鋼鉄これくしょん   作:あーくこさいん

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膨大な修復費と引き換えに八洲達の修復に成功。
彼らの性能を測る為、試験航海を行う………


第四話 試験航海(前編)

ー横須賀鎮守府近海ー

 

八洲達は艦隊と合流するまで兵装の動作チェックをしていた。

 

「各種兵装異常無し。」

 

「あっ、前方に艦隊確認。まもなく合流します。」

 

そう言うと八洲達3人と金剛以下16人が合流する。

合流すると自己紹介を始めた。

 

「よろしくネー。私は金剛型高速戦艦のネームシップ金剛デース!」

 

「金剛型高速戦艦二番艦比叡です。今日は金剛お姉さま達と随伴します!」

 

「同じく三番艦榛名です。本日はよろしくお願いします!」

 

「金剛型高速戦艦四番艦霧島です。貴方達のデータ、たっぷり取らせてもらうわね。」

 

「初めまして。翔鶴型航空母艦一番艦翔鶴です。」

 

「同じく二番艦瑞鶴よ。今日はよろしくね!」

 

「川内型軽巡洋艦二番艦神通です。よろしくお願いします。」

 

「俺は天龍型軽巡洋艦一番艦天龍だ!フフフ、怖いか?」

 

「暁型駆逐艦一番艦暁よ。レディーとして扱ってよね!」

 

「暁型駆逐艦二番艦響改めヴェールヌイ。よろしくね。」

 

「暁型駆逐艦三番艦雷よ!この雷様がお世話してあげるわね!」

 

「暁型駆逐艦四番艦電です。どうか、よろしくお願いします。」

 

「綾波型駆逐艦七番艦朧です。よろしく。」

 

「綾波型駆逐艦八番艦曙よ。よろしく。」

 

「綾波型駆逐艦九番艦漣です!よろしくね!」

 

「綾波型駆逐艦十番艦潮です…よろしくお願いします。」

 

金剛達が自己紹介すると八洲達も自己紹介した。

 

「八洲型戦艦八洲だ。よろしく。」

 

「準超兵器級攻撃潜水艦リバティよ。」

 

「重装突撃型フリゲート艦ブリュンヒルデです。よろしくお願いします。」

 

「じゃあ、まずは沖に出ましょう!前進半速ネー!」

 

金剛の命令で艦隊は沖に出るが、瑞鶴が違和感を感じる。

それは八洲達が頻繁に速度調整をしている事だった。

 

(…まぁ、艦娘になったばかりだから仕方ないわね。)

 

瑞鶴は自分も同じ経験をしたので、さほど気にしていなかった。

外洋に出ると金剛は次の命令を下す。

 

「じゃあ、そろそろ航海演習ネー。まずはリバティの動きに合わせて動くネー。」

 

「…いいの?」

 

「OK、OK、No problemネー。神通達もついていくからYouの好きなように動いちゃいなヨ!」

 

金剛達は余裕の表情を見せる。

この時、金剛達はリバティがかなりの巨体を持つ潜水艦と言う認識だった為、水上速度は速くて20kt代も予測していた。

 

「…分かった。辛かったら言って。第一戦速。」

 

ついていく神通達はこけおどしと思ったが、悲劇が起こる。

リバティ達の速度が速すぎて神通達は慌てて追いかける。

なんと第一戦速で18.4kt出ていた。

そのまま第二戦速で29.3kt、第三戦速37.9kt出て神通達は最大戦速で追いかけるが、ついていけずに脱落する。

リバティは最大戦速である54.6kt出していた。

因みに八洲は最大53.7kt出せるし、ブリュンヒルデに至っては最大76.8kt出せるのだ。

 

「…久しぶりね。この感じ。」

 

「そうですね。私はもっと出せますが…」

 

「お前ら、俺達が速すぎるからあいつら置いてけぼりになっているぞ。」

 

リバティ達は振り返ると神通達を大きく離しているので、急いで神通達の所に戻った。

神通達は息切れを起こしていた。

 

「だから言ったのに…」

 

「いや、速えよ……」

 

天龍も今までの余裕は無くなっていた。

 

「一体、どんな機関を積んでいるネー…」

 

「核融合炉Ⅳ。」

 

「核融合炉Ⅳ…?何ですかそれは?」

 

「分かりやすく言うなら、海水を燃料にして動く機関の改良型。」

 

すると霧島が目を見開いて驚愕する。

 

「えっ!?それはつまり、リバティさんにとって周りに燃料があるって事ですか!?」

 

「そう。」

 

周りの艦娘も驚いてリバティを凝視する。

 

「リバティさん、海水を燃料にする為にどんな方法を用いているのですか?」

 

「…核融合炉の運用プロセスはかなり複雑で、貴方達じゃ運用出来ないわ。」

 

「そっ、そうですか…」

 

霧島は明らかに落胆した様子を見せる。

今度は榛名が質問する。

 

「あの、核融合炉の出力は一基でどのくらいでしょうか?」

 

リバティは少し考える素振りを見せるが、話すことを決めた。

 

「核融合炉Ⅳの一基あたりの出力は45000よ。」

 

「よっ、45000!?」

 

彼女達は驚愕する。

無理もない。彼女らのボイラーは最大15000とリバティの核融合炉の三分の一程の出力しかない。

 

「えっ!そんなものを何基積んでいるのよ!」

 

「核融合炉八基に核融合炉は回転効率100%のタービンも兼ねているから…合計288万馬力。」

 

その数値に艦娘達は戦慄した。

リバティは潜水艦だか、大和型戦艦の出力が15万馬力だから約19倍の出力を持っているのだ。

驚かない方がおかしい。

しばらくして霧島は我に帰り、

 

「えっと、ブリュンヒルデさんと八洲さんは?」

 

「私ですか?私は出力32000の核融合炉Ⅳ四基と駆逐タービンε三基で376,320馬力です。」

 

「俺は出力30000の常温核融合炉十二基と標準タービンζ四基で777,600馬力だ。」

 

「八洲はともかく、なんで貴方は貴方で翔鶴型(私達)の二倍以上の出力を持っているのよ!」

 

「なるほど、翔鶴型の二倍の出力に重巡並の船体ですから、驚異的な加速性能と速度性能があるわけですね。」

 

八洲とブリュンヒルデの性能に瑞鶴はツッコミ、霧島は冷静に分析していた。

すると榛名が何かに気づいた。

 

「あの…八洲さん。さっき『常温核融合炉』と言いましたが、それってリバティさんとブリュンヒルデさんの核融合炉と何か違うのですか?」

 

「ああ、核融合と言うのは確かに水素とヘリウムを用いる為、海水を燃料に出来るのが利点だが、核融合反応を起こすには極度の高温と高圧が必要で実用化が難しい。だから、俺の動力炉である『常温核融合炉』は希少金属の一つであるパラジウムを用いて核融合反応を起こす代物で、従来の原子炉と比べて高い出力と安全性が高い。反面、欠点もあって八ヶ月ごとに燃料補給しなければならないがな。」

 

「いや、それでも十分便利よ…」

 

瑞鶴は驚きを通り越して呆れる。

すると朧が気になったことを聞く。

 

「ねぇ、八洲さんのカニの手甲…それは何?」

 

「あっ、そういえば兵装はどんなものを積んでいるの?」

 

「ああ、それは…」

 

 

 

 

ー横須賀鎮守府執務室ー

 

『61cm65口径三連装砲と51cm75口径四連装砲、対空/対潜ミサイルVLS、新型パルスレーザーに30mm機関砲、レールガンβ、そして手甲状の兵装は新型カニ光線だ。』

 

一方ここは執務室。

ここでは金剛の艤装についているマイクから盗み聞きしていた。

提督を始め大和や武蔵に長門や陸奥、赤城や加賀に大鳳、秘書艦の瑞鳳が居た。

 

「あの…提督?」

 

「…いや、ミサイルはともかくレーザーやレールガンまで装備しているとは…」

 

提督は無線機片手に頭を抱える。

 

「なぁ提督…聞き慣れない兵装があるが…ミサイルとかレーザーは何なのだ?」

 

「まずミサイルは誘導式長射程噴進弾を近い。次にレーザーは工業加工に使われるもので、光の速さで飛ぶから避けられないのよ。だけどレーザーを兵器として使うには高い出力が必要だし、曇や霧が掛かると威力が著しく減衰するのだけれど八洲の高い出力なら多分問題は無いわよ。」

 

「ふむ…つまり航空機はほぼ無効になるって事か?」

 

「多分そうじゃない?」

 

「えっ、その性能なら私達空母の出番は………」

 

「えっ、いやいや大丈夫だから安心してっ!!泣きそうにならないでお願いだからっ!!」

 

自分達の存在価値が無くなりそうになって、泣きそうになった空母達を慌てて慰めることに…

 

「本当ですか?」

 

「本当、本当だから!!」

 

「なら良かったです。」

 

「はぁ……とにかくリバティとブリュンヒルデの兵装を聞いてちょうだい。」

 

『えっと、リバティさんは?』

 

『私はまず水中戦用として超音速魚雷、水上戦用として小型レールガンに新型強化プラズマ砲、新型パルスレーザーに30mm機関砲、多弾頭ミサイルVLS3を装備しているわ。』

 

『えっ!?水上戦って、貴方潜水艦でしょ!?』

 

驚くのも無理はない。

本来潜水艦は水中戦が得意だが、その反面水上戦に不向きなのだ。

 

『ええ、度重なる改装で水上戦も出来る様になったわ。特殊鋼鉄複合装甲の恩恵もあって戦艦並の装甲を持つに至ったわ。』

 

『えっと、特殊鋼鉄複合装甲って何ですか?』

 

電が質問した。

 

『特殊鋼鉄複合装甲はレアメタルを練り込んだ特殊装甲で、装甲厚の二倍近い質量の砲弾も防ぐ事が出来るわ。私の装甲は対31cm防御装甲だから、実質60cm砲の直撃にも耐えられるわ。』

 

あまりの高スペックに艦娘達は言葉を失う。

 

「…つまり、戦艦以上の装甲を持つ潜水艦という事か。」

 

「規格外ね…」

 

『えっと、気を取り直してブリュンヒルデさんは?』

 

『私は280mm三連装AGS砲と超音速酸素魚雷、多目的ミサイルVLSⅢに12.7cm75口径連装高角砲と35mmCIWS、チャフグレネードに囮投射機Ⅱを装備しています。』

 

『色々聞きたい事がありますが…そのAGS砲って何ですか?』

 

『AGS砲とは『発展型砲装置』のことで分かりやすく言うなら誘導能力を持つ砲弾を放つ艦砲です。』

 

『えっ!?砲弾自体が誘導を!?』

 

『はい。さらに280mmAGS砲は46cm45口径砲と同威力なのも特徴です。』

 

『それってつまり…大和型戦艦に匹敵する砲を持った重巡って、流石に冗談でしょ!?』

 

『事実です。あと、従来の酸素魚雷の2.25倍の速度を誇る超音速酸素魚雷を装備しているので、水雷戦も得意です!』

 

ブリュンヒルデのスペックに唖然とする中、

 

「そういえばリバティは潜水艦でしょ。なら潜航能力を見てみる必要があるわね。」

 

そう言うと提督は金剛達に指示を出す。

 

 

 

 

「じゃあ、リバティ。とりあえずYouの潜航能力を測るから準備してネー。」

 

「分かったわ。潜航モードに移行。」

 

そう言うと、右側に接続されていた水中バイクを前に出してまたがり、右肩の小型レールガン二基を前に、左肩の新型強化プラズマ砲を後ろに接続した。

その姿はまさに潜水艦そのものだった。

 

「すっご…」

 

曙が思わず口にする。

 

「では、潜航する。」

 

リバティはそのまま潜航した。

潜航し姿が見えなくなった後、駆逐艦達はリバティの水中速力を測る為すぐさま聴音を開始するが……

 

「あの…天龍さん。ちょっといいですか?」

 

「ん?どうした?」

 

「音が聞こえなくて速力が分かりません…」

 

その報告に皆驚愕する。

 

「なっ!?しっかり確認したか!?」

 

「駄目です!何も聞こえません!」

 

「…こっちもだ。スクリュー音を探知出来ない。」

 

八洲とブリュンヒルデはすかさず探信儀を確認する。

その反応を見て、彼らも驚愕する。

 

(…なるほど、かなりの静粛性だ…!)

 

何故なら、彼らの探信儀を持ってしても探知が困難だからだ。

彼女らが戸惑っていると遠くの方に何かが浮上するのが見えた。

そう、リバティだ。

彼女らが驚愕する中、リバティは近づき話しかけてきた。

 

「一通り動いてみたけど、分かった?」

 

「あっ、いや…なんというか……聞き取れなかったから分からん。」

 

「……やっぱりね。」

 

「?何が?」

 

「スクリュー音が聞こえないのは、私の推進システムはスクリュー方式ではなく水流推進(ポンプ・ジェット)と電磁推進の併用だからスクリュー特有の音は聞こえないわ。とりあえず自身の最大戦速67.3ktで一回りしたわ。」

 

そのことに金剛達は驚く。

 

「…そんなに出していたのかい、自信無くしてしまうよ…」

 

響(ヴェールヌイ)はそう呟く。

彼女は練度も高く、聴音に関しては彼女の右に出る者はいない。

彼女がショックを受けるのも無理はないのだ。

 

「と、とりあえず、次は射撃演習ネー。You達の実力を見せてみるネー!」

 

遂に彼らの兵装運用試験が始まる。

彼女達はまたもや彼らの性能に驚かされる事になるーーー

 




試験航海の話は前編と後編に分けます。

次回は射撃演習回です。

乞うご期待ください。

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