【完結】駄目な部分が目立つ転生者が、何故か周りから好かれる話   作:やさぐれショウ

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第21話 悲・哀

あの後、病院に運ばれた直喜は…瀕死の重傷を覆い、3ヶ月の入院となってしまった。

 

直喜「……。」

 

身体中に包帯を巻かれ、酸素マスクをつけている直喜の表情は…苦しそうに見えた。

 

六花「…な、直喜…!!」

 

そんな彼の手を取る六花は、目にいっぱい涙を浮かべていた。アカネはショックのあまり…声を上げて泣き出してしまう。直喜の手は、まだ温かかった……

 

六花「直喜…ごめんね……」

 

裕太「な、直喜君……」

 

将「…神山……」

 

この日も、直喜は目を覚ますことはなかった。

 

 

 

直喜が入院して以来…クラス中は、シーンと静まってしまっていた。皆、直喜が居ないことに…寂しさを感じているようだ。

 

転生者 A(こ、こんな時は…えぇっと……そうだ!!)

 

こんな状況にあっても、空気の読めないAは…自分を引き立てることで精一杯であり…

 

転生者 A「か、神山なら…大丈夫だって!!な、元気出そうよ!!」

 

…と、明るい表情で無責任な発言を言い放つ。

 

なみこ「ねぇ、あんたさ…何を根拠に直喜が大丈夫だって思ってんの?」

 

彼の言葉に、なみこは怒って彼に問い詰める。

 

転生者 A「そ、それは……」

 

案の定、Aは何も言えない…それを見たクラスメイト達は、Aへの怒りが強くなっていく。

 

はっす「君さ…いっつも直君に暴言吐いてるもんね?何、直君が君に何をしたって言うの?」

 

将「そもそも、お前は…神山が可哀想だって思わねぇのかよ!?」

 

裕太「そうだよ!!大怪我までして、学校にも来れなくなった直喜君を…君は、可哀想だと思わないのかよ!?」

 

クラスメイト「そうだそうだ!!」「てか、お前マジで消えろよ!!」「そういう無責任な所がウザイんだよ!!」

 

直喜のクラス中では、Aへの罵声大会へと発展してしまった。教員が止めても、Aへの罵声大会は止むことはなかった。別のクラスでも、BとCへの罵声大会が勃発していた。

 

 

 

その後、職員会議では……

 

教員A「え~…先日ですね、我が校にクレームがありました。男子生徒が奇声を上げて叫んでいる…ナイフ類を隠し持っては、女生徒を付きまとっている等々……」

 

教員Aの言葉に、他の教師達はため息を着いてしまう。

 

教員B「例の3人のことか……いっそのこと、停学…いや、退学にした方が……」

 

教員C「しかし、明確な証拠が無い…だから、無理やたらに退学にはできないと校長が……」

 

教員D「くっ…転校生を受け入れたのは、失敗だったのか……?」

 

度々問題行動を起こすA、B、Cは…ツツジ台高校屈指の問題児として、悪名が広がってしまっていた。彼らの行動に、教職員達はいつも…頭を悩まされている。

 

教員A「けど…神山だけは違うぞ。」

 

次に、直喜の話題になるのだが…その時、先程の重苦しい空気が一気に消えていった。

 

教員A「神山は、まぁ…おっちょこちょいな所があるけど、授業も真面目に受けてるし、困ってる生徒を真っ先に助けに行ったりもしている♪」

 

教員C「英語でも、頑張って答えてるし…テンパってるところが可愛いんだよな。」

 

教員B「えぇ♪クラス中の人気者ですし、すくすくと育って行ってますね♪」

 

教員D「おいおい、それでは神山が子どもみたいじゃないですか♪」

 

直喜の様子を楽しそうに話す教職員だが…すぐに笑顔が消えてしまう。

 

教頭「ですが、神山君は今…」

 

教員A「あぁ…入院、しているんです…よね…?」

 

教員D「神山がいなくなってから、クラス中がシーンとしてるんですよね……」

 

教員B「何だか…寂しいです……」

 

教員A「うちのクラスメイトの1人が言い放った言葉を引き金に…ソイツに対する罵声大会が始まってましたよ……私が止めに入っても、全く止まなくて……」

 

教員C「こっちのクラスでも全く同じことがありました…」

 

教員D「神山には、一刻でも早く…戻って来て欲しいですね……」

 

直喜が居ないことに寂しさを感じているのは…クラス中だけでなく、教職員達もだった。直喜は真面目に授業を受け、分からないことがあればすぐに聞きに来る。それも、職員室にまで足を運んでくる程だ…彼のように、質問をしにくる生徒は殆どおらず…直喜はいつの間にか、ツツジ台高校でちょっとした有名人になっているのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

直喜『……。』

 

???『……き君…!…直喜君…!!』

 

直喜『……?』

 

直喜が目を覚ますと…

 

直喜(あれ?ここは、地球……とは、違うな…何か、見たこと無い植物がいっぱいある……)

 

見知らぬ場所に降り立っていた。すると、彼の目の前に目映い光が現れ…それが段々人の形になっていく。

 

ゼアス『直喜君…』

 

直喜『う、ウルトラマンゼアス……』

 

それは、直喜と一心同体となっている『ウルトラマンゼアス』だった。

 

直喜『ゼアス…ぼ、僕……』

 

ゼアス『直喜君、君は十分頑張ったよ…だから気にしないで欲しい……僕も、実力不足だったし……』

 

直喜『…ぜ、ゼアス……』

 

直喜は涙を流しそうになるが、ぐっと堪えていた。

 

ゼアス『直喜君…我慢しなくても良いんだよ…?』

 

直喜『で、でも僕……』

 

直喜はゼアスに話した……

 

 

かつて、実の両親からは罵詈雑言の嵐は日常茶飯事…笑っても泣いても暴力を振るわれる…話し掛けても「うるさい」と言われるだけで…愛情も注がれなかった。食事も、500円玉1枚だけを置いていかれ…家でも1人ぼっちだった。父親は仕事人間であり、自分には興味も感心も示さなかった。母親は無職で、いつも出掛けて行ったり…たまに知らない男を連れてきては、自分を家から追い出したりした。それを父親に話しても、父親は聞く耳を持たず…どうしようもなかった。それが10年以上続き…諦めかけていた時、近所の人が通報して…両親は保護責任者遺棄罪で逮捕され、実刑判決が下った。身寄りがいなくなった自分を、祖父母が引き取ってくれたが…中学卒業と同時に、祖父母は病気で亡くなってしまい…また、1人ぼっちになってしまった。友達もおらず…悩みを打ち明けられる人も、誰もいなかった。

 

 

直喜『ぼ、僕ね…ウル…トラマン…を、みて…ゆ、勇気…を……もらっ、た……』ポロポロ…

 

直喜の目からは大粒の涙がこぼれ落ちていた。ずっと1人ぼっちだった彼の心の支えとなっていたのは『ウルトラマン』の存在だった。地球を守るために、怪獣達と戦い…人類に送ったメッセージは、直喜の心を大きく動かしているのだ。

 

ゼアス『うん…分かったよ…でもね、直喜君……時には、弱音を吐いたって良いんだよ……泣きたい時には、泣いたって良いんだよ……』

 

ゼアスが彼を優しく抱き締めると…直喜は声を上げて号泣した。今までずっと我慢していたモノが、爆発したのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夕方……

 

六花「直喜…」

 

学校帰りの六花が、お見舞いに来てくれた。アカネも一緒だ…なみことはっすも、亜子と蘭萌も、裕太と将もいる。

 

アカネ「うっ…ひっく…直喜、くん……」ポロポロ…

 

落ち込む六花に、なみことはっすが…泣き出してしまうアカネに、亜子と蘭萌が寄り添った。彼らは、毎日毎日…直喜のお見舞いに来てくれている。直喜がまた、元気な姿になって戻って来てくれることを…彼らは信じ続けていた。




ED~ASH DA HERO『Everything』~♪
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