彼らはどこで生まれどの様な艦歴を送ってきたのか………
ー横須賀鎮守府医務室ー
「失礼するわね。」
長門達と談笑していると、旧海軍の士官服を着た女性が他の艦娘を連れて入ってきた。
「あ…大和と武蔵……姉貴…でいいのか?」
「ええ、私が貴方の前級、大和型一番艦『大和』よ。」
「同じく大和型二番艦『武蔵』だ。大和、弟分が出来たとはいえ少し緊張しすぎだ。」
八洲が大和達を姉呼ばわりし、大和が狼狽する。
「えっと…取り敢えず自己紹介するわね。私は横須賀鎮守府提督水野凛。階級は少将の位を受けているわ。」
「俺は八洲型戦艦『八洲』。第零遊撃戦隊所属だ。」
「私は南極連邦海軍所属、準超兵器級攻撃潜水艦『リバティ』。」
「ウィルキア王国近衛海軍所属、重装突撃型フリゲート艦『ブリュンヒルデ』です!」
各々が自己紹介する中、
「取り敢えず君達のことについて話してくれない?」
「分かりました。まずは俺から…」
そう言うと八洲は話した。
俺の元の所属は大日本帝国海軍所属であり、地名等はこちらの日本と同じだが歴史は違っていた。
まず、俺の世界の日本は日露戦争に敗北していた。
どうやら日本海海戦に勝利したが、その後起きたロシア帝国陸軍の最後の反撃を受け戦線を維持出来なくなり、結果負けてしまった。
その為、朝鮮半島の利権はポーツマス条約に基づきイギリスに渡り、日本の大陸進出の機会は無くなった。
だが、日本は内需に力を入れ海洋貿易国家として発展した。
貿易で儲けた資金を元手に更なる海軍戦力増強の為、『八八艦隊計画』を発動しその結果、長門型2隻、加賀型2隻、天城型4隻、紀伊型4隻、伊吹型4隻を建造した。
そして最新技術を導入し、大和型戦艦4隻を建造したが、この頃台頭して来た航空機に対応できないと判断され、新たに『超大和型戦艦』の建造を開始した。
主砲は45口径51cm砲を搭載し、設計段階から対空戦闘を視野に入れ、第一次世界大戦の敗戦国ドイツの経済援助の見返りとして手に入れた電子機器のノウハウを惜しみなく注ぎ込まれた俺は『八洲』を命名され、1944年に完成した。
そしてこの世界と俺の世界の最大の相違点は第二次世界大戦が1945年に起きた事だ。
しかも、その原因はソビエト連邦が突如ポーランドへ侵攻した事が発端だ。
日本軍は欧州に救援艦隊を送り、俺も日本海でソビエト海軍の最新鋭艦と激闘を繰り広げている中、ソ連は戦略爆撃機を開発、配備し日本本土を爆撃して来た。
そこで北極海に存在する戦略爆撃機の基地を破壊する為『八洲』単艦で赴くことになった。
任務遂行の為に北極海を航行している中、とんでもない事態が起きた。
突如として光に包まれて、気がつくと見知らぬ海域に出たと同時に所属不明の戦闘艦の攻撃を受け危機的状況に陥る。
これまでかーーーそう思ったその時、『第零遊撃戦隊』と名乗る部隊に助けられ危機を脱した。
その部隊の司令官に話を聞いたところ、ここは俺の世界やこっちの世界とは異なる『
それから俺たちは自らの帰還とこれ以上の被害を防ぐ為、世界各地を渡り超兵器を破壊し続けた。
戦いの最中、他にも転移艦が現れてその中には俺の元いた世界から転移してきた艦もいた。
俺も超兵器に対抗する為にパラレルワールドの超技術を導入して建造当初とは別物の戦艦になった。
そして、北極海にてヤツ…“究極超兵器”と対峙する。
その名は『ヴォルケンクラッツァー』
“摩天楼”の名を冠したこの超兵器は大陸をも消滅する究極兵器『波動砲』を持ち、2隻いれば世界を滅ぼすことができる超兵器だ。
無論、最終決戦として第零遊撃戦隊の全戦力を結集しヤツに戦いを挑んだ。
多くの同胞が沈み、俺も損傷を受けたが死闘の末ヴォルケンクラッツァーを沈める事が出来た。
敵艦が爆発しながら沈んでいった次の瞬間、その地点が光り始めた。
そう、元の世界に帰る為の“ゲート”が開いたのだ。
迷わず艦を進め、ゲートの中に入って行った。
気がつくと北極海にいた。
直後、友軍の通信がひっきりなしに入り艦長達は元の世界に帰ってきたと実感できた。
だが、先の死闘で最早修復不可能なまで損傷し本国に帰還することが困難になった。
さらに超兵器と戦う為に原型を留めない程改造されている為、このまま帰還しても本艦の超越した技術が新たな戦争の火種になるのを恐れてそのまま自沈させた………
八洲の話を聞いた提督達は言葉を失った。
「そ、そんな…」
「なんて艦歴だ…!」
特に大和と武蔵は弟分である八洲が壮絶な艦歴に絶句した。
するとリバティが、
「…ヴォルケンクラッツァー、あの“枢軸国の究極超兵器”と戦ったのね…」
「そういえばリバティ、ブリュンヒルデ。お前らもヴォルケンクラッツァーと戦ったのか…」
「ええ、次は私ね…」
私の祖国『南極連邦』は1910年に誕生した独立国家。
この国は民族という概念は無く、世界中から科学者や芸術家が集められて科学・芸術面で他の国より発展したの。
その為、南極大陸でも基地や都市を造って発展した。
それから10年後…
この頃、世界規模でエネルギー危機が叫ばれるようになり、化石燃料を必要としない『新機関』の研究が始まった。
5年後、ドイツが先駆けて『新機関』の起動試験を行ったけど、試験中に炉心が破損し暴走、実験施設は跡形もなく消失したわ…
これを機に各国は『新機関』の研究を相次いで中断し、消えかけたエネルギー危機の不安が世界を覆った。
転機が訪れたのは1931年、『南極連邦』の大陸地下から特殊な組成の金属『レアメタル』が発見された。
南極連邦特殊研究機関によりレアメタルを使った合金は高い耐熱性と耐衝撃性を持つことが判明、この新合金が新機関開発に進展をもたらすと考えた南極連邦は他国へ新合金の輸出を開始した。
そして、1933年列強各国は新機関の開発に成功、地球規模のエネルギー問題を回避し世界に平和と安定の時代が到来すると誰もが確信した…
だが、そのような考えをする者ばかりとは限らなかった…
1934年に新機関と新合金を利用した『超兵器』を各国が開発し始め、やがて連合国と枢軸国に分かれて大戦が勃発したわ…
すぐさま新合金の輸出を禁止したけど、今度は新合金の独占を巡って連合国と枢軸国が南極連邦に宣戦布告して来た。
もちろん南極連邦軍が迎撃に向かうけど、いくら科学技術が他国より優れているとはいえ『新機関』の開発に成功していない我が国は超兵器に成す術がなかったわ…
だけど、ただでやられる訳にはいかなかったわ。
『新機関』の次に出力の高い代用機関『核融合炉』を搭載し、我が国の高い潜水艦技術の粋を結集した『準超兵器級攻撃潜水艦』開発計画、通称『R計画』を秘密裏に進めて、1936年にこの私、『リバティ』が完成して就役した。
実戦投入されてからは連合国・枢軸国の超兵器と戦いを繰り広げた。
すべては列強各国の魔の手から祖国を守る為に…
超兵器との戦いを繰り広げる中、遂に連合国と枢軸国を追い詰めた我々は北極海にて連合国の究極超兵器『リヴァイアサン』、枢軸国の究極超兵器『ヴォルケンクラッツァー』と対峙した。
戦いを終わらせる為に支援艦隊と共に2隻を相手取り、損害を被りながら2隻を海の藻屑にした。
だが、その2隻の戦いで致命傷を負った私は艦長の指示で乗組員を退艦させた後、真っ二つに折れて轟沈した………
リバティの艦歴も壮絶なものだった。
するとブリュンヒルデがリバティに対して質問した。
「えっと、リバティさん。何故、南極連邦は新機関の開発が出来なかったのでしょうか?」
「厳密には開発出来なかったというより、その原料を発掘出来なかったという方が正しいわ。」
「?それってどういう…?」
リバティは説明した。
超兵器との戦いの最中新機関の調査を行った結果、その炉心は世界各地で発掘された『超エネルギー鉱物』を加工したものだと分かった。
ただしこの鉱物は南極大陸以外で発掘されるものだから南極連邦が新機関を開発出来なかったのはその為なの。
「…なるほど、土地の性質上原料が取れないから新機関を開発出来なかったという訳ですね。」
「まぁ、その代わりレアメタルは南極大陸しか発掘されない鉱物だったけど…私からは以上だわ。」
「じゃあ最後は私ですね。」
私の祖国ウィルキア王国は北欧からユーラシア大陸を横断したデーン系民族『ヴィルク族』が建国した王国です。
その後近隣の大国からの侵略を受けて近代まで支配されてましたが、クリミア戦争でロシア帝国の後背を突く形で独立戦争を仕掛け、そのまま勝利した。
独立から数十年後、再併合を目論むロシア帝国と戦争になったが日本と同盟を結ぶ事によりこれを撃退。
続く欧州大戦では現地まで遠征しドイツを支援しました。
以来我が国は日本、イギリス、ドイツと同盟関係を結び、戦後は産業の工業化・海軍の増強に力を入れ目覚ましい成長を遂げました。
当時、私は海軍増強計画の一環で巡洋艦『ブリュンヒルデ』として建造されウィルキア王国近衛海軍に配属されました。
しかし、1939年3月に国防軍と近衛軍による総合大演習の最中、突如国防軍の艦艇が実弾を発砲し、本艦は被弾し僚艦は撃沈された。
私は応戦しつつ離脱し、国王陛下を連れてなんとか同盟国の日本に逃げ込みました。
しかし、日本でも国防軍に同調する勢力によって艦長のシュルツ達は拘留された…
幸い、軍事顧問として派遣された筑波大尉と天城大佐が共謀して艦長達は救出されそのまま脱出しました。
そしてハワイに逃げ込んだ後、クーデターを起こした国防軍トップのヴァイセンベルガーがウィルキア帝国の樹立と全世界に帝国の傘下に入る様迫ったの。
当然、容認される筈も無く各国は帝国討伐に乗り出したけど、それも帝国の力の象徴…『超兵器』によって打ち砕かれました。
さらに帝国に与する国家が現れて戦火は世界中に広がった…
そこで帝国に対抗する為、近衛軍は『ウィルキア解放軍』へと名を変え他国と協力し帝国軍と超兵器を相手に戦いました。
私もドック艦『スキズブラズニル』と他の艦艇と共に世界各地を転々とし超兵器を破壊すると同時に超兵器についても調査し、以下のことが分かりました。
・超兵器は『超兵器機関』で動いている
・超兵器機関はバラバラになっても動き続ける
・超兵器機関は世界各地の火山地帯で発掘された
帝国軍相手に勝ち続けて各地を解放し、遂に首都シュヴァンブルグで超兵器『リヴァイアサン』を沈め祖国を解放しました。
…しかし、ヴァイセンベルガーは超兵器潜水艦に乗り込みシュヴァンブルグを脱出しました。
我々も跡を追い、北極海にてあの忌まわしき超兵器と相対しました。
その名は『究極超兵器 フィンブルヴィンテル』
すべての超兵器機関の元になった存在で、ヴァイセンベルガーはこの究極超兵器の力を利用して自らの野望“究極の世界構築”を行おうとしたけど…フィンブルヴィンテルが目覚めた途端、ヴァイセンベルガーが乗っていた超兵器潜水艦を破壊しました。
皮肉にも究極超兵器によってヴァイセンベルガーの野望は潰えました…でも、その後その超兵器は周辺の氷山や島々を破壊しながら南下して来ました。
シュルツ艦長はこれ以上の被害を食い止める為、巡洋艦改めフリゲート艦『ブリュンヒルデ』単艦で立ち向かいました。
究極超兵器との死闘の末、遂にフィンブルヴィンテルを撃沈しました。
しかし、フィンブルヴィンテルの超兵器機関が自壊を起こしその後爆散しました。
私はその衝撃波を受け、沈みはしませんでしたが船体に深刻なダメージを受け浸水が止まらず、航行すらままならない状態になり退艦することになりました。
退艦が完了した後、私は沈みました………
ブリュンヒルデも含め3人の艦歴の壮絶さに提督達は絶句した。
するとブリュンヒルデ達は口を開く。
「…私達はそれぞれ別の世界でほぼ毎日戦いそして沈みました。」
「だけど、私達は人の形を得て今ここにいるわ。」
「俺達はこの世界の事は知らない。教えてくれないか?」
「……分かったわ。」
そう言うと提督は3人に説明した。
この世界の歴史…
現在まで続いている『深海大戦』…
世界共通の敵『深海棲艦』について…
そしてそれに対抗出来る『艦娘』について…
「…なるほど、深海棲艦…俺達が今後戦う敵か……」
「怖気付いたかしら?」
「…まさか。」
「如何なる敵が相手でも、ウィルキア王国近衛海軍として戦います!」
八洲とブリュンヒルデがそう言い、リバティも頷く。
「ええ、その意気込みは良し!さっき大本営から連絡があってとりあえず艤装だけでも直しておけって命令が来たから、明日にでも作業に取り掛かるよう指示を出しておくわ。」
「つまり、技術調査という訳か…」
「だから、その調査が終わるまでこのままの姿で過ごしてもらうけど……」
「構わないわ。」
その後談笑と夕食を終えたのちに軟禁用に用意された部屋に入り彼らはそのまま就寝した。
数日後ーーー
「はい………分かりました。明日にでも修復作業に入ります。それでは……」
「いい結果が返ってきて良かったですね!」
秘書艦の瑞鳳がそう言う。
「ええ、でも……こんな艦娘版姫級、どう扱えばいいのよ……」
そう言いながら妖精達が調べ上げた八洲、リバティ、ブリュンヒルデのカタログスペックを見ていた。
「強力な戦力が手に入ったからいいのだけれど、心配なのは修復費なのよね……八洲とリバティは船体と武装の規模から大和以上なのは明白だけど、ブリュンヒルデの場合は武装からして予想以上に費用が掛かるかも……」
まもなく提督の懸念は現実のものとなる……………
次回は彼らが復活します。
その修復費は、そして提督の運命は如何にーーー
乞うご期待ください。