【一発ネタ】転生したら幼馴染が貞子だった件 作:yoshiaki
これ以上はさすがにもう出てこない。だれか続き書けたら教えてね♥
それは過ぎ去りし日々。
わたしがまだ幼かったとき。
まだ闇の中でうずくまっていた頃のこと。
己の運命を知るよしもないわたしは、表情を消してもはや日課となった『ノルマ』をこなしていた。
「こんなところでなにジメジメしてるんだよさだこ~!」
「おいおいこんなやつと話しちゃったらこっちまで辛気臭いのが移っちゃうよ。カビとか生えそう…ぷっ」
「アタシ知ってるよ。こいつの父ちゃんってペテン師だったのがバレて東京から逃げてきたんだってよ~。母ちゃんは共犯だったけどいかさまがバレた時の衝撃で引きこもって出てこないんだってー!東京から来た新聞記者が話してたの聞いたんだかんね」
あの公開実験が失敗して父母と東京から逃げ帰ってきて以来ずっとこうだった。
新聞記者たちは彼らが期待したように惨めな敗北者と化したわたしたちを放っておいてはくれなかった。
彼らは父と母を低俗な詐欺師やカルトの如く扱い、面白おかしく文字に起こして世間を煽り立てた。
この島に帰ってきてからも素行の良くない記者たちが取材と称して追ってくる始末。
当然の様に島にも噂は広がった。
以前から母のことを知っている大人たちは我関せずといった反応だったが、一方で無知な子供らにはたいした理性などなく。
…まあ、つまるところ。
これがわたしの日常。
いつもの如く有象無象からわたしは排斥されていたのだった。
「……」
「なに無視してんのよ!ペテンの子のくせに!」
いつのまにか慣れてしまった雑音。
悲しくなりたくなければ心を閉じて嵐が過ぎるのを待てばいいだけ。
何も感じたくないのだから何も感じないようにすればいい。
ただ、それだけのこと。
「……」
「無視すんな!」
何も反応しなければそのうち飽きていなくなる。
いつものことだ。
だからなんともない。
わたしはなにも感じない。
感じないんだ。
「…そんな態度とっていいと思ってんの?バラしちゃうよ、アンタの秘密」
「…っ」
まさか。
まさかまさか。
どこかで話が漏れた?
あのことを知っているのは限られている、はずだ。
そんなはずない。
そんなはず
「今日先生たちがコソコソ話してるの聞いたんだから!アンタ、生まれつきおかしい身体のせいで不生女なんだって~?かわいそぉ~なさーだこちゃん」
バレた。
どうして。
知られてしまった。
わたしの醜い身体の秘密が晒されて。
しられたどうしてなんでなんでわたしのわたしのわたしの
「うまずめェ~?なんだそれ」
「こいつ生まれつき子供が産めないんだって~。どうやっても絶対に赤子が産めないなんて女として終ってるよね。まあそれだけならまだマシかー。だってアンタ…」
やめろ。
お願いだから。
やめて。
言わないで。
やめ——————
「女のなりしてても男としてはなかなかにご立派なんでしょ!男に相手にしてもらえるような身体じゃないもんね~、あっはははっ!」
「はあ?なんだそれ。こいつまだなんかあるんか?」
「さだこちゃんは女なのに男のアレがついてるのよねー。これまで必死にバレないように隠してきたのにばらしちゃったね!ごめーんゆるしてさだこー。きゃははは!」
「おいおい、そんな妙な話初めて聞いたぞ」
「本当かよ?適当なホラ話を吹き込まれて間に受けたんじゃないのか?」
「ホントだって!気になってこの前こっそり確かめたんだから。間違いないよ」
…なんでだろう。
どうしてこんなことするんだろう。
どうして、わたしはこんな目にあうんだろう。
どうして———
「…そこまで言うなら本当かどうか確かめないとな。おい、手ェ貸せ」
「やめ、て」
どうして———
「おっと、暴れるんじゃないわよ!抵抗したらアンタの身体のこと学校中にいいふらしてやるから」
「っ!?」
どうしてわたしは我慢してるんだろう。
「動くなよォ。はい御開帳~」
本当はわたしよりもずっとこいつらは弱いのに。
「はーいとうとうお待ちかねのご対面だ!ほいっ!!」
わたしには『力』があるのに。
「うわっ、なんだこれ!?本当に男のモノがついてるじゃねーか!」
殺そうと思えばいつでも殺せるのに。
「だから本当だって言ったでしょ。…それにしてもこうして間近で見ると本当におかしな身体よね!なんかの間違いで恋人できてもいざ、って時に脱いだら相手の男は逃げ出すわねえ!ぷっ、あははははっ!」
なんでかな。
「うわっ!ちょっと手に触れちまったよ。ばっちい~」
なんで。
「気持ちわりィ~、手ェ洗って来いよ。こっちに近づけんな」
なんでなんで。
「それにしてもアンタの身体…」
なんでなんでなんでなんで。
なぜなぜなぜなぜなぜ。
どうしてわたしは———
「見れば見るほど醜いわねえ」
…本当は。
本当は殺そうと思ったことは何度もあった。
目の前のこいつらだけじゃない。
虐げられるわたしのことを見て見ぬふりをする連中も。
…何食わぬ顔で幸福な日常を享受している無関係な人たちも。
みんな。
みんなみんなみいぃんな。
呪っていた。
殺してやりたかった。
『力』の差をわきまえない無知で愚かな顔を恐怖に歪ませてやりたかった。
…でもその度に父と母の悲しげな表情が頭をよぎって何もできなかった。
父はこの『力』を素晴らしいモノだと言ってくれたけれど。
ならばどうして。
どうしてわたしは幸せになれないんだろう。
どうしてわたしは目の前の虫けら一匹殺せないんだろう。
どうしてわたしはいつまでも一人なんだろう。
どうして―――――
「おいお前らっ!何やってんだ!?」
「…?」
この声はなんだろう。
この顔は誰のモノなんだろう。
まぶしくてよく見えない。
この、顔は…。
「あーん?口出すんじゃねーよ東京モンが!」
「転校生のくせに生意気言うんじゃないよ!さっさと引っ込んで…」
「男女平等パンチ!」
「ぐええっ!?」
あ、お腹にイイのが入った。
「てめえ、なにしやがる!おらあ!」
「がっ!?ってえなこのやろう!やられたらやり返す!倍返しじゃごらああ!!」
転校生?が反撃をくらったようだ。
でもそこで終らず———
「あおおおおおん!?!?」
股間にイイのが入った!
これは痛い。
「てめえはこれでも食ってろ!」
あ、なんか懐から取り出したと思ったら投げつけて…。
爆発。
「な、なんじゃこりゃあああああ!?鳥のウ○コじゃねーか!?くっさ!?」
くっさ。
「おい、逃げるぞ!」
「え?きゃっ」
いつの間にか目の前にまで近づいていた彼は、わたしの手を取ると走り出した。
彼の勢いになし崩しにわたしの身体は抵抗する気も起きずに流されてしまう。
「あっ!?くっそ、覚えてろよこら!このままじゃすまねえからなあ!」
「糞だけにかーっ!?」
「やかましいわあ!?」
…なんなんだろう。
なんなんだろうか。
まだ何もわからない。
わからない、けど…。
「やればできるもんだなあ、あっはは!ざまあみろ、だ…!」
今だけは、この手を離す気にはなれなかった。
***
「あー、走った走った」
だいぶ遠くまで逃げてきてしまった。
ここからならわたしの家も近い。
息が切れてしまった。
「っ…どぉ、してっ、ッ?」
わからない。
どうしてこれがわたしを助けたのか。
何の得にもならないのに。
むしろ良くないことに巻き込まれるのは目に見えているはずなのに。
わからない。
「あーいって…はあ、大丈夫だったか、あいつらもガキだからってひでえことするなあまったく」
そう言って彼はこちらを向く。
その顔を間近で視界に入れて、今更ながらに彼が東京から転校してきた同級生だということにわたしは気づいた。
何もかもがどうでもよくなっているわたしの視界に入っていなかったとも言えるが。
「お前いつもこんなことされてんのか?友達いないの?ぼっちか!ぼっちなのか!」
…いきなり何を言い出すのか、これは。
無礼なやつ。
「…」
「可哀そーだなお前。誰も友達いないならオレが友達なってやってもいいぞ~!」
目の前のこれのわたしを心底哀れむような眼差しに先程までのよくわからない高揚がさっと引いていく。
わたしの胸の内がいつものように冷たいもので満たされていく。
「…わたし、可哀そうなんかじゃない」
気持ち悪い。
これも自分に酔ってるだけだったんだ。
あれらとたいして変わらない、自分の情緒も制御できずにこちらに我を押し付けてくるだけの愚かな生き物だ。
「さっきは、ありがとう」
惨めなわたしを下に置いて、優越感を得たいだけなんだ。
きっとそうだ。
「でも、正義の味方ごっこがやりたいならあなた一人でやって」
…さっきのは、気の迷いだ。
「もう、わたしに関わらないで」
「えっ、ちょっと!?」
返事も聞かずこの場を去る。
結局何も変わらなかった。今後も何も変わることはないだろう。
いつか悪い噂が風化するまでは。
いつかこの島を出るその時までは。
いつか誰もわたしを知らない場所に巣立つまでは。
いつか、わたしは——————。
「…あー。もしかして失敗しちゃった?それにしてもまあ…」
一人取り残された彼は憂鬱そうに呟いた。
「こじらせてんなあ」
この日の翌日、彼は何事もなかったかのようにわたしに話しかけてきた。
無視した。
…やっぱり、変なヤツ。
***
その日の放課後。
早く帰ろうと思い、ふと校庭に目をやると彼が何やらその身を洗っていた。
無視して帰ろうかとも思ったがなんだか胸の内がもやもやして気持ち悪くなったので仕方なく近づくことにした。
…これも全部こいつのせいだ。
「…ああ、なんだお前か。こんなもんただのかすり傷だよ。ガキの癇癪程度なんてこたねーよ。ほっときゃそのうち収まるさ。ん~?なんだ心配してくれるのかー、嬉しいねえ!え、違う?」
こいつのせいでわたしらしくもないことをする羽目になったんだ。
「…昨日も言ったでしょう。もうわたしに関わらないでって」
わたしなんかに近づかなければ、痛い目を見なくて済むだろうに。
…どこか胸が苦しい気がするが、錯覚だ。
どこも痛くなんか、ない。
「これ以上、わたしに手間を取らせないで」
あなたに近づいてほしくなんか、ない。
「もう私に関わるなって?バーカ。オレが好きでやってることなんだからお前は余計なこと考えなくていいんだよ(昭和亭主関白並感)!お前が嫌だって言っても勝手に近づいちゃうし(ストーカー規制前昭和並感)!誰がお前の言うことなんか聞くかよ~!!」
イラッ。
(こ、この男は…)
いったいわたしをどこまで苛つかせれば気が済むのだろうか。
これと話しているとどこまでも疲れる気がする。
「…、もういい」
「あ、おい」
無視。
さっさと帰ろう。
こんな男に自分から近づくなんてどうかしていた。
「どうせ、すぐに音を上げるもの…」
この愚か者をあの有象無象が放置しておくわけがない。
こんなことが毎日続いて平気でいられるはずなんて…。
「…バカな人」
誰の目にも明らかな選択肢を間違えた愚者をわたしは嗤う。
わたしなんかに、関わるからいけないんだよ?
すぐに終わる。
もうすぐ終わる。
…その日は、もう目の前まで近づいてきていた。
———そして。
…あの日から何日経っただろうか。
件の彼は相も変わらず、無意味なちょっかいをかけてきては無視するというのがわたしの日常の一部となりつつあった。
いつになったら飽きてくれるのだろうか。
「何の意味も、ないのに」
ただ鬱陶しいだけ。
それだけの、はずだ。
…それなのに。
「わたしには関係ない」
いろいろと見ないようにして適当に受け流していたが、とうとう彼にも年貢の納め時が来た。
これまでも何度かちょっかいをかけられていたが、馬耳東風の彼に業を煮やしたらしい。
わたしが少し席を外した隙に、あれらに連れていかれたようだ。
…校舎裏の物置小屋か。
「関係、ない」
そう、わたしには関係のないこと。
調子に乗った馬鹿者が当然のように叩きのめされるというだけのこと。
出る杭が打たれるのを見て笑ってやりたいだけだ。
「…」
…それだけだ。
「がっ!?何すんだこのやろ…ぐっ!?」
「もうあの女に関わるなって忠告無視するからこうなんのよ!いい気味だわ!」
「都会から来た坊っちゃんにはここらの掟がわからんかったかなあ?おらっ!」
「んぎっ!」
案の定、彼がリンチをくらっていた。
だから関わるなと言ったのに。
自業自得だ。
…なのに。
「これに懲りたらもうあの根暗に構うんじゃねーぞ、ふんっ!」
「うぐっ!、う、るせー!だぁれがてめーらみたいなクソガキ共の言うことなんか聞くか!」
「こ、この野郎また!」
「お前ははいって言えばいいんだ、よっ!」
どうして。
「い、やだ」
どうしてそこまで。
「こ、こいつ、まだ言うか!?」
「どいつもこいつもあのカビ女のどこがそこまでいいのよ!?どうしてよ!」
あなたは、わたしに…。
「…そのままに、してたらっ、地面の、下まで堕ちていきそうなヤツっ、放っておける、かよ!。それに…」
こんなにもわたしに…。
「『前』、から一度見てみたかったっ、んだ。幸せに生きた、貞子ってやつ、をなあっ!!」
…わたしにやさしいの?
「ふ、ふざけんなあ!」
「まーだ教育が足りねーようだなお坊ちゃんよ」
ああ…虫の音が五月蠅い。
おかげであなたの声が聞こえないでしょう?
…これ以上囀るな、鬱陶しい。
「これ以上舐めた口聞けないように…ん?なんだ、電球が勝手に?」
わたしの『力』に反応したのか倉庫の電球がスイッチを押してもいないのに明滅する。
爆ぜた。
「きゃあっ!?」
「おわっ!?なんだこりゃあ!?…ん?おいおい根暗女じゃねーか。チッ、そうか、覗いてやがったな」
「アンタがやったんでしょ!よくも」
「ちょうどいい、てめえも躾直して…ぐっ!?、あ、アアあああああ――ッ!?!?!」
つぎはおまえだ。
「な、なんだよ!?急に倒れ、た、オおおオおおおお———ッ!?!?」
…あと一人。
「ひっ!さ、さだこ、アンタが…!?」
もっと見せて。
わたしを喜ばせてよ。
あなたの、恐怖で。
「こ、こないでバケモノ!!ひぎっ!?ぎゃあああああーーーっ!!」
五月蠅いなあ。
肩をちょっと外しただけでしょう?
…本当は首を捩じってやりたいところだけど。
「いたいいたいいたいいいいィ!!アタシの腕があああ!!」
「ねえ、あなた。もうわたし『達』に関わらないでね。でないとわたし…」
「ひぐっ!?かっ、かひゅっ、ゥっ」
首を締めあげて宙吊りにする。
こわい?
こわい?
かわいそうな虫さん。
もうすぐ死んじゃうね。
「次は首を外すの我慢できないからあ」
「ひ、きっ!……」
なあんだ。
もう気絶しちゃった。
つまんない。
つまんない。
「…あ、漏れてる」
くっさ。
いや、もうこんなゴミ虫はどうでもいい。
それよりあの人だ。
「さ、貞子、お前」
顔色が悪い。
突然こんなモノを見せられたら当然か。
あなたも、わたしをバケモノと呼ぶのかな。
…そう呼ばれても仕方がないけれど。
「ま、まさか、とうとう殺っちまったんじゃあない、よね?」
「…?」
…なんだろう?
この違和感は。
あまり、驚いて、ない…?
「死んでない。ちょっとトラウマを見せて恐怖を植え付けただけ」
「そ、そうか」
「…何も聞かないの?」
「いや…」
気のせいだろうか。
まあいい。
しゃがんで彼の手をとる。
あたたかい。
「…わたしみたいなのに関わるからこんなことになったのよ。なのにあなた、勝手に無抵抗で突っこんで、好き放題喚き散らして。挙句の果てに叩きのめされて。馬鹿よ、あなた。この大馬鹿者」
あなたのせいでわたしは乱された。
あなたのせいで平気な振りをしているわたしは壊されてしまった。
責任、とってよ。
「へっ。お前こそ、こんなに滅茶苦茶しやがって。いつものやせ我慢はどうしたんだよ」
「倍返し」
「え?」
「あなたが言ったんでしょ。やられたらやり返す。倍返しだ!って」
「倍どころじゃないだろうがこれ。てかオレのせいにするなよ」
あきれたような顔でわたしに文句をつける彼。
生意気な。
「わたしは真似しただけだから」
「おいおい…」
なんだろう、この感じ。
一度は拒絶したわたしだけれども。
今は悪くない、かも。
「わたしに近づくの、許してあげる。それであの時のことはチャラにしてあげるから」
「わけのわからんことを…」
日が暮れる中二人、手をつないで。
この時間がずっとずっと続いてほしいと。
確かにこの時、わたしは心のどこかで願っていたのだった。
***
あれ以来あの虫達は姿を見せなくなった。
命こそ屠らなかったが、代わりに心が壊れてしまったらしい。
噂ではわけのわからないことばかり呟いてまるで別人のようになってしまったとか。
可哀そうに。
どこかから話が回ったのか、以前にも増してわたしに関わろうとする物好きはいなくなった。
…いつもわたしの隣にいる、この人を除いてはだが。
「…お前の母さん今大変なんだって?まあ、今度見舞いにでも行かせてもらうよ。そう暗い顔するな。なーに、オレがちょっと死ぬ気で<元気になるお呪い>でもすれば少しは立ち直ってくれるさ。え?余計悪くなりそうだからいらない?失敬なー」
どっちが失礼なんだか。
この人はいつも変わらない。
わたしが『力』を使って虫を駆除した時もあまり揺らいでなかったし。
心臓に毛でも生えてるのではなかろうか?
「いまなんか失礼なこと考えてただろー」
「気のせいじゃない?」
変な時ばかり鋭い男。
今の母の話だってそうだ。
母はあの事件以来時々悪夢にうなされている。
最近はどんどん酷くなっているらしく、薬を処方してもらっているが、正直気休め程度の効果しかないのは明らかだった。
能力者ゆえに人間達の悪意を直に心で受け止めてしまったせいなのかも知れないと、最近思う。
わたし自身、他人事ではないということもある。
『あなたはなにも、心配することはないのよ』
そう言って母はわたしの前では平気な振りをしていたが、日に日に顔色が悪くなっていくのが隠せなくなってきていた。
『おい、なーに朝から暗い顔してんだ。なんか悩み事でもあんのか?…もしかして、家族のこととかか?』
わたしの顔は焦燥を隠せていなかったのか、一瞥しただけで見抜かれて、つい頷いてしまったわたしは心情を吐露してしまったというわけだ。
…こんなこと以前のわたしならあり得なかったが。
いやそもそも話す人が…。
「ぼっちじゃないもの」
「いきなりどうした!?」
わたし、根に持ってるんだからね。
…そんなことはともかく。
わたしが彼に事情を話したのはこの人ならば何かしてくれるのではないかというあまり根拠のない期待もあったからだ。
わたしの心を溶かしてくれたあなたなら、なんて。
恥ずかしすぎて本人にはとても言えないけれど。
だから…。
「…わりい。ちょっと用事思い出したわ。今日学校遅れるかも」
「え?」
「先行っててくれーーー!」
…え?
…行っちゃった。
「なんなのよ…」
また変なことでも思いついたのだろうか。
勝手なことして。
「あとで聞き出さないとね」
仕方なく一人で登校する。
「早く来て、ね」
…2限目になっても3限目になっても。
彼は登校してこなかった。
「…あら、あなた貞子と同じ学校の…。こんな朝からいったいどうしたの?」
「今日は、志津子さんに大事な話があって来ました」
地に跪いて頭を下げる。
「ちょ、ちょっと!いきなりどうしたの!?頭を上げて…」
「お願いです。死なないでください。何があっても、生きるのをあきらめないでください」
頭上から息を呑む気配がする。
「このままだと、貞子が不幸になってしまうんです。私は、あの子が人を呪って死んでしまうなんて光景、見たくないんです」
「なに、を…」
オレには何の力もないから。
「…私は、この世とは違うところから来ました」
こんなことくらいしかできないから。
「お願いします!あなたを助けさせてください!」
お前があんな末路を辿らないようにする為なら。
「私にッ、貞子を助けさせてください…っ!!」
いくらでも頭なんて下げてやるさ。
「…頭を、上げてくださいな」
———第三の道は、開けた。
「え?昨日母さんと何話してたのだって?お前みたいなガキには関係ない話だよ!ぐえっ!?おま、フォー○グリップは卑怯だろ!スター○ォーズも公開前なのに!暗黒面から戻って来いサーダー卿!」
なお、翌日放置された娘にお仕置きをくらう模様。
「ス○ーウォーズってなに…?」
時は昭和XX年。
○ターウォーズは未だ公開前なのであった。
***
桜が咲いて、蝉が鳴く。
紅葉が色づき、寒空の下で葉が落ちる。
そんな光景を何度繰り返した頃か。
…わたし達にも、巣立ちの季節が近づいてきていた。
「さむい…」
「もう秋だなー」
部屋の隅のやかんがしゅんしゅんと蒸気を上げる。
相変わらず、わたし達はいつも一緒にいる。
わたしがこのひとと一緒にいることは、今となっては当たり前になっていた。
…孤独だった頃のことは、もう思い出したくない。
たった数年前のことなのに、遠い昔の話のように思う。
「もうすぐ卒業だけどお前はどうするんだ~?上京して女優になるとか言い出さないでくれよー。やめとけ!やめとけ!お前の演技力じゃB級ホラー映画で散々人様に迷惑かけた挙句なんか別の地縛霊と合体するキモイ悪霊役が関の山だってガハハ!ぐえっ!ぐるじい…」
「あなた学習能力ないの?口が軽いと早死にするわよ」
まったく。
いつまでも子供のような人だ。
出会った時から変わらない。
…わたしは変えられてしまったけれど。
そもそもいきなりわたしが女優になるとか、何の話だろうか?
確かに以前はこの嫌な思い出ばかりある故郷を出て、明るく華やかな都会で生活したいという漠然とした願望のようなものは抱いていたが。
今のわたしはこの人が隣にいれば、それでいいんだ。
だいたい合体する悪霊ってなんなんだ。
そんな妙な役が出てくる映画なんてあるわけないだろうに。
失礼なやつ。
「…そういうあなたはなにか考えてるの?何も考えてないんじゃないの?」
そう揶揄う様に問い返すと、彼の表情が僅かに強張った。
…なんだろう?
「あー、オレのことはいいんだよ。適当にどこへでも行くさ。ま、お前もこれからどうするか決めたら教えてくれよ?いつも一緒にいられるのも学生の間だけだしな!ははっ」
…なんで、そんなこと言うの?
その言葉が耳に入った瞬間、わたしの心に冷水が浴びせられる。
そうだ。
今こうしていられるのも、学生の身分の間だけ。
そんなことは言われずとも分かっていたが、大人になってもこの人と一緒にいられるものだとぼんやり思っていた。
…そんな未来に、何の根拠もありはしなかったのに。
「…ぃゃ」
そもそもこの人もこの島の外から転校してきた。
外から来たのだ、当然出ていくことだってあるだろう。
大人になればなおさらだ。
卒業したら一生会うこともないなど珍しくもなんとも
「いやっ!!」
「わっ、ど、どうしたいきなり!?…さ、貞子?」
そんなの、いやだ。
わたしは弱くなってしまった。
あなたのせいなんだよ?
なのに勝手に離れていくなんて、許さない。
「あなたが言ったんじゃない!わたしが嫌でも傍にいるって言ったじゃない!」
「お、おい落ち着け!」
押し倒したあなたの瞳に、虚ろな目をした女が映っている。
「ずっと、一緒にいたいの」
「貞子…」
いつもこの人は何も話してくれない。
母の時もそうだった。
いくら聞いても、答えてくれなくて。
わからない。
あなたが何を考えているのかわからない。
…だからもう、いいよね?
「わたしを抱いて」
もう我慢しなくても、いいよね?
「…私を置いて、いかないで」
『あなた』を知りたい。
『あなた』と繋がりたい。
『あなた』とずっとずっと、一緒にいたい。
『あなた』が隣にいないわたしなんて、もう考えられない。
その為ならわたしは——————
「なんでも、する、から…っ」
「…」
あなたは無言でわたしの背に腕を回してくれる。
…ああ!
この人はわたしを受け入れてくれた!
壊れたわたしを、バケモノのわたしを、欠陥品のわたしを、受け入れてくれた!!
うれしい!
うれしいうれしいうれしい!!
貪るように口付けをする。
『あなた』とわたしがつながっていく。
『あなた』とわたしが交わっていく。
『あなた』とわたしが溶け合っていく。
『あなた』とわたしが一つになる。
そして。
わたしは、『視た』。
『あなた』の全てを知った。
『あなた』の心を知った。
『あなた』の愛を感じたわたしは。
「ああ、これが、わたしの…」
わたし、は——————
…そして、物語は0に至る。
最悪の0で終らない。
0から始まる、わたし達の旅路が。
おまけ 憑依乗っ取り3ピーから始まるラブストーリー in らせん(連続ドラマ版世界線)
なんやかんやで並行世界の貞子の恋人に似た顔で僕がキラだとか言いそうな黒幕と手段を選ばないマッドが退場し、この世界の貞子も成仏してから数日。
なぜかオレは毎日貞子と高野舞と3ピーしていたのだった。
どうしてこうなった。
「寝てたらどっかで見たような娘が上にのって致してるとか誰が予想できたってんだよ…」
またオレ、なんかやっちゃいました!?とか言いたくなったわ。
「なあに、まだ文句言ってるの?受け入れなさいよ、わたし達を」
誰のせいだと思ってるんだ誰の。
「…君もいいのか、こんなことしてて。だいたい君はお兄さんのことが…」
「兄はもういませんから」
急に目のハイライト落とさないで!
怖いよこの娘!
なんかリング時代の様にホラー側の存在に戻ってない?
(らせん時代に)戻ってこいっ、高野舞!!(ギシギシ(意味深)
「あの時、私をいつも守ってくれていた兄は、来てくれませんでした。それで本当に私は一人になっちゃったんだ、って今更の様に分かったんです。あのままだったら誰にも知られることなく、一人でわたしは殺されていました」
「でもそうはならなかった」
「…あなたが、来てくれたから」
「あれっ?助けたのわたし」
「貞子を介してあなたと繋がった時に、想いが、記憶が、全部私の中に流れてきたんです。今も、あなたとわたしは、魂で繋がってるんです。あぁ、すごいぃ…」
「無視しないでー。呪いのベータマックスばらまいちゃうわよー。見たらその時刻に失禁するわよー。日付を間違えやすいように13日後仕様よー」
なんか恍惚とした表情を浮かべる舞さん。
あとそこの色情霊、うるさい。
「もう私は一人じゃない。…わたしだけのモノじゃないのは残念だけど。もう、死んでも離しませんから…」
虚ろな瞳でこっちをじっとり見つめてくる舞さん。
…そういや『お兄ちゃんは私だけのモノ』とか言って崖から死体と一緒にダイブしようとするような『壊された』娘だったっけ。
危険信号ががが。
「…どーにかならないの?この娘」
「無理★肉体的にも精神的にも、魂を介して繋がっちゃったから、もうこの娘もわたし達の一部みたいなものね。文字通り死んでも離れません!」
「ガッデム!!」
オレにはイカれた女の面倒見なきゃいけない星の巡り合わせでもあるってのか?
ちくしょーめー!
「せきにん、とってくださいね…」
妖しい視線をこちらに向けながらにじり寄ってくる舞さん。
なんかどっかで聞いたような台詞だなーと現実逃避。
あっ、ちょっと舞さん!マイサン弄らないでえ!
「わたしが正妻なんですからね!」
何怒ってんだ、お前のせいじゃろがい!
あ、ちょっと貞子さん?
そ、そこは違う場所かなーって。
…あ、アッ――――――――!!!
完
これ書くだけで一週間何も出来んかった。
まあそんなことはともかく。
鶏のウ○コ爆弾はオレ君が鶏小屋からパクったのを紙に入れて解体した花火の火薬と癇癪玉仕込んだ自家製です。
やべーやつだなこれ。
いじめっ子共はいろいろ拗らせてる人達です。
嫉妬とか好きな子苛めるとか。
あと志津子さんの説得シーンでJIN-仁-のBGM流れてます(爆
この貞子さんは尽くす女です。
学生時代はツンデレ?クーデレ?気味でしたが自分の全てを受け入れられてオレ君信者になった結果、貢ぐ女になりました。
放っておくと頼みもしないのにパチンコ代を渡そうとしてきます。
おまけの続きで連ドラの高野舞ちゃん知らない人に分かりやすく言うなら、兄を亡くして再出発した元人工依存系ヤンデレ女です。
元々霊媒体質でこの世界の貞子に何度か憑依されたこともあるくらい相性がいいので、はじめての3ピー憑依乗っ取りプレイで貞子と肉体と精神が同調してしまった結果、魂レベルで繋がってしまいました。
貞子同様、転生しようがもう離れません。
オレ君両側から耳元で囁かれながら攻められそう(核爆
では、今度こそ読み専に戻りまーす。
だれか続き書いたら教えてね♥
じゃ。