元の世界でありふれたマスターは異世界で家族をつくる 作:nightマンサー
あとお気に入り登録が1000を超えてて驚愕しました(感涙)
トラオム最高でした。ちなみに若モリ2人に諭吉がかなり消えました…
拙僧、悪役大好き侍にて!
奈落に封印されていたユエを加え、4人となった俺達一行。
休息も充分取ったので、次の階層へ進もうとユエが封印されていた部屋を後にしようとしたその時、
モルガンが徐に部屋の奥ーーーユエが封印されていた場所に足を向けた。
「モルガン?」
「魔力供給に夢中で忘れていましたが、ユエが封印されていた足元に魔力反応があります。
どうやら何か隠されているようですね」
そう言ったモルガンが杖を振るとユエが封印されていた場所の床の一部がせり上がり、その中央にはダイヤに似た鉱石が鎮座していた。
「ダイヤみたいな鉱石だけど…」
「映像記録媒体のようです。製作者は恐らく、ユエの関係者でしょう」
鉱石を手に取りながらモルガンが答える。
モルガンの言葉を聞いて、ユエは無意識に手を握りこんだ。
それを隣で見ていたハジメは、残っている右手でユエの頭を優しくポンポンと叩いた。
「あー、大丈夫だ。今は俺達がいるしな。それに、映像だろうが文句言えれば少しは気が楽になるかもしれないぞ」
「っ…うん」
ハジメの不器用な励ましにユエは大層満足げだ。
「モルガン、再生できそう?」
「無論です」
そうしてモルガンが魔力を込めると、鉱石が発光し1人の男性が映し出された。
「おじ、さま…」
ユエが震えながら言葉を紡ぐ。
どうやらこの壮年の男性がユエを封印した叔父らしい。
『アレーティア……久しい、というのはお門違いだな。
君は私を恨んでいる、いや…そんな言葉ではきっと足りないだろう。
私のしたことは…あぁ、違う。こんな事を言いたい訳じゃない。
色々と考えていた筈なのに、いざ遺言を残すとなると思った以上に上手く喋れないな…」
男が喋り出してから俺達は何処か違和感を覚える。
どうにもユエが話してくれた裏切り者の叔父と目の前に映し出されている男の人物像が一致しないのだ。
男は仕切り直す為か1つ咳払いをして再び話し始めた。
『先ずはお礼を言いたい。アレーティア、君の隣にはきっと心の底から信頼出来る誰かがいるのだろう。
真のオルクス大迷宮に挑める強者であり、君を封印から解放してその後に現れたガーディアンから見捨てず救い出した者が』
そう言って男は視線を正面から少し隣ーーー偶然ユエの隣に立っていたハジメの場所に移す。
『……我が姪を救い出してくれた者よ。
君は男性?それとも女性かな?アレーティアにとってどんな存在かな?恋人、親友、あるいは何かの仲間。
直接会えずこのような形ですまない。ありがとう、私の大切な姪を救い出してくれて。
私は君、あるいは君達に私の生涯で最大の感謝を』
男は言葉と共に深々と頭を下げた。
流石にここまでの流れでユエは勿論、俺達全員が困惑していた。
視線を正面に戻し、男の話は続く。
『アレーティア。私がこうしていることにきっと混乱していると思う。
あるいは、既に真実を知ってしまっているだろうか。
私が何故、君を傷つけ地下に封印したのか。
君の天職『神子』の本当の意味と、真の敵が誰であるのか。
……本当なら君に全てを打ち明けてから封印しようかとも直前まで考えた。
しかし、敵の目を完全に騙すためには打ち明けない方が良いと判断した』
男は気持ちを落ち着かせるためか、1度深呼吸をする。
『私の生成技術ではあまり長い時間記録出来ない為、要点だけの簡潔な説明になってしまうことを許して欲しい。
アレーティア、君の天職『神子』というのは……神の器に相応しい者に与えられる天職。
つまりーーーエヒトがこのトータスに君臨し、自分の欲を満たすための人柱であることを示す職業なんだ』
男性の言葉に俺、ハジメ、ユエの3人が息を飲む。
モルガンだけは眉を動かすだけに留まったが、その態度から嫌悪感が滲み出ている。
『エヒトは常に天界というこちらが手を出せない場所にいる。
だがそれは向こうも同じで、奴がこちらに干渉するにはトータスにいる者が必要。
その神の器ーーー人柱にアレーティアは選ばれてしまった。アレーティアの強い力を、エヒトは自分が乗っ取るのに良い器だと思ってしまったんだ…!
ここまで言えば分かると思うが、真の敵とはーーー神エヒトの事を指す。
私は、エヒトにアレーティアが利用されないようにと、部屋を隠蔽し封印することを決意した』
映像越しでも分かるほどに男は強い力で手を握りこんでおり、血が流れ落ちる。
彼がどれほどの想いで決断をしたのか、その一端が垣間見える。
『だが…どんな理由があったとしても、君を封印をして傷つけてしまったことに変わりない。
今更許してもらおう等と都合のいい事は言わない。ただ、これだけは信じて欲しいーーー』
ーーー愛している、アレーティア。
ーーー私は本当に、君を本当の娘のように思っている。
ーーー守ってやれない、情けない父親役ですまない。
男の嘘偽りない慈愛に満ちた表情と言葉に、ユエは涙を流し崩れ落ちた。
『君が幸せを掴むその瞬間を、隣で見守っていたかった。
君の隣に立つ男を、1発殴ってやるのが密かな夢だったんだ。
その後に一緒に酒を飲みながら頼むんだ、「どうか娘をお願いします」と』
そう言った男の表情は悲しげに笑っている。
『…そろそろ時間だ。話したい事も伝えたい事もまだ沢山あるが、
私の生成魔法では、これくらいのアーティファクトしか作れない。
もう、私は君の傍にはいられない。だが、たとえこの命が尽きようとも祈り続けよう。
ーーーアレーティア、最愛の娘よ。君の頭上に、無限の幸福が降り注がんことを。
陽の光よりも温かく、月の光よりも優しい、そんな道を歩めますように』
そして男は再び視線を正面から左右それぞれに向けた。
『私の最愛に寄り添う君。お願いだ。どんな形でもいい。
その子を、世界で一番幸せな女の子にしてやってくれ。どうか、お願いだ』
「…っ」
男の言葉にハジメは奥歯を噛み締めていた。
『…さようなら、アレーティア。君を取り巻く世界の全てが、幸せでありますように』
「っ、おじさま…ディン叔父様っ!!」
男からの別れの言葉でユエは顔を上げ、男の名を呼ぶ。
映像が消える前の男の表情は、まるでユエを安心させるような、優しさに満ちた笑顔であった。
◆
映像が終わってからユエは再びその場に崩れ落ちたままだ。
「慎夜、モルガンさん。悪いが、ちょっと2人にさせてもらえるか」
ハジメが静かにそう言ってきたので、俺は何も言わずに部屋の出口へ向かう。
モルガンも俺の少し後ろから着いてきてくれた。
そうして部屋の外ーーーサイクロプスがいた扉の前まで来てから、俺は壁に拳を叩きつけた。
「何だよ、あれ。あんな…くそっ!」
怒りや悲しみが渦巻いて、うまく言葉に出来ない。
だが、当事者であるユエの感情は自分なんかの比じゃない筈だ。
「我が夫、一度落ち着きましょう。ユエならハジメがついていることですし問題ないでしょう」
「そう…だな。でも、ユエはもう俺達の仲間だ。なら俺らにもエヒトをぶん殴る権利はあるよな?」
「えぇ、無論です。それにーーー
娘を大切に想う気持ちは、痛いほど理解できますから」
そう言うモルガンの顔からは悲しみが見てとれた。
「っ!…どうされました、我が夫?」
だからだろう。俺はそんなモルガンを強く抱き締めた。
俺がFGOのストーリーで知ったモルガンの過去は、変えられない。
それでも、ありふれた言葉だとしても…未来はこれから決めていける筈だ。
「君を、絶対に幸せにしてみせる」
決意を固めるように、俺は言葉を口にした。
俺の言葉を聞いたモルガンは、目を一瞬見開いたけどすぐさまいつもの表情に戻りーーー
「…心配する必要はありません。貴方がいる時点で、幸せですよ」
モルガンもこちらに応えるように抱き締め返してくれた。
結局ユエとハジメが部屋から出てくるまで俺とモルガンは抱きあっていた。
短いですが区切りがいいので一旦ここまでで。
早いとこ他のサーヴァントも登場させたい…