最後に必ずデジたんが尊死する小説   作:コロリエル

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どうも、この作品のUAが一万を突破しました。評価バーももうすぐ真っ赤になりそうです。皆様、いつもありがとうございます。

青春のチケタイです。


チケタイはきっとまだ自分の感情に気づいていない(絶対)

 

 

「タイシンー! 一緒にかえろ……あえ?」

 

 

 

 ウイニングチケット。いつも大声元気一杯のウマ娘。そんな彼女が訪れたのは、彼女の親友とも言えるウマ娘を担当しているトレーナーの部屋。

 いつもトレーニング終了後、トレーナー室で休憩している彼女のことをウイニングチケットともう一人の親友であるビワハヤヒデと共に迎えに来るのが日課になっていた。

 

 今日はビワハヤヒデが不在のため、ウイニングチケットが一人で彼女を迎えに来ていた。

 

 いつも通りの大声で、ウイニングチケットはノックもせずに扉を勢いよく開ける。しかし、その声は段々と尻すぼみに小さくなる。

 

 

 

「ようチケット。今タイシン寝ちゃってさ……」

「うん……疲れちゃったのかな」

「まぁ最近凄い気合い入ってたからな。トレーニングに必死なのはいい事さ」

 

 

 

 トレーナー室に設置された、仮眠用の二段ベッドの下。そこにウイニングチケットの親友であるナリタタイシンが、制服姿で小さく丸まってすやすやと眠っていた。

 ただでさえ小さい体躯のナリタタイシンが丸まると、物凄く小さくなる。

 

 

 

「へへっ……そっか。タイシン、頑張ってるんだ」

「ああ。最近はパワーも付いてきたし、これなら次のレースも行けそうだ……けど、このままって訳も行かないし、流石に起こすか……」

 

 

 

 あくまで仮眠用のベッドと、寮のベッドではどちらの方が寝やすいかなど比べるまでもない。食事の時間もあるし、申し訳ないが起こして帰してしまおうと、ナリタタイシンのトレーナーは考えた。

 しかし、ベッドに丸まるナリタタイシンを見ると、どうしても起こすのが忍びなくなる。

 

 心を鬼にして、彼女へ声をかけようとした所で、ウイニングチケットはぽんと手を打つ。

 

 

 

「タイシンのトレーナーさんっ。アタシがおぶって行こうか?」

 

 

 

 閃いた、と言わんばかりにウイニングチケットは胸を張る。確かにそれなら眠っている彼女を起こす必要無くナリタタイシンを送ることが出来る。

 自分が運ぶより何倍もマシだ……そう結論を出したトレーナーは、ウイニングチケットにグッと親指を一本立てた。

 

 

 

 

 

 

 

 

────────

 

 

 

 

 

 

 

 ──あれ、タイシンってこんなに小さかったっけ?

 

 背中にのしかかる重さを感じた時、思わずそんな声が出そうになった。しかし、自分が大声を出してしまってはナリタタイシンを起こしてしまうと、何とか飲み込んだ。

 

 彼女は小さい。同年代のウマ娘たちと比べても小さすぎて目立つくらいだし、そのせいで今のトレーナーが見つかるまで見込みがないとトレーナー契約に漕ぎ着けるのが困難だったのだ。

 

 

 

「タイシン……こんなに小さいのに……」

 

 

 

 それでも、彼女は世代の頂点を争うほどの実力を持ったウマ娘だ。その全てをねじ伏せんばかりの末脚は凄まじく、背後から迫ってくる彼女はいつもより大きく見えた。

 

 だからウイニングチケットは、ナリタタイシンのことを小さい、とあまり思ってこなかった。今彼女は、初めてナリタタイシンの事を『小さい』と強く強く意識した。

 

 背中のナリタタイシンを起こさぬよう、ウイニングチケットは細心の注意を払って歩を進める。ナリタタイシンは未だ穏やかな寝息を立てていた。既に校舎を後にし、寮へ向けて歩を進めていた。通り過ぎるウマ娘達が、彼女達のことを微笑ましく眺めていた。

 

 

 

「……タイシンは凄いね」

 

 

 

 こんな小さな身体に、どれだけのものを背負っているのか。ただひたすらに夢を追い求めているだけだったウイニングチケットには想像することが出来ない。

 それでも、彼女がここまで登り詰めるのにどれほどの努力をしてきたのか、それを考えるのは難しくはない。

 

 ウイニングチケットの口から言葉が零れる。自分の感情を表に出すのは得意な彼女だが、言葉にするのは苦手な彼女が、一つ一つ言葉を選ぶように紡ぎ始める。

 

 

 

「だって、小さいってそれだけで大変そうだもんね。棚のもの取るのも大変そうだし、歩幅も狭いもんね」

 

 

 

 小さい、というのはナリタタイシンにとってはコンプレックスと言っても過言ではない。他人からそれを指摘されるのが非常に嫌で、たまにポロッと口にしたトレーナーに蹴りを食らわしている光景は一種の風物詩だ。

 

 だから、ウイニングチケットは普段はあまりその言葉を口にしないようにはしている。

 

 

 

「なのにタイシン、すっごく強いもん。大きいウマ娘相手でも勝っちゃうもん。タイシン、皐月賞の時はすっごくおっきく見えたんだよ?」

 

 

 

 自分よりも後方から、突如として響いた強い踏み込みの音。気がついたらあっという間に並ばれ、そのまま全てを置き去りにした。

 

 普段あまり感情は表に出さず、出したとしても苛立ちであることが大半の彼女が、喜びの感情を爆発させていたのは記憶に新しい。

 

 四着に敗れてしまったウイニングチケットは、そんな彼女を見て、より一層自らの夢への羨望が強くなった。

 

 

 

「だけど……次は。ダービーは、絶対負けないから」

 

 

 

 日本ダービー。

 

 世代の頂点を決める、全ての関係者たちの夢舞台。そのレースに勝ったら、辞めてもいいと言ったトレーナーも居るほど、そのレースにかける情熱は凄まじい。

 

 自分の夢を、トレーナーの夢を叶えるために。

 

 ウイニングチケットは、眠りについているナリタタイシンに静かに決意を示す。普段は仲のいい彼女には見せない彼女の心の内。

 

 

 

「……アタシも、絶対負けないから」

 

 

 

 だから、彼女はまさかそれを聞かれていると知った時、心臓が止まるのでは無いかと言うほど驚いた。

 思わず背中のナリタタイシンを落としてしまいそうになったが、ナリタタイシンがしっかりと捕まっていたので落ちることは無かった。

 

 

 

「あっぶな……しっかりしてよね。落としたら怒るから」

「ごっ、ごめん! ……えっと、どこから聞いてた?」

「タイシンは凄いのにって位からかな」

「最初からじゃんかあああああっ!」

「うっさ……」

 

 

 

 思わず顔を真っ赤にしながら咆哮してしまうウイニングチケットに、ナリタタイシンは顔を顰める。ウイニングチケットがナリタタイシンを背負っているという点を除けば、その光景はいつも通りであると言っても過言ではない。

 

 ナリタタイシンは未だに降りない。ウイニングチケットは彼女を降ろそうとしたが、降りる素振りをしなかったのでそのままにしていた。

 

 

 

「そっか……アンタ、案外そんなこと考えてんだね。意外だった」

「ううっ……だから聞かれたくなかったのに……」

「……アタシも、絶対負けないから」

 

 

 

 ナリタタイシンは彼女にしがみつく力を強くする。寝起きのせいかなんなのか、彼女が普段なら絶対にしないであろう行動をしている。そのせいで、ウイニングチケットは面食らってばかりだった。

 

 ウイニングチケットは、ナリタタイシンの表情が見えない。だけど、その声色は普段よりずっと真っ直ぐ自分の向いていることは簡単に理解できた。

 

 

 

「皐月賞一個勝っただけで二人より強いなんて言うつもりは無い。次も……ダービーも菊花賞も、その先もずっと……アタシが勝つ」

「タイシン……」

 

 

 

 ナリタタイシンからの宣戦布告を聞いたウイニングチケットは、心臓が高く跳ね上がるのを感じた。

 

 期待……なのだろうか。自分が大好きな友達が、最高の舞台に待ち構えてくれるという事実に、胸が踊った。

 

 上がる口角を抑えきれなくなったウイニングチケットは……彼女を背負ったまま、勢いよく駆け出した。

 

 

 

「うおおおおおおおおおおおっ! ぜったい負けないからねぇえええええええええっ!」

「ちょ……急に走らないで!」

「どんどん行くよおおおおおおおおおおおおおっ!」

「ああっ、もう……っ! 落としたら許さないからね!」

 

 

 

 悪態をつくナリタタイシン。しかし、ウイニングチケットは知る由もないが、彼女の表情は実に楽しそうで……彼女のことを知る誰もが見ても二度見するかのような、爽やかな笑顔だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「タイシンさんっ……! そんな笑顔ができるんですねっ……!」

 

 

 

 例えば、彼女らとビワハヤヒデの三人組、『BNW』の事を注視していたウマ娘……アグネスデジタルなんかは、そんなナリタタイシンの笑顔に完全にやられていた。

 

 普段はぶっきらぼうなナリタタイシン。彼女のしかめっ面以外を見られるという事がそう多くはない。中でも笑顔なんてのは、余程のことがない限り見せることは無い。

 

 

 

「親友であり戦友の気持ちを聞いて、精神的な距離がまた一歩近づいたからこそ溢れた笑顔っ……! だけどそれをウイニングチケットさんが見ることはまだ無い……っ! これから先、いつかきっとその笑顔をウイニングチケットさんやビワハヤヒデさんに見せてくれるのかっ……はぁ、はぁ……見るまでは、死ねない……あれ?」

 

 

 

 そう語るアグネスデジタルは、既に魂だけの存在になっていた。彼女がそれに気付いたのは、既に二人が寮内へと入っていた時だった。

 




ご閲覧ありがとうございます。ナリタタイシンとかいう沼入門みたいなウマ娘とウイニングチケットとかいう女児。最高ですね、ホント。

感想、評価、お気に入り登録等していただくと、大掃除が捗ります。

それでは、また次回。
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