この作品をクリスマスないしクリスマスイブに見ている方々、ともに頑張りましょう。
キタサトちゃん、幼少期バージョンです。
「んぁらぁんらららん、らぁんらららぁん、らぁんらららん、らぁんらららんん」
「それ、なんか怖い……」
何やらおかしなメロディーを口ずさむのは、トレセン学園近くの小学校に通っているウマ娘の少女、キタサンブラック。所々こぶしが効いているのは、大好きな祖父の影響であろう。
その隣にいるのは、サトノダイヤモンド。良家の令嬢であり、少しおとなしそうな子だ。少し突っ走ってしまうところのあるキタサンブラックを止める役割もしている。
彼女たちは傍目から見ても本当に仲が良く、何処に行くにも常に一緒。ずっとぴっとりくっついている。冬は寒さも相まって、より距離が近い。
今も、二人は寄り添って手を握りながら歩いている。道ですれ違う人々が、二人を微笑ましく見守っていた。
「あはは……今日クリスマスだから、つい……」
「そ、そう……今日はクリスマスイブ、だよ?」
あれ? と首を傾げるキタサンブラック。今日が本番じゃないの? と口にしている彼女だが、実際世間は当日より前日であるクリスマスイブの方が盛り上がっている。
彼女の浮かれようも分かると言えば分かる。しかし、一応サトノダイヤモンドは正しておく。
「そっか……でも、こんなにキラキラしてるよ?」
「そ、そうだね……じゃあ、それでもいい、かな?」
キタサンブラックは両手を広げて、クリスマスカラーに染まっている街を見る。本日は十二月二十四日。クリスマスイブである。
二学期最終日を終えた二人は、その足でそのまま街へと繰り出していた。
クリスマスイブ。街は確かに普段とは違う雰囲気に包まれていた。
「ねぇ、ダイヤちゃん! サンタさんだよ、サンタさん!」
「わぁ……サンタさんだぁ!」
店の売り子をしていたサンタの着ぐるみを発見した二人。やはりまだ年相応に子供である彼女たちは、サンタさんに一目散に駆け寄る。サンタさんもそんな彼女たちのことを温かく出迎える。
ひしっ、とサンタさんに抱きつく二人。店先でケーキを販売していた女性も、その微笑ましい光景に自然と頬が緩む。
女性は二人に近寄ると、手に持っていたおまけ用のキャンディーを一本ずつ彼女たちの前に差し出す。
「メリークリスマス! よかったらどうぞ? 私とこの店のサンタさんからのクリスマスプレゼントだよ!」
「いいんですか!?」
「ありがとうございます!」
満面の笑みを浮かべ、そのキャンディーを受け取る二人。そんな彼女たちの頭を、着ぐるみのサンタが優しく撫でている。
皆が皆優しい、幸せな世界がそこにはあった。
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「「響けファーンファアレー、届けゴールまでー、輝くみらーいを、きみーとーみーたーいーからー」」
「「……」」
「「……えへへっ」」
公園のベンチで、二人揃って貰ったキャンディーを舐める。言ってしまえば砂糖の塊だが、それだけでうれしい気分になれるのだから子供というのは幸せだ。
普段と比べて、街が一段と優しかった、とキタサンブラックは今日のここまでを振り返る。
商店街の人達は普段よりも明るい表情で歓迎してくれた。お菓子をくれた人も居るし、くじ引きをさせてくれた人も居た。
二人はそんな優しさに触れ、胸の中に暖かな気持ちが広がっていく。クリスマスって凄い、とキタサンブラックはサトノダイヤモンドに笑いかける。
ぱくり、と小さくなってきたキャンディーを口に咥える。メロン風味の暴力的な甘さが、口の中に広がっていった。
「今日は、すっごく楽しかったね!」
「うん! 商店街もすっごいキレイだったし、お店の人も凄い優しかったね!」
「サンタさんも優しかったし、クリスマスプレゼントまで貰っちゃった!」
「サンタさん、いっぱいいたね!」
街中の皆が、サンタさんになったみたいだと、サトノダイヤモンドは笑っていた。赤いサンタさんの服は着ていたが、白いお髭や髪は生えていない。トナカイさんもソリも無いが、確かに皆サンタさんだった。
「うんっ! クリスマス、最高だね!」
最高に楽しい。毎日がクリスマスだったらいいのに。
キタサンブラックは、実に子供らしい可愛らしいことを考えていた。誰もが一度は夢見たのではないかという、そんなありえない妄想。
子供の今だからこそ許される、そんな妄想。
「それじゃあ、私もサンタさんになるね!」
そんな妄想に浸っていたキタサンブラックを現実に引き戻したのは、紛れもない彼女の大切な友人だった。
え、と彼女が呆気に取られていると、サトノダイヤモンドはランドセルの中から小さな袋を取り出した。綺麗にラッピングされ、リボンが巻かれたそれは、一目見てクリスマスプレゼントだと分かる。
サトノダイヤモンドは満面の笑みで、その小包を大好きな友人に手渡す。
「キタちゃん、メリークリスマス!」
「……え、いいの?」
「うんっ! キタちゃんに絶対似合うって思ったんだ!」
「……ありがとう、ダイヤちゃん!」
手渡された小包には、そんなに大きなものは入っていない。似合うと言っていたから、きっとアクセサリーの類なのだろう。
キタサンブラックは、ただただ驚いていた。まさか、彼女が自分と同じことを考えているとは思っていなかったから。
キタサンブラックはその小包を一旦膝の上に置くと、そのまま自分のランドセルの中から彼女のものとよく似た小さな小袋を取り出し、サトノダイヤモンドに向かって差し出した。
「実は、私も持ってきてたんだ! ダイヤちゃん、メリークリスマス!」
「えっ、キタちゃんも?」
「うんっ! 絶対、ダイヤちゃんに似合うって思ったんだ!」
「あ、ありがとう! キタちゃん!」
サトノダイヤモンドは今日一番眩しい笑顔を見せていた。当たり前だ、世界で一番大好きな友達からのプレゼント、嬉しくない訳がない。
サトノダイヤモンドはキタサンブラックからクリスマスプレゼントを貰う。どこかで持ったことのあるそれは、よく知っている重さと形をしていた。それは、キタサンブラックも同じだった。
「……ねぇ、キタちゃん。今ここでさ、二人で開けない?」
「……そう、だね!」
二人は頷き合うと、丁寧にリボンを外し、中身を取り出す。
案の定、その中身は二人がよく知っているものだった。
「……あはは、こんなこと、あるんだね」
「ふふっ……そうだね」
全く同じペンダントが二つ。蹄鉄の形を模したペンダント。
二人が相手のために少ないお小遣いを使って用意したプレゼントは、二人とも全く同じものだった。キタサンブラックが用意したものが黒色、サトノダイヤモンドが用意したのが緑色と、色違いであること以外は全く同じ。
よくよく見れば、ラッピングも非常に似通っていた。下手したら……いや、間違いなく同じ店で購入したものだった。
二人で顔を見合せ……同時に吹き出す。
「あははははっ! 二人で同じもの買うって、凄いね!」
「ふふふふふっ! そうだねっ……ねぇ、キタちゃん、そのペンダント、私に付けて?」
「じゃあ、ダイヤちゃんも、私に付けてよ!」
二人は一旦相手に渡したプレゼントを交換し、お互いに封を開ける。中身を取り出し、まずはキタサンブラックがサトノダイヤモンドの首にペンダントを付ける。続いて、サトノダイヤモンドがキタサンブラックに。
二人の胸に、お揃いのペンダントが揺れる。
「似合ってるよ、キタちゃん!」
「ダイヤちゃんこそ……えへへ、お揃いだね」
「うんっ!」
照れ臭くなったキタサンブラックと、サトノダイヤモンド。
小さなサンタが二人、仲良く笑っていた。
「耐えろっ……耐えろわだじぃ!」
その様子を見かけていた、サンタコスでバイトをしているウマ娘が一人。ウマ娘を追い求めるもの、アグネスデジタルである。
普段の彼女なら、ウマ娘の尊い場面を見たら、すぐに昇天してしまいかねない。それこそ、目の前で繰り広げられているキタサンブラックとサトノダイヤモンドのやり取りなど、大好物だろう。
しかし、これで尊死する訳には行かない。
「ロリでっ……ロリではダメだっ……! ロリで尊死するのは、ロリへの未来の侮辱っ……!」
Yesロリータ、Noタッチ。
彼女はその教えを確かに受け継いでいた。だから、これで昇天するのはダメだろうと、彼女は鋼の意思で自らの魂を肉体に繋ぎ止めていた。
……そして。
「……数年も待つとか、無理でしゅっ!」
なんとも情けない辞世の句とともに、彼女は鮮血を吐き出しその場にゆっくりと崩れ落ちる。元々赤かったサンタ服が、より鮮やかな赤色に染る。
肉体から離れて天へ向かうアグネスデジタルの魂を、ソリに乗り空を飛んでいたサンタが目撃した。
キタサトがずっと幸せになるボタン
ご連絡ありがとうございます。先に予告しておきますが、明日のクリスマスはトレセン学園入学後のキタサトです。乞うご期待。
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それでは、また次回。