鋼鉄これくしょん   作:あーくこさいん

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突如乱入してきた超兵器『荒覇吐』と『グロース・シュトラール』
八洲達は持ち前の兵装とこれまでの経験を活かして戦いを優位に進めてきたが、遂に悪魔達が本気を出す………


第十一話 悪魔達の真髄

ー太平洋方面防衛作戦最終防衛ラインー

 

「これは…!」

 

グロース・シュトラールの禍々しいオーラにブリュンヒルデは()()()()を思い出した。

それは彼女がまだ艦だった頃の話だ。

バルト海でグロース・シュトラールと戦ったブリュンヒルデは戦いの末、敵艦の艦橋を破壊する事に成功した。

それが決定打となりグロース・シュトラールは停船し艦長のシュルツは敵艦に対し降伏勧告を出したが、そこで異変が起こる。

 

なんと敵艦内にて悲鳴が上がり、グロース・シュトラールが紫色のオーラに包まれてそのまま動き出すという異常事態に陥った。

その後敵艦の激しい猛攻によってブリュンヒルデは轟沈寸前まで追い詰められたが、グロース・シュトラールは超兵器機関から発せられるエネルギーの過負荷によって自壊を起こし爆沈した。

その爆発はあれだけの巨体を誇る船体が跡形もなく吹き飛ぶ規模だった。

 

「あの時と同じ…!」

 

「…ブリュンヒルデ、一つ教えてやろう。本来発生する()()()は超兵器機関の暴走を防ぐ為の処置として常に余剰エネルギーが放出され、そのエネルギーが時空に歪みを引き起こすからそれがノイズとして出ているのだ。そしてあの時は超兵器機関の()が強制的に外れた事でエネルギーを制御出来なくなり結果自壊したのだ……」

 

「…なら、何故この時になるまでノイズが出なかったの?」

 

「そう、今我々が搭載している改良型超兵器機関は機関出力を最適化した事により余剰エネルギーを放出する必要が無くなり通常時ではノイズは発生しない!そしてこの改良型にも特殊な枷は付けてある…ただしその枷は自らの意思で外す事が出来、尚且つ自壊しないように調整されている!そのかわり枷を外すと余剰エネルギーが出てしまう為ノイズは発生するが、大した欠点では無い。…さぁ、遊びは終わりだ、我全力を持ってして貴殿らを殲滅しようぞ!」

 

禍々しいオーラと紫電を纏ったグロース・シュトラールが様々なレーザー兵器を乱射しながら襲い掛かる。

ブリュンヒルデとリバティは咄嗟に回避する。

回避しながら2人はAGS砲やレールガン、プラズマ砲で反撃するが、グロース・シュトラールが纏っているオーラによってレールガンは通ったが砲弾は勿論のこと、電磁防壁ですら防ぐことは出来ない筈のプラズマ砲も防いでしまった。

 

「プラズマ砲が効かない…!?」

 

2人は驚愕する。

 

「…言っておくがこのオーラは唯のエフェクトでは無い。このオーラ自体が防御重力場・電磁防壁を凌ぐ特殊力場となっている。プラズマ砲をも相殺する代物だ。」

 

グロース・シュトラールは自慢げに解説する。

だがリバティは見抜いていた。

そのオーラもレールガン等の電磁砲では完全に相殺し切れていないという事に。

そしてブリュンヒルデも気づいた。

あのオーラも防御重力場と同様、喫水線より下には展開出来ない事に。

 

「…だけど、貴方のオーラも完璧な防壁では無いようね。」

 

そう言うと2人はそれぞれの兵装を構えて彼に攻撃を仕掛ける。

 

 

 

 

 

一方、八洲側もーーー

 

「…ほぅ、“極光”の野郎本気を出したか…ならちょっくら俺も本気を出すか…」

 

そう言うと荒覇吐も紫色のオーラに包まれる。

彼も枷を外したのだ。

 

「…来るか!」

 

次の瞬間、荒覇吐がスピードを上げて襲い掛かる。

同時にガトリング砲や各種エネルギー兵器を乱射し、八洲も主砲とレールガンを放ち応戦した。

荒覇吐は発生したオーラでレールガン以外を相殺する。

八洲も巧みな操艦で回避し、電磁防壁でレーザーを相殺する。

彼は17秒で次弾を装填し、すかさず撃ち込む。

荒覇吐はラムアタックを繰り出すが、バウスラスターを起動し間一髪でかわす。

その後も八洲と荒覇吐は互いの兵装をフル活用し、接近しては離脱を繰り返す。

まさに“海上の格闘戦(ドックファイト)”だ。

 

「フハハハハッ!!死ねぇ!!」

 

「…お前がくたばれ!」

 

この戦いによって互いの損傷が激しくなる。

いくらプラズマ砲をも相殺するオーラと言えど、絶え間なく攻撃を浴びせ続けられば、オーラの効果も弱くなる。

さらに背中にあるガトリング砲と数基のエネルギー兵器が破壊され使用不能になる。

八洲も一基の四連装砲が大破した上、カニ光線や数基の機関砲・パルスレーザーが破壊された。

その後、荒覇吐は艦尾のロケットブースターを噴かし猛スピードで襲い掛かる。

流石に回避が間に合わない…その時だ。

 

彼は迫り来るドリルを破壊された四連装砲で受け流し、右側の主砲群でもって荒覇吐に零距離砲撃を喰らわした。

腹部に思いっきり砲撃を受けた荒覇吐は大きくのけぞり血反吐を吐いた。

だが、それでも荒覇吐は攻撃の手を緩めない。

彼らは破壊と闘争の為に生み出された存在。

邪魔する者は皆平等に殲滅する。

 

「…まだだ、これで終わりじゃねぇぞ…!」

 

「…相変わらずのしぶとさだな。」

 

「当然だ!敵たる者は殲滅する…自らの存在を脅かす者なら尚更だ!」

 

「…そうだな、なら鋼鉄(くろがね)として海の底に葬るまで!」

 

戦闘は続く……

 

 

 

 

 

その頃、ブリュンヒルデとリバティはーーー

 

「くっ、厄介ですね…前は見境なく殲滅していましたが、今回は的確に攻撃している…」

 

暴走状態のグロース・シュトラール相手に防戦一方な状況だ。

枷を外し暴走状態になったとはいえ、前とは異なり的確に狙いを付けて攻撃している為ブリュンヒルデは回避するのに精一杯だった。

リバティは潜航したがグロース・シュトラールのASROCの波状攻撃を受け止む終えず浮上した。

彼女はレールガンと魚雷を放ちダメージを与えるが、度重なる砲撃とレーザー攻撃を受け防御重力場と電磁防壁に多大な負荷が掛かり消失寸前にまで追い込まれていた。

 

(このままでは埒が開かない……何か手は…)

 

彼女達は思案する。

グロース・シュトラールは度重なる攻撃によって中破相当のダメージを受けていた。

考えた末、リバティはブリュンヒルデに通信を開く。

 

「ブリュンヒルデ、ちょっといい?」

 

「何か思い付きましたか?」

 

リバティはブリュンヒルデに思い付いた作戦を伝える。

 

「そんな…危険です!その作戦なら確かに有効ですが、リバティさんの身に危険が……!」

 

ブリュンヒルデは懸念を示すが、リバティは根拠を述べる。

なんでもリバティの“特殊鋼鉄複合装甲”は驚異的な防御力の他にプラズマ砲などのエネルギーを分散・無力化する代物なのだ。

無論限度はあるが、1発くらいなら問題は無い。

 

「…分かりました。そこまで言うなら貴方を信じます。ですが…死なないでください。」

 

リバティは頷くとグロース・シュトラールに向けて前進する。

彼の猛攻もお構いなしに。

 

「血迷ったか、リバティ!」

 

彼は槍をリバティに向けてエネルギーを溜める。

リバティはレールガンを撃ちながらさらに接近する。

レールガンによって損傷を受けるが、エネルギーを溜め終わりーーー

 

「プラズマ砲、発射!!」

 

バヂィィィィィィィ!!

 

槍の先端から稲妻が放たれる。

放たれたプラズマはリバティに命中する。

その時、彼はほくそ笑んだ。

プラズマ砲は電磁防壁で防ぐ事は出来ない上、暴走状態でプラズマ砲の威力が格段に跳ね上がり特殊な装甲を持つリバティでさえも只では済まない…そう思っていたその時だったーーー

 

ギュオン!! ギュオン!!

 

「がっ!?」

 

突如甲高い音が鳴り響き純徹甲弾が命中した。

その徹甲弾は推進器辺りに命中し、グロース・シュトラールの速力が大幅に低下した。

さらに彼女が畳み掛けるように放った魚雷は敵艦の艦首に命中し、バウスラスターをも破壊した。

リバティの反撃によりグロース・シュトラールは機動力を失ってしまった。

だが、リバティもプラズマ砲の直撃により大破にまで追い込まれていた。

 

「…これで動けなくなったわね。」

 

「フン、それがどうした。応急処置を施せば済む事だし、動けなくても兵装は動くから問題は……」

 

その時、彼の後ろに何かの気配を感じ取った。

彼が振り向くとそこにはブリュンヒルデがいた。

彼が驚愕しているとーーー

 

「…終わりです。」

 

その瞬間、彼女は四基の魚雷発射管を発射していた。

合計20発の超音速酸素魚雷がグロース・シュトラールに襲い掛かる。

彼はすかさずブリュンヒルデに全兵装を向け彼女だけでも道連れにしようとしたが、リバティによって残っていた兵装を破壊された。

 

「貴様らァァァァァァァァ!!」

 

その後魚雷がすべて命中し、グロース・シュトラールは大爆発を起こした。

致命傷を受けた彼は断末魔の叫びを上げながら、炎上し沈んでいった。

 

「超兵器、撃沈…」

 

彼女達は超兵器を沈めて少し安堵した。

だが、リバティもブリュンヒルデも大破まで追い込まれていた。

 

「なんとか倒せたわね…」

 

「ええ、でも……」

 

戦いが終わっても尚、彼女達は素直に喜べなかった。

この世界に超兵器達が現れたというのは勿論の事、彼が言ってた事が気がかりだった。

 

「“テュランヌス”……でしたっけ、組織の名は。」

 

「………」

 

超兵器に指令を与えた存在…“テュランヌス”という組織。

強化された超兵器を差し向けてきた為、超兵器と戦ってきた彼女達にとっても侮れないというのは確かだった。

するとーーー

 

ズドォォォォォォォォォン!!

 

「「!?」」

 

突如として爆発音が鳴り響いた。

彼女達は応急処置をしながら急行する。

 

 

 

 

 

少し遡ってーーー

 

八洲と荒覇吐の戦いは熾烈を極めていた。

八洲の主砲が多数命中したとはいえ、荒覇吐は怯む様子も無く攻撃を続けた。

無論八洲もガトリング砲の直撃を受けてしまい、中破していた。

そんな中、八洲は思案していた。

 

(このままではジリ貧だ……何か手は…)

 

荒覇吐も耐久値が減っているとはいえ、このまま続けば先に沈むのは八洲の方だ。

彼は戦いながら考え、()()()()を思いつく。

 

(この手なら……しかし…)

 

思いついた手は確かに有効だが、下手すれば彼も沈みかねない方法だ。

 

(……一か八かだ…!)

 

だがこのままでは埒が開かない為、彼は覚悟を決めて行動する。

その頃荒覇吐はラムアタックを行おうとするが、八洲は驚きの行動に出る。

なんと彼は荒覇吐に向かって前進してきたのだ。

 

「なんだと……!」

 

彼は驚愕するが、その後興奮気味に笑みを浮かべる。

 

「…ハッ!ドリル艦ならいざ知らず、唯の戦艦に過ぎないお前が俺を相手に真正面から突っ込んで来るとは…正気の沙汰では無いがその漢気は買ってやる!なら俺も真正面からぶつかり合って粉砕するまでよ!!」

 

荒覇吐のロケットブースターが火を噴き、物凄い速度でラムアタックを繰り出す。

ドリルの機械音が鳴り響く中、八洲はレールガンを構えながら前進する。

彼はレールガンを放つが、オーラの力が強く純徹甲弾は弾道が逸れて遥か彼方へ飛んでいった。

その間に荒覇吐は接近し、ドリルが八洲に迫る。

このままでは八洲が危ない……その時だったーーー

 

(…今だ!)

 

彼は左側の艤装を前に押し出し、ドリルを食い込ませた。

そして左手で艤装に食い込んだドリルメイスの柄を持ち身動きを取れなくした後、その勢いのまま右手に持っていたレールガンを荒覇吐の心臓部に突き刺す。

 

「なっ!?」

 

王手詰み(チェックメイト)だ…!」

 

その瞬間、レールガンが放たれる。

その純徹甲弾は荒覇吐の心臓部…“超兵器機関”を破壊するには十分であった。

レールガンを放った後、八洲は凄い勢いで後進し荒覇吐から距離を取る。

荒覇吐も一矢報いようとしたが、超兵器機関を破壊され膨大なエネルギーを制御出来なくなり自壊し始めた。

 

「おのれ…おのれ八洲ァァァァァァァァ!!」

 

自壊により船体が崩壊し、怨嗟に満ちた断末魔を上げた荒覇吐はーーー

 

ズドォォォォォォォォォン!!

 

大爆発を引き起こし、轟沈した。

大爆発の後、残ったのは静かな大海原であった。

 

(…超兵器撃沈…しかし、この戦いは緒戦に過ぎない……)

 

「八洲さん、大丈夫ですか!?」

 

そう思っていた時、リバティとブリュンヒルデが来た。

 

「ああ、なんとかな……そちらも片付いたようだな。」

 

「ええ、苦戦したけど…」

 

「っ!八洲さん、その傷は!」

 

ブリュンヒルデが指差す方向を見ると、八洲の左横腹から出血していた。

先程の攻撃によって致命傷は避けたものの、ドリルが掠ってしまい出血してしまった。

八洲は慣れた手つきで止血する。

するとノイズが消え通信機能が回復したのか、提督から通信が入った。

 

『ちょっと大丈夫!?かなり酷い損傷じゃない!』

 

「安心しろ、このぐらいの損傷超兵器(奴ら)との戦闘では日常茶飯事だ。」

 

「ははは…」

 

八洲がしれっと返答し、ブリュンヒルデが苦笑した。

 

その時だったーーー

 

「…見事だな。」

 

突如として通信が入る。

八洲達だけで無く、他の艦娘達や艦内にいた提督達にも聞こえた。

 

「誰だ!?」

 

「…強化された荒覇吐とグロース・シュトラールを倒すとは…流石は鋼鉄(くろがね)だな。超兵器に対する“切り札”であり、我々の宿敵である存在…」

 

男はそう語る。

 

『貴方…何者なの?』

 

「…まあいい、どのみち相対するから今名乗っても問題は無い。」

 

そう言うと男は名乗った。

 

「我が名はアレス…テュランヌス総帥“アレス”。人類すべての“敵対者”だ。」

 

「アレス…だと?」

 

「…ちょっと待ってください!まさか他の超兵器も…」

 

「これ以上話す事は無い。いずれ戦場で合間見えるだろう…」

 

男がそう言うと通信は一方的に切られた。

すぐさま逆探知を試みるが、特定は出来なかった。

 

『…“テュランヌス”、深海棲艦に続き新たな脅威か……』

 

元帥はそう呟く。

 

 

 

この戦いは、後の『テュランヌス戦争』の序章に過ぎなかった………

 




次回は各方面の提督達が集まり、テュランヌスに対する緊急会議を開きます。

乞うご期待ください。
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