最後に必ずデジたんが尊死する小説   作:コロリエル

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どうも、今日はほったらかしにしていたウマ娘小説を更新しました。よければ見てね。

『アグネスタキオン、ダイワスカーレットのトレーナーになる』
https://syosetu.org/novel/275954/



オペドトウは最初絶対一方的な感情なんですよぉ(悔み)

 

 

「で? 勝算はあンのかよ」

 

 

 

 遂に今週末に迫った有記念。同室の彼女──エアシャカールは自身のパソコンに今回出走するウマ娘達のデータを眺めながら姿見の前でソワソワしている少女に語りかける。

 話しかけられた少女は、手に持っていたブラシを台の上に置く。普段はオドオドとしており、自信が無さげにずっと下を向いている少女。

 

 しかし、彼女──メイショウドトウは、今この時に限ってはそんな様子は一切見せていなかった。

 

 普段は丸まっている背筋は伸び、垂れている瞳は少しつり上がっていた。

 

 彼女が今思い浮かべているのは、彼女がこの一年辛酸を嘗めさせられ続けている少女……メイショウドトウとは何もかもが正反対の少女のこと。

 

 

 

「……多分、他の皆さんは、彼女を徹底的にマークすると思いますぅ。絶対に勝たせるものかって……」

「ま、そーだろな。オレがトレーナーでもそう指示する。実際大半のウマ娘はそうするんじゃねェの?」

 

 

 

 ま、しない奴もいンだろ、と言いながらエアシャカールは緑の勝負服が印象的な気高きウマ娘を指差す。とてもでは無いが、彼女がそんな行為に出るとは思えない。

 彼女が慕われ、敬われる理由の一つだ。実際エアシャカールもそのウマ娘の事は少なからず好意的に思っている。

 

 そして、彼女以外にそんなことをしないであろうウマ娘が一人。

 

 

 

「私は……しません。いつも通り、後方で脚を溜めて……外から差し切ります」

 

 

 

 メイショウドトウは、ハッキリと言い切った。

 宝塚記念、天皇賞・秋、ジャパンカップ。

 

 年内のシニア級中長距離G1の内三戦で二着に入着している。それだけ見ればあと一歩勝てない、善戦ウマ娘といった印象だろう。

 しかし、問題はその一着のウマ娘。

 

 今年度の戦績が、現時点までで七戦七勝G1四勝。シニア級中長距離G1を全て勝ちきっている、トゥインクル・シリーズの頂点に立つウマ娘。

 

 テイエムオペラオー。

 

 メイショウドトウは、共に出走したレースで全て、彼女の二着に甘んじていた。

 

 だからこそ、この一戦にかける思いは他のウマ娘と比べても人一倍大きい。にもかかわらず、彼女は一番勝率が高くなるであろう戦術は取ろうとしない。

 

 

 

「ま、オレは止める資格なんざねェけどよ……」

「ロジカルじゃない、ですよね?」

「分かってんじゃねェか。じゃ、オレは何も言わねェ……今日は早く寝ろよ。オレはもうちょい作業してっから」

「はい……少し、御手洗行ってきますぅ」

 

 

 

 ため息を吐きながらパソコンでの作業に戻ったエアシャカールを尻目に、メイショウドトウはトイレへと向かう。やはりエアシャカールさんはいい人だな、とメイショウドトウは内心で静かに思う。本人に言っても頑なに認めようとはいないのだろう。

 

 部屋から出て、トイレへと向かう。年の瀬ともなると寒さは厳しくなり、思わずぶるりと身震いする。

 

 早めに帰ろう……そう考えたメイショウドトウは、足早にトイレへと向かう。

 

 各階に複数個あるトイレのうち、一番部屋から近いトイレ。そこは既に電気が着いており、誰かが使用しているようだった。

 

 

 

「あれ……オペラオー、さん? って、どうしたんですかぁ、その顔っ!?」

「……っ!」

 

 

 

 夜遅くにもかかわらず、思わずそれなりに大きな声を出してしまうメイショウドトウ。

 そこに居たのは、メイショウドトウが今一番意識している相手、テイエムオペラオー。しかし、その均整の取れた美しい顔は左目の辺りを中心に酷く腫れ上がっており、眼帯やガーゼが貼られていた。

 

 一目見ただけで、尋常ではない様子が見て取れる。

 

 

 

「やぁドトウ! こんな夜にどうしたんだい? シンデレラは魔法が溶ける前に魔法使いの元へと帰らなければならないのだよ?」

「……どうしかんですか、その顔」

「何でもないさ! さ、ボクはこれにて失礼するよ。月と共に一晩を過ごすのも悪くないが、太陽もボクの事を待ちかねているのでね!」

「何でもない訳ないでしょうぅ……!」

 

 

 

 メイショウドトウを見た途端、テイエムオペラオーはその顔を隠すように立ち去ろうとする。が、メイショウドトウは彼女の前に立ちはだかるように道を塞ぐ。

 メイショウドトウに立ちはだかられては、如何に『世紀末覇王』と言えどもどうすることも出来ない。テイエムオペラオーはその場で一つため息。

 

 

 

「……今日、トレーニング後に事故があってね。幸い脚は大丈夫だが……左目が全く見えないんだ」

 

 

 

 オペラオーは素直に話す。事故の内容については詳しく話してくれなかったが、その顔を一目見れば、相当大きな事故だったのだろうと推測するのは容易だった。

 

 メイショウドトウはその場で固まる。倒したくて堪らない、超えたくて堪らない相手のその姿に、何も出来なくなる。片目が見えない状態でのレースなど、出来るわけもない。そうなれば、何のために有馬記念に挑めばいいのか、分からない。

 

 有馬記念で一着になることが目的なんかではない。テイエムオペラオーに、『世紀末覇王』に勝たないと意味が無いのだ。

 

 

 

「心配するな、ドトウよ! ボクは有記念には出走するさ! 安心してボクと共に最高の戯曲を演じようではないか!」

 

 

 

 だからこそ、テイエムオペラオーのその言葉はメイショウドトウを別の意味で硬直させた。

 

 テイエムオペラオーは何でもない、と言わんばかりに堂々と振る舞う。いつもの通りポーズを完璧に決めようとする……が、片目が見えないせいで洗面台に強かに右手を打つ。相当な勢いでぶつけたようで、テイエムオペラオーは苦痛に表情を歪める。が、それでもポーズを取るあたりは流石であった。

 

 

 

「な……にを言ってるんですか! 片目でレースなんて……へ、下手したら……し、死んじゃうかも知れませんよぉ!?」

 

 

 

 メイショウドトウは知っている。有記念がどれほど過酷なレースなのかを。

 

 メイショウドトウは知っている。片目が見えない状態で走ったことで、レース中に大事故を起こしたウマ娘が居たことを。

 

 メイショウドトウは知っている。テイエムオペラオーが出走すれば、周りのウマ娘はそんなことお構い無しに彼女を徹底的にマークすることを。

 

 それがいかに危険か、もはや語るまでもない。普通の状況なら、普通のトレーナーなら、そんなウマ娘を出走させるなど言語道断。

 

 

 

「……これからボクは、らしくないことを言う」

 

 

 

 普段から、堂々と、飄々と、華やかに。

 

 誰よりも輝き、誰よりも皆の注目を集める千両役者であろうとするテイエムオペラオー。常に不敵に微笑み、誰よりも『覇王』であり続けようとする彼女。

 

 そんな彼女が、まるで獣なのではないかと一瞬錯視するほどの獰猛な笑みを浮かべる。

 

 

 

「年間八戦八勝。シニア級G1完全制覇。ボクのトレーナーの、初めての有記念制覇。これらが掛かった有記念……そんな前人未到の地っ……このボクがっ! 切り開いてみせるっ! 例えキミ達の手によって道が閉ざされようが、そもそも前が見えなかろうが関係ないっ!」

 

 

 

 だからどうしたと、目の前の小さな少女は自分の顔の前で掌を握り締める。手をわなわなと震わせ、その瞳には今までとは違う種類の闘志が宿っているのが手に取るように分かった。

 

 その雰囲気に……まるでこの一戦で燃え尽きてしまっても構わないと言わんばかりのその雰囲気に、メイショウドトウは震えていた。

 

 いつも抱いている、失敗するかもしれないという漠然とした恐怖ではない、明確な恐怖。彼女は、目の前の栗毛の少女に、恐れなしていた。

 

 

 

「……暮れの中山で待ってるよ、ドトウ。ボクは、キミを……キミ達を、倒す」

 

 

 

 そう言い残したテイエムオペラオーは、立ち尽くしていたメイショウドトウの傍を通り抜けて行ってしまう。彼女の覇気に、思わず道を譲ってしまったメイショウドトウは……へなへなと、その場に座り込んでしまう。

 

 ──あれが、いつもキラキラしている、オペラオーさん?

 

 メイショウドトウの瞳からは、とりどめなく涙が溢れてきた。毎回毎回、彼女にあと一歩のところまで迫っていた。だからこそ、自分が一番『テイエムオペラオー』という輝きに近いと、勘違いしていた。

 

 ──遠い。あまりにも遠い。今の自分では、あそこまでの覚悟でレースに挑むことは出来ない。

 

 そのどうしようもない事実に打ちのめされたメイショウドトウは、ただただ呆然と涙をこぼすことしか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ひっぐ、えっぐ……メイショウドトウざん……っ!」

 

 

 

 その一部始終をしかと見届けていたウマ娘が一人。翌年の天皇賞・秋で大外から二人を捲るアグネスデジタルである。

 

 今回彼女は、確かに尊さを感じていた、が……それと同時にメイショウドトウの心中を察してしまい、血の涙を流していた。

 

 

 

「やっと……やっと届くと思っていた憧れの存在がっ……既に圧倒的な境地に達していたという絶望っ……! 自分では友人でもあるオペラオーさんの事を止めることが出来ないという無力感……っ! あぁ、なんて声を掛けたらっ……!」

「……掛けなくていいンだよ」

 

 

 

 しかし、そんな二人の様子を見ていたのはアグネスデジタルだけではなかった。

 

 彼女の後ろには、メイショウドトウと同室であるエアシャカールが立っており、アグネスデジタルの頭に手を置いてきた。

 

 

 

「ひょえっ!? シャカールさんっ!?」

「あれは、ドトウ自身の問題だ……オレらにゃどうこうしようもねーよ」

「し、しかし……」

「ドトウなら大丈夫だ」

 

 

 

 オロオロとし始めたアグネスデジタルだが、エアシャカールは自信に満ちた目で崩れ落ちていたメイショウドトウを見つめる。

 

 

 

「あいつは……絶対に乗り越える。乗り越えて……テイエムオペラオーに勝つさ。それは次の有じゃねェかもしれねェが、いつか必ず、な」

 

 

 

 その瞳には、メイショウドトウに対する確かな信頼が感じられた。まるでまるで当然、と言わんばかりにサラリと、しかし、絶対と言い切って見せた。

 

 結論から言うと……アグネスデジタルには、過剰摂取だった。

 

 

 

「だからお前もさっさと部屋に戻れ。またあのマッドサイエンティストが暴走して……おい? おいデジタル、どうした! しっかりしろ!」

「きゅう……」

 

 

 

 尊さの過剰摂取により、一撃で心肺停止に陥ったアグネスデジタル。

 

 エアシャカールさんの焦った顔とは、何と貴重なものを! ……アグネスデジタルは闇に解けゆく意識の中、最後にそんなことを考えていた。

 

 

 




ご閲覧ありがとうございます。完全な余談なんですけど、『有馬記念』を『有馬記念』に書き換えるのが地味にめんどくさいです。あと、読みやすいように行間を多めにしたりなどなど。そんなひと手間ひと手間が、この作品を作り上げております。

感想、評価、お気に入り登録等していただくと、スマホのバッテリーが復活します。

それでは、また次回。
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