最後に必ずデジたんが尊死する小説   作:コロリエル

19 / 19
どうも、着実に近づく就活に四苦八苦しています。こう見えても自分、プログラムを少々嗜んでいるんですわよ。

番外編と言ってますが、内容はいつもそんなに変わんないです。



番外編~アグネスデジタルの素敵な一日~

 

────早朝 自室────

 

 

 

 

 普通の生徒が目覚める平均的な時間より早い、四時半に目を覚ます。

 むくりと起き上がった彼女は、まだぽやぽやしている寝ぼけ眼を必死に持ち上げ、そそくさとベッドから出る。うんと一つ伸びをすれば、これでもう今日は大丈夫。

 

 ふと、隣のベッドに目を向けると、昨晩マンハッタンカフェに無理矢理連れてこられ、ベッドに縛り付けられたアグネスタキオンの姿。どこかうなされているようにも言え、心配と言えば心配とだが……彼女のことも起こさなければならない。

 

 

 

「タキオンしゃん……起きる時間でしゅよ……」

「……んぅ……カフェ……」

「アバラダッ!?」

 

 

 

 寝ぼけてマンハッタンカフェの名前を呼ぶアグネスタキオン。それに反応しないアグネスデジタルなど存在しない。

 まるでスローモーションかのようにゆっくりと崩れ落ちていくアグネスデジタル。

 

 しかし、ジャッジがカウントを始めようとする既のところで踏みとどまる。こんなところで早々に死ぬ訳にはいかない……と言わんばかりに、既に垂れてきている鼻血を手で拭いとる。

 

 

 

「あ、危なかった……寝ぼけてなかったら即死でした……タキオンしゃん! 起きて下さい!」

「うぇ……? あぁ、おはよう、デジタル君……何故朝から鼻血を……?」

 

 

 

 ゆさゆさと揺さぶられて、その瞼を開くアグネスタキオン。目を開けた瞬間、同室の人間が鼻血を垂らしていたことに対し彼女は後に、『薄らとした恐怖を感じた』と自分のトレーナーに話したとか。

 

 

 

 

 

 

────朝トレ中────

 

 

 

 

 

 

 

 アグネスデジタルにとって、トレセン学園という場所はこれ以上ない天国である。何故なら、右を見ても左を見ても目を凝らさなくても耳を澄ませなくても、自分が大好きなウマ娘達がすぐ側に居るからである。

 

 彼女が早起きして朝トレに励んでいるのも、半分は今後のレースのため、もう半分はウマ娘達をこの目に焼き付けるためである。

 

 

 

「(うひょー! 今日も朝からウマ娘ちゃん達の頑張る姿を間近で見れるなんて……たまりませんわー!)」

 

 

 

 朝から下心満載でダート坂路を難なくこなしていくアグネスデジタル。周囲から見たら目をギンギンに開いて周囲の様子を素早く観察しながら、とんでもないスピードで坂を駆け上がっていく彼女。控えめに言ってヤバい奴であった。

 

 ゴール板の前を駆け抜け、ふぅっと一息。そのままるんるんとスキップしながら坂を下ろうとすると……彼女は見た。

 

 

 

「シャカールっ! タイムどうだった?」

「おー……コンマ二秒縮んでる。こりゃあなかなか仕上がってきてるんじゃねぇか?」

「ホント!? やったやった!」

 

 

 

 ダート坂路の隣。芝コースを走っていたファインモーションが、外ラチでカメラとストップウォッチを構えていたエアシャカールの元に駆け寄っている光景。

 タイムが縮んだ、そう聞いたファインモーションは飛び跳ねんばかりの勢いで喜ぶ。

 アグネスデジタル一推しCP、シャカファイである。この時点でアグネスデジタルは霊魂が体から抜け落ちそうになる。

 

 

 

「ねぇシャカール? タイムが縮んでたご褒美欲しいな!」

「はァ? ご褒美だァ?」

「お願いシャカール! ご褒美くれたら私、もっと頑張れちゃう!」

 

 

 

 この殿下、エアシャカールに対してあざとすぎやしませんかね?

 ボタボタと口から血を垂れ流しつつ、アグネスデジタルはその目を耳を全力で働かせ、彼女らの会話を聞き漏らさんと神経を集中させる。

 

 

 

「ったく……目ェ閉じろ」

「……へ」

 

 

 

 突然のエアシャカールの申し出に面食らったファインモーション。顔を真っ赤にしながらもぎゅっと目を閉じる。

 周囲のウマ娘からはそんな二人に熱い熱い熱視線。最近バカップル二組に散々苦しめられている筈なのに、全く持って懲りない。しょうがない、女の子だもん。そういう意味では、アグネスデジタルも女の子だが……周囲にいるウマ娘たちとは若干ずれているので割愛。

 

 渦中のエアシャカールは、プルプルと震えながら目を閉じているファインモーションを暫く見つめる。普段のギロっとした鋭い瞳ではなく、何処かぼんやりとしている。少なくとも、この瞳を見たことがあるウマ娘は、ほぼ居ない。

 

 つまり……唯一見ていたアグネスデジタルは、既に限界を迎えていた。

 

 

 

「……ばーか。何期待してんだよ。周りに人が居るのにするわけねぇだろ」

 

 

 

 やがて、周囲に一瞬ちらりと目線を向けたエアシャカールが、とぼけた様子でファインモーションの鼻を摘まむ。

 

 驚いたファインモーションは、目をパッと開いて目の前のエアシャカールを見上げる。にやにやと楽しそうに笑うエアシャカール。

 

 

 

「……シャカールっ!」

「オラ、分かったら次行け。今日中に更にコンマ二秒縮めたら、マジでご褒美あるかも知んねぇぞ?」

「言ったからね!? 絶対ちゅーしてもらうんだから!」

 

 

 

 殿下、ご乱心。

 とんでもないことを口走っていることに気付かず、ファインモーションはスタート地点に走る。

 周囲のウマ娘達の黄色い悲鳴は、彼女には全く聞こえていなかった。

 

 

 

「……おーい、またデジタルさんが死んでまーす」

「あー……運ぶよ皆」

 

 

 

 そして、案の定魂が抜けていたアグネスデジタル。一時間目に間に合うのであろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────昼 校舎裏────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お、これはこれは……お久しぶりですねミケの大将ー」

「えっと……ミケの大将……?」

「この辺の野良猫たちを牛耳っているボス猫だよー。トレセン学園に来る野良猫は基本的に大将の舎弟なんだよー?」

「そうですか……初めまして、ニシノフラワーっていいます! いつもスカイさんがお世話になっています!」

 

 

 

 昼休みの校舎裏。最近はセイウンスカイとニシノフラワーの特等席になっているそこには、いつも通り彼女たちと沢山の野良猫たちが身を寄せあって暖を取っていた。もこもこの冬毛の猫たちに囲まれた二人は、なんとも暖かそうだった。

 今日は、そんな二人の前に、やけに貫禄のある大きな三毛猫が姿を見せていた。凛々しい表情の彼は、『ミケの大将』。三毛猫のオスというだけでも珍しいのに、その圧倒的カリスマで野良猫たちを率いる親玉である。

 

 

 

「にゃお……にゃっ」

「わっ! お辞儀した……賢い猫さんなんですね……」

「そうなんだよ……あ、この子は私の友達なんだー。すっごいいい子だからねー?」

「……スカイさん?」

「……にゃ」

「……説得力皆無っ!」

 

 

 

 友達。

 

 その単語に反応したニシノフラワーと大将、後ついでにいつものように連れてこられて身を隠しているアグネスデジタルは、それぞれ三者三様の反応をする。

 ニシノフラワーはじとっとじた目線で自分を抱きかかえているセイウンスカイを見上げ、大将はまたやってるよコイツと言わんばかりの目で呆れたようにセイウンスカイを見つめ、アグネスデジタルは胡坐した上にニシノフラワーを乗せ後ろから抱きしめているセイウンスカイに驚く。

 

 ここまでしておいて友達と言えるセイウンスカイが逆に凄い。恋愛クソ雑魚ウマ娘ランキング堂々一位と言われているだけはある。

 

 

 

「……ごめん、ホントごめん……」

「もうっ……大将さん、きっともう分かってるかもしれませんけど……また今度あった時に、きちんとスカイさんの口から伝えてもらいますから……その時にまた、きちんと聞いてあげてくれますか? きっとスカイさん、大将さんにも知ってもらいたいはずですし」

「にゃおにゃお」

 

 

 

 すっかり落ち込んでニシノフラワーの肩に顔を埋めるセイウンスカイ。そんな彼女の頭を撫でながら、ニシノフラワーは大将に語りかける。

 

 分かってるよ、そう言わんばかりに大将は溜め息を一つ吐き、セイウンスカイの脚をぽんぽんと二回叩く。

 

 

 

「……なんであの人たち、猫と会話できてるんでしゅか?」

 

 

 

 アグネスデジタルは、そんな光景を見ながら首を捻る。なお、完全な余談であるが、アグネスデジタルは最初から霊体であったことを最後に記す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────夜 食堂────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「マックイーンさん……今日までよく頑張ってきました……!」

「えぇ……今日は、食べてもいいんですよね……?」

 

 

 

 ただならぬ様子で会話をし始めるメジロマックイーンとイクノディクタス。イクノディクタスは今すぐにでも泣いてしまうのではないかというほど顔を顰め、メジロマックイーンに至ってはもう泣いていた。

 先日、メジロマックイーンが菊花賞を獲ったという話は記憶に新しい。

 

 そして、今日……テーブルの上には、いつもなら彼女たちが他人に譲っている物が置いてあった。

 

 一切れ……たった一切れのチョコレートケーキだった。

 

 

 

「マックイーンさん……G1を勝つまでスイーツを食べないと宣言して三か月……よく、よく頑張りました……思う存分、味わいましょう……」

「はい……頂きます」

 

 

 

 そっとフォークを持ち上げ、ケーキに差し込む。一口分のケーキを取り、ゆっくりと口に運ぶ。

 

 イクノディクタスが、食堂のおばちゃんが、彼女の食生活を知っている周囲のウマ娘が、そしてアグネスデジタルが。固唾を飲んで見守っていた。

 

 ……一粒、零れ落ちた。

 

 

 

「……あれっ、おかしいですわね……このケーキ、しょっぱいですわよ……っ!」

「マックイーンさん……!」

「なのに……なんで……なんでこんなに美味しいですの……!」

 

 

 

 G1をとっても泣かなかったメジロマックイーンが、スイーツを食べて泣いている。傍から見たらあまりにもおかしな光景であるにもかかわらず……その場にいた全員が、メジロマックイーンにつられ涙を浮かべ始める。

 

 どれほど、どれほどこの瞬間を待ちわびていたのか、想像することなど出来ない。少なくとも、メジロ家という名家の出身でありながら食堂で出されるレベルのチョコレートケーキで号泣できる位なのだ、並大抵の苦しさでは無いだろう。

 

 

 

「本当に……本当に頑張りましたね……!」

「イクノさん……ありがとうございます、私にっ、付き合ってくれて……!」

「何言ってるんですか……! そのくらい当然じゃないですか……!」

 

 

 

 席から立ち上がり、メジロマックイーンを抱きしめるイクノディクタス。鉄の女、などと言われている彼女も、この時ばかりはその涙を隠そうとしない。

 

 そんな彼女たちの感極まった様子に……皆が涙した。

 

 

 

「マックイーンさん……!」

 

 

 

 そして、そんな彼女の頑張りを応援し続けていたアグネスデジタルは、霊体になりながらも涙を流す。

 

 なお、皆長いこと泣きすぎて危うくアグネスデジタルが本当に死にかけたのは、また別の話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────深夜────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ……今日の作業はこのくらいにしておきましゅかね……」

 

 

 

 アグネスデジタルは電子パッド用のペンを充電器に差し、うんと伸びを一つ。今日あった出来事から得たインスピレーションを元にネームを書き上げていた。次の大型同人誌即売会で配布予定の作品だ。

 

 キリのいいところまで作業を進めた彼女は、卓上スタンドの明かりを消し、いそいそとベッドに潜る。今日は珍しく、アグネスタキオンが先にベッドに潜って寝ていたので、起こさないようにゆっくりと。

 

 

 

「ふぁあ……明日も素晴らしい一日になるといいなぁ……」

 

 

 

 一つ大きな欠伸をした彼女は、そう言い残して目を閉じる。

 

 こうして、アグネスデジタルの一日は、ゆっくりと終わっていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌朝、アグネスデジタルは冷たくなった状態で発見された。

 

 彼女のベッドには、自分の血で『夢の中とはいえスぺスズの間に割って入った私を許してください』という、意味不明な遺言が記されていたという。

 

 

 




ご閲覧ありがとうございます。今回登場させた三CPは、自分のお気にいり三つです。みんなも狂おうよ。

感想、評価、お気に入り登録等していただくと、ムキムキになれます。特に……お気に入り登録、なんかどうっすか?

それでは、また次回。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。