最後に必ずデジたんが尊死する小説   作:コロリエル

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どうも、閃いちゃったので最新話です。普段はアグネスタキオンの二次創作書いてます。

『アグネスタキオン、ダイワスカーレットのトレーナーになる』
https://syosetu.org/novel/275954/


フラウンスは一発の火力が異常に高いんですよ(遺言)

 昼下がりの校舎裏。

 

 普段は日が陰っているこの場所だが、この時間帯だけ僅かに日が照りぽかぽかと温かく、しかも他の誰かがやってくることがない、知る人ぞ知る昼寝スポット。雲一つない快晴の今日、秋口ではあるが非常に心地のいい環境に仕上がっている。

 

 普段はそこにいるのは校舎内をうろうろしている野良猫くらいだが、今日この日は珍しく別の客人が居た。しかし、野良猫たちも彼女のことは信用しているのか、嫌うどころかむしろ身体を寄せて一緒に温まっていた。来るべき厳しい冬に向け冬毛に生え変わり始めた彼らは、非常にもこもこで気持ちいい。

 

 擦り寄ってきた三毛猫をお腹の上に乗せ優しく撫でながら、幸せそうに微睡む彼女は、どう見ても菊花賞を世界レコードで圧勝するようなウマ娘には見えない。

 

 タンポポの髪飾りを留めた葦毛のショートカットの彼女の名は、セイウンスカイ。

 

 流れ行く雲のように掴みどころが無い──それが周囲の彼女に対する評価である。

 

 

 

「こんなぽかぽか陽気に、教室で授業なんてもったいないよねー……君もそう思うだろー?」

「にゃおん」

「ふっふっふ、そうでしょうそうでしょう。君はいいこだねー、撫でて差し上げよー」

「ふにゃあぁぁ……」

 

 

 

 ウマ娘の言葉を猫が理解できると言う話も、猫にウマ娘の言葉が理解できると言う話も聞いたことはない。しかし、傍から見たら出来ているようにも見えなくもないセイウンスカイと三毛猫のやり取り。

 気持ちよさそうに撫でられる三毛猫。それを目を細めて見る彼女は、今にも眠ってしまいそうだった。

 

 もうすぐ授業が始まるというのに、なんとも気楽なものだが……彼女が授業をさぼろうとするのは今に始まった話ではなく、気分が乗らない、猫が離さなかった、眠い等々、何かと理由を付けては何処かでさぼろうとする。

 一応単位等々は大丈夫なようにはしているとの事らしいが……要領は良い彼女のことだし、大丈夫ではあるのだろう。

 

 しかし、それを良しとしない人間も当然存在する。

 

 

 

「もーっ、スカイさん! また授業さぼろうとしてますね!?」

「んぁ……お、フラワーじゃん。フラワーも一緒に昼寝する?」

 

 

 

 猫まみれでもう一寝入りしようとするセイウンスカイを見つけるや否や、とたとたと駆け寄りながら優しく叱る少女……ニシノフラワー。

 

 頬をぷくっと膨らませ、ニシノフラワーが来たにも関わらず寝続けようとするセイウンスカイに腹を立てていた。真面目な彼女は、セイウンスカイが授業をさぼろうとすることに毎回怒っていた。

 

 今回も例に漏れず、彼女は寝転んだセイウンスカイの側に立ち寄り、まとわりついた猫を一匹ずつ丁寧に引き剝がして行く。猫たちは一切の抵抗をすることなく大人しく引き剥がされていく。ここの野良猫たちは非常に人間に慣れていた。

 

 

 

「あぁー、私の天然にゃんこ毛布がぁ……フラワーのオニー」

「鬼でも何でもいいですっ! スカイさん、授業に出てください!」

「えー……こんなにいい天気なのにー?」

「いいお天気ですけど……そういう問題じゃないです!」

 

 

 

 一歩も譲りません! とスカイの側で腰に手を当てるニシノフラワー。本人としては威嚇しているつもりなのかもしれないが、元々体躯も小さく顔つきも同年代の娘と比べても幼い彼女。セイウンスカイは全く怯んでいないどころか、そんなニシノフラワーのことをほのぼのとした目つきで眺めていた。

 

 ニシノフラワーはそれに気が付いたのか、セイウンスカイの腕を引っ張って無理矢理起そうとする。しかし、セイウンスカイは逆にその手を思い切り引く。

 

 

 

「きゃっ!?」

「ふっふっふ……まだまだ甘いよ、フラワー」

 

 

 

 ポスン、とセイウンスカイの胸の上に転んでしまうニシノフラワー。してやったり、といった表情でセイウンスカイは笑いながら、彼女を優しく抱き留める。

 そのまま彼女の背中に優しく手を回す。このままニシノフラワーも巻き込んで二度寝と洒落込もう。大体、フラワーは頑張りすぎなのだ、多少は休んでもバチは当たらないさ。

 

 そんなセイウンスカイのなんとも意地悪な算段に気付いたのか、ニシノフラワーはその場でじたばたと暴れる。が、二人の体格差では勝てるわけもない。

 

 

 

「うぅ……このままじゃ私も遅刻しちゃいます!」

「いいんじゃない? フラワーだってたまには休んだって大丈夫だって」

「……じゃあ、何をしたら授業出てくれますか?」

 

 

 

 ほう? とセイウンスカイは腕の力を緩め、彼女の顔を見る。彼女の表情は意地悪しすぎたのか、すっかり眉が下がりきってしまっていた。

 

 ──これは、もうひと弄りふた弄りしたら大人しく授業に出た方がいいだろう。これ以上迷惑を掛ける訳にはいかないし。

 

 そう決意したセイウンスカイは、とびっきりの笑顔でニシノフラワーに提案をする。

 

 

 

「そうだなぁ……ほっぺにちゅーしてくれたら、授業に出てもいいかなー」

「……へっ!?」

 

 

 

 期待通りの反応をしてくれたニシノフラワー。茹でだこのように顔が真っ赤に染まり、くりくりとした大きな瞳を更に大きく見開いていた。

 あまりにも予想通りな反応に、セイウンスカイは非常に満足そうににししっと笑う。こうやってニシノフラワーをからかってその反応を見るセイウンスカイは、他のどんな時よりも生き生きとしている。

 

 それを本人が自覚しているのかどうかは、定かではないが。

 

 

 

「……う、うぅ……」

 

 

 

 少女にとってはあまりにもハードルが高い交換条件にニシノフラワーは、その少し小さめの耳をへにゃんと垂れてしまっている。小刻みにプルプルと震えているのが、密着しているセイウンスカイに伝わってくる。

 

 さて、そろそろ根負けしてあげますか。セイウンスカイはパッと彼女から腕を離し、ゆっくりと起き上がる。

 

 

 

「なーんてね? さ、そろそろ授業に──」

 

 

 

 その瞬間、セイウンスカイは自らの左頬に柔らかい何かが触れたのを感じた。一際強くなった嗅ぎなれた彼女の花のような良い匂いが、鼻孔をくすぐる。

 

 何をされたのか理解した瞬間、セイウンスカイの心の中は一瞬にして荒れ狂った。今までに感じたことのない心臓の高鳴り。

 

 そっと離れたニシノフラワーは、先程までとは比べ物にならないほど顔を赤くしており、顔から湯気が出るのではないかというほどだった。

 

 

 

「し……しましたからね!? ぜったい、ぜったい授業出てくださいね!? それでは、お先に失礼します……!」

 

 

 

 ニシノフラワーはまるで逃げるようにその場を立ち去っていく。今の彼女なら、どんな逃げウマ娘だって勝つことはできないだろうという脚だった。

 

 一人取り残された、セイウンスカイ。確かな熱が残っている頬に手を触れてみる。柔らかいとよく言われる頬。それよりも更に柔らかい感触だった。

 

 一つ、大きくため息を吐き、校舎にもたれ掛かる。一部始終を見ていた野良猫が、心配そうにセイウンスカイに寄り添ってくる。

 

 

 

「なーん?」

「あぁ……うん、大丈夫だよ……はぁ。全く、そういうとこだよ、フラワー……っ」

 

 

 

 顔が異常なほど熱くなっている。とてもではないが、今の状態で人前に出るなんてとてもではないと、セイウンスカイは授業に遅刻する決意をする。授業には出席するから、ニシノフラワーの約束も破らないだろう。

 

 手を顔に当て、ずるずると崩れ落ちる。彼女は、まさかニシノフラワーに一本取られる日が来ることになるとは、全く以て思っていなかった。

 

 

 

「あぁ……──だ、なぁ」

 

 

 

 一際大きな風が吹き、彼女の呟きは誰にも届かない。

 

 このことを知っているのは、セイウンスカイ本人と、ニシノフラワー。そして、ずっと傍らに居続けた野良猫だけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────いや、ここにもう一人。

 

 

 

「殺しでぇ……っ!」

 

 

 

 いつもの通り、ウマ娘たちの最高の瞬間をその眼に収めるべく校舎内を徘徊していた不審者……もとい、アグネスデジタル。

 しかし、どこからか現れた野良猫に愛用のネタ帳を盗まれてしまい、それを追いかけているうちに校舎裏のこの場所までやってきてしまっていた。

 何とか野良猫を捕まえたが、その先で先程のセイウンスカイとニシノフラワーの一連の流れを目撃してしまい……その場で、口から血を流し撃沈していた。余談だが、ニシノフラワーは一杯一杯だったため、死にかけのアグネスデジタルには気付かなかった。

 

 

 

「いつもは圧倒的優位で真面目な幼馴染のニシノフラワーさんをからかっている飄々としたセイウンスカイさんが、普段なら絶対にしてこないような特大反撃でキャパオーバーする……っ! こ、これはもう……デュフフフフ……あっ、鼻血が……」

 

 

 

 鼻からほとばしる熱いパトス。ゆっくりと意識を失っていくアグネスデジタルか最後に聞いたのは、そんな殺人事件としか思えない凄惨な現場を見たセイウンスカイの悲鳴だった。

 




ご閲覧ありがとうございます。初めて三人称で書いてみたけど、大丈夫だろうか心配です。

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それでは、また次回。
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