最後に必ずデジたんが尊死する小説   作:コロリエル

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どうも、エフフォーリア強すぎません? どうやって勝つんですかあの馬に。

甘さ控えめミホライです。


ミホライは少年ジャ〇プのような熱さがあるのもまた一興(提言)

 

 

 

 普通なら、彼女ほどの実力者がオープンクラスのレースに出るなんてことは有り得ない。ジュニア級チャンピオンかつ、クラシック二冠と世代の頂点にもっとも近い少女であったと言っても間違いではない。

 

 しかし、彼女は怪我に悩まされた。そのせいでジャパンカップへの出走も断念し、長い療養生活へと入った。その間苦しんでいることは、トレセン学園中の誰もが知っている事だ。順調に回復して行ったが、再び怪我をしてしまった。一時は、引退が囁かれるほどの大怪我。

 

 しかし、それを『サイボーグ』は、『坂路の申し子』は乗り越えた。

 

 今日は、復帰戦。福島レース場のオープンクラスに、彼女……無敗の二冠ウマ娘、ミホノブルボンが出走する。

 

 

 

「……ブルボンさん」

 

 

 

 彼女の控え室の前。黒い髪のウマ娘──ライスシャワーは、その手を扉に伸ばしかけた所で、止まっていた。

 何か声をかけよう……パドックでのミホノブルボンを見た後、居てもたってもいられなくなったライスシャワーは、一旦控え室に戻ったミホノブルボンの元を出向こうとした。

 

 しかし、直前になってどんな声をかければいいのか分からなくなった。

 

 練習でも、よく併走を共にした。日常生活での手助けもやってきた。彼女の手伝いを一番行った人物は誰かと聞かれたら、皆口をそろえて「ライスシャワーだ」と言うだろう。

 

 なぜ彼女がそこまでミホノブルボンを助けるのか……それは、彼女達の関係を知っているものであれば、想像は容易である。

 

 罪滅ぼしに近い感情なのだろう。ある程度の折り合いは付けているとはいえ、捨てきれない感情というのは存在する。それに、ライスシャワーには夢がある。そのために、できることをしていた。

 

 

 

「……ブルボン、さん……」

 

 

 

 ノックしようと伸ばした手が、空中で迷う。声を掛けるべきなのかそうでないのか、掛けるとしてもどんな声を掛ければいいのか。激励? 懇願? 希望?

 

 どうすればいいのか分からなくなった時、ライスシャワーは動き出すのが難しい。これまでだって、そうだった。

 

 

 

「ライス?」

「ひっ!?」

 

 

 

 彼女が動き出したのは、手洗いから帰ってきたミホノブルボンに声を掛けられた時だった。

 耳としっぽが天を向く。振り返った彼女の目の前には、首を傾げたミホノブルボン。右膝や右足首には黒色のサポーターが巻かれており、未だに痛々しい。

 

 しかし、それでも彼女は、再びレース場に帰ってきた。

 

 

 

「応援に来てくれたのですか。ありがとうございます、ライス」

「う、うんっ……ぶ、ブルボンさん。脚は……大丈夫?」

「ええ、問題ありません。流石にまだ全盛期ほどの走りとは言えませんが……十分走れます」

 

 

 

 何度かその場で腿上げをしてみせ、自分の脚が問題ない事を見せつけるミホノブルボン。彼女に問題が無いのはライスシャワーだって知っている。ずっと間近で見てきたのだから。

 

 しかし、だからといって心配ではないという訳では無い。どれだけ心配しても、し足りないくらいなのだ。

 

 ライスシャワーの心配するような目線に気付いたミホノブルボンは、笑った。

 

 表情があまり変わらないと言われ、だからこそサイボーグなどと言われていたミホノブルボンが、笑った。

 

 

 

「こんな所で、負ける訳には行きませんから。また、ライス、あなたと……走るために」

「っ……うん、そうだよね……ライスも、今度の天皇賞……絶対勝つから……! ブルボンさんも、絶対勝って……!」

「ええ……それでは、行ってきます」

 

 

 

 ミホノブルボンは一つ、静かに頷くと、そのまま本バ場入場の為に地下通路を通っていく。

 

 その背中には、九の数字のゼッケンがあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ミホノブルボン先頭! ミホノブルボン先頭! 二冠馬の復活だ、サイボーグの復活だ! その差は四馬身、五馬身、全く縮まらないっ! 今、一着でゴールインっ!』

 

 

 

 アナウンサーの実況が、レース場に響いた。オープン戦にしては多い観客から、まるで怒号のような歓声が沸き起こった。

 

 怪我の影響なんて欠片も感じさせない、圧倒的かつ正確無比な逃げ。

 

 皆、怪我に苦しんだ二冠馬の復活に酔いしれていた。

 

 ライスシャワーは、そんな中一人、ただただ走り終わって膝に手を着いて息を整えていたミホノブルボンを見つめていた。

 

 

 

 ──無理だ。

 

 

 

 察した。察してしまった。あんなに強かったミホノブルボンが、たった千六百メートルのマイル戦でスタミナを消費しきってしまった姿で。

 平均ラップがダービーの時に比べて全体的に落ち込んでいる結果で。

 

 彼女が、もうG1クラスのレースで戦う力が残っていない事実に。

 

 

 

「……ブルボン、さん……」

 

 

 

 だけど、ミホノブルボンは下を向かない。自分の勝利を喜んでくれているファンのために顔を上げ、無表情だが手を振って応える。

 やがて、彼女は最前列でレースを観戦していたライスシャワーを見かけると、彼女の元へとかけていく。

 

 

 

「ライス……言ったでしょう? 大丈夫だって」

 

 

 

 その表情は、先程までの無表情では無い。興奮しているような、困惑しているような。

 勝ったから、ライスシャワーが喜んでくれるものだと思い込んでいた。半分くらいはライスシャワーが喜ぶ顔が見たくて、走っていた節があった。

 

 しかし、蓋を開けてみればどうだ。彼女は今にも泣きそうな顔でミホノブルボンを眺めていた。

 

 

 

「ぶ、ブルボンさん……おめでとう、凄かったよ!」

「……やはり、ライスの目は誤魔化せませんね」

 

 

 

 彼女は冗談が、嘘が下手だ。あまりにも素直に世界の全てを受け取ってしまう。それが彼女の素晴らしい長所であり、あまりにも心配な短所である。

 ミホノブルボンは外ラチを飛び越え、更にライスの傍に近付く。彼女の右足はやはり無茶をしていたのか、僅かに震えていた。

 

 彼女が飛び越えたことに、周りの観客はざわめき始める。そんな事意に介せず、ミホノブルボンはライスシャワーの目の前に立つ。

 

 

 

「あなたの思う通りです。だけど……私は、絶対に諦めません」

 

 

 

 まだ後ろに自分が負かせたウマ娘が居るからか、彼女はあえて言葉を濁した。しかし、ライスシャワーには気付かれているという前提で話を進める。

 

 ミホノブルボンの表情は、あまりにも強い。有無を言わせぬ、圧倒的なまでの覇気。レース中なんかよりも強いその空気感に、ライスシャワーは勿論、その周りの観客も思わず黙り込む。テレビ中継のカメラが、そんな二人にアップで寄る。

 

 

 

「私は、年末の有記念を目指します。そこで……ライス、貴方に勝ちます」

 

 

 

 その一言は、その場にいた全員を動揺させるのには十分な威力を持っていた。

 

 テレビのマイクにもその音は拾われており、放送を見ていた人間全てがその発言を知ることになる。

 

 

 

「ぶ、ブルボンさん……」

「だって……トウカイテイオーが、私よりもどん底に居たトウカイテイオーが復活できたのです。私にできないなんて、言えないでしょう」

 

 

 

 トウカイテイオーの復活劇。

 

 トゥインクル・シリーズを見ていたものなら知らない人間なんていない奇跡。それには及ばないにしろ、それに近い奇跡を起こすと、ミホノブルボンは言い切った。

 

 無理だと、普通なら言えるだろう。

 

 無茶だと、普通なら言えるだろう。

 

 だが……奇跡とは、起こるから奇跡なのだ。

 

 そんな事できっこないと言える人間は……誰も居なかった。

 

 

 

「ライス。あなたが今苦しんでいることは知っています。ですが……私は、乗り越えてみせました。ライスも、貴方も絶対に乗り越えられます。だから……二人で見せてやりましょう。『奇跡』を」

 

 

 

 ──どうすればいいのか分からなくなった時、ライスシャワーは動き出すのが難しい。これまでだって、そうだった。

 

 だけど、そんな時に決まって背中を押してくれたのは……目の前で彼女にだけその柔らかい笑顔を見せる、ミホノブルボンだった。

 

 彼女のために走った時、ライスシャワーは異常な強さを発揮する。それこそ、史上最強のステイヤーと言われたメジロマックイーンに土を付ける程の。

 

 だから、ライスシャワーは、もう迷わない。

 

 

 

「……うんっ! 約束だからね? 絶対……有記念出戦おうねっ!」

「はい。約束です。嘘ついたら坂路千本です」

「は、針千本じゃないのぉ……!」

 

 

 

 二人はフェンス越しに手を伸ばし合い、小指同士を絡め合う。

 

 十ヶ月後……宝塚記念を乗り越えたライスシャワーと、天皇賞・秋を制したミホノブルボンが、暮れの中山に揃うことになるが、それはまた別の話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「誰かっ、救急車っ! ウマ娘が倒れてるっ! あなたはAEDをっ!!」

「ぐふっ……私の思惑通りでしたっ……ミホライは、少年ジャ〇プだって……グフッ」

「何言ってるんだキミは!」

 

 

 

 その頃、レース場の外に設置されたパブリックビューイングでは、それを見ていたウマ娘──毎度おなじみアグネスデジタルが、そんな二人の様子をみて号泣しながら吐血し、一時騒然となったのであった。

 




ご閲覧ありがとうございます。ミホライはね、熱いんですよひたすら。みんなもアニメ二期を見よう!

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それでは、また次回。
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