最後に必ずデジたんが尊死する小説   作:コロリエル

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どうも、評価バーに色が着きました。皆さま、評価ありがとうございます。次の目標はこの作品を評価バーを真っ赤にできるくらいの作品にすることです。

今回、ギャグです。今までとは温度差がやばいです。


マクイクはお互い恋愛初心者だと二度おいしいんですよ(確信)

 

 気になっている人がいる。

 

 その事にターフの名優、メジロマックイーンが気付いたのは入学三ヶ月後。いつも通りターフの上で汗を流していた時だった。

 

 遠くを走るその少女は、よく見知った顔だった。毎日のように部屋で顔を合わせているし、当然彼女のことは他の人よりは詳しく知っているつもりだった。

 

 しかし、その日の彼女──ひたすら前を向いて走り続ける彼女のことを、メジロマックイーンは知らなかった。

 

 切れ長の目はいつもよりもずっと歪み、苦しさの中でひたすら自分を追い込み続けながら走る。足の取られるダートコースはやはり相当の負荷なのだろう……しかし、彼女は決して首を下げなかった。

 

 普段の冷静沈着、といった様子が感じられない、ウマ娘の本能剥き出し。勝利への執念から来るその横顔。

 

 気がついたら、彼女のその横顔から、目が離せなくなっていた。その時は足を止めた彼女を不審に思った担当トレーナーが声をかけるまで、ずっと彼女のことを見ていた。

 

 それからというもの……彼女のことを、ずっと目で追っていた。

 

 寮の部屋が同室だから、毎日のように見ていた。まるで甘さ控えめのしっとり食感のクッキーのように、どれだけ見つめていても飽きることは無い。視線に気づいたイクノディクタスが、困ったように微笑むと、メジロマックイーンはそれだけで一日の疲れが吹き飛ぶような感覚になる。

 

 はて、これは一体なんなんだろうか。メジロ家の令嬢として育てられたメジロマックイーンは、その感情に名前をつけることが出来なかった。

 

 

 

「──という感じなのです」

「……」

「……」

「……」

 

 

 

 メジロマックイーンは、そのことを全く包み隠さず、信頼している人物……ゴールドシップ、トウカイテイオー、ライスシャワーに話した。

 彼女たちならば、満足のいく答えを出してくれるのでは……そう考えたがゆえの行動だったが、返ってきたのは完璧な沈黙だった。

 

 トウカイテイオーは顔を真っ赤にし、ライスシャワーは耳としっぽをぶんぶんと振り回し、あのゴールドシップすらも困惑していた。現在地は昼休みの食堂。相談内容から考えて、場所も時間帯も完全に場違いであった。周りのウマ娘たちは、一様にメジロマックイーンの話に耳を傾けていた(物理的にも)。

 

 

 

「なぁ、マックちゃんよぉ……お前、マジで気づいてねぇの?」

「? 何がですの?」

「ぴぇ……」

「ま、マックイーンさん……嘘、だよね……?」

 

 

 

 メジロマックイーンの一言に、三人はますます困惑した。どこからどう考えても結論などとうの昔に出ているはずなのに、それに彼女は全く気付いていない。話を聞いていた三人は一瞬で分かったというのに。

 そんな三人の反応に、ますます首を傾げるメジロマックイーン。こてんと頭を斜めにしているその様子は、流石絵になっていた。

 

 三人は一様に頷きあい、その場を一旦離れて別のテーブルで何やら作戦会議を始めた。

 

 

 

「これ……言うべきなの? 言わないべきなの?」

「いや……本人が自力で気付かないと意味無くね?」

「……あ、あの……遠回しに少女漫画渡すってのは、どうかな……?」

「ありかも……マヤノ辺りに言ってみる?」

「よし、んじゃアタシは映画でも見せるかな……チョー大人向けのラブロマンスなんでどうだ?」

「いや……ダメだと思うよ……?」

 

 

 

 こんな激しい論争が繰り広げられている様子を、メジロマックイーンは一人紅茶を飲みながら待っていた。きっと素晴らしい三人のことだ。何かしらの答えは出してくれるだろう。

 

 しかし……事態は思いもよらぬ方向へと進んでいく。

 

 

 

「あ、ここに居たんですか、マックイーンさん」

「あ! イクノさん、どうされたんですの?」

 

 

 

 まるで大好きな苺のショートケーキを目の当たりにした時のような……いや、その時以上の輝きを持ってメジロマックイーンは声を掛けてきた少女……イクノディクタスに向き直る。彼女の手には何冊かのノートが握られていた。

 どう考えてもそうじゃねぇか。その様子を見ていた三人の気持ちが一致する。しかし、嬉しそうなのはメジロマックイーンだけでなく……話しかけたイクノディクタスもまた、気分が高揚しているように見受けられる。

 

 イクノディクタスは、手にしていたノートをテーブルの上に置く。その瞳は真っ直ぐメジロマックイーンを捉えており……というか、他のものが全く見えていないようにも見えた。

 

 

 

「実はですね……最近、マックイーンさんから目が離せなくなってるんですよ」

「へ?」

「は?」

「え?」

「ふぇ?」

 

 

 

 完全に予想外の一撃。メジロマックイーンのみならず、後ろで様子を固唾を飲んで見守っていた三人も同様に、間の抜けた声を出してしまう。

 

 そんなことは目に入っていないのか、イクノディクタスは興奮冷めやらぬといった様子でメジロマックイーンの手を取る。握られた掌から伝わってくる熱量が、あまりにも心地いい。

 

 

 

「ルームメイトとして生活して約三か月。ある時からマックイーンさんから目が離せなくなってしまったんです。トレーニング中に走っている真剣な様子、食堂でご学友と食事を取っている和やかな姿、部屋でくつろいでいる時のリラックスした表情……そのどれからも、全く目が離せないんです。貴方の姿が見えない時は、今マックイーンさんは何をしているのだろうかだとか、今も真剣に練習に励んでいるのだろうかとか、貴方の事が頭から離れないんです」

 

 

 

 これが、『掛かる』ということである、と後にゴールドシップはトウカイテイオーとライスシャワーに語った。

 ぶんぶんと激しく尻尾を振り続けるイクノディクタス。これがレースだったら最後の最終直線で使う末脚が無く、ずるずるとバ群に沈んでいく、というのがオチだろう。

 

 しかし、イクノディクタスにとって幸運だったのが、このレースに出走しているのは自分ともう一人だけという究極のマッチレースであったということが一つ。

 

 もう一つはというと……。

 

 

 

「まぁ! イクノさんもですの!?」

 

 

 

 対戦相手のメジロマックイーンもまた、掛かってしまっている、ということである。

 

 お前の尻尾は扇風機か、と言わんばかりにぐるんぐるん回る尻尾。宙に舞い始める大量のハートマーク、ピンク色に染まっていく空間。

 

 その二人を見ていた周囲は……あまりの光景に皆後ずさりしていた。もう一度言う、ここは食堂である。

 

 

 

「私も最近、イクノさんのお姿を見るだけで幸せな気持ちになってしまうんです! 真剣にデータ分析をしているお姿、歯を食いしばってダートコースを走る姿……目が離せなくなってしまうんですわ!」

「……! そうでしたか! よかった……私だけだったらどうしようかと」

 

 

 

 もう、二人の障害はどこにも無い。平地レースに出走する二人ではあるが、今なら障害レースに出ても全く問題なく走ることができそうである。

 

 さて、このレース展開、どう考えても最後の直線である。ゴールインは目の前、後は全力でゴール板の前を通過するのみ。それでひとまずの決着を迎える……誰もが、そう考えていた。

 

 しかし、この二人は盛大に掛かっていた。

 

 

 

「それでは、これからは思う存分見てもよろしいですか?」

「えぇ、勿論ですわ! 私も思う存分見させて頂きますわ!」

 

 

 

 ──。

 

 ────。

 

 ──────。

 

 ────────ん?

 

 食堂全体の声が──食事に夢中になっていたオグリキャップとスペシャルウィーク以外──が、皆自らの耳を疑った。

 

 この二人は、この期に及んで一体何を言っているのだと。いや、メジロマックイーンは百歩譲っていい。自分の感情に名前を付けられていないという、中等部の少女としてそれはどうなんだと言いたくなるような状態だから。

 

 だが、どう考えても今の流れは告白してうまだっちしてうまぴょいだろうと、誰もが思った。

 

 そして、一番最初に結論に至ったゴールドシップが、まさかと思いながらイクノディクタスに声を掛ける。いや、まさか、あの聡明なイクノディクタスに限って、そんなことは……と、自分の結論が間違いであってほしいと願いながら。

 

 

 

「な、なぁ、イクノ……お前、分かってないのか?」

「? 何がですか?」

「そ、そのマックちゃんをずっと見ていたいっていう感情がなんなのかだよ!」

「え? ……さぁ?」

 

 

 

 その首の傾げ方は、先程のメジロマックイーンと瓜二つであった。

 

 次の瞬間、食堂に居た全ての人間──例によってオグリキャップとスペシャルウィークを除く──が、その場に盛大にずっこけた。

 

 二人とも掛かりすぎて、最後の直線を駆け抜けない。二人できゃっきゃきゃっきゃと、遊び始めた。

 

 かくして、二人は両想いになった──と言っても、お互いに自分の気持ちの正体が分かっていない、お互いにいくらでも見つめあえるという謎の関係であるが。

 

 傍から見たらどこからどう見てもバカップルだし、実際ピンク色の空気を醸し出すのに、カップルではないという、あまりにもタチが悪すぎるモンスターが誕生してしまった。

 

 

 

「がはっ──!」

 

 

 

 普通の人間なら、この問答に多大なる疲労感を覚えるだろう。しかし、特殊な訓練を積んでいた少女──皆のアグネスデジタルは、その光景にすら吐血する。

 

 それに気づいたゴールドシップは、床に伏せてしまったアグネスデジタルを起こす。しかし、その口や鼻からは相当量の出血が確認できた。

 

 

 

「おい、デジタル! しっかりしろ……っ! お前が死んだら、誰が世界中のウマ娘のCPを見届けるんだよ!」

「あ……ゴールドシップさん……すいません、あたしは……ここまでのようです……まさか、こんな両想いCPがこの世には存在するとは……あたしも、まだまだです……ごほっ、げほっ」

「何言ってんだ……!」

「そ、そうだよ……! デジタルさんが居なくなっちゃったら……!」

「あぁ……このあと、二人が……じかくしたとき、どうなるのか……tみたか、った、な…………」

「おい……デジタル……? デジタル……目を覚ましてくれよ、でじたるぅ……でじたるうううううううううううううううううううううううううううううううっ!」

「……え、何これ」

 

 

 友人の死を悼むゴールドシップ、いやいやと、首を振りながら、既に血の気が引いてきたアグネスデジタルの手を握るライスシャワー。一体何が起こってるのか一人だけ分かっていないトウカイテイオー。二人だけの世界に入っているメジロマックイーンとイクノディクタス。

 

 そんなカオスに包まれながら、アグネスデジタルはゆっくりと目を閉じた。

 




ご閲覧ありがとうございます。いつか甘々なの書くから許して()。だって、閃いちゃったのがこれなんだもん。

感想、評価、お気に入り登録等していただけると、タマモクロスが来ます(自分は来ました)。

それでは、また次回。
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