その様子が超兵器『ソビエツキー・ソユーズ』に見られているとも知らずに帰投した………
ー横須賀鎮守府ー
試験航海を終え、八洲達は執務室に入り提督に報告していた。
ふと、八洲が質問した。
「そういえば、鎮守府って横須賀以外にいくつあるんだ?」
「横須賀の他に佐世保、舞鶴、呉、大湊、室蘭、堺、単冠湾、幌筵、奄美、那覇、小笠原があるわ。前はトラックやラバウル、パナマなどがあったけど…」
「今は無いのか…」
「ええ、当時はトラックなど南方まで勢力を伸ばしていたけど…」
提督は『あの時』の事を話す。
2013年に艦娘が現れて五年間、日本は太平洋・東南アジアの解放に向けて深海棲艦と戦った。
その結果日本は東南アジアのほとんどを解放したのだが、鎮守府における艦娘の扱いは酷かった。
特に最前線が酷く、損害軽視の無謀な進撃や物資の横領などの提督の腐敗、艦娘の待遇は劣悪と言っていいものだった。
当時それは問題視されたが、それでも戦果を挙げて来るので強くは言えなかった。
今現在艦娘の待遇は改善され提督の意識改革が全軍に行き渡り質が向上したが、そのきっかけになったものがある。
それが大侵攻『ダイタルウェブ』だ。
前触れもなく深海棲艦の姫級鬼級が確認できるだけで20隻、イロハ級に至っては推定500隻が侵攻してきた。
突然の事態に対応できず、最前線のトラック・ラバウルは僅か3日で陥落、その後も次々襲撃された。
なんとか本土に撤退できた艦隊はあったが、前線に配備された艦隊の8割が壊滅した。
そして深海棲艦の大部隊はそのまま本土に攻めてきて、一時は東京湾まで攻めてきたが何とか撃退に成功した。
大侵攻の後、5年掛けて戦力の再編と艦娘の待遇改善、提督の意識改革を行い今の状態に落ち着いた。
今現在、大湊、室蘭、単冠湾、幌筵は北方方面、佐世保、呉、奄美、那覇は南方方面、そして横須賀、舞鶴、堺、小笠原は太平洋方面の奪還に勤しんでいる。
「……これが今日まで続く『深海大戦』だわ。」
「なるほど…だが俺達の志は変わらない。この世界に転生した以上貴方達と共に戦う。」
リバティとブリュンヒルデも頷く。
「ええ、分かった。私も心強い仲間ができて安心しているわ。夕食の時間に貴方達の歓迎会をやるからそれまで部屋で待機してね。」
「分かりました。」
他の艦娘が歓迎会の準備をしている中、八洲達は部屋で談笑した。
しばらくして、大和から呼び出しがあり八洲達3人は会場まで向かうことになった。
会場となる講堂の裏口から入り、提督と合流した。
「提督、歓迎会ありがとうございます。」
「そんなに気にしないで。ここの伝統みたいなものよ。それで今後の予定なんだけどまず3人にはステージに上がって挨拶をお願いするわ。その後、質問があってそれが終わったら自由時間よ。」
「分かった。」
その後準備ができたのでステージの裏側に向かい、そこで待機した。
隙間から覗くと会場内には複数のテーブルに大勢の艦娘がいた。
「…多いですね。流石に緊張します…」
「ほらほら緊張しないの、ほら、八洲やリバティだって緊張して………」
提督は2人の方を向く。
そこにはいつもと変わらない八洲とリバティの姿が……
「…えっと、あの2人結構胆力あるのかしら……ま、いっか。」
そう言うと提督はマイクを手に取ってステージに上がり、マイクのスイッチをオンにする。
「はいはいー、全員注目!今日は準備を手伝ってくれてありがとう。もう知っている人もいるかもしれないけど、この鎮守府に新しい仲間が増えることになりました!!」
その瞬間、艦娘から拍手と喝采が湧き上がる。
「それでは登場してもらいましょう。どうぞ!」
提督の合図に八洲とリバティとブリュンヒルデがステージへ上がり、視線は3人に集中した。
「それでは挨拶をどうぞ!!」
そう言うと提督は3人にマイクを手渡した。
「八洲型戦艦、八洲だ。」
「攻撃潜水艦リバティ。よろしく。」
「フリゲート艦ブリュンヒルデです。よろしくお願いします。」
挨拶が終わった後、会場全体に拍手が響き渡った。
「さぁ、皆さんお待ちかね質問タイムの時間よ!」
次の瞬間、艦娘のほぼ全員が手を上げた。
提督はその中からランダムで決める。
「それじゃあ…そこ!」
「やったぁ!私、吹雪型一番艦吹雪と言います。質問です、ブリュンヒルデさんのその…『ふりげいと』とはどう言う艦種なのですか?」
駆逐艦『吹雪』がブリュンヒルデに質問する。
「フリゲート艦とは…新兵器のミサイルとイージスシステム等の電子戦装備を効率的に扱う艦で……分かりやすく言うなら誘導性を持たせた噴進弾と高性能の電探を運用する為に作られた艦です。」
「…なるほど、ありがとうございます!」
吹雪は深く礼をする。
その後次々と手が上がった。
「さて、お次は誰かしら?……じゃあそこ!」
「はい、軽巡洋艦名取です。質問なんですが3人はどういう関係ですか?」
「知り合いでは無いが…同じ境遇同士気は合う。」
「そうですか。ありがとうございます。」
次は橙色の着物と緑色の袴を着たショートヘアの女性が選ばれた。
「航空母艦飛龍です。3人の性格について知りたいな。」
「性格ね……八洲は一言で言ってクール。」
「そうか?…ブリュンヒルデは真面目で丁寧な印象を受ける。」
「う〜ん、リバティさんは常に冷静な印象を受けます。」
「そうですか!教えてくれてありがとう!」
「次で最後ね……じゃあ貴方で。」
「ども、恐縮です、青葉ですぅ!質問はズバリ装備についてです!」
その質問には他の艦娘も気になっていたようで、視線が若干強くなる。
八洲達は考える素振りを見せるが、この世界の技術レベルから模倣は無理だろうと判断した。
八洲、リバティ、ブリュンヒルデの順で話した。
「どうもありがとうございます!」
「それでは質問タイムは終了!みんな、羽目外しすぎない程度で楽しんでね!」
質問タイムが終わった後、全員が騒いでいた。
談笑したら、お酒を飲んだり、料理を食べたりしていた。
八洲達は先程の4人以外の艦娘からの質問に答えながら料理を食べたり、お酒を少々飲んだりと本人なりに楽しんでいた。
数時間後、お開きとなり八洲達は部屋に戻った後そのまま就寝した。
ー大本営参謀本部ー
ここは大本営参謀本部。
ここでは作戦の立案や対策会議、さらには監視衛星により太平洋エリアの深海棲艦の動向をリアルタイムで観測することができた。
ちなみに赤い点が深海棲艦の艦隊でそれが集まっている箇所が深海棲艦の基地だと思われる。
そして黒い点は姫級鬼級の深海棲艦である。
今現在、深海棲艦の動向を観測していると異変が起きた。
「ん?」
オペレーターが違和感を覚え、それに気づいた上官が声をかける。
「どうした?」
「旧トラック・ラバウル地点の深海棲艦の
確認するとかなり強いシグナル反応が見てとれる。
その為、監視衛星でシグナルをキャッチし超音速戦略偵察機『八咫烏』で詳細を確認するという方法が確立した。
「かなり強い反応だな…一応、偵察機を向かわせろ。」
「はっ。」
オペレーターは偵察中の機に指示を出す。
観測し始めて前例の無い反応に多少驚いていると、その地点に動きがあった。
「っ!トラック・ラバウル地点に動きあり!大多数の艦隊が一斉に北西方向へと移動を開始!」
「なんだと!?」
「規模から見て……推定2000隻以上!」
尋常じゃない数に皆驚愕する。
「ですが進軍速度にばらつきがあり、後続は遅れている模様。先頭集団は姫級鬼級が15隻、イロハ級が約500隻以上です!」
「ちょっと待て、進路を割り出せるか?」
「お待ち下さい……このまま行けば小笠原諸島を始め関東地区に向かう模様!」
「各鎮守府に緊急伝達。深海棲艦の大艦隊が襲来!艦隊は5年前のダイタルウェブを上回る規模。早急に出撃準備を!」
指揮官の指示にオペレーター達が各鎮守府に伝達する………
5年前の『ダイタルウェブ』を上回る規模の深海棲艦が襲来。
遂に八洲達が作戦に投入されます。
次回を楽しみに。