元の世界でありふれたマスターは異世界で家族をつくる   作:nightマンサー

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第2話 異世界

魔法陣の光で閉じていた目をゆっくりと開けると、

そこは見慣れた教室ではなく何処か教会のような雰囲気の広間であった。

 

(まさか、ここからが本当の異世界転生ってか?)

 

まさか転生した後で異世界召喚されるとは、

そういった作品も読みはしたが、リアルでしかも急にやられると心臓に悪い。

 

「に、兄さん、これは…」

 

「おい慎夜、これって…」

 

恵里とトシも辺りを見渡して驚愕している。

 

「あぁ、おそらく定番の異世界召喚だろうな…」

 

見れば辺りには恵里とトシだけでなく、

ハジメや白崎、クズ共といったあの教室に居たと思われるクラスメイトがいる。

それだけではない。俺たちを囲うように如何にも信者といった風貌の人間が祈りを捧げるように立っている。

その中でも一際豪華な衣装を身に纏った老人が前に出てくる。

 

「ようこそ、トータスへ。勇者様、そしてご同胞の皆様。歓迎致しますぞ。

私は、聖教教会にて教皇の地位に就いておりますイシュタル・ランゴバルドと申す者。以後、宜しくお願い致しますぞ」

 

そう言って老人は笑みを浮かべた。

 

(悲報、この世界のイシュタル、やばげな老人だった件について)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからはトントン拍子に話が進む進む。

某金星の女神と同じ名前の老人の話を簡単に纏めると…

 

その1、この世界には人間、魔人、亜人の3種族がいる。

その2、人間と魔人はずっと戦争を続けてきたが、魔人が魔物を使役するようになり、

人間側の数の有利が無くなり全滅の危機。

その3、人間の全滅を防ぐため、この世界の神"エヒト"がチートを持つ俺達を召喚。

その4、呼んだのは"エヒト"の為、現状俺達の地球への帰還は出来ない。

 

とまぁ要点はこんな感じである。

なんとも使い古された設定、よく言えば"お約束"。

最近では召喚してすぐさま奴隷魔術的なモノで死ぬまで道具扱いみたいな作品もあるので、

最悪のパターンでは無いことだけは運が良かったと言える。

それでもクラスメイト達は帰れないと知ってパニックに陥っている。

そんな中、テーブルを叩く音が響き渡る。

そうして静かになった事を確認し、テーブルを叩いた張本人である天之河光輝が話し始める。

 

「皆、ここでイシュタルさんに文句を言っても意味がない。彼にだってどうしようもないんだ。……俺は、俺は戦おうと思う。この世界の人達が滅亡の危機にあるのは事実なんだ。それを知って、放っておくなんて俺にはできない。それに、人間を救うために召喚されたのなら、救済さえ終われば帰してくれるかもしれない。……イシュタルさん? どうですか?」

 

「そうですな。エヒト様も救世主の願いを無下にはしますまい」

 

「俺達には大きな力があるんですよね? ここに来てから妙に力が漲っている感じがします」

 

「ええ、そうです。ざっと、この世界の者と比べると数倍から数十倍の力を持っていると考えていいでしょうな」

 

「うん、なら大丈夫。俺は戦う。人々を救い、皆が家に帰れるように。俺が世界も皆も救ってみせる!!」

 

そう言って天之河は無駄に笑顔で歯を煌めかせる。

その言葉に筋肉バカの坂上、剣道娘の八重樫、マドンナの白崎と有名人が戦争への参加を表明する。

クラスメイト達もそれに続くように参加の意思を示す中…

 

「何勢い任せに勝手に決めてやがる。戦争参加なんて反対に決まってるだろ」

 

俺の否定の声は良く響いた。

 

「間桐、怖いのは分かる。でも…」

 

「怖い?そりゃ勿論怖さもあるさ。だが勘違いするな、

俺が言いたいのは日本っていう戦争のない国で育った俺達に戦争なんて到底無理だと言いたいんだよ。

魔人なんだぞ?名前の通りなら見た目は人と変わらないんじゃないのか?

お前達、人と同じ姿をした生き物を殺せるのか?」

 

俺がそう言うとさっきまで浮かれていたクラスメイト達の顔が青ざめる。

 

「間桐!皆の不安を煽るんじゃない!」

 

「不安を煽るな?戦争参加すれば必ず直面する事だ。

戦争への参加を促したのなら、人を殺す事を容認する事と同じだろう」

 

「違う!そんなつもりは…!」

 

正直こいつの事はクズ共よりも遥かに嫌いだ。

此奴には何を言っても自分の都合のいい様にしか解釈しない。

だからこいつへの対処法は関わらない事だったのだが、流石に戦争に巻き込まれては敵わない。

 

「イシュタルさん、幾つか約束して頂けませんか?」

 

「ふむ、内容にもよりますが、出来うる限りお受け致します」

 

「1つは戦争への参加は志願制にして欲しいこと。

俺達は元の世界ではまだ学生で成人していませんし、性格的にも戦争に不向きな人もいます。

2つ目は実戦投入前に入念な訓練を受けさせて頂くこと。

いくら能力があると言っても使い方等知識や経験が無ければ戦うなんて無理です。どうでしょうか?」

 

「間桐、勝手に進めるな!」

 

イシュタルに俺が提案すると天之河が何か言ってくるが無視だ。

 

(てかお前だって話勝手に進めてただろ…)

 

暫く考え込んでいたイシュタルだったが、考えが纏まったのか、顔を上げた。

 

「分かりました。2つ目に関しては既に訓練頂く準備が整っていますので問題ないでしょう。

ただ、1つ目の志願制に関しては半数以上は必ず参加して頂く内容でのお約束でよろしいでしょうか?

流石に不参加の方が多いのは…」

 

「(そりゃ呼んだのに不参加が参加より多いのは許さんだろうな。志願制を有りにしてもらえただけも良しとするか…)

懸念は尤もです。その内容で大丈夫です。念の為、書類で残していただけますか?」

 

「…承知致しました」

 

どうにかあの不利な状況からここまで出来たはいいが、イシュタルには完全に目をつけられただろう。

必要だったとはいえ、少し不味かったかと思ってしまうが、やった事はしょうがない。

こうしてイシュタルとの会合は幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イシュタルとの会合の後は受け入れ態勢を整えていた"ハイリヒ王国"で歓待を受けた。

滅亡の危機に瀕している割には豪勢な料理の数々、クラスメイトに自分の娘、息子はどうかと進める貴族のなりをした者達。

不安しかないまま異世界召喚2日目を迎えた。

本日から早速訓練を行うようだ。

騎士団長のメルドとか言うガタイのいい人が俺達を指導するらしい。

まず訓練の前にステータスプレートと言うアイテムが俺達に配られた。

銀色の板のようなこれは所謂自分のステータスを可視化することが出来るアーティファクトと呼ばれるものだそうで、

身分証として便利な為、一般人にも普及しているものらしい。

指示通り一緒に渡された針で血を垂らすと文字が浮かび上がってきた。

 

 

 

==============================

間桐慎夜 17歳 男 レベル:1

天職:魔術師(マスター)

筋力:20

体力:20

耐性:40

敏捷:20

魔力:150

魔耐:40

技能:召喚魔法陣作成・召喚詠唱(限定)・

全魔術礼装スキル・スキル確認・令呪・言語理解

==============================

 

 

 

ステータスプレートの文面を見てかなり驚いた。

何せそれは社会人まで生きた方の人生で見慣れたものだったからだ。

 

(完全にFate、しかも魔術礼装ってことはFGOか?)

 

Fate/Grand Order 通称FGO

前世で大人気だったソーシャルゲームの名前である。

勿論プレイしており、廃課金気味の重課金者だったので正直これはかなり嬉しい。

何せこの記載が正しいのなら、お気に入りだったあのサーヴァントを召喚出来たりするかもしれない。

 

(しかし、召喚詠唱の限定の文字が気になるな…特定のサーヴァントしか呼び出せないとかか?)

 

色々と考察している間に俺の番が回ってきたようでステータスプレートをメルド団長に見せた所、

マスターという天職と見た事ないスキル(魔術礼装のことだろう)に首を傾げていたが、

今後の訓練で見極めればいいと言うことで一旦保留となった。

ちなみにその後、ハジメの非戦闘職(錬成師)とステータスを揶揄してきた檜山達を

使う武器の手入れや修繕は?武器が壊れたら素手で戦う気?と錬成師の長所を並べて論破してやった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

異世界トータスに来て2週間が経過した。

この2週間、俺含むクラスメイト全員戦闘訓練や魔法の扱い方を習っている。

志願制にしたが結局自衛手段として習っておいた方がいいとイシュタルが話し、全員参加しているのだ。

それでまぁ空いた時間にこの世界の知識を取り込む為に王立図書館にハジメと通いつめていた。

 

「なぁハジメ、俺がやってたソシャゲに魔物食べる系腹ペコ王女いたんだけど、この世界の魔物って美味しかったりするんかね?」

 

「昨日見た本に魔物の肉って魔力を帯びてるから、人間にとっては猛毒って書いてあったよ」

 

「ヤバいわねっ!(裏声)」

 

前世でやっていたソシャゲネタが出てきてしまった。

ステータスプレートを見てからよく前世の事を考えてしまっているようだ。

ちなみにハジメは『世界の鉱物辞典』、俺は『召喚魔法・上』とそれぞれの天職に必要そうな本を読んでいる。

 

「……ねぇ慎夜、この世界どう思ってる?」

 

「いきなりだな。まぁ言わんとしてる事は分かるけど、俺個人の意見としては正直どうでもいい、だ。

そもそも俺達は関係ない部外者、それがいきなり人間の仲間になって魔人を滅ぼせとか」

 

異世界転生系の良い所は、自分にも起こり得るかもしれない最上級の幸運であるからだろう。

一般人が今までの経歴を捨て、チート能力で自分の思うがままになる世界。そりゃ誰だって憧れるだろう。

ご都合主義に塗れていても、いや、ご都合主義塗れだからこそ人気になったんだろうけど。

 

「そもそも魔人滅ぼして帰れるなんて保証はない。イシュタルは無下にはしないだろうと言っただけで帰すとは一言も言ってないからな」

 

「だよねぇ…はぁ、気が重いなぁ」

 

そうしてるうちに訓練時間となり、広場に移動した。

その時に檜山達と一悶着あったり、それに対して天之河がいつもの自己解釈ご都合理論を言ってきたりしたが全部無視した。

そして訓練後、メルド団長から明日から実践形式の訓練を行うため、『オルクス大迷宮』へ遠征に行くことが告げられた。

 

 

 

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