古代戦士シンフォギア   作:超越の破壊者

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第一章月を穿てば恋実らぬ
第一話「未来を染める、漆黒の闇」


 

 

 

 かつて、この世界はたった一人の巨人によって滅ぼされた。全身に白く禍々しい鎧のような体つきをしている。所々からトゲのようなものがあり、胸の部分には青く光るカラータイマーがある。

 

 巨人は目の入るものすべて破壊した。時に拳で、時に足で、時に腕から放たれた黒い光線で。

 

 誰も巨人を止められる者はいなかった。巨人に挑んだ光の巨人達も、地上に出てきた怪獣達も、宇宙から侵略しに来た怪人達も、あの巨人の前には敵ではなかった。

 

 巨人はあらゆるものに恐怖を植え付けると突如その姿を消した。人々は驚愕した。なぜ急にいなくなったのか……それは誰にもわからない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 パタッと音をたてて読んでいた本を閉じる。

 

 大きく伸びをして椅子から立ち上がると左腕につけていた時計を確認する。

 

 11時30分

 

「おぉ、もうこんなにも時間が経ってたのか……」

 

 苦笑いを浮かべてしまう。昔からなにかひとつのことに集中すると時間を気にしないことが多い。

 

 もうすぐお昼になるな。早くお昼御飯を作らなくては……。

 

 ん?あぁ、自己紹介が遅れたね。初めまして、俺の名前は闇塚健吾(やみつかけんご)。ちょっと訳ありな部分もあるけど、それを抜きにしたら何処にでもいる普通の人間です。

 

 今は普通の一軒家に住んでいる。住人は俺を含めて二人。

 

「今から昼御飯作るけど、なにか要望あるか?」

 

 部屋を出て隣で寝ているであろう住人に声かける。色々訳ありで気軽に外に出られない住人さんは、隣の部屋で寝るかゲームするかのどちらかだ。

 

 昔はもっと大人しくて優しい子だったらしいが、何があったのかは知らないけどグレちゃってます。

 

「……別になにもいらない。お腹すいてない」

 

「そう言って昨日も食べてないでしょ?なにか食べなよ」

 

「うっさい!!今はなにもいらないって言ってるでしょ!」

 

 ドアを蹴られた。一応起きてはいるみたいだけど、機嫌はよくないみたいです。これ以上怒らせるわけにもいかないから俺だけ一階に下りる。

 

 トホホ、今日も一人飯か……。

 

 悲しんでも仕方ないと思ってぱっぱっと料理を作り上げる。今日はチャーハンを作ってみた。

 

 味は……うん、普通だ。次回また頑張ろうか。

 

 チャーハンを食べ終わってそんなことを考えていたら、二階からトントンと足音をたてて住人さんが下りてきた。

 

「おはようセレナちゃん。いや、時間的にこんにちはかな?」

 

「別になんでもいいじゃん……眠い」

 

 俺が住んでるこの家に住むもう一人の住人さんはセレナ・カデンツァヴナ・イヴ。偶然砂浜で倒れているのを俺が拾って以来、一緒に住んでる女の子。

 

 今は話とかもしてくれるけど最初はとても怖かった。何しろ警戒心が強くてちょっと近づいただけで殴ってきたから。理由を聞いても答えてくれない。

 

 まぁ、昔何があったのかだけは今も話してくれないけどね。話したくないなら聞かない。無理に聞くもんじゃないし。

 

「一応チャーハン作ってあるから食べといてね」

 

「……どっか行くの?」

 

 不安そうに聞いてくる。

 

「まぁね、今日はツヴァイウングのライブがあるんだ。近所のおばちゃんが偶然チケットを入手したみたいでね」

 

「ふぅん、そっか……行ってらっしゃい。私は寝てるから」

 

 苦笑いを浮かべてしまうよ。

 

「じゃあ、行ってくるね」

 

 そう言って俺は外に出た。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 やって来ました。ライブ会場。

 

 やっぱり人気があるだけあってたくさん人がいるわ。

 

 ツヴァイウングとは、風鳴翼と呼ばれる青髪の少女と天羽奏と呼ばれる赤髪の少女によるアイドルユニットだ。その二人が奏でる歌と躍りは様々な人の心を鷲掴みにした。

 

 世間ではツヴァイウングのチケットを一枚入手するのにとても時間がかかる。それほどまでに大人気なのだ。

 

「うへぇ、凄い熱気」

 

 まだ始まってすらいないというのに、会場は熱々だ。正直暑苦しいのは苦手なんだ。昔共に旅した仲間の口癖が「好敵手」って言う馬鹿がいて、そいつと同じぐらい今の会場は暑苦しい。

 

 いやまぁ、「エレガント」が口癖のアホは策士を名乗ってるくせに時々失敗したりするしキレたら超面倒くせぇし。

 

 いつもいつも俺に付きまとってきた女もウザかったな……あぁ、なんか話が変わってきたな。なんでライブ見に来たんだろう……?

 

『盛り上がっているかーー!!』

 

 昔のこと考えていたらいつの間にかライブ始まってるし……ふざけんな。

 

 ライブ衣装に付けられた白い翼を拡げながら降りてくる二人は、まるで天使のようだと誰もが思っていた。 奏と翼が地上に降り立ち、歌い始めると観客たちは更に色めき立つ。

 

 ライブ会場のボルテージは、最高潮に達していた。 天羽奏と風鳴翼──ツヴァイウィングの歌に魅入られた観客たちは、はち切れんばかりの歓声で歌い終わった二人に応えた。

 

『皆さん。今日はこのライブに来てくださり、本当にありがとうございます!』

 

『まだまだ宴は終わらないからな〜。みんな、最後までついてきてくれるかぁ?!』

 

『『『『『ツヴァイウィング!ツヴァイウィング!ツヴァイウィング!』』』』』

 

  異常な熱気で会場全体が盛り上がる最中、大勢の観客の中の一人で俺の隣に座ってサイリウムを握りしめていた少女が、瞳を輝かせながらツヴァイウィングを見つめていた。

 

 ツヴァイウングが奏で唄う歌の迫力に感動し、言葉がでなかった。

 

 最初はツヴァイウィングのことをよく知らなかったであろう少女が、今ではすっかり虜になってしまっている。

 

「これが、ライブ!これが、ツヴァイウィングの歌なんだ!!」

 

 今日この日の感動を絶対に忘れることはないだろうと──彼女は思っているだろうね。

 

  次の曲のイントロが流れ出し、他の観客に合わせてサイリウムを振るい、少女が精一杯の歓声を上げようとした瞬間、会場の中心が突如として……爆発した。

 

 あまりにも突然の事態に、会場全体が騒然として誰も動けずにいた。当然俺も流石に驚いて固まった。

 

 翼と奏も曲の流れを無視し、歌わず食い入るように爆心地を視線を向けていた。

 

 人々が混乱しながらも静寂とも呼べる空気が漂い始めた数瞬に、状況の変化に気づいたのは奏と翼だった。

 

 視界の端に風に流された煤を捉えて、二人の背筋が凍った。

 

「──これは、まさかっ」

 

「ノイズが、来る──!」

 

  二人の口から零れた言葉通り、爆心地の近くにいた人たちが炭素の塊に変えられて、粉塵となってその場で崩れ落ちた。

 

『の、ノイズだあっ』

 

  認定特異災害『ノイズ』。

 

  人類の天敵にしてこの時代最大の死の宣告者が、よりによって大勢の人間がいる中心に出現するという、最低最悪の状況が起きてしまった。

 

  観客たちは悲鳴を喚き散らしながら、ノイズたちから逃げようとする。しかし、無慈悲にもノイズは人々に死の魔手を伸ばした。近くにいる人間から片っ端に命を奪い尽くした。

 

  ノイズの発生源から離れていた一人の観客は思った。こんなに離れているんだから自分は逃げられる、と安堵して身を翻した途端、意識が途切れた。否、死んだ。

 

 その場にいた人間が、その人物の死に絶句しながらも思わず空を見上げてしまった。茜色に染まった空を悠々と飛行している、数多の飛行型ノイズの姿が確認できた。

 

 飛行型ノイズは高速で急降下を行うと、地上とは違い無差別に各所で観客を殺し尽くす。

 

 誰もが自分の命惜しさに我先にと出口に向かう。その場にいる家族や兄弟を見捨てて。

 

 俺はすぐに状況を把握しはぐれた子供がいないか確認する。普通の人よりちょっと視力がいい俺の目なら恐らく逃げ遅れて泣いている子供を見つけられるだろう。

 

「うえぇぇぇん!!ママーーーー!」

 

 いた! 俺は爆発的な身体能力でノイズに襲われそうになっていた子供のもとまで走り抱きつきながら転がる。

 

 そして、まだ誰もいない出口に向かって走るとそのまま扉を蹴り開ける。

 

「さぁ、早く行くんだ!」

 

「う、うん。ありがとう」

 

 涙を流している子供の頭を撫でて安心させるとすぐに次の場所に向かう。

 

 そして、見てしまった。つい先程まで隣でツヴァイウィングのライブに感動していた少女の胸から血が流れており、その近くでなにやらオレンジ色の鎧っぽいなにかを着た奏が唄を歌おうとしていた。

 

「その歌を歌ってはダメぇ!」

 

 その声を聞いた瞬間、俺の中でなにかが弾けた。

 

 俺は懐からブラックスパークレンスとトリガーダークキーを取り出すと、躊躇いもなくキーを押す。

 

『Trigger Dark.』

 

 ブラックスパークレンス《ハイパーガンモード》にトリガーダークキーを挿入しガンモードから変身形態スパークレンスモードにする。

 

『Boot up, Dark Zeperion.』

 

 俺の周りが暗い闇に覆われブラックスパークレンスを左手をゆっくりと前に、右手を顔の近くに持ってくる。

 

「未来を染める、漆黒の闇……!トリガーダーク!」

 

 そのままブラックスパークレンスを胸の前に持ってくる。

 

『Trigger Dark.』

 

 俺の身体は黒い闇に覆われ空へと飛んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   ~~~~

 

 

 

 全身がボロボロになりながら槍を空へ掲げた奏は、禁じられた絶唱を歌う。

 

 絶唱とは、 装者の負荷を省みずにシンフォギアの力を限界以上に解放する歌。増幅したエネルギーを、アームドギアを介して一気に放出する。その力の発現はシンフォギアごとに異なるが、共通して発生するエネルギーは凄まじく、ノイズを始めとするあらゆる存在を一度に殲滅し得る絶大な効果を発揮する。

 

  そのため、装者への負荷も、生命に危険が及ぶほどに絶大。反動ダメージは装者の適合係数の高さに伴って軽減されるが、そもそも適合率の高い適合者自体が稀でありLiNKERの負担や、追い詰められた状況で使用される負担やダメージもありいずれにせよ大きなダメージは避けられない。

 

 だからこそ本来歌うことは禁じられている。

 

(ゴメンな翼……お前を一人残すことになっちまって)

 

 本当なら奏もまだ死ぬのは嫌だ。だが、今自分が歌わなければたくさんの人が死んでしまう。だから――

 

「なっ!?」

 

 突然黒い闇が降ってくるなど誰が予想できようか。闇が地面に降り立った瞬間、凄まじい衝撃波が発生し絶唱を途中まで歌っていた奏の体を吹き飛ばした。

 

「な、なんだぁ!?」

 

 訳がわからず落ちてきた場所を見ると禍々しい鎧のような体つきをした戦士が立っていた。トゲのようなものがあり、胸の部分には青く光るランプのようなものもある。

 

『……』

 

 突然現れた戦士はゆっくりと後ろを向き、地面に座り込んでいる奏を見つめる。

 

「ッ!!」

 

 視線が重なった瞬間、奏の背中にゾッと冷や汗が落ちる。冷たく暗い目が自分を見つめている。

 

(……こ、怖い)

 

 戦士はそれ以上奏に対して関心を失ったのか、前を向くとノイズの方を見る。そして一方的な戦いが始まった。

 

 戦士が拳を振り上げればその風圧でノイズが消滅していく。戦士が大地を踏めばその衝撃でまた消滅する。

 

「つ、強え……」

 

 その凄まじい戦いに奏の瞳は戦士に釘付けになった。

 

 その一切無駄のなく隙のない身のこなし。

 

 空から強襲してきたノイズを掴み後ろから襲ってきた人型ノイズにぶつける。その後後ろ回し蹴りで数体のノイズを纏めて消滅させる。

 

「奏!大丈夫!?」

 

「翼か」

 

 今にも泣きそうな表情でノイズを斬り倒しながら駆け寄ってくる。

 

「あたしは大丈夫だ。中途半端に絶唱したせいでな」

 

「もう、あんな無茶はやめて!私は奏が亡くなった世界で生きられる自信がないの」

 

 奏に抱きつき声をあげて泣く。まだノイズが存在しいるというのに。

 

 だからこそ近くまで接近していたノイズに気づかなかった。

 

「ッ!!翼!」

 

「なっ!」

 

 だが、それは杞憂に終わった。目にも止まらぬ速度で走ってきた戦士がノイズを殴りつけたから。

 

 戦士はその後また無数にいるノイズの方に顔を向けると身体中から赤黒い電撃を放つ。

 

 そして、両腕を前方で交差させた後、左右に大きく広げてエネルギーを集約させ、L字型になるように腕を組む。すると腕から赤黒い色の光線が放たれる。

 

 光線は地上と空中にいるノイズ全てを飲み込み爆発させた。

 

「ははっ……マジかよ。あんなにもいたノイズを一人で倒しやがった」

 

 声が震えた。あまりの強さに、恐怖心が拭えなかった。

 

 突然戦士が奏の方を向き近づいてくる。その動作に翼がアームドギアを構えるが、翼のことなどお構いなしに目の前に来ると、手を胸の前に添える。そして青く光るランプ――カラータイマーから光を奏とその後ろにいる少女に向けて優しく放つ。

 

 光はたちまち二人の傷を癒していく。それを確認した戦士は奏達に背を向けるとゆっくりと歩き出す。

 

「ま、待て!お前は一体何者だ!」

 

 翼がそう声をあげるが、戦士はそれを無視して闇の中に消えていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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