この作品を読んでくださっていた方々ごめんなさい。
耳郎からバレンタインチョコを貰った2月から約5か月後。擬魅の中学生最後の夏休みがやってきた。夏休みをどう過ごそうかと自宅で考えていると、スマホに伯父から着信がはいる。今度はどんな用なんだと思いながらも擬魅は着信に出る。
ピッ…!
擬魅「もしもしもしもし~?こちら擬魅でございまぁす!なんの用ですか伯父さん?」
伯父『おうおうおう!伯父相手に結構な対応じゃないの!まあそれはいい。白郎、お前夏休み何か大きな予定とかあるか?』
擬魅「大きな予定?いや今のところ予定というか、たった今それを考えていたんだよ。伯父さん」
伯父『おーそれはちょうどいい!喜べ、旅行と海に行けて金まで稼げるぞ!』
擬魅「…どういうこと?」
伯父『あ~…詳しいことは後でっていうか、現地で話すから!ほら、行くのか!?行かないのか!?』
擬魅「じゃあ…うん、まあ行くわ」
伯父『お~し!決定だな!日程はまた後で知らせるからお前は着替えとか諸々準備しとけ!』
擬魅「はいはい、わかりましたよ~。あと、とりあえず行先ぐらいは教えてくれない?(どうせ旅行と言っても近場だろう。でも海にも行けるって…)」
伯父『おお、そうだな!行先は千葉だ!』
擬魅「…………千葉ぁっ!?」
こうして擬魅の千葉行きが決まるのであった。そして……
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――千葉県―某海水浴場――
青い海と空、白い砂浜、ギラギラと輝き地上に容赦なく日を差す太陽…うん、素晴らしい海水浴日和だ…
擬魅「じゃなくてぇ!なんで俺こんなとこに来てんの!?そりゃ行くって答えたけど!ここで何すんの!?」
伯父「な~に騒いでんだ白郎!ここまで来たんだ!うだうだ言うな!」
擬魅「ふー……で?何をするの伯父さん?」
伯父「切り替え早ぇな、おい。まあそれより目的地はここじゃなくてこの先だ」
擬魅「あいよー…ほんと何すんだろ…」
擬魅とその伯父が浜辺沿いの道を歩くこと約5分。浜辺では海水浴に来た多くの人で賑わっており、そんな人々を相手に商売をして儲けているところがあった。焼きそば・たこ焼き・焼きトウモロコシ・ラーメン・フランクフルトにかき氷にアイスクリームと夏の定番といってもいい料理を売りさばいているお店…そう、いわゆる海の家というやつだ。デッキ付きの平屋建でオシャレな作りだ。その海の家に着くと伯父が店内の奥に向かって声をかけると1人の男性が出てくる。
店長「おっ!真ちゃん!来てくれたかー!」
伯父「おう、来てやったぞ!」
ハハハ!と笑いながら話し合う2人。聞けば伯父とは大学からの友達らしい。
店長「この子がお前の甥か?」
伯父「おう!俺の自慢の甥っ子よ!ヒーロー目指しってからいろいろ大丈夫だぜ!!たぶん!」
店長「たぶんってなんだよ!だっはっはっはっは!」
擬魅「伯父さん、俺ここで何すんの?まぁ何となく予想はつくけど」
店長「ん?おい真ちゃん、お前この子に説明してねぇのか?」
伯父「ん…ぃ、いや~説明はぁ…したよ?うん確か」
店長「いやしてねぇな!顔分かりやすすぎだろ!?はぁ~…えーとな、実は龍ちゃんに一定期間店の手伝いをしてくれる人がいないか頼んでたんだよ」
擬魅「あ~…なるほど。やることは理解できました。だけど自分まだ中学生ですけど大丈夫なんですか?アルバイトとかあれですよね?」
伯父「そこは大丈夫だ!これはお手伝い!だが労働ということは間違いない!だから報酬は俺が後でお駄賃という形で渡すから問題ない!つまり合法!」
擬魅「いろいろ問題ありそう…」
店長「まあそういうことだ。経緯はあれだが今日から2週間ちょっとよろしくね!」
擬魅「……2週間…だと!?」
こうして擬魅の夏休みアルバイト(合法)が始まるのであった。
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千葉県の某海水浴場にある海の家でアルバイトをすることになった擬魅。海の家に到着したその日から仕事が始まるのであった。
店長「いや~でも助かるよー!毎年この期間は繁忙期だからねー!」
擬魅「まあ夏休みですからね。忙しくなるのは必然ですよ」
店長「ハハハっ!あぁ、あと白郎くんともう一人お手伝いに来てる子がいるんだ。俺の知り合いの子で君と同じ中学生だよ」
擬魅「あ、そうなんですね。経緯は俺と同じ感じですか?」
店長「いや、その子きみと同じでヒーロー目指してる子でね、
擬魅「すごいちゃんとした理由だった。俺、尊敬しちゃう」
店長「ハッハッハッ!そう思っちゃうよね!あぁ、あと俺一応ヒーロー免許持ってるから個性使いたかったら言ってね!」
擬魅「…………え?」
店長のカミングアウトに驚きながらも俺はその中学生のもとに案内された。
店長「一佳ちゃーん!ちょっといいー?」
拳藤「はーい!」
擬魅「(…いつか?)」
店長が名前を呼ぶと店の奥から1人の女子が出てくる。オレンジ色の髪で頭の左にサイドテールをしており全体的に活発な印象である。
店長「白郎くん、彼女は拳藤一佳ちゃん。さっき話した君と同じ中学3年で手伝いに来てくれている子だよ」
拳藤「店長、この人は?」
店長「今日からお店の手伝いをしてくれる子だよ!俺の友達の子で来てくれたんだよ!」
拳藤「へーそうだったんだ!わたし拳藤一佳!よろしくね!」
擬魅「擬魅白郎、こちらこそよろしく拳藤」
2人が挨拶をすませると店長は拳藤に俺の指導を任せると言い、お店の仕事に戻ると言って厨房に戻って行った。俺はとりあえず拳藤の案内で荷物を従業員用のロッカーに預けて、拳藤にお店での仕事を教えてもらった。
拳藤「基本的に私たちはお客さんの注文と簡単な調理が仕事だよ。テーブルに番号が振ってあるから声がかかったら注文を取りに行くんだよ」
擬魅「なるほど。そこはファミレスと同じだな。じゃあ簡単な調理とは?」
拳藤「それはかき氷やアイスとジュースの販売だね。焼きそばやたこ焼きとかの料理は店長さんたちと他のスタッフさんがやるから安心して。ああ、あと貸し浮き輪もしてるからそれもだね。…っとまあこんな感じかな、何かわからなかったらすぐ聞いてね!」
擬魅「了解した」
拳藤の説明で一通りの仕事を覚えた擬魅の海の家での仕事が始まる。
客「すいませーん!注文いいですかー?」
擬魅「はーい!」
客「すいませーん!浮き輪借りたいんですけどー?」
擬魅「はいはーい!すぐに向かいまーす!」
客「すいませーん!」
擬魅「はいぃ!」
ひっきりなしに客からの注文や問い合わせが入る。そして時間はあっという間に過ぎていき、夕陽が海を照らしていた。
擬魅「あぁ~……初日から何気にハードだった…」
店長「お疲れさまだったね白郎くん!初めてであれだけ動ければ上出来だよ!」
擬魅「あ、店長お疲れ様です。…そういえ伯父さん知りません?」
店長「ん?ああ、あいつならなんか仕事あるからって言ってどっか行っちまったぞ!」
擬魅「お゛お゛ん…?」
店長「白郎くん、殺気が出ちゃってる出ちゃってる(汗)」
伯父の行動に殺気立ちながらも気持ちを落ち着かせていると店長があることを聞いてきた。
店長「そういえば白郎くん。どこかに宿とか押さえているのかい?」
擬魅「え?」
店長「え?」
擬魅「店長、俺ちょっくらサメ捕ってきますね♪」~爽やかな笑顔~
店長「うん、落ち着こうか。落ち着こう白郎くん」
2人がそう話していると服を着替えていた拳藤が店の奥から出てきた。
拳藤「あ、お疲れさま…って何してるんです?」
店長「ああ、拳藤ちゃんお疲れ様。実はカクカクシカジカで…(苦笑)」
拳藤「あ~…なるほど。それであんな風になっているんですね(苦笑)」
ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!
擬魅の体から漫画のようなオーラが出てはいないが、出てもおかしくない雰囲気を醸しだしていた。
拳藤「う~ん……じゃあさ、私の家に来ない?」
擬魅「…え?いいの?」
拳藤「私の家広いから余っている部屋あるからいけるよ?」
擬魅「いや…すげーありがたい話だけどいいのか?2週間ちょっともお邪魔することになるんだぞ?流石に迷惑だろ?」
拳藤「何言ってんだよ!困ってんだから助けるのはヒーロー目指す者として当然だよ!遠慮すんなって!あ、でもその前に親に確認しないと!ちょっと待ってて!」
拳藤はその場を離れてスマホで家に連絡をして、話はトントンと進み擬魅は拳藤の家にお邪魔することになるのであった。
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拳藤「さあ着いたよ!ここが私の家だよ」
擬魅「これって…道場?」
拳藤「そうだよ。小さいけど親父が武道の先生してるんだ!」
擬魅「へぇ~、ということは拳藤も武道を?」
拳藤「そうだね。けど父さんにはまだ勝ててないんだよね。まあそれより入って入って!」
擬魅「あ、お邪魔します」
拳藤「ただいまー!」
拳藤の大きな声が家の中を響かせる。それを聞いて家の奥からパタパタとスリッパの音を鳴らしながら母親が出てくる。
拳藤(母)「は~いお帰り一佳~!あら、その子が電話で言っていた子ね!初めまして、一佳の母です!」
擬魅「あ、どうも初めまして。擬魅白郎と言います。これから2週間少しお世話になります…えっと本当によかったんですか?2週間もお邪魔しちゃって?」
拳藤(母)「いいのよ~!うちは3人しかいないから逆ににぎやかになるから!それにこの子ったら中3にもなるって言うのに彼氏とかそういう話は全然ないから私は大歓迎だわ~!!」
拳藤「ちょっと母さん!!」
擬魅「あははは…お世話になります(汗)」
そして空き部屋に案内され荷物を置くとそのまま夕飯と言われたのでリビングに移動する。
拳藤(母)「どうぞ擬魅く~ん!たくさん食べてね~!」
擬魅「ありがとうございます。ではいただきます!」
拳藤「…ちょっと作りすぎじゃない?」
拳藤(母)「一佳が男子連れてくるって言ったからお母さんがんばっちゃった!」
拳藤「だ・か・ら!そんなんじゃないからね!?」
拳藤(母)「ねぇねぇ擬魅くん!男の子から見て一佳はどう?彼女にしたい?あ、その前にタイプ?」
擬魅「ブふっ!?」
拳藤「ちょっと母さん//!!」
こうして拳藤(母)によって楽しい夕食を過ごした擬魅であった。ちなみに、夜遅く仕事から帰って来た拳藤(父)は、意図的に内容を端折られた擬魅の話を拳藤(母)から聞くと擬魅が寝ている部屋に突撃をかましてしまい、娘から鉄拳制裁を下された。
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――翌朝――
拳藤「昨夜はごめんね…」ズーン…
擬魅「いや…それだけ拳藤が大事にされているって証拠だよ…」
2人は朝食に出された納豆を混ぜながら昨夜起きた珍事件について話していた。
拳藤(母)「もうあなたったら~ダメじゃないですか!話は最後まで聞かないと!」
拳藤(父)「うぅむ…俺としたことが…」
拳藤「いや…母さん絶対ワザと話端折ったでしょ?」
拳藤(母)「え~何のことかな~♪」
陽気にとぼけてはいるがその頭には漫画のようなたんこぶが出来上がっていた。
拳藤「はぁ~~…」
擬魅「ハハハ…(苦笑)」
拳藤(母)によるイタズラとも言える行為もこれで終わりかと思われた。だが終わってはいなかった。それは擬魅の海の家の手伝いが残り1日になったとき事件は起きた。
――拳藤宅――
拳藤(母)「擬魅くーん!お風呂どうぞ~♪」
擬魅「あ、はーい!ありがとうございまーす!」
このとき、擬魅は気づくべきであった。前日まで拳藤がお風呂の事を知らせに来ていたことを…
ガラガラガラ……
ガチャ……
擬魅「うぇ…?」
拳藤「えっ…?」
脱衣所の扉と浴室の扉が同時に開き、擬魅と拳藤が同時に間の抜けた声を出す。
擬魅「えっ!?ちょっ!?なんでぇー//!?」
拳藤「んななななっ!?はっ!!みみみ、見るなあぁああぁぁっ///!!!」
擬魅「ちょ待っ…べばぁっ!?」
バゴォォンっ!!!
個性【大拳】を発動させた拳藤のパンチを真正面から受けてしまった擬魅であった。
――1時間後――
擬魅「……」チーーン…
拳藤「……」むっすぅ…!
拳藤(母)「……」ニコニコ!
眉間にしわを寄せ、口をへの字にし仁王立ちしている拳藤。体のところどころに大きめの絆創膏を貼り意気消沈している擬魅。頭に雪だるまのようなたんこぶを作り上げながらも笑顔を絶やさない拳藤(母)。
拳藤「…で?」
擬魅「ボ、ボクハナニモシラナイ…」
拳藤(母)「だってだってぇー!2週間も一緒にいるのに何も起こらないんだもの!」
拳藤「起こらなくていいの!起こらないからって無理に起こさなくていいの!」
拳藤(母)「ねぇねぇ擬魅くん。一佳の見たんでしょ?男の子として一佳のはどうだった?」
擬魅「ん˝んっ!?」
拳藤「ちょっと母さん!!」
拳藤(母)「一佳は鍛えてるし同年代の子と比べても悪くないと思うんだけどなぁ~♪」
擬魅「そ、それはー…」
擬魅はふと先ほどのことを思い出してしまう。タオルも何も身に着けていない拳藤を…擬魅の顔は赤くなった。
擬魅「……はっ!!」
拳藤「いま…何を思い出した…?」
擬魅「い、いやー…何も~…」ふひゅひゅひゅ~
顔からは脂汗が止まらず、動揺からとぼけ口笛が全くできていない擬魅の胸倉を拳藤が掴む。
拳藤「忘れろー!今すぐ忘れろーー!!」
擬魅「無茶言うなー!」
拳藤「よし!ならば私が大拳で2~3発…!」
擬魅「落ち着け拳藤!暴力では何も…!」
拳藤「わしゅれろおぉぉぉぉぉーー!!」
拳藤(母)「あらあら~♪」
海の家お手伝い最終日前日の夜、拳藤の叫びが周辺に響いたのであった。
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――海の家
この日も多くの海水浴のお客さんで海の家は賑わっていた。
店長「擬魅くーん!これ3番テーブルね!」
擬魅「はーい!」
店長「拳藤ちゃん!これ5番テーブルね!」
拳藤「わかりましたー!」
注文された料理をせっせとお客様の所に運ぶ擬魅と拳藤。多くの人がワイワイと賑やかに過ごしているなか、海の方からそれを遮るような音が聞こえてきた。
ブオォォォン!ブォンブォンブォォン!!!
ブイィィィィン!!
この海水浴場では指定の場所以外で乗ることが禁止されている水上バイクが侵入してきたのである。数は4台でエンジンをふかし、音楽をかけながら走行している。
店長「ったく、今年も出やがったか」
擬魅「毎年ああいうのが?」
店長「完全にイタチごっこだよ。逮捕や罰金を科しても新たに出てくるんだ。何とかしたいけど俺の個性じゃなんとも…」
拳藤「警察かヒーローに電話しますか?」
店長「いや、すでに海水浴場の管理事務所が海保と海専門のヒーローに連絡してあるからいいよ。事務所とライフセーバーの人たちが動きを見張っているから俺たちは仕事に戻っても大丈夫だよ。さっ!戻ろっか」
拳藤「はぁ~なんでルールを守れないかなぁ」
擬魅「なんでだろうなぁ…」
擬魅と拳藤が仕事に戻ろうとしたその時、海の方から悲鳴が聞こえ2人はすぐに振り返る。
拳藤「え、なにっ!?」
擬魅「っ―!?」
悲鳴の聞こえた方へ向くとそこでは騒ぎが起きていた。
海水浴客「ちょっ!?いまぶつかった!?」「やばくね!?」
海水浴客「ヒーロー…いやライフセーバーさん!」「ってかあれ子供用の浮き輪じゃね!?」
海水浴客「マモル!?マモルどこ!?」「おい子供がいないらしいぞ!」
海水浴客「ライフセーバーさん早く!」
水上バイクと海水浴客との接触事故が起きてしまい、それに子供が巻き込まれたらしい。そして事故を起こした水上バイクのドライバーはというと…
※水上バイクドライバー→水ドラ
水ドラ①「…っべ!おい行くぞ!」
水ドラ②「え、いや…」
水ドラ③「いいからズらかるぞ!」
水ドラ④「急げ!」
4台の水上バイクはその場から逃げるように立ち去っていく。当て逃げだ。
拳藤「ちょっ!早く助け―っ!?」
ブワッ…!!
拳藤の言葉を遮るように突如風が大きく吹く。そして拳藤が反射的に閉じた目を開けるとその視線の先には赤い何かが空を飛んでいた。右腕が左腕より二回りほど大きな非左右対称な腕、全体的に鋭角なデザインをした体、そして背面にには赤紫色の透き通る8枚羽が大きく開いていた。
擬魅「(個性その3【ロボット】!紅蓮聖天八極式!)」
接触事故があった場所まですさまじい勢いで飛び、その勢いのまま海中へダイブする。目視では暗い海中では見えないためセンサーを駆使して子供を探す。
擬魅「(子供は……あそこか!)」
子供を見つけ抱きかかえるとゆっくりと、でも素早く海上へ上がる。ゆっくり上がるのは急激な圧力の変化に対応するためである。擬魅は海上に出るとそのまますぐ砂浜へ飛んでいき、ライフセーバーたちに子供を預ける。ライフセーバーたちは必要な処置を行い、子供が意識を戻すと担架に乗せて医務室がある事務所の方へ向かって行った。
擬魅「えっと大丈夫なんでしょうか?一応水中からの上昇には気を付けたんですが…」
ライフ「ありがとう!君のおかげで助かったよ!見たところ目立った外傷はなし。だけどバイクとぶつかっているからこのまま病院へ直行だね」
擬魅「そうですか。では悪いんですがあとはお任せします」
ライフ「いやいや、君のおかげで何倍も早く助けることが出来た!あとはこちらに任せたまえ!君もしかしてヒーロー志望?」
擬魅「ええ、まぁ」
ライフ「ありがとう、ヒーローの卵よ!」
擬魅「……///」
ライフセーバーの言葉に擬魅が少し照れていると、助けた子供の母親に声をかけられる。
母親「あの!ありがとうございます!」
擬魅「え、あぁえっと、どういたしまして。…あのお礼はいいので早くお子さんのもとへ」
母親「え、いやそんな!あなたには返しても返しきれないご恩が出来ましたのに!」
擬魅「ヒーローを目指す者として当然のことをしたまでですので。それよりも早くお子さんのもとへ」
母親「っ!…はい…はい!ありがとうございます!」
母親は涙を浮かべながら子供が運ばれた事務所へ向かって行き、それと入れ替わるように店長とが擬魅のもとへ駆け足で擬魅のもとへ来た。
店長「もーびっくりしたよー!いきなり飛び出して行っちゃうからさー!!」
擬魅「すいません店長。個性の使用許可も取らずに…」
店長「ああ、いいよいいよ!いやホントは良くないけど結果オーライさ!」
擬魅「あざす…!」
店長「それじゃあお店に戻ろう!まだまだお客さんが来るからね!」
擬魅「あ、店長。逃げた水上バイクはどうするんですか?俺ならまだ今からなら捕まえてこれますけど?」
店長「ああ、それなら大丈夫だよ。さっき管理事務所から伝え忘れていたこと聞かされたんだけどね、何でも今年から対策を強化してたらしくてね。先ほど先回りした別の海保の船が捕まえたらしいよ」
擬魅「あ、そうなんですね。よかったぁ~」
擬魅は一安心し個性を解除する。そして海の家に戻り、従業員用の洗面所で一旦身なりを整えていると…
拳藤「擬魅…」
擬魅「ん、あぁ拳藤。いろいろごめんな」
拳藤「なにが…?」
擬魅「え、そりゃいきなり飛び出して行ったこととか…接客に迷惑かけたとか?」
拳藤「そんなの大したことないよ………アンタ…すごいね」
擬魅「え、なにが…?」
拳藤「私は何もできないで…あんたは飛び出していって見事子供を救けた…まさに理想のヒーローじゃん……」
擬魅「………」
拳藤は少し落ち込んでいた。ヒーロー志望でありながら何もできなかったことに。
擬魅「拳藤はオールマイトみたいになりたいの?」
拳藤「……違うと言いたいけど、心のどこかじゃそう思っているかも」
擬魅「じゃあさ、これから努力に努力を重ねていったら自分はオールマイトになれると思う?」
拳藤「そんな…なれるわけ…!」
擬魅「なら、拳藤は拳藤のなりたいヒーローを目指すだけだよ。今日何もできなかったことを悔やみ続けるより、それを糧にして前に進むんだよ」
拳藤「っっ―!」
擬魅「まあとりあえず今はお店の手伝いを最後までやり切ろうぜ!」
擬魅は自分なりの考えで拳藤を励まして店の手伝いに戻るのであった。拳藤からの返事はなかったが少し遅れて拳藤も店の手伝いに戻るのであった。そしてその日の夕方、擬魅の海の家の
――その日の夜――
――拳藤宅――
拳藤(母)「擬魅くん!2週間お疲れさまー!」
擬魅「ありがとうございます//。すいません、2週間もお世話になったのに最後にこんな豪華な食事まで…」
拳藤(母)「な~にいってるのー!擬魅くんのおかげでこっちもいろいろ楽しかったわぁ!」
擬魅「あはははは…(ほんと…この人いろいろすごかったな…)」
拳藤(母)「それに聞いたわよー。擬魅くん、溺れた子供を救けたんでしょう?すごいじゃなーい!将来はヒーローに?あ、志望校はもしかして雄英?」
拳藤「ちょっと母さん、擬魅が困ってんじゃん。質問しすぎだよ!」
擬魅「ありがとう拳藤。だけど大丈夫だよ(笑)。まず志望校は雄英ですね」
拳藤(母)「そうなのね!一佳も雄英志望なのよ!」
擬魅「へーそうなんだ。じゃあお互い雄英で会うために頑張ろうぜ!」
拳藤「サンキュー。でもなんかアンタは余裕で合格しそうな気がする…」
擬魅「そう言ってもらえるのは悪くないな。っでえーと、将来はヒーローにでしたね。これは雄英目指してるのでイエスですね。あと大事な約束もあるので…」
拳藤(母)「あら~、大事な約束ってなにかしら?」
擬魅「すいません、これはちょっと湿っぽい話ですので…(苦笑)」
拳藤(母)「あら~気になるわ~!」
擬魅は話をそれとなくはぐらかし、その後は別の話をしながら擬魅の送別会を兼ねた夕食は楽しく終えたのであった。
――擬魅(借)部屋――
擬魅「今のうちに荷物をまとめて…あ、一応クラスのみんなにお土産を…駅でなんか売ってるかな」
擬魅が小さく独り言を言いながら荷物をまとめていると、部屋の出入り口の襖に小さなノック音がした。
擬魅「?…はい?」
拳藤「いま…いいかな?」
擬魅「拳藤?どうぞー」
拳藤は静かに襖を開けて閉めると擬魅の前に正座で座った。
擬魅「拳藤?」
拳藤「昼間はありがとね」
擬魅「昼……?ああ、大したこと言ってねぇよ。あれで拳藤を励ます?ことが出来たんならよかったよ」
拳藤「たった2週間だけの付き合いだけど…擬魅らしいね。………ねぇ1つ聞いていい?」
擬魅「ん、なに?」
拳藤「なんで擬魅はすぐに飛び出していけたの?怖くはなかったの?」
擬魅「………怖くないといえば噓になるな。でも…」
拳藤「でも?」
擬魅「それ以上に子供が死ぬのが怖かったのかもしれねぇ…大事な人が死ぬのはとても辛いからな…」
擬魅は自身の両親のことを少し思い出す。
拳藤「それって…さっき言ってた約束に関係する?」
擬魅「…そうだな。気になるか?」
拳藤「…いやいいよ。それは擬魅が話そうと思ってくれた時に話してくれたらいいよ」
擬魅「じゃあなおさら俺ら雄英に合格しねぇとな!」
拳藤「勝手に落ちたら承知しないからね!」
擬魅「そっちもな!」
擬魅と拳藤は拳と拳をコツンとぶつけあった。2人の仲が深まったのは言うまでもないだろう。そしてこの光景を一部始終、部屋の外の廊下で盗み聞きしていた拳藤(母)。翌朝、擬魅を見送った後、拳藤がからかわれたのは言うまでもない。
擬魅「今度伯父さんに会ったらプロレス技かけないといけないな」
生きろ伯父さん!
擬魅(伯父)の名前は真似といいます。
海の家の店長さんはヒーロー免許を持っていますが、本業は別にある感じです。これはヒロアカのスピンオフ作品【ヴィジランテ】に出てきたヒーロー、コンパス・キッドさんが「最近はすっかり会社勤めのほうが本業で…」というセリフがあったのでこうしました。