【一発ネタ】転生したら幼馴染が貞子だった件 作:yoshiaki
おまけの冬休み拡大版スペシャルみたいなノリですがそれでもよければどうぞ。
どうしたの?
こんなところにたった一人でいつまでも。
後悔しているのかしら?
自分の選択を。
なにかしたいの?
…それとも、なにもしたくないの?
これは既に幕を閉じた物語。
これはとうに朽ち果て、皆に忘れ去られた舞台劇。
いいのね?
後悔しないのね?
…言ってごらんなさい。
あなたの、望みを。
それを、わたしは…。
もはや誰も訪れぬその場所で。
木々の葉擦れが聞こえる闇の中、月を映すかのように女の瞳だけが薄っすらと輝いていた。
***
今はもう誰も使っていない部屋に女が一人、佇んでいた。
鏡の前で一人だけ。
いつまでも、終わることなく。
ふと、女に声がかけられる。
「もう、いいんじゃないですか?」
女の背後にもう一人、影が近づく。
「…貴女は『アレ』を抑えるために力を使い過ぎてしまったのでしょう?」
女は無言で鏡を睥睨する。
「そんなになってまで、貴女は…」
ゆっくりと、近づきながら、睨み続ける。
疾うの昔に終わっている女に手をかざす。
「…伝言よ。後は任せて、安心して眠ってくださいお母さん、って」
『ァ…』
鏡に映る女の表情が穏やかになると、その姿が徐々に薄れていく。
狂っていた視線がはっきりとこちらに向く。
『ァの、こを…』
「わかってます。もう何も、心配する必要はありません」
『ぁりがとぅ、ござ…』
そう、最期に微笑んで鏡の女は消えてゆく。
こうして半世紀以上親心でこの世に留まり続けた母が、旅立ったのだった。
「…本当に、ご苦労様でした」
一礼して部屋を後にする。
まだ仕事は残っている。
これからも彼女の安息を妨げることのないようにするべき仕事がいくつもあった。
「それにしても…」
用が済み、その場を後にしながら一人女は言葉を漏らす。
「『代理』とはいえ母親の墓参りくらい自分でしなさいよ…」
この場にいない誰かに向けて、そうぼやくのだった。
***
所変わってここはとある大学の講義室。
倉橋有里は教授の森繁の毎度の与太話を適当に聞き流していた。
「…と、いうわけで呪いのベータマックスは実在するのです!ベータ貞子研究の第一人者である私が言ってるんだから間違いないですはい。ここ、テストに出まーす(横暴」
いつものように後半はいつもの呪いのナントカの話で終ったことに有里は嘆息する。
「もうこの話何回目よこれ…」
「もう耳にタコができちゃうぐらい聞いてるよねー」
なんでも森繁の学生時代に見たら死ぬ呪いのビデオとか言うありがちな都市伝説が流行ったらしい。元々都市伝説マニアだった彼はそのビデオを探し回っていたが全く見つからず、諦めかけていたところに呪いのベータマックスなるものもあるという噂が耳に入り、近所の百均のワゴンセールの中に紛れているのを発見し、再生機をわざわざ取り寄せて見てみたらしい。
「13日後に教室でウ○コ漏らすなんて森繁先生もついてないわねえ~」
「有里、お下品…」
よりにもよって連休の日中に見てしまったせいで授業中にウ○コを漏らすという在りし日の森繁少年の忘れたくても忘れられない体験は彼のその後の人生を酷く歪めてしまったらしい。
何をとち狂ったのか、森繁は今日に至るまで自分を学校で脱糞させた貞子?とかいう怨霊をその目で確かめることを生涯の目標とし続けているのだった。
学校で脱糞させる怨霊ってなんだよ。
ちなみに見たら死ぬビデオの方も貞子とやらが作ったものらしいが森繁いわく、そちらはもう興味ないのでどうでもいいとのこと。
「ベータなんちゃらにはどんな内容が映ってたんだっけ?」
「んーと、なんかよくわからない裸の男女が出てきてひたすらやらしーことしてたとかなんとか」
「…それただの自撮りAVでは?」
貞子とやらは、人を呪い殺したりホームAVばら撒いたり、なんだかかなり錯乱している怨霊のように思える。
有里がまだ見ぬ貞子とやらを哀れみながら、その存在に思いを馳せていると、なにやら聞き覚えのない声がかかった。
「上野さん探したわよ。はいこれ、約束のDVD」
「あっ、高野先輩!わざわざありがとうございます!」
「いいのよ。変なところで中古の機材でも仕入れて中に呪いのビデオでも入ってたら森繁先生みたいになっちゃうよ?」
「それはいやだなー…」
なんだかキレイな人だなー、と有里はぼんやり思う。
夏美の知り合いだろうか?
「君子危うきに近寄らず、よ。…それじゃあ私は用事があるからこれで」
「あっ、はい!ありがとうございました!」
そう言って茶髪美人は去っていく。
なんだか独特の雰囲気の人だったなー。
「お母さん達の結婚式のビデオ、ダビングしてディスクに移そうと思っていろいろ考えてたら、たまたま先輩が声かけてくれたんだー。親切な人だよね」
「ふーん…」
…あんな人いたかなあ?
結構な美人さんだし一度くらい見かけていてもいいはずだけど…。
「…であるからして!ベータ貞子を見かけた人がいたら是非是非!わたしの所に連絡くださーい!捕まえて調べてみたいことがたくさんあるので!」
この先生なんでクビにならないんだろうか。
己の関知しない所で何かが始まるところが、何も始まらなくなった有里はそう思った。
「…なんてものばら撒いてるの!後でOSHIOKI確定ね…!」
茶髪美人先輩は今日も忙しいのだった。
***
常盤経蔵は困惑していた。
面白いモノが見られるからと法柳に呼び出されて相方の珠緒と共にこうしてわざわざ足を運んだ訳だが…。
「どーなってんだよ…」
以前から目をつけていた例の呪われている家から1㎞以上離れた建物の屋上でぼやく経蔵。
突如として某国の大物テロリストから核テロが予告されてしまったこの街は、現在、自衛隊と米軍によって厳戒態勢がしかれていた。
当初はただの悪戯だと思われていたが、ホワイトハウスが旧ソ連崩壊時に流出した戦術核を件のテロリストが入手したという情報を公表したところから事態は一変。
全市民には即時避難命令が出され、街は完全に封鎖されていた。
…中東の大物テロリストの目標が日本の何の変哲もない地方都市だということに専門家達は揃って首を傾げていたが。
「まあそうぼやくなよ。特等席でめったに見れないイベントを鑑賞できるってんだから楽しめよー」
「…この黒子の皆さんもアンタらのお友達なのか?無駄に騒々しいこった」
周囲で忙しなく作業中の覆面の軍人らしき集団から視線を外し、目の前の飄飄とした男を睨む。
あの『バケモン』のオトコらしいこいつに連れてこられたと思ったら蚊帳の外でどんどん事態が進行して訳が分からなかった。
先日法柳のところで引き合わされたあのベータ貞子とやらのせいで今この時も珠緒は怯えて使いものにならなくなっていた。
この世には個人の力だけではどうにもならん相手がいることを学べとかなんとか。
後学のためとか言ったってモノには限度ってもんがあるだろうに。
「うちの貞子が迷惑かけてごめんね、珠緒ちゃん。…ほら、おまえも反省しとけよ」
「だってこの子、いきなり人の顔見てゲロ吐いて失神するんだもの。いくらなんでも失礼すぎると思わない?」
「うぅ…だって、凄く(生きてるか死んでるかあやふや+霊的存在感が強すぎて)気持ち悪すぎたから…」
「呪い殺したろかこのクソガキ…!」
「ひぃ!」
「はいそこの悪霊子供を脅さなーい」
ベータ貞子の圧から逃げるように再び経蔵の背の後ろに隠れる珠緒。
トラウマは治らなかったようだ。
緩い雰囲気に嘆息していると、なにやら兵士たちが荷物の梱包を解き終ったようだ。
外箱から取り出された頑丈そうなケースにはなんだか見覚えのあるハザードシンボルらしきマークが…。
「おい、まさか…」
ひきつった表情で経蔵が問いかけるとベータ貞子を宥めていた男はニヤリと笑った。
「その、まさかだよ」
同時刻
ハワイ諸島沖上空 高度5万1000フィート
『エアフォースワン』
限界高度まで上昇した機体の会議室で、制服姿の将官が緊張した様子の壮年の男性に声をかけた。
「閣下、『チーム6』から暗号通信です。作戦準備完了、予定どうり実行されたし、とのことです」
「本当にやっちゃうのか…」
「本当にやっちゃうんです」
「ああ神よ、我らを救いたまえ…!」
横に立っていた海軍大佐が手錠で繋いでいたケースをテーブルの上に下ろすと今日のコードを打ち込んで施錠を解除する。
ケースの中には大仰な通信機のような機材が一式詰まっていた。
「もっと他に方法はなかったのかね?もしバレたらシャレにならんぞ」
「偽装は完璧です。その為に『彼女達』の一人がわざわざ中東まで足を運んでスケープゴートを仕立ててくれましたからな」
「…奴は洗脳でもされたのか?」
「さあ、それはなんとも」
とぼけた顔をする将官から目を外し、男は機材の生体認証をする。
「本当に大丈夫なんだろうな?」
「問題ありません。事前にネバダでテストを行いましたが、爆風も放射線も指定の範囲内で完全にシールド可能なのは確認済みです。フォールアウトも完全に圧縮されており、アフターケアも万全と。いやはや、敵には回したくないものです」
「最後は人任せとはな…」
「仕方ありません。この手の人材は土着の宗教関係者が多く、我が国においては比較的人材の層が薄いですから。ちなみに『あの家』の写真を見たウチで一番腕の立つヤツいわく、『これは無理』だそうです。特殊部隊を突入させても厄介なゾンビが増えるだけでしょうな」
「『彼女達』に任せるしかない、か」
椅子に背を預けた男は、窓から見えるはずもないその『家』を睨みつける。
「ゴーストごときに人類が滅ぼされてたまるか…っ!」
認証コードを送信し終えたアメリカ合衆国大統領はそう吐き捨てた。
「いくら太陽は浄化の触媒として最適だからってこんなもん用意するか普通…?」
「だよなー。オレも直接相手にすりゃいいのでは?って思ってたんだが…」
「…だって面倒くさいし。そんな暇があるなら家でゴロゴロイチャイチャしていたい。それにいくら旦那にDVくらったからって自分の子供を巻き込んでまで街中で無差別殺人して回ってるオバさんと一緒にされたくないし…」
「おまえの方がBBA…あがっ!?じ、じめるなああ…!」
「悪いのはこの口かな、この口かなあ!わたし根に持ってるんだからね!あんなのと合体なんかしないしキモくもないもの!」
「あがが…」
「キモく、ないもん…」
「ギギギ…」
首を絞められて半ば宙吊りの男に周囲の軍人達はアンビリーバボーとかユーワーマイブラザーアナキンとか騒ぎ出す。
なんだこれ。
「さてそろそろ時間だ。準備はいいか、貞子」
「ええ、いつでもいけるわ、アナタ」
「急に素に戻るな!?」
まるで何もなかったかのように一瞬で素面に戻った二人に経蔵が突っ込みを入れる。
なんだこの夫婦。
「じゃあ、始めるわ」
貞子が手を翳すと『プレゼント』がゆっくりと宙に浮き上昇し始める。
それを見た軍人達がまたオーマイガーとかメイザフォースビーウィズユーとか囃し立てる。
なんだこれ。(2回目)
「じゃあ飛ばすわよー。えーいっ!」
ベータ貞子が手を振るとまるでバリスタで飛ばしたかのように高速で放物線を描きながら目標の『家』にずれることなく飛んでいく。
「あ、はいった」
人気のない不気味な家。
突如その呪われた建物の天井を突き破ってナニカが居間の床に突き刺さる。
「…?」
部屋の隅で蹲っていた裸の不気味な少年は首を傾げて『それ』を見つめる。
また誰か入ってきたのだろうか。
いや、人ではない。
これは、タイマー…?
おかあさんに…。
赤い数字の点滅が0になったのを確認する間もなく、この地で呪いを振りまき続けてきた母子の意識は、貞子の強い念が籠ったB54特殊核爆破資材の発する光の中に呑み込まれていった。
***
『家』が跡形もなく消滅したのを尻目に、用意しておいたテレビに向き合う。
「…さて、次はアナタの番よ、負け犬さん」
コンセントも繋げていないのにモニターに勝手に電源が入る。
不気味な映像が映り、髪の長い女がこちらに向かってくる。
…これが、この世界の『わたし』。
「あなたのビデオ、視たわよ。実に陰気でカビ臭い、負け犬のホームビデオだったわ」
女がモニターの中から出―――
「これはわたしとあの人の時間を潰してくれたお礼よ」
ようとした女の頭を鷲掴みにすると宙吊りにして髪の中に手を突き刺す。
「……、…あった。あの人の記憶で見てなかったらちょっと面倒だったわね。さて…」
手を引き抜いて『それ』を回収すると、ぎょろりとこちらを睨みつけるバケモノの眼。
あは。
怒ったかしら?
わたしにだけは効かないのよ。
自分だけは誤魔化せないでしょう…?
「嫉妬したんでしょう?愛されている自分に。貶めたかったんでしょう?幸福な自分を」
髪を伸ばしてこちらに巻き付けてくる。
余程触れられたくなかったようね。
「わたしもいろいろあったけれど、アナタには負けるわ。だってアナタ…」
ぎりぎりと締め付けようとする髪を無視してわたしは『わたし』を嘲笑う。
「生まれてからも、死んだあとも、ただの一度もまともに愛されなかった負け犬だもの…!」
ぼう、とわたしに纏わりついた髪に火が付き、徐々に燃え上がってゆく。
苦しい?
ねえ、苦しい?
「どれだけ幸せな自分を貶めても、どれだけ人を呪い殺しても…」
もう、全身に火が回っている。
そう睨まなくったっていいでしょう?
たまりにたまったツケを払う時が今だった。
これは、ただそれだけのこと。
「…貴女自身は幸せになれなかったわね」
最期に大きな軋み音を立てて炎の中に消えてゆく。
…これで、終わりね。
「次があるなら、もう少しまともに生まれて…」
そうらしくもないことを呟きかけて、頭を振る。
これでよかったんだ。
これで。
…あの人なら、堕ちたわたしが終わるときにどんな風に言葉をかけてくれるだろうか。
無意味な仮定で思考を巡らせながら、わたしはその場を後にするのだった。
***
光。
光を感じる。
ここはどこなんだろう。
わたしはなんなんだろう。
ずっと、夢を見ていた気がする。
ずっと闇の中にいたような気がする。
なんだろう。
誰かがわたしを呼んでいるような気がする。
だれ?
あなたはいったいだれ?
その声を確かめるように、瞼をゆっくりと開く。
「…うなされてたよ」
…この、声は。
あなた、は。
「っ、近づかないで!」
意識がはっきりしてきたわたしは遠山さんから離れようとする。
「落ち着け貞子!もう終わった!全部終わったんだよ、だから…!」
「わたしはバケモノだったの…っ!」
息を呑む音が聞こえる。
そう、今のわたしは全てを覚えていた。
今のわたし達の状況も、わたしがこれまで何をしてきたのかも、全て。
「わたしのせいでみんな不幸になった!わたしのせいでみんな死んだの…!わたしが殺したのよ!!わたしが…」
「あれは君のせいじゃない!もう一人の君が…」
「アレもわたしよ!」
そうだ。
アレも紛れもない『わたし』の一部。
半身だった。
「わたし、本当は嫉妬してた!わたしより幸せな人がうらやましかった!みんなみんな引きずり落してやりたかった…!みんなみんな殺したのはわたし!わたしなの…!」
「でも今の君は違うじゃないか!…君はもう、自由に生きていいんだ!」
「そんなこと…」
できるわけ、ない。
「わたし、あなたを殺した後もたくさん殺したわ。劇団の人達も、あの記者の人も。みんなみんな殺したわ」
あの時のことは今でも鮮明に思い出せる。
開放されてとても愉しかったのを覚えている。
今思い出しても嗤いが止まらない。
「あの記者も傑作だったわね。恋人を殺されて、仇のわたしを討つつもりだったのに悦子さんを撃ち殺して自分も拳銃自殺しちゃうんだもの。いったい何がしたかったのかわからないわ」
「貞子…」
どうしてそんな哀れむような目でわたしをみるの?
おかしな遠山さん。
「その後お父さんに井戸に堕とされなかったらもっともっと殺して遊べたのにね。でも聞いて、遠山さん」
「…もういい」
おかしいなあ。
「わたしが死んだ後もいっぱいいっぱい呪えたの。たくさんたくさん人間達が殺せたの。顔も知らない人間がわたしの眼をみたらすぐ死んじゃうの。その死に顔ったらとっても間抜けで」
「もういい!!」
…遠山さん。
「もう、いいんだ…」
どうしてかな。
「どうして、こうなっちゃったんだろう」
「貞子…」
涙が止まらない。
愉しい思い出ばかりなのに。
なんでだろう。
「わたしは、ただ…」
わからない。
わからないよ、お母さん。
「生きたかっただけなのに」
だれか教えてよ。
「生きて、幸せになりたかっただけなのに」
だれか―――
「…盛り上がってるところ申し訳ないけどちょっといい?」
…あなたは、『わたし』の?
「その姿では初めましてね、『わたし』。どう、わたしが産んだ貴女の身体は?」
あなたが、わたし達を蘇らせて…?
「そうよ、苦労したんだからねーその身体作るの。わざわざ墓穴開いて骨から遺伝子採取してクソつまらないホームビデオ見た後にのこのこやってきたアナタの霊体から貴女の魂をぶっこ抜いて受精卵に入れて産んだのよ。…ああ、ついでに森でさ迷ってたそこの恋人さんもとっ捕まえて遺体の場所を探して掘り返して遺伝子採取してまた産んで。あなた達にわかる?あの人との逢瀬の時間を削ってまで妊活していたこのわたしの苦労が?」
「「ご、ごめんなさい」」
「まったく…」
別の世界から来たらしい『わたし』は嘆息しながらわたしの下腹部に手を当てる。
…なんだろう?
「…立原悦子さんから伝言よ。『あの時は私のせいでごめんなさい。どうか私の分まで幸せになって』だって」
な…。
「どう、して…」
わたしのせいで、あなたは死んだのに。
わたしが、遠山さんをあなたから奪ったのに。
どうして、あなたは、そんなにも―――
「なんで、あなたはそんなにもやさしいの…ッ!」
全部、わたしのせいなのに。
恨まれて、憎まれて、殺されて当然なのに。
わたしは、幸せになってはいけないバケモノなのに。
「わたしは…っ」
「…俺も、一緒に背負うよ」
…遠山さん。
「…また死ぬつもりならそれは貴女の勝手だけれど、あなた達の子供まで道連れにするのはやめた方がいいんじゃない?」
「え…」
いま、なんて…?
「本人は生き返るつもりはないって言ってたから面倒くさいし貴女のお腹に入れておいたわ」
「あ、ああぁ…」
わたしの、お腹に、あなたが…?
「…さすがに三連続で産む気はないわ。産むかどうかは貴女が決めなさい」
「貞子…!」
ああ。
ああ。
「わあああああーーーッ!!」
ごめんなさい。
ごめんなさい。
ごめんなさい。
そして…。
「あり、がとう、ござっ…!」
「…覚悟は、決まったようね。この子の名前は…ふふっ、もう決まってるようなもの、か」
なまえ。
名前。
そうだ。
もう決まっている。
これから生まれてくるこの子の名前は。
この子の、名前は——————
今でも、時々これは夢なんじゃないかと、怖くなる時がある。
でも、わたしはもう迷うことはないだろう。
共にわたしの罪を背負ってくれると言ってくれた人がいる。
わたしを許してくれた人が姿を変えた我が子もいる。
わたしはもう、この夢から覚めることはないだろう。
微睡の中、わたしは唄を歌う。
かつてフィナーレまで演じ切ることが出来なかった、あの唄を。
…もし。
生まれ変わることができるなら。
それが神に逆らうことであっても。
私はあなたのそばに。
あなたと一緒にいたい。
…すべてが、夢ならば。
夢から覚めたとき、あなたがいてくれれば。
…でも、朝の光は私の本当の姿を照らし出す。
それでも伝えたい。
…愛していると。
おまけ ベータウォーズ 高野舞の帰還
「…どうしたんだ?そんな不景気な顔して」
この世界の貞子のアフターケアを終え、病院から出てきたこいつを出迎える。
…また、余計なことでも考えてるのか、こいつは。
「なんだなんだ~、遠山さんにでも惚れたかあ?ま、無理もないか。顔が同じなどっかの新世界の神(笑)とは中身も大違いな真のイケメンだしな。それともアレか?こっちのおまえに嫉妬でもしたか~?おまえと違ってだいぶお淑やかだもんなー彼女」
問いかけには何も答えずにこちらの背に腕を回し、顔を埋めてくる。
「…ねえ」
「ん?どうした」
顔を上げないまま言葉を零してくる。
「もしわたしが夢から覚めた時、あなたは傍にいてくれる…?」
…まったく。
こいつはいくら時を重ねても、心の芯の部分は変わらないんだな。
「文字どうり死んでも一緒にいるんだろう?今更過ぎるぞ。いつも言ってるだろ。…ずっと、一緒にいてやるよ」
「うん…」
俯いていた顔を上げ、瞼を閉じる。
整った顔が近づいて…。
こー…。
「…ん?」
だこー…。
「こ、この声はまさか…!」
先程までの空気が無かったかのように青ざめた表情を顔に浮かべる貞子。
…あー、この声はもしかして?
「噂の森繁先生がおまえを追ってきたみたいだなー」
「は、早く逃げなきゃ…!」
慌てて逃げ出そうとする貞子。
そんなに嫌なのかね。
「…おまえの大ファンなんだろう、あの先生。一度くらいまともに相手してやっても罰は当たらんと思うが」
「だってあの人必死過ぎて気持ち悪いんだもの!なんかやだ!」
「あー」
さだこおおおー!
「って、話してる場合じゃなかったー!?。わたしは逃げるッ…!」
「あっ、おい!…ああ、行っちゃった」
「ざまあないわね…」
「おわっ!?ま、舞か、いつからそこに…?」
いつの間にか背後に立っていた舞さん。
いったいいつ帰ってきたんだ?
「…本当に大変だったんですからね。わざわざ中東に飛んで、現地のゲリラの心を虱潰しに読んで、手がかりを見つけたら見つけたで険し過ぎる山岳地帯を死にそうな思いをしながら駆け抜けてテロリストを『力』で操って犯行声明のビデオレターをホワイトハウスに送らせて。一番めんどくさい仕事を私に押し付けた罰よ。後、ぼやかしてるとはいえ、私とあなたの全裸映像をばら撒いたOSHIOKIも兼ねてるの。いい気味だわ…ふふふ」
「う、うわあ…」
地球の反対側でも苦労してたんだな…舞。
お疲れ様です。
「先生のお陰で今だけは私だけのお兄ちゃんだね…」
「おまえはそれでいいのか…?」
瞳のハイライトを消してこちらに身を預けてくる舞さん。
…いろいろと都合がいいと思って戸籍上兄妹にしちゃったのは失敗だったかなー?
「ついに見つけたぞさだこおおおおおーーーッ!!!」
「こっちにこないでええーーーっ!?」
これも一つの因果応報か。
なにやらハアハア息を荒げだした舞さんを腕の中に抱えながら、そう思うのだった。
完
この後先生に追いつかれそうになったので川に突き落として逃げ切りました。
この話書くので正月つぶれちゃった。
思いついちゃったからね、仕方ないね。
序盤のアレはリング0バースデイで遠山さん達が殺された森です。
この世界の貞子の為にいろいろ骨を折ってあげてました。
貞子との対話に応じた遠山さんと悦子さん以外のその他の犠牲者たちは強制昇天させました。
舞さんの墓参りは例の山村家の鏡の部屋です。
この世界の志津子さんは化物の貞子の暴走を抑える為に力を限界以上に酷使して心が壊れてしまいました。
呪いのベータマックスは、オレ君と舞さんと3ピーしてる時の光景を貞子視点で念写したものです(爆
先生も呪いのショックでおかしくなっちゃいましたね。
法柳さんは以前森繁先生が持ち込んだベータマックスの縁です。
勘違いして討伐しようとして返り討ちにあいました。
珠緒ちゃんが怯えていたのは貞子を霊視したら貞子vs伽椰子のラスト以上に気持ち悪かったからです。
思わず吐いちゃいました。
お米の国の支援は貞子さんがホワイトハウスに突撃してこのままでは人類が滅亡する!と直談判した結果です。
覆面軍人さん達は海軍の特殊部隊の方々です。
最終的に闇の貞子は浄化されて光の貞子が残りました。
らせんの時の要領で貞子が産み直しました。
今までの所業、罪は消えてなくなりませんがこれから彼女は強く生きていくことでしょう。
もう孤独ではないですしね。
おまけは本編の最中に中東でひーひー言いながら仕事して帰還した舞さんの復讐です。
サブタイベータウォーズ 高野舞の復讐でもよかったかもw
この後倒錯しきった舞さんは兄妹プレイに励みましたとさ。
あーやっと終わった。
これで休めます。
それでは皆さんさようなら。
じゃーねー。