【完結】駄目な部分が目立つ転生者が、何故か周りから好かれる話   作:やさぐれショウ

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第90話 Smile Smile(夢芽の過去)

南 夢芽……彼女はここ『フジヨキ台』に住む、何の変哲も無い少女だった。都立フジヨキ台高校に通う女子高生で1年3組。制服リボンやネクタイを着用していない。ほとんど笑顔を見せず、常に無表情で、物憂げな雰囲気を纏っている。

 

かつて彼女と直喜は、フジヨキ台高校に直喜が転校してきた時に出会った。

 

直喜『ぼ、僕は神山 直喜…き、君は?』

 

夢芽『南 夢芽……』

 

直喜『よ、よろしくね南さん…!!』

 

出会って早々、直喜は夢芽と打ち解けようとしていた。だが、夢芽は自分のことを「どうかしてるんだよ」と言い、中々打ち解けられずにいた。彼女は適当な男子生徒を「自分の話を聞いてくれる気がした」と称して、どこかに呼び出してはそのままバックレるという行為を日常的に繰り返しており、「嘘をつくのが体質になっている」とまで評され、クラスの女子にも知られている。実際それで人を怒らせることも少なくない。

 

夢芽『神山君、綾瀬水門に来てくれる?ちょっと話がしたいから…ついたらそこで待ってて欲しい。』

 

直喜『綾瀬水門に来れば良いんだね?うん、わかった。』

 

直喜もターゲットにされてしまったのだが、彼は人を疑うことはしない。

 

直喜(南さん遅いなぁ、どうしたんだろう…?)

 

学校が終わった後、すぐに綾瀬水門に向かって…夢芽が来るのを待っていた。しかし、いつまで経っても…彼女が現れることは無い。それでも直喜は、夢芽が来てくれることをずっと信じ、夜になっても待ち続けていたのだが…この時の季節は冬……

 

直喜(み、南さん…やっぱり何かあったのかな……で、でも…ここで待ってて欲しいって言ってたし……)

 

段々身体の感覚が無くなって来ている直喜は、寒くて震えながらも…夢芽のことを待っていた。しかし、次第に意識が朦朧としてきて…目の前が真っ暗になった。

 

 

 

後日…

 

 

生徒A『あれっ、神山が来てないね?』

 

生徒B『ホントだ…もしかしてだけどさぁ、南の奴にやられたんじゃ?』

 

フジヨキ台高校の1年3組の教室に、直喜の姿は無かった。

 

夢芽(神山君、どうしたんだろ……まぁ、適当に帰ったかもね……)

 

夢芽は何事も無かったように、席に座る。やがて、ショートホームルームが始まり…担任から驚きの事実を告げられる。

 

担任『神山だが…肺炎を発症してフジヨキ台総合病院で入院することになった。何でも、寒い中…外で誰かを待ってたみたいでな……』

 

なんと、直喜が入院してしまったのだ。昨日…寒い夜の中、ずっと外にいたため…肺炎を発症してしまい、救急車で病院へと運ばれたのだ。

 

夢芽『ッ!?』ガタッ!!

 

担任『あっ!おい南、どこいくんだ!?』

 

それを知った夢芽は、学校を飛び出し…フジヨキ台総合病院へと向かった。

 

夢芽(もしかして、ずっと待っててくれてたの…?じゃあ、神山君が入院したのは、私のせい…!!)

 

昨日、夢芽は直喜を綾瀬水門に呼び出してバックレたのだ。この時、夢芽は今までの自分を激しく呪った。これまでも、どこかへ男子を呼び出してはバックレることを繰り返していたが…直喜のように、ずっと待っていてくれる者は誰もいなかったのだ。そのため、今回のような大事になることは無かった。

 

 

BGM〜合唱『Smile Again』〜♪

 

 

病院につくと……

 

直喜『……。』スヤスヤ…

 

直喜はベッドの上で、寝息を立てて眠っていた。

 

夢芽『……。』

 

幸い、迅速な処置が行われたため…大事には至らなかった。

 

夢芽『…か、神山…君……!!』

 

気が付くと、夢芽の目からは涙が流れ落ちていた。

 

夢芽『ご、ごめんなさい…ごめんなさい……』ポロポロ

 

眠っている直喜に、涙ながらに謝罪を繰り返す夢芽。その時…

 

直喜『…ん?』パチッ…

 

直喜が目を覚ました。直喜の視線の先には、泣きながら何度も謝罪の言葉を繰り返す夢芽の姿があった。

 

直喜『泣かないで?君は、笑ってる顔が素敵なんだから…後、やっと来てくれたんだね。僕はね、君が来てくれるってずっと信じてたんだ。』

 

目を覚ました直喜は、泣いている夢芽に優しく微笑みかける。

 

夢芽『…うっ…グスッ、グスッ……』

 

直喜『僕は大丈夫、だから笑って?ほら、スマイルスマイル♪』ニコッ♪

 

約束をしてはバックレることを繰り返していたのが災いし、人を怒らせてしまうことがあった夢芽。しかし、直喜は怒っていなかった。最後まで自分を信じて、ずっと待っていてくれていたのだ。『スマイルスマイル』…そんな彼の優しく、温かい言葉に夢芽は救われ……漸く、笑顔を見せることができた。

 

あんなに酷いことをしたにも関わらず…自分を許してくれた直喜を見て、夢芽はもう…約束をすっぽかすことを止めた。それ以来、彼女は少しずつ周囲から信頼を取り戻して行き…友達も増えるようになってきた。直喜は体調も回復し、1週間程で退院できることがわかった。

 

夢芽(私が変われたのは、神山君の……ううん、直喜のおかげ…今度、お礼をしなきゃ♪)

 

直喜との出会いがきっかけで、自分を変えることができた夢芽は…直喜が退院して、このクラスに戻ってきた時に…直喜にお礼をしようと思っていた。しかし……その矢先、直喜が通り魔に襲われて命を落とした…というニュースが舞い込んで来たのだ。

 

担任『退院した後…綾瀬水門…近くで……刺されて…しまった、らしい……』

 

担任は言葉を詰まらせながら、話している。

 

夢芽『……!!』

 

初めは「そんな筈無い」と否定していた夢芽だったが…後日、彼の遺体を目にした途端……何もかもが真っ白になった。漸く直喜が死んだことを理解した瞬間…声を上げて泣く程、彼の死を悲しんだ。

 

 

 

母親『夢芽、学校は?』

 

夢芽『~~ッ!!』

 

直喜が亡くなり、夢芽は自室に閉じ籠ってしまい…毎日毎日、泣いてばかりいた。

 

夢芽(直喜が死んだのは、私のせい…いっそ、私も……)

 

精神が病んだ彼女は、カッターナイフを取り出し…リストカットをしようとしていた。その時…

 

 

???『待ちなさい。』

 

 

どこからか…聞き覚えの無い声がしたため、振り向くと……そこには、エジプト神話風の衣装に身を包んだ若い女性の姿があった。

 

夢芽『…だ、誰…?』

 

マート『私はマート…貴女、本当に死んでも良いの?』

 

夢芽『…は?』

 

マート『私と契約してくれるのなら、直喜にもう1度会えるチャンスをあげるわ。どう、欲しい?』

 

夢芽『直喜は、もう…この世にはいないんだよ……もう1度会えるなんて、そんな夢物語…』

 

マート『あるからこう言ってるのよ?言っておくけど、私は神……不可能を可能にすることができるわ。直喜の大好きなウルトラマンみたいにね?』

 

現れた謎の女性は『マート』…紛れもなく、神である。

 

マート『さ、来るの?それとも来ないの?』

 

夢芽『……。』

夢芽(どんな形でもいい…だから、直喜に会いたい……)

 

マートの問い掛けに、夢芽は……

 

 

夢芽『け、契約…しますから……直喜に…会わせて、ください…!!』

 

 

…と、答えた。

 

マート『…契約成立ね。』

 

こうして、マートと契約した夢芽は…彼女から説明を受ける。

 

マート『直喜に会いたいなら、私からの依頼をこなして貰うわ。南 夢芽…貴女には、ツミビトの退治をしてもらう。』

 

夢芽『…つ、ツミビト……?』

 

マート『えぇ…罪を悔いることなく、罪を犯し続ける愚か者…自分の欲を満たすため、世界を壊す悪党よ。ソイツらを退治してくれるなら、直喜に会わせてあげるわ。』

 

マートの依頼を受けた夢芽は、マートと共に別の世界へと飛ばされた。

 

 

 

降り立った世界で、『飛鳥川 ちせ』と出会った。

 

ちせ『それで、どうやって退治するんですか?』

 

マート『今から貴女達に力を与えるわ…但し、簡単には使いこなせると思わないことね。フフフフッ……』

 

マートが夢芽とちせに右手を突き出した瞬間……

 

夢芽『っ!?』ドクンッ!!

 

ちせ『あがっ!?がっ、あぁ…!!』ドクンッ!!

 

彼女達の身体中に一瞬だけ激痛が走った。

 

マート『夢芽、貴女はほぼ全てのウルトラ怪獣の技が使えるわ…ちせ、貴女はほぼ全てのウルトラ作品に登場する宇宙人の力が使えるわ。その力、上手く使いこなしてね?』

 

マートはそう言うと、ツミビトがいる場所に…夢芽とちせを飛ばした。

 

夢芽『ちょ、ちょっと待って…ウルトラ怪獣の力って……』

 

ちせ『南さん、ジブンウルトラ怪獣のことある程度分かるので…何かあったら聞いて欲しいっす。』

 

ちせに話を聞いてみると…彼女も、直喜と関わっていたようであり…直喜から、ウルトラ怪獣達について教えられたとのこと……そのため、ウルトラ怪獣についてはある程度詳しい。

 

ちせ『例えば…そのツミビトに拘束されたら、電波怪獣『ビーコン』のボディースパークが使えるかも知れないっす。他にも、宇宙大怪獣『ベムスター』の力で相手の技を吸収して跳ね返したり…宇宙恐竜『ゼットン』のテレポートやバリヤー、1兆度の火球とか!』

 

ちせの言葉を頼りに、怪獣達の力を把握する夢芽。そしていよいよ、ツミビトとの戦いの時がやって来る。

 

 

ツミビトA『おっ!?SSSS.DYNAZENONのヒロインじゃねぇか!!』

 

ツミビトB『しかも夢芽ちゃんとちせちゃん…どっちも推しキャラだから嬉しいぜ…!』

 

 

ツミビト達の姿を目にして、夢芽とちせは言葉を失った。何故なら相手は、自分達と同じ…普通の人間だからだ。

 

マート《見た目が人間だからといって、情なんて無用よ?コイツらを殺せば、この世界から追い出すことができる…迷ったらおしまいだと思いなさい。》

 

マートの声が頭に響き、漸く構えを取る夢芽とちせ。

 

ツミビトB『さて、痛くはしねぇからさ…さっさとオレの嫁になりやがれぃ!!』

 

ツミビトBが夢芽達目掛けて、光線を放ってきた。

 

夢芽『ッ!?』

 

夢芽が両腕で自身の顔を覆った時……

 

ブゥゥウウウウウウンッ!!

 

前方に、バリアが出現し…ツミビトBの光線を防いだ。

 

ちせ『くらえ!!』

 

ちせはバルタン星人の力を発動し、白色爆裂弾を両手から発射した。だが…

 

ちせ『うわぁっ!?』

 

反動が強く、ちせの身体は大きく後方に吹き飛んだ。

 

夢芽『あ、飛鳥川さん!?』

 

ツミビトA『ひゃっはぁ!!』

 

夢芽『ッ!?』

 

一瞬の隙を見せた時、ツミビトAが夢芽に馬乗りした。

 

ツミビトA『ぐへへへ♪まずは夢芽、お前から先にヤッてやるからなぁ♪』

 

そう言うと、舌舐めずりをするツミビトA。

 

夢芽(き、気持ち悪…!!あっ、そう言えば…電波怪獣のボディースパークで!!)

 

夢芽はちせの言葉を思い出し、ショック放電を行った。

 

ツミビトA『ピギャッ!?』

 

夢芽が放ったショック放電により、ツミビトAは白目を向いて倒れ…動かなくなった。しかし…

 

夢芽『か…はっ……!?』

 

夢芽も意識を手離してしまった。この時の夢芽は、与えられた力を使いこなせておらず…先程のショック放電の反動で、自分自身も仮死状態になってしまったのだ。

 

マート(おっと、これはマズイわね…)パチンッ…

 

それを見ていたマートは、仮死状態の夢芽と共に姿を消した。

 

 

 

その後、仮拠点で反省会を行うことに…仮死状態だった夢芽は、マートのおかげで一命をとりとめた。

 

ちせ『すいません南さん…ジブンのせいで……』

 

夢芽『ううん、私もこの力を使いこなせて無かったのも悪いよ……だからさ、特訓しない…?』

 

反省会をした後日、夢芽とちせは特訓をすることに……ちせは様々な武器を素早く出せる特訓とバリアを張り続けて強度をつける特訓…更に、光線を撃ち続け、反動に耐える特訓を行った。夢芽は他の怪獣や超獣の力を組み合わせ、高圧電流に慣れる特訓…更に、組み合わせた怪獣や超獣の力でバリアを強化する特訓、光線及び火炎放射の反動に耐える特訓を行った。この特訓を行ったおかげか、彼女達は漸く…ツミビト達と互角に戦えるようになった。戦いに慣れて来た時、夢芽は奇機械改竜『ギャラクトロン』の力を極め、多彩な技を使えるようになり…ちせは海賊宇宙人『バロッサ星人』の力を極め、多彩な武器を使った戦法を得意とした。

 

 

 

ツミビトと戦い続け、何百年の時が経過した時……

 

マート『結構やってくれたじゃない。それじゃあ約束通り、直喜に会わせてあげるわ。』

 

漸く、会いたかった直喜に出会う時が来た。マートの言葉に、希望を持てた夢芽とちせだが……

 

マート『でもね…直喜は貴女達のことを、覚えていない。それだけは承知してね?』

 

直喜は、夢芽とちせを覚えていないのだった。それでも、直喜に会えるならそれで良いと…夢芽とちせは受け入れた。そして…マートの手によって、ツツジ台にあるとある水上公園近くに降り立った夢芽とちせ。

 

マート『直喜はここに来ているわ。友達と一緒に遊びにね?ところで…水着は持ってきてるかしら?』

 

夢芽『あっ、私持ってました。』

 

ちせ『うへぇ、ジブン持ってないっす~!!』

 

マート『ちせ、貴女は別の機会にね?さぁ夢芽、行ってらっしゃい♪』

 

ちせと共に姿を消したマートを見送った夢芽は、直喜がいる水上公園へと入っていった。

 

 

 

夢芽(いたいた♪あっ、ウルトラマンのゲームやってる…へぇ、直喜はゼアスが好きなんだ。)

 

ゲームに夢中の直喜に近付いて行く夢芽は、直喜に声をかけた。

 

 

夢芽『ゼアス良いよね♪でも、私はネクサスが好きだな~?』

 

直喜『えっ…?』

 

夢芽に声を掛けられた直喜は、目を丸くしている。

 

直喜『え、えっと……ど、どちら様…で、しょうか……?』

 

困惑する直喜に、夢芽は自己紹介をする。

 

 

夢芽『(みなみ) 夢芽(ゆめ)…好きなのは、海洋古生物とウルトラマン…特技は~…ふ・い・う・ち♪』

 

 

自己紹介した後、夢芽は彼に近づくと…頬にキスをした。

 

直喜『ひゃっ!?///』

 

直喜は驚いて顔を赤くし、固まってしまった。

 

夢芽『また会おうね、直喜♪』

 

夢芽は直喜に手を振り、去っていった。

 

 

夢芽『……。』

夢芽(やっぱり、忘れられちゃってたか…ま、直喜に会えただけでも…嬉しかったな……)

 

水上公園から去っていく夢芽は…どこか、寂しそうな表情を見せていたが……数百年ぶりに直喜との再会を果たし、喜びに満ちていた。

 

夢芽(スマイルスマイル♪直喜が私にかけてくれた、魔法の言葉……今もずっと、覚えてるよ。)

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