鋼鉄これくしょん   作:あーくこさいん

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ダイタルウェブを上回る規模の深海棲艦の大群が現れ、その迎撃に八洲達も動員される。
急遽、機雷原を迂回せず突き進んだ先頭集団相手に八洲達は応戦するが………


第八話 一方的な蹂躙(ワンサイドゲーム)

ー太平洋方面防衛作戦最終防衛ラインー

 

ここは太平洋方面防衛作戦最終防衛ライン。

そこには深海棲艦………()()()()が無数に散らばっており、残骸や青黒い液体が辺り一面を埋め尽くしていた。

そしてその近くに横須賀艦隊や急行してきた呉、舞鶴艦隊がいた。

皆驚きを隠せない表情をしている。

それもそのはず、機雷原を突っ切って襲撃してきた500隻以上の先頭集団が2時間足らずで全滅したのだから……

その海域には先頭集団を全滅した張本人がいた。

そう、横須賀艦隊のドロップ艦『八洲』『リバティ』『ブリュンヒルデ』だ。

彼らもまた驚愕していた。

理由は簡単、500以上の大群をあっさりと殲滅したのだ。

兵装レベルが第二次世界大戦の延長線上にあるとはいえ、500もの大群で襲い掛かってきた深海棲艦の大艦隊に苦戦すると思っていたが、実際2時間足らずの戦闘で敵艦隊を殲滅した。

 

「えっと……普通に倒せましたね…」

 

ブリュンヒルデが戸惑う中、八洲とリバティは表情を変えていないが内心驚いていた。

 

 

ここで何があったのか、2時間前まで遡る……

 

深海棲艦の先頭集団が襲い掛かってきた時、敵側の艦載機の大群が飛び上がり、横須賀艦隊に向かった。

艦娘側も負けじと航空隊を出し、応戦した。

特に八洲達の艦載機が暴れ回り、敵の航空隊に少なからず損害を与えたが、それでもかなりの数の航空機が八洲達に襲い掛かった。

 

「主砲、新型対空弾装……装填良し。撃て!」

 

その瞬間、八洲の計14門の主砲が火を噴いた。

数秒後、大きな火の玉が上がり敵航空機の大多数が熱と衝撃波によって破壊された。

それでも襲いかかる敵機に八洲とブリュンヒルデはミサイルを放ち、次々と撃墜した。

ミサイルの雨を掻い潜り接近してきた航空機にはブリュンヒルデは35mmCIWS、八洲は30mm機関砲と新型パルスレーザーの濃密な対空砲火により一機残らず撃墜された。

元々対空能力が高かった事に加えてブリュンヒルデのデータリンクの共有によって対空砲火の精度が飛躍的に向上した為、航空機の大群を全滅させた。

 

一方で…

 

「バカナ…ゼンメツダド……」

 

空母棲姫は驚愕していた。

送り出した大多数の航空隊が短時間で全滅したのだ、驚くのも無理は無い。

 

「ウロタエルナ!ダイニジコウゲキタイヲチクジハッカンシテ……」

 

その時だった。

突如装甲空母鬼3隻に水柱が立ち、3隻とも轟沈した。

 

「ナンダト!センスイカンカ!」

 

周りの駆逐艦や軽巡洋艦は敵潜の捜索の為に散らばったが、数発の多弾頭ミサイルが打ち上がり多数の駆逐艦と軽巡洋艦を海の藻屑にした。

さらにその攻撃を行った潜水艦リバティが浮上し、小型レールガンと新型強化プラズマ砲で姫級鬼級イロハ級関係なく殲滅した。

敵空母艦隊を全滅させたリバティはそのまま潜航する……

 

残りの深海棲艦は八洲達に襲いかかるが、彼らは慌てる様子も無く八洲が主砲を斉射し、61cmと51cmの砲弾が降り注ぎ命中した敵は跡形もなく爆沈し、至近弾で駆逐艦や軽巡洋艦は大破・沈没した。

それでも接近する敵にカニ型の手甲を前に出し、

 

「新型カニ光線照射始め!」

 

そこから二本の光線が放たれハサミが閉じるように収束し、巻き込まれた深海棲艦の胴体を真っ二つに切り裂いた。

するとブリュンヒルデに動きがあり、最大戦速で敵艦隊に肉薄したのだ。

深海棲艦側も応戦するが、ブリュンヒルデは敵艦隊の真ん中を突っ切って進んだ為、同時撃ちする艦が相次いだ。

AGS砲と魚雷で敵艦隊を駆逐して、八洲と合流したリバティが己の兵装をフルに活用し襲いかかる敵艦隊をちぎっては投げ、ちぎっては投げを繰り返して………そうして2時間ぶっ通しで戦い続け、500隻以上いた先頭集団を全滅できたのだ。

 

 

そして場面は最初に戻り、八洲達は驚いていた。

もちろん周囲の艦娘達も驚愕していたが、それは提督達も一緒だ。

 

 

ー艦娘指揮艦『いずも』CICー

 

「何じゃありゃ……?」

 

「えっと…夢ではありませんよね…?」

 

ここCICでは田宮提督と美川提督が信じられないと驚き、立花提督と黒鉄元帥は彼らの性能を間近に見て納得した表情をした。

やがて元帥が口を開いた。

 

「……これで緒戦は何とか凌いだな。だが問題はその次の部隊がどう来るかなのだが…状況はどうなっている?」

 

「はっ、今現在確認されている中で推定1000隻以上の規模の後続部隊がこちらに向け移動中です。」

 

「やはりか…いつ位に到達する?」

 

「おそらくですが…おそらく5日でしょう。」

 

「よし、そのまま防衛線を再構築。修理と補給を整え次に備えよ!」

 

元帥の指示で各員が動き出す中、水野提督がある違和感を感じる。

 

「どうした、水野?」

 

「いや、進路上の基地にいる深海棲艦の反応が現在進行形で減っているから……」

 

立花提督が画面を見ると、実際進路上に存在した反応が確かに現在進行形で消えていた。

 

(確かに妙だな。これは留意しておく必要があるだろう。)

 

立花提督はそう思い、指示を出した。

 

 

 

 

 

ー深海棲艦侵攻部隊ー

 

この海域を突き進む侵攻部隊がいた。

その規模は1000隻以上であり、中核を成す姫級鬼級はざっと50隻程いた。

こんな大規模な部隊は前例は無いが、その侵攻部隊が異質なのは所々に傷を負っているからだ。

特に最後尾の方が酷く、損傷によって速度を満足に出せずに艦隊から置いていかれる艦が続出したのだ。

イロハ級はともかく、姫級鬼級であってもついていけない者は置いていかれるという異常っぷりだ。

無論、彼女らを曳航する余裕などない。

……彼女らは進軍するのに必死だったが、それはそこにいる艦娘達と人間達を皆殺しにしてやろうとか、そういうことを考えている訳ではない。

 

彼女らは必死だっただけだ………()()()のに…

 

怨念や憎悪をねじ伏せる暴力に…恐怖に…

 

その恐怖から逃れる為に進み続けている…

 

先の先頭集団もそうだ…

 

機雷原を迂回なんてしたら()()に追いつかれる…

 

だから突っ切ったのだ…

 

そしてこの侵攻部隊もそうだ…

 

後ろにあった基地は奴らに蹂躙された…

 

だから必死になって侵攻……いや、逃げている…

 

破壊から…暴力から…恐怖から………

 




次回、遂に奴らと相対します。

乞うご期待ください。

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