耳郎が連れ去られた事件から数日が経過。事件の後処理は特に問題が起こることなく進み、耳郎を攫った3人の男たちは取り調べで判明した余罪も含めて検察へ送検された。事件の問題があらかた片付くと擬魅は改めて耳郎の家に招待され、耳郎の両親から感謝の言葉を多く貰いながら楽しい食事を堪能したのであった。
それから11月後半…12月…1月と、特に何も起こることはなく月日は経過し2月に突入していた。
――耳郎宅――
耳郎「(もう2月か…
壁に掛けてあるカレンダーを見ながら自身が連れ去られた日の事を思い出す。擬魅が来てくれなかったらと思うと体が身震いしてしまうが、その後のことを思い出すと今度は体が熱くなる。特に顔は恥ずかしさでさらに熱く感じてしまっている。
耳郎「(いやあれは不可抗力と言うかなんというか…!だあー!なんて言えばいいんだ!!)」
耳郎が頭の中でモンモンと色々考えていると後ろから母親に声を掛けられる。だが思考に集中している耳郎は聞こえていない。そんな耳郎に母親は肩を叩き呼びかけた。集中していた耳郎はそれに驚き声をあげてしまう。
耳郎「わ˝あーーー!!…ってなんだ母さんか…びっくりさせないでよ…」
耳郎母「びっくりしたのはこっちよー!呼んでも返事してくれないんだもの~!!」
耳郎「あ、それはゴメン…ってかなにか用?」
耳郎母「あ、そうそう。もうすぐ
耳郎「…あれ?」
耳郎母「もう!2月といえばあれがあるでしょ…!バレンタイン!!」
耳郎「………うえっ!?バババ、バレンタインって!?はっ!?なに言ってんの母さん!!?」
耳郎母「え~?なにって響香が擬魅くんにチョコあげるのか気になっちゃって~~!」
耳郎「いやいやいやいやいや!!!べべべ、別にウチは
耳郎母「あら~?私は別に擬魅くんにチョコをあげないのか聞いただけで別に《擬魅くん好きなの?》とかそんなことは一言も~…(嬉)!!」
耳郎「なっ!ああぁあ~…!やめ…やめろぉぉぉ///!!」
母親にいじられ顔を真っ赤にしながら叫ぶ耳郎であった。それから2日後、耳郎の姿は近場にあるショッピングモールにあった。耳郎がいる場所は赤やピンク色で装飾され、そこには様々な種類のチョコレートが陳列されていた。そしてその特設コーナーには宣伝用の巨大なポップやゲートフラッグがありそこにはこう書かれてあった。
!!♡ハッピーバレンタイン♡!!
そう、耳郎が今いる場所はバレンタインデーの特設コーナーだ。日本の食品企業が力を入れるイベントの1つである。そんな食品企業が設けた特設コーナーに陳列されている、様々なチョコレート商品を眺める耳郎の姿がそこにはあった。
耳郎「(いっぱいあるな…
耳郎が頭の中でモヤモヤと思考を巡らせる。そんな耳郎の姿を少し離れた場所から見る2人の女子がいた。実は彼女たちは耳郎と同じ辺須瓶中学校の生徒で耳郎のクラスメイトであった。彼女たち2人はこのショッピングモールにバレンタインチョコを作るための材料を買いに来ていた。そしてバレンタインの特設コーナーに着くと2人は耳郎がいることに気づく。1人は声を掛けようとしたのだがもう1人がそれを遮りながら手を引っ張り近くの商品棚の影に隠れたのであった。
(ク)女子①「ねぇ、なんで隠れたの?あそこにいるのって耳郎じゃん。隠れる必要ある?」
(ク)女子②「分かってないわね!耳郎が今までバレンタインで誰かにチョコ送ったことある!?ないでしょ!?」
(ク)女子①「あー…確かにないね。周りの女子がバレンタインの日に男子にチョコあげたりしてるけど、耳郎は私らとかの友チョコぐらいだね。前に好きな男子とかいないの?とか聞いたけど満足のいく答えは返ってこなかったからねー」
(ク)女子②「でしょー!?だから耳郎がどんな人に渡すのか気になるの!」
(ク)女子①「まあそれはめっちゃ気になるけど、親とかなんじゃないの?仮に親じゃないとしてどうやって相手を知るのさ?」
(ク)女子②「それはもうドラマや映画で定番の
(ク)女子①「………もしかして刑事や探偵とかがやってる
(ク)女子②「そう!
(ク)女子①「大丈夫かなー…」
※(ク)…クラスメイト
2人のクラスメイトが商品棚の物陰でいろいろと話している間、耳郎は購入するチョコレートを決めその場を立ち去っていた。ちなみ2人の会話は奇跡的に耳郎には聞こえてはいなかった。そしてそれから数日が経ちバレンタイン当日。学校や職場などで様々なチョコレートが渡し渡されていた。
――辺須瓶中学校――
時刻は夕方4時過ぎ。生徒たちが部活動を始めたり下校の時間である。そんななか耳郎はスマホを取り出し、擬魅へメッセージを送りながら駅へ向かっていた。そしてそんな耳郎の後ろをつける影が2つ。
(ク)女子②「駅に向かってるわね。ワトソンくん」
(ク)女子①「誰がワトソンだ」
(ク)女子②「雰囲気よ!それより家じゃなくて駅に向かってるってことは誰かにチョコを渡しに行く確率が高くなったわね!」
(ク)女子①「そもそもまだ渡すかどうかもわかんねーじゃん。単に買い物かもしれねぇし」
(ク)女子②「いいのよ!その時はその時よ!あ、ほら行くわよ!!」
(ク)女子①「はいはい…」
耳郎の個性に気づかれないように後をつけていく2人のクラスメイト。そしてその行動はまたもや奇跡的に耳郎の行先まで気づかれずに上手くいくのであった。
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後を付けている2人は耳郎にバレないように駅前にあるカフェに入る。そして耳郎を見逃さないように窓際の席に座り耳郎の様子をうかがう。
(ク)女子①「あそこで待ち合わせかな?」
(ク)女子②「どんな相手か楽しみね!」
(ク)女子①「ここ隣の区だからあんまり詳しくないんだけど、確かこの辺りの中学は出須多中や
(ク)女子②「可能性は高いわね……だけどまさか隣の区の学校とは思わなかったは…」
(ク)女子①「まあその前に耳郎に男がいるってのがビックリだけどな」
(ク)女子②「そうよね!だって耳郎は気づいてないけど意外と男子から人気あるのよ!普段はクールでサバサバとした印象なのに、たまに見え隠れする乙女な一面がギャップがあって可愛いって…羨ましいしズルい!」
(ク)女子①「どこもズルくねーだろ。それが素なんだから」
(ク)女子②「それがズールーいーの!素でギャップるなんてもはや最強じゃん!!」
(ク)女子①「ギャップるってなんだよ」
2人がそんな話をしていると耳郎の方に動きがあり2人もそれに気づく。
擬魅「(えーと…駅前にいるって…あ、いたいた!)…おーい、耳郎ー!」
耳郎「っ!!…あ…ま、擬魅!」
擬魅「ごめんごめん、ちょっと遅れたわ。学校出るとき先生に呼ばれてしまって…」
耳郎「だ、大丈夫、ウチもさっき着いたから」
擬魅「それでどうしたの?なんか渡したいものあるってメッセージには書いてあったけど?」
耳郎「う、うん………(うぅぅ…いざ渡すとなるとめっちゃ恥ずい…)///」
擬魅「耳郎…?」
恥ずかしさからなかなかチョコレートが入っている紙袋を渡させない耳郎。そしてその様子を見て耳郎の後をつけていた2人の内の1人はすごいやきもきしていた。
(ク)①「なかなか渡さねぇな」
(ク)②「何をやってんのよあの子は!!あーもうじれったいわね!!」
(ク)①「まあ耳郎ってこういうこと苦手だしああなるのは仕方ないか」
(ク)②「だからってこうもモジモジされたら堪んないわよ!!」
(ク)①「そうは言うけど私らのやってることただの覗き見だからな?」
(ク)②「そこはノーコメント!」
(ク)①「おい」
2人がコントのような会話をしていると…。
耳郎「えっと……これ…///」スッ…
擬魅「え、もしかしてチョコレート…!?」
耳郎「……//」コク…
擬魅「うおぉマジで!ありがとう耳郎!!」
耳郎「い、一応言っとくけど!義理だから!義理だからね//!」
擬魅「いやー義理でも嬉しいよー!ありがとな耳郎!」満面の笑み!
耳郎「ぅ…まあ、あんたが嬉しいならいいけど…///」
恥ずかしさからイヤホンジャックの先端同士をカチカチとさせる耳郎。その行動は傍から見ればツンデレと言われてもおかしくなく、その様子をカフェの店内から見ていた耳郎のクラスメイト女子2人の内1人は大興奮していた。
(ク)女子②「渡したぞ!耳郎渡したわよ!!」
(ク)女子①「分かってるよ。そんなに興奮すんな、落ちつけっての」
(ク)女子②「アレを見て興奮するな?あんな乙女な耳郎を見て興奮せずにいられないわよ!!なんなのあの子は!超乙女じゃん!!」
(ク)女子①「だけどさーまだあれが本命かどうかわかんねぇだろ?義理かもしれねーじゃん?」
(ク)女子②「あんなツンデレみたいな行動しといて義理なわけないじゃん!義理だとしてもそれは照れ隠しよ!きっと!!」
(ク)女子①「そうだといいねー(棒)」
(ク)女子②「それにしても相手の男子、結構カッコいいわね。どうやって知り合ったのかしら?」
(ク)女子①「あーそれは気になるな。他校だしどうやって知り合ったんだろーな?」
(ク)女子②「これは色々聞きださないといけないわね!」
(ク)女子①「素直に話してくれるとは思えねぇけどな」
こうして耳郎が知らない所でこのようなことが繰り広げながらも、耳郎のバレンタインは無事に終わるのであった。
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――翌日――
――辺須瓶中学校――
(ク)女子②「あ、来たわよ!」
(ク)女子①「はよー、耳郎」
耳郎「おはよ、2人とも」
(ク)②「ところで耳郎…」
耳郎「ん、なに?」
(ク)②「昨日会っていた男子とはどういうご関係で?」
耳郎「―っ!??!?!?」
奇襲のような質問にドキンッ!!となる耳郎。そして首が錆びついたブリキ人形のようにギギギギ…と動きながら質問してきたクラスメイトの方へ向く。
耳郎「な…なんのこと…(焦)!?」
(ク)女子②「とぼけても無駄よ!めっちゃ悪いけど昨日アンタの後をつけさせてもらったわ!!」
耳郎「え˝えっ!?ちょっ!なにやっ…!」
(ク)女子①「ちなみに私も」
耳郎「うえ˝え˝え˝っ!?」
驚きが隠せない耳郎。そんな耳郎の驚きを気にせずクラスメイトは質問を迫ってくる。
(ク)女子②「それで?どういう関係なの?」
耳郎「い、いや擬魅とは別にそういう…!」
(ク)女子②「ふむふむ、名前はまがみ君ね。漢字はどんな字?」
耳郎「あ、えっとね字は……じゃなくて!」
(ク)女子①「ゲロっちまいな。その方が楽になるぞ」
耳郎「アンタもなに言ってんのよ!」
その後、2人のクラスメイトによる質問をなんとか凌ぎきる耳郎であった。そして同時刻ごろ、擬魅にも同じような事が起きていた。
(ク)男子①「おい擬魅!昨日駅前で一緒にいた女子は誰だ!?」
擬魅「ああん?なんだよ急に?」
(ク)男子②「ダニィっ!女子だと!?」
(ク)男子③「おい!その女子は可愛いかったか!?」
(ク)男子①「遠めから見たからはっきりとは言えないが可愛い印象はバッチリ感じたぞ!!」
(ク)男子②「ほほーなるほど…おい擬魅!どういうことか話してもらおうか!!」
(ク)男子③「さあ話してもらおうか!」
擬魅「うるせぇっ!!!」
詰め寄ってくる男子に向けた擬魅の声が教室によく響いたのであった。