俺と耳郎が連絡先を交換してから約2週間が経過。あれから耳郎とは何気ない日常の会話や、ヒーローへ向けての話を通話アプリで話を交わしたりしてなかなか充実した夏休みを送っている。そんな充実した夏休みを送っている俺はいま東京へ遊びに来ている。せっかくの夏休みだ。ただ勉学と個性の鍛錬だけで終わらせるつもりはない。事前に行くところを決めて地図アプリで確認しながら歩いていた。
擬魅「もうちょいだな…(それにしてもやっぱ、東京は人が多い…)」
初めて東京へ訪れた人が思いそうな感想を頭の中で呟いていると、1台の高級リムジンが停止する。そして助手席からどこからどう見ても、執事と言える男性が降車し後部ドアを丁寧に開ける。
執事「お嬢様、到着いたしました」
お嬢様「ええ、ありがとう爺や」
そう言いながら後部ドアから降りてきたのは薄水色のロングヘアーで、顔にモノクルを掛けた如何にもお嬢様という女子だった。その姿を見た擬魅は「すげー、リアルお嬢様じゃん」と感心していると。
お嬢様「…あの、何か私にご用でも?」
擬魅「へっ?ああ、いや別になにも…」
お嬢様「でしたらどいてくださるかしら?そこに立っていられたらお店に入れませんわ」
擬魅「お店…?ああ、これは失礼…!通行の邪魔をしてしまって」
擬魅がお嬢様がいる反対の方を向くとそこには高級服のブランド店があった。
お嬢様「いえ…ありがとうございます。では爺や、行きますよ」
爺や「はいお嬢様…。すみません、お嬢様のご無礼をお許しください」
擬魅「ああ、別にいいですよ。実際邪魔になってたし」
爺や「寛大なお心感謝いたします。それでは…」
執事の男性は擬魅に一言謝るとお嬢様の後を追いかけ店に入っていった。擬魅も目的地へ向けて再び歩き出す。だが擬魅が高級ブランド店から数メートル進んだところで大きな音が聞こえた。
ガシャアァアアァアンっ!!!
擬魅「―っ!?《ビクッ!》…なんだ…?」
通行人「ビックリしたー!なになに?」「ガラスでも割れたのか?」
擬魅の周りにいる通行人もこの音に驚いており、音の発生源であろう方向に振り向いている。そんな何事かと見ているとその音の発生源から悲鳴が聞こえた。
店員「きゃああああ!!」「ヴィっ!
通行人「えっ?
擬魅「ちょっとすいません…通ります…」
擬魅が少なくない通行人を避けながら少し前に行くとそこには、店内から逃げる店員の姿があった。どうやら音の発生源は先ほどの高級服のブランド店のようだ。
店員「店内に
通行人「もしもし警察ですか…」「ええ…
店員の様子を見た周りの数名の通行人がスマホを取り出し警察へ通報をする。
擬魅「大丈夫ですか?怪我はありませんか?」
店員「だ、大丈夫です…わわ、私を含め店員に大した怪我はない…」
擬魅「そうですか。では、まだ店内に誰か取り残されていたりはしますか?」
店内「…………お……お客様がまだ2人…恥ずかしながら…わ、私たちはそのお客様を残して…………」
擬魅「(マジかよ!!)」
店員の言葉を聞いた擬魅は驚き周りを見渡す。そして、自分が先ほど会ったお嬢様と執事の姿が見えないことに気づく。擬魅がまさかと思っていると店内から大声が聞こえる。
お嬢様「なっ、何なのですかあなたは!?こんなことをしてタダでは済みませんよ!!」
擬魅「あー…なんか嫌な予感が……」
店員「ちょ君!危ないって…!!」
店員の言葉を聞きながらも店内の様子を見ようと店に近づきコッソリと見る。するとそこにはなかなかの地獄絵図が待っていた。
才子「~~~っ!!?」ゾワワワワ…!!
才子と言う女子の体に走る悪寒と拒絶反応。そしてこっそり店の出入り口から店内を見ていた擬魅もこれには引いていた。
擬魅「(うわぁ…これはあれだな、ストーカーだな。しかも最悪なパターン!…いやストーカーはどれも最悪か?…まあ今はそれはおいといて…)」
擬魅は自身の個性を使って助けるか少し考えた。いま目の前で起きていることは耳朗のときのチンピラとは違いどう考えてもヒーロー案件。下手に自分が助けに向かって被害が出たら取り返しのつかないことになる。だが通報は先ほどされたばかり。警察とヒーローが到着するにはまだ時間が掛かる。律儀にそれを待っていたら彼女が危険である。擬魅がそう思っていると店内の様子が動く。
才子「だっ、誰が貴方のような方と一緒になるもんですか!!お断りしますわ!!」
才子「ひぃっ!?こ、来ないで!!!」
擬魅「(だあー!四の五の言ってられねぇ!スケスケの能力…!)」
才子「い、いや…!(誰か!誰か助け…)助けて……!」
擬魅「はじめまして
才子「……ぇ…?」
突然自分たちの近くに現れた擬魅に驚きを隠せない
擬魅「そして、さようなら…!(バリバリの能力…)バリアクラッシュ!!」
ズウゥン……
才子「…………」
目の前で起きたことに理解が追いつかない才子。口は半開きになり瞼は何度もパチパチとさせている。そんな状態の才子に近づき声を掛ける擬魅。
擬魅「大丈夫ですか、えーと…才子さん、でいいのかな…?」
才子「……ぁ…ぁの…はい…」
擬魅「立てますか?どこか怪我を負っていたりとかは…?」
才子「…わ、私は大丈夫です。ですが執事の者が…」
才子の視線の先には床に倒れている執事の姿があった。
擬魅「わかりました。俺が執事の人を背負います。歩けますか?」
才子「ええ…、大丈夫…です!」
才子は震える足を抑え自身を鼓舞させながら立ち上がり、そのまま少し駆け足で店を出る。擬魅も執事を背負い
才子「ひっ…!!?」
擬魅「げっ…」
野次馬「ヴィ、
通行人「ヒーローはまだなの!?」「それに警察は!?」「まだ来ねぇの!?」
擬魅「才子さん…あんたは執事の人を引きづってでもいいから下がってて(ヒーロー遅いな…)」
才子「なっ…!?危険です!ここは逃げてヒーローの到着を…」
擬魅「それを相手が待ってくれるんならいいけどな…」
才子「…っ」
擬魅「早くしろ!」
才子「…分かり…ました!ですが!ご無理はなさらないでください!!」
擬魅「大丈夫。時間を稼ぐだけだから」
才子はそう言うと執事の両脇に腕を入れて体を起こし、引きずりながら後方へ下がっていった。
擬魅「さて…始めようか。
擬魅「まあぶっちゃけ正面からやり合う気はないけど(ドルドルの能力)キャンドルロック!!」
ドシィン…!
怒りの感情剝き出しで突進してきた
擬魅「無駄だ。それは蝋だが鉄の強度を誇る代物だ。」
擬魅「そのセリフ、そのままお返ししますよ。あ、一応腕も拘束しておきますね。キャンドルロック」
ヒーロー①「皆さん大丈夫ですか!」
ヒーロー②「
通行人「おお!ヒーローだ!」「ヒーローさん!あっちに
ヒーロー①「なんだと!おい急ぐぞ!」
ヒーロー②「おう!皆さん危ないので下がっていてください!」
擬魅「どうやらヒーローが来たようだな…んじゃ、面倒ごとは避けたいので俺はこれで…(スケスケの能力、フワフワの能力…)」スゥ…フワッ…
才子「あっ、ちょっと待って!お名前を……消えてしまいましたわ…」
才子が呼び止める前に擬魅はその場を立ち去ってしまった。その後、駆けつけたヒーローと警察によって
・
・
・
擬魅「あー…やっぱあの場から逃げたのマズかったかなぁ…店の防犯カメラとかに顔が映ってたらいずれバレるだろうなぁ……まあその時はその時で何とかなる…かな?」
多少後悔しながらも東京を満喫する擬魅であった。
今年もあと3日で終わりですね。
皆さま、よいお年を!