精騎士は名乗れません。それに、マスターから頂いた聖杯もありますので」

 

そう言ってバーゲストは自身の胸に手を当てる。

前世の俺はバーゲスト含む妖精騎士の皆をレベル100にしている。つまり、1人につき聖杯を5つ所持しているのだ。モルガンと同じく2人とも受肉に1つ使用しているので、現状の手持ちは4つだがそれだけあれば魔力には事欠かないだろう。

 

「いやほんと、俺ってマスターとしての存在意味はほぼないな」

 

「何を言っているのですか、我が夫。私の隣にいる、それ以上に重要なことなどないですよ」

 

バーヴァン・シーとは反対側の隣で、そう宣言するモルガンとは迷宮入口からずっと腕を組んでおり、否応無しにモルガンを意識してしまう。

 

「えっ、と……一番奥まであとどれくらい?」

 

「目の前の壁が最後ですよ、我が夫」

 

モルガンの言葉と同時にバーゲストが壁を破壊した。

破壊した先は広い空間となっており、様々な形や大きさの鉱石で出来たブロックが浮遊し不規則に移動する完全に重力を無視した空間だった。

 

「こういうのゲームではよく見るけど、現実で見ると迫力あるな」

 

「だな。んで、敵さんもお出ましだ」

 

ハジメの言葉に視線を向けると、大剣と盾を装備した騎士甲冑がこちらに飛行してきている。

 

「あれ?此処だと魔法が分解される筈だけど、あれどうやって飛んでるの?」

 

「あれは重力魔法で、物体に掛かる重力を任意の方向に変えて飛んでるように見えるだけですね」

 

「なるほど。あれって飛んでるというよりは俺達に向って落ちてきてるって訳だね」

 

「ま、敵なら殺すだけだ」

 

恵里の疑問にモルガンの答え、俺がそれを要約する。

ハジメはシンプルな結論で『ドンナー』を構え、引き金を引く。弾は甲冑の1体に命中し姿勢を大きく崩すが、破壊までは至らなかった。

 

「距離が離れていたのもあるが、やっぱ『纏雷』が使えないと威力が落ちるな」

 

「『纏雷』も出力系の魔法だから仕方ないよ。そもそも此処ではそれが普通なんだろうけど……」

 

俺はそう言葉にし、隣でサラッと魔法を行使して甲冑達を薙ぎ倒すモルガンを見て、やはりモルガンは規格外だなと改めて思う。

 

「取り敢えず、奥に向かおう。【オルクス大迷宮】と同じなら、多分ボス的なのが待ち構えてる筈だし」

 

俺の言葉に皆賛同し、浮遊するブロックを足場に奥へと進む。因みに身体能力的に恵里と俺はそれぞれバーヴァン・シーとモルガンに抱えられている。

そうして幾つ目かのブロックに跳び移った時ーーー

 

 

 

ズゥガガガン!!

 

 

「うおっ!!?」

 

頭上で激しい衝突音が響き渡る。

見上げるとそこにはブロックがこちらに進もうとしているようだが、見えないバリアみたいなものに阻まれて俺とモルガンに届いていない。

 

「魔力障壁は常に展開しています。出来る妻ですので」

 

「た、助かったよ。ありがと、モルガン」

 

向かってきたブロックを破壊した所で少し離れていた皆が集まってくる。

 

「兄さん、大丈夫!?」

 

「あぁ、モルガンのおかげで大丈夫だよ」

 

俺が恵里にそう答えた時、何かが物凄い勢いで下から俺達の頭上に躍り出てきた。

其れは全長20メートル程の超巨大なゴーレム騎士。

右手はヒートナックルとでも言うのか赤く染まっており、左手には某鬼がかった青髪メイドの武器ーーーモーニングスターーーーを装備している。

俺達が巨体ゴーレムに気を取られていると、この部屋に入った際に襲ってきたゴーレム騎士達が再度現れ、俺達の周囲を囲むように並びだした。整列したゴーレム騎士達は胸の前で大剣を立てて構える。まるで王を前にして敬礼しているようだ。

場の空気が一気に張り詰め、そしてーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やほ〜、はじめまして!みんな大好き、ミレディ・ライセンだよぉ~」

 

「「「「「「「「………はい?」」」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

凶悪な装備と全身甲冑に身を固めた眼光鋭い巨体ゴーレムから、とても似つかわしくない甲高い女性の声で、やたら軽い挨拶をされた。

 

「あのねぇ~、挨拶したんだから何か返そうよ。最低限の礼儀だよ?全く、これだから最近の若者は……特にそこの大剣持ってるグラマラス金髪美女!人の迷宮を好き勝手に壊してくれちゃって!もっと常識的になりたまえよ!!」

 

こちらが呆然としていると、ゴーレムは更に捲し立ててくる。

 

「どう攻略しようがそれは当人の自由でしょう?この迷宮にバーゲストは相性が良かったというだけの話です」

 

モルガンが淡々と応え、それにミレディと名乗ったゴーレムはムキーッ!っと実際に声に出して悔しんでいるような動きをしている。

 

「というか名前、ミレディ・ライセンだって?仮に本人だとするなら、魂や記憶をゴーレムに移したって感じか?」

 

「ふーん、ただ女の子に護られて後ろで偉そうにしてるスケコマシ野郎かと思ったけど、少しは頭が回るっぽいね」

 

俺がアニメ等でのありふれた延命処置を述べると、ゴーレムは嫌悪感を隠さず応えた。

 

「周りの甲冑が重力魔法で動いてるってことは、お前自身の神代魔法は恐らく『重力魔法』だろう。転移魔法系じゃないのは残念だが、エヒトのクソ野郎を潰すための手札に加えるには良さそうだ」

 

「……へぇ、君達はあのクソ野郎共を滅殺してくれるのかな?」

 

ハジメの言葉を聞いて発したミレディの言葉に、先程までの軽薄さは微塵もなく、再度空気が張り詰めた。

 

「俺らの目的は、故郷である元の世界に帰ることだ。だがその前に、俺等をこの世界に無理矢理連れてきた事と、ユエの叔父にした事への報いを受けさせるつもりなんでな。相手は仮にも神を名乗ってるし、神代魔法は多いに越したことはない」

 

そんな雰囲気に気圧されることなく、ハジメは理由の述べる。

 

「ん~、そっかそっか。なるほどねぇ~、別の世界からねぇ~。うんうん。それは大変だよねぇ~。まぁついでとはいえ、クソ野郎共を滅殺してくれるなら渡してあげてもいいんだけど……」

 

そうしてミレディは、物凄く勿体付けた雰囲気で返答を先延ばす。

 

「ったく、いいから勿体振らずーーー」

 

その空気に最初に痺れを切らしたバーヴァン・シーが声を上げた時、ミレディが俺と恵里を指差しーーー

 

 

 

 

 

 

「そこのスケコマシ野郎とメガネ女子には渡せない」

 

 

 

 

 

 

酷く冷たく放たれた言葉に、指差された俺と恵里は息を呑んだ。

 

「……何故、マスターと恵里は駄目なのですか?」

 

努めて冷静にミレディに問い掛けるバーゲスト。それに対してミレディはやれやれと言わんばかりに首を振る。

 

「何故も何も、君達が一番分かってるんじゃない?その2人が明らかに足手まといだって。この空間に入って他の人は兎も角、その2人は護られてしかいないじゃん」

 

ミレディの言葉に恵里が動揺しているのが分かる。

 

「……確かに、俺に直接戦闘出来るような力はない。武器だってハジメのを使わせて貰ってるだけだ」

 

そこで俺は一旦言葉を区切り、右手の甲ーーー令呪に視線を落とす。

 

「だとしても、俺は自分が出来る全てで皆を支える。そういう覚悟で此処にいるんだ」

 

宣言と共にミレディを見据える。自分が基本サポートしか出来ず、俺自身で敵を倒せないなんてことは【オルクス大迷宮】の攻略でよくわかっている。

それでも、俺を愛してくれる妻にとって誇れる男でいたいっていうただの男の意地だけで、俺は頑張れる。

 

「……すみません、情けない姿を見せました」

 

その言葉の発する方に視線を向けると、そこには凛とした表情の恵里。

 

「もう、大丈夫です。私も兄さんも直接戦闘の天職ではないのですから兄さんの言った通り、自分が出来る事で皆を助ける。それが仲間だと私は思います」

 

恵里の言葉に、俺だけでなく皆が頷いてくれた。

 

「……覚悟だけでクソ野郎共を殺せるなら、こうなってないんだよ」

 

ミレディが何か呟いたようだが、周囲の甲冑が大剣をこちらに向ける音に掻き消された。

 

「言葉はかっこいいけど、そんな足枷があってこの天才ミレディちゃんに勝てるかな〜?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミレディは2つ、致命的な勘違いをした。

 

 

 

 

1つは慎夜とモルガン達の関係性。

ミレディが慎夜と恵里ーーー特に慎夜に対して他の者より当たりが強かったのには、本人が言っていた理由の他にも幾つかあるが、その最たるものが本人は安全圏で他人を動かす姿がクソ野郎共に多少似通っていたからというものである。

受肉してしまっていることと、基本リソースを聖杯から供給しているモルガン達の事を、慎夜が召喚したサーヴァント(使い魔)であると気付けなかったのである。

もし気付けていれば、慎夜への対応も変わっていたかもしれない。

 

 

そして2つ目はーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………ぇ?」

 

人間の身体だった頃ですら発したことのないような、間抜けな声をミレディは無意識に出していた。

だがそれも無理もない程の信じられない光景が、ミレディの目の前に広がっていたからだ。

此処【ライセン大迷宮】のある【ライセン大渓谷】は魔力を分解する魔法使いにとって地獄のような場所である。その筈、なのにーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前に広がる、膨大な魔力の嵐は……!!

 

 

 

 

「我が夫である慎夜、更に義妹の恵里を侮辱したのです。さて、どこから潰したものか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー彼女の規格外な力を。

 

 




次回予告(偽)

やめて!
モルガンの魔法でゴーレムを破壊されたら、魂をゴーレムに定着させているミレディまで消えちゃう!
お願い、しなないでミレディ!
あなたが今ここで倒れたら、他の解放者達との約束はどうなっちゃうの!?
ゴーレムはまだ残ってる。
ここを耐えれば、モルガンに勝てるんだから!







次回、ミレディ◯す!

デュエルスタンバイっ!
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