鋼鉄これくしょん   作:あーくこさいん

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提督から5年前の『ダイタルウェブ』を聞かされ、その後歓迎会で親睦を深めた八洲達。
だが、その夜ダイタルウェブを上回る深海棲艦の大群が攻めてきて………


第七話 戦いの備え

ー横須賀鎮守府講堂ー

 

「今から太平洋方面防衛作戦について説明を始める。皆もある程度知っているかもしれないけど、一刻を争うから手短に説明させてもらうよ。この作戦目標は深海棲艦の進行を食い止め、可能なら撤退させる事。」

 

提督が神妙な面持ちで説明する。

艦娘達も昨日まで歓迎会ではしゃいでいたのが嘘みたいに真剣みを帯びていた。

 

「今現在の情報だと侵攻してきた深海棲艦の数は推定2000隻以上、またこの数はさらに増えていくと予想されるわ。あの『ダイタルウェブ』を上回る数を我々は相手にしないといけない。」

 

画面が入れ替わり、偵察機により撮影された写真が映し出され、ほぼ全員息を飲む。

写真には大多数のイロハ級とその中に姫級鬼級がいた。

 

「今判明している戦力について。深海棲艦の中核をなす姫級鬼級は装甲空母鬼3隻、戦艦水鬼2隻、空母棲姫1隻、空母水鬼2隻、重巡棲姫2隻、潜水棲姫2隻、戦艦棲姫3隻の計15隻、イロハ級に至っては約500隻以上。ちなみにこれは先頭集団の戦力で進路上に存在する深海棲艦の基地も鑑みてさらに増えると予想されるわ。」

 

この事に艦娘達は動揺する。

何故なら今までダイタルウェブという例外を除き大規模作戦で姫級鬼級は1〜2隻、多くて4隻相手にするが今回は約3倍の姫級鬼級を相手にしなければならないからだ。

 

「今作戦には横須賀、小笠原、舞鶴、堺を始め呉、佐世保、大湊、室蘭鎮守府からも艦隊を派遣することが決定したわ。作戦の大まかな流れとして…」

 

そう言うと提督はレーザーポインターである海域を大きく囲む。

 

「この海域に機雷原を敷き、敵艦隊を足止め・迂回する隙をついて航空隊及び水雷戦隊、水上打撃部隊の一斉攻撃を行う。これを小笠原、堺、佐世保、室蘭鎮守府が行うわ。私達横須賀と舞鶴、呉、大湊鎮守府は最終防衛ラインに迫る深海棲艦を迎撃する。」

 

提督は作戦の概要を説明する。

 

「今回の作戦ではここ横須賀鎮守府の主力はもちろん遠征部隊も惜しみなく投入する。…もちろん貴方達も本作戦に投入されるわ。」

 

提督は八洲達に目を向ける。

 

「本来、演習などをしてから戦線に投入するのが良いのだけれど、今はそういう事言ってられる状況では無いわ。…自信の程は?」

 

「兵装レベルによるが…100〜200隻」

 

「同じく。」

 

「私は100〜150隻程度なら…」

 

八洲達の回答に周囲の艦娘達は戸惑いの声を上げる。

それもそのはず、1隻あたり100隻相手にするなどハッキリ言って無謀としか言えないからだ。

しかし、彼らの過去を知っている提督や一部の艦娘達、そして本人の覚悟に満ちた顔から自信は相当なものだとその場に居た艦娘達は思った。

 

「…とりあえず自信の程は置いておいて、各艦の装備については以下のようにするわ。」

 

提督は映像を通して各艦娘の装備を説明する。

 

「……これで説明は終わるわ。今から1時間後に小笠原鎮守府に向け出発する!各員はそれまでに準備を終えるように。諸君、幸運を祈る。」

 

提督は艦娘達に向けて敬礼する。

その後、各員は準備を行い1時間後に出発した。

 

 

 

ー太平洋方面防衛作戦最終防衛ラインー

 

それから1週間後、八洲達横須賀艦隊は最終防衛ラインに待機していた。

1週間の間、機雷原を敷設したり艦隊を集結したりと準備をしていた。

深海棲艦の侵攻部隊は予想より早く作戦エリアに向かっていた。

なんと進路上にある基地に停泊せずそのまま進軍してきたのだ。

その為、現場は大急ぎで準備を行い、各部隊が配置に付き待ち構えていた。

皆緊張している中、

 

「偵察機より入電!『敵先頭集団作戦海域ニ侵入セリ』とのこと!」

 

「来たか…」

 

八洲がそう呟く。

 

一方、艦娘指揮艦『いずも』の艦内には4人の提督がいた。

横須賀鎮守府提督の『水野凛』少将を始め、堺鎮守府提督『田宮健一』少将、舞鶴鎮守府提督『美川芽依』少将、そして元リンガ泊地提督であのダイタルウェブを生き残った小笠原鎮守府提督『立花颯』中将と元ブルネイ泊地提督で今は太平洋方面司令官『黒鉄剣十郎』元帥が乗艦していた。

佐世保、呉、大湊、室蘭鎮守府提督は艦娘指揮艦『すおう』で指揮をとっていた。

いずものCICでは作戦海域中の深海棲艦の動向がリアルタイムで映されていた。

 

「全艦隊、配置に付きました。」

 

「いよいよね…」

 

「………」

 

水野がそう呟く中、立花と黒鉄は静かに動向を見守っていた。

ダイタルウェブから生き残った者として、今回の侵攻に入念の備えをしてきたが、それがいつまで通じるかは未知数だ。

すると田宮が声をかける。

 

「なぁ、水野。あのドロップ艦、本当に大丈夫か?」

 

「何が?」

 

「いや、あいつら1隻あたり100隻以上相手にするとか言っていたから…」

 

「100隻以上!?流石に冗談では…」

 

美川が戸惑いの声を上げる中、黒鉄は思案する。

 

(ふむ…本来なら無謀だが、あいつらの自信と覚悟に満ちた顔…ひょっとすると冗談では無いかもしれん…)

 

その時、驚きの報告が上がった。

 

「っ!緊急事態発生!深海棲艦の侵攻部隊が迂回するどころか機雷原に突入!このままだと機雷原を突破されます!」

 

「なんだと!?」

 

その報告に皆驚愕する。

本来なら機雷原で侵攻部隊を足止めし、迂回する隙に攻撃を仕掛ける算段だったが、なんと侵攻部隊の全軍が機雷原に突入し多少の損害を被りながらも進軍していた。

 

「まずいぞ…このままだと展開している横須賀艦隊と接敵するぞ!」

 

「なんとか待機している艦隊を呼び戻せるか?」

 

「駄目です!間に合いません!」

 

「……八洲に通信を入れて。」

 

そんな中、水野が八洲に通信を入れる。

 

「………了解した。」

 

「どうかしましたか?」

 

「緊急事態だ。深海棲艦の侵攻部隊全軍が機雷原に突入、このままだと突破されその先に展開している俺達横須賀艦隊に接敵するとのことだ。」

 

その事に艦娘達は動揺する。

 

「援軍は間に合うかどうかは分からないから、俺達で相手にしなければならない。」

 

「遂にきたわね…」

 

リバティが呟く。

ブリュンヒルデも覚悟を決め、艤装を構える。

他の艦娘達も同様だ。

空母組や八洲達は艦載機を飛ばして偵察する中、遂に侵攻部隊が現れる。

 

「敵侵攻部隊視認!敵部隊艦載機を次々発艦!」

 

「来たか…これより戦闘体勢に入る!両舷全速!」

 

八洲、リバティ、ブリュンヒルデが先行し、他の艦娘も体勢を整える。

やがて深海棲艦を射程圏内に収める。

 

「これより砲撃戦に移る。全門開け!」

 

「…雷撃用意、撃て。」

 

「全主砲、データリンクでの情報を元に誘導開始!撃ち方始め!」

 

これより戦いが始まる。

この戦いが八洲達の強さを見せつけ、今日まで続く『深海大戦』に大きな転換期が訪れる………

 




遂に八洲達が深海棲艦の大群相手に無双します。

そして、何故深海棲艦が攻めてきたのか……

乞うご期待ください。

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