俺の幼馴染はハイパードジっ子兼ネガティブウマ娘です 作:たぬき田中
「本当に助かりましたぁ〜!!ありがとうございますぅ〜!!」
トレセン学園にあるトレーニング用のプール場へと移動すると、案の定ドトウが困ってそうに立っていた。そして、俺たちの姿を見るや嬉しそうな表情を浮かべながら高速で接近し、荷物を受け取り、頭を何回も下げながらお礼を口にしていた。
「ご、ごめんなさいぃ〜!本当ならスマホで連絡すれば良かったんですけどぉ………私が転んだ際にスマホを踏んずけちゃってぇ〜」
ドトウは詳しく状況を説明していた。説明してもらわなくてもある程度は予想してたけれども。
「だ、だから迎えに行こうと思ったんですけど……それだと今日中に合流できなくなるから待機した方がいいってトレーナーさんが言ってくれ
ので………」
「そりゃァ、そうだ。トレーナーが正しいぜ」
「エアシャカールさん!?そ、そんな酷いですぅ〜!!」
エアシャカールさんの言葉に、ドトウは涙を浮かばせながら大声を挙げる。俺も同意見だ。
「あ、カズくん!!紹介しますね!この方がわ、私の…………カズくん??」
「ん?」
「ど、どうしたんですかぁ?だ、大丈夫ですかぁ〜?」
心配そうにしながら俺の顔を伺うドトウ。エアシャカールさん達もドトウと同じく心配そうにしていた。
「あぁ、大丈夫大丈夫。無事に荷物届けれて良かったなって安堵になってるだけだよ」
俺は誤魔化すように作り笑いしながら言葉を出す。それを聞くと、ドトウ達も安心した
だけど、実際には大丈夫では無かった。
『はっ…………はっ………はっ………!!!』
グラウンドで走っていたあのウマ娘さんの事がどうしても忘れられないでいた。そんな彼女のことは見てないはずなのに。それなのに、どうしても視界に映ったあの光景が記憶に鮮明に刻み込まれている。
そして、何故か彼女の事を思い出すと心が締め付けられるように痛くなる。なんなんだ、この気持ちは。
「改めて紹介します!!この方が私のトレーナーさんですぅ!!」
「どうも。君がカズくんですね。ドトウからよく話を聞いてるよ」
「っっ………どうも」
ドトウの声でハッとした俺はドトウの隣にいる金髪のポニーテールの女性に頭を下げる。この人がドトウのトレーナーか。
「ドトウが苦労掛けてませんか??」
「そんなことないよ。確かに落ち着かないこともあるけど、どんなことに対しても諦めの悪いとても良い子さ。誰かさんがずっと支えてくれてたおかげかな??」
「……ご冗談を。」
ウィンクしながらドトウのことを褒めるトレーナーさん。なんなん、この人。イケメン過ぎでしょ。
「それじゃあ、ドトウ。少し遅くなってしまったけれど、トレーニングの方を始めようか」
「は、はいぃ〜!」
ドトウ達と軽く談笑してから、トレーナーさんは腕時計を見て、彼女に指示を出す。そういえば、そのために俺が来たんだったわ
「じゃ、俺もそろそろ帰ろうかな」
目的も達成されたことだしな。俺がトレセン学園にいる理由はもうない。
「え……、カズくん帰っちゃうんですかぁ〜?」
「そりゃあ、帰るだろ。そもそもお前の荷物を届けに来ただけなんだから。」
ついでに、ここ付近の有名場所をぶらぶらしながら適当に帰ることにしよう。せっかく、片道2時間かけて来たんだし。
「で、でもぉ〜!家に帰る頃には遅くなっちゃいますよぉ〜!わ、私心配ですぅ〜!!」
「それ、おまいう?」
年中無休で何しようとしても誰かしらに常に心配されてるお前がそれ言うなよ。
「でもよォ、確かにドトウの言う通りだと思うぞ」
「エアシャカールさん?」
意外なことにエアシャカールさんはドトウの意見に賛成していた。
「今は中坊でも、お前はまだ1ヶ月前までランドセルを背負ってた小学生だったんだ。1人夜遅くになると心配するに決まってるだろうが。」
「うっ……」
確かに彼女の言う通りではある。もう最悪、両親に頼んで迎えに来てもらおうかな。事情説明したら迎えに来てくれそうだけどな。
「それなら、今日………トレセン学園で泊まってく??」
「はい?」
突然のトレーナーさんの発言に俺は首を傾げた。マジで何言ってんの、この人。
「確か、明日のトレーニング終わってからドトウはカズくんの家に帰るんだよね?」
「は、はいぃ〜!その予定ですぅ〜!」
「なら、明日一緒にドトウと家に帰ればいい。そしたら、たとえ遅くなったとしても少なくとも1人じゃないし安全でしょ。」
「それもそうですけど………」
え?マジでここで泊まる感じになってきてる?
「よし、ならそうしよ。あとで、私の方から親御さんや理事長に説明しておこう。泊まりの場所とかはまたおいおい考える。」
「わぁぁぁ!!じゃあ、まだカズくんはここにいるんですねぇ〜!!」
ドトウは嬉しそうに言葉を口にする。もう、耳としっぽとアホ毛が激しく揺れていた。そんなに嬉しいもんかね。
「親御さんの連絡先、教えてくれるかな?」
「あ、はい」
こうして、トレーナーさんは両親やこの学園の理事長に事情を説明して、今回の宿泊の件に対して許可をいただいたことで、トントン拍子で話が進んでいった。
★★★★★
「どうしてこうなったんだろ。俺、荷物届けに来ただけなのに」
「まァ、良かったじゃねェか。そうそうねェぞ。こんな機会」
ドトウがトレーニングに励んでいる間、俺は泊まりの用意をエアシャカールさんと共にトレセン学園の付近にあるショッピングモールで購入していた。
「だとしてもですよ。落ち着けねぇ……」
下着や寝巻き、歯ブラシセット等を購入しつつ適当にショッピングモール内をぶらぶらしていた。トレセン学園付近にあるからか、周りにはウマ娘さんが多い。地元じゃ中々見られない景色だ。
「あっ!!シャカールだ!!」
「うげ」
エアシャカールさんの姿を見た途端に声を掛ける1人のウマ娘さん。まるで、お姫様のような上品のイメージがある人だ。
「珍しいね、こんな所で会うなんて!!ねぇねぇ、何してるの??」
「あァもう!!うるせェ!!見れば分かるだろ!!買い物だよ、買い物!!」
「そっか、買い物か!!んでー、その子は?」
うわぁ……、上品そうに見えたけどこの人もまたダイタヘリオスさんみたいにエアシャカールさんが苦手そうなタイプの人だな。この人の周りにはそういう人しかおらんのか?
「コイツは連れだ連れ。ほれ、カズ。挨拶」
「あ、ども」
「えぇー!シャカールって男の子の友達がいたんだ!!」
え、このウマ娘さん失礼すぎん?めちゃくちゃドスレートに言うやん。
「………うるせェ。おら、お前もこいつに挨拶しろ。天下の殿下サマは人に挨拶もロクに出来ねェのか?」
「は?」
今、エアシャカールさんなんて言った??天下の………殿下様だと??え、もしかしてこの人マジな人??
「そんな事ないもん!!自己紹介が遅れてごめんね!私の名前はファインモーション!ファインって呼んでね!!」
自己紹介しながらファインさんは俺に向かって手を差し出したため、俺は戸惑いながらも彼女の手を取り握手をする。
「あの、殿下様っていうのは………」
「ファインはアイルランドの王族の出身だ。」
「えぇ………」
やっぱトレセン学園って癖の強いウマ娘しかいねぇな。どうなってんの?なんでこんなショッピングモールで海外の殿下様に会っちゃうの??絶対にここに居るべき存在じゃないって。
「今からね、食事に行こうとしてたんだ!シャカール達もどうかな?」
「ま、オレは別にどっちでもいいが……。カズは?」
「え、いや、俺もどっちでもいいんですけど………。ちなみにどこで食べるんですか??」
あの殿下様が食事にいく場所なんだ。きっと見たことの無いような高級店に行くに決まって………
「家系ラーメンだよ!!」
「家系ラーメン!?」
家系ラーメン!?え、ラーメン!?この殿下様、今からラーメン食いに行くんですか!?
「意外だろ?」
「意外を通り越してドン引きなんすけど」
「なんだと、貴様〜!我に何か申すというのか〜」
「あのー、この人急に口調が変わったんですけど。貴様って言われたんですけど。」
「こういう奴なンだよ。」
結局、殿下様は変な人じゃねぇか。嫌だよ、急にこんなにもキャラが変わる殿下様のウマ娘なんて
「でも、ここでファインの誘いを断ると後がめんどくせェから着いていくのがオススメだ。」
「そんな気がします」
「2人とも来てくれるんだー!やったー!」
そんな訳で、3人で家系ラーメンに行ってラーメンを食べに行った。店主が湯切りしている姿を見てファインさんが目を輝かしていた。あの店主は気付かないんだろうな。目の前にいるウマ娘が殿下様なんて。
「ちなみにファインさんはどれくらいの頻度でラーメンを食いに?」
「えっとね、週7かな」
それ、つまりは毎日じゃねぇか!!
★★★★★
買い物を済ませてからエアシャカールさんとトレセン学園に戻り、ドトウとトレーナーさんと合流しようとする。
その際、グラウンドを通り過ぎようとしたため、あのウマ娘さんがいないか探してみたが、どうやらもう終わってるみたいで誰もいなかった。
もう……あのウマ娘さんには会えないのだろうか。せめて、もう1回会ってみたかったけど。
「おーい、カズくん。こっちこっち」
合流場所に行くと、ドトウのトレーナーさんだけがその場にいた。
「あれ?ドトウは?」
「ここに来る途中に彼女の同期に話しかけられてね。時間が少しかかるみたいだったから先に来たんだ。でも、もう少しで着くと思うよ」
「そうなんですね」
ドトウの同期か。そういえば、あいつの同期についてはこれまでに話してはくれてはいたけど、そこまで覚えてなかったな。
「じゃあ、カズくん。これからの流れについて軽く説明しておこう。」
「はい」
「本当ならドトウ達か私と一緒に夜を過ごしてもらうっていうのが1番なんだけど、ドトウ達は寮生だし私も実はトレセン学園内から通ってる訳じゃないからそれは厳しいんだ。だから、君にはとある場所に向かってもらう」
「とある場所?」
「そう。ある男性トレーナーが暮らしている寮さ。彼なら君と上手くやっていけるだろう。許可はもう既に貰ってるから気にせずに向かってくれ。」
「分かりました。」
初対面なのに、お邪魔しちゃっていいのだろうか。まぁ、許可貰ったって言ったからにはそれなりに俺のことについて説明はしてると思うが。
「か、カズくーん!!」
だいたいの流れを把握したところで、ドトウの声が俺の名前を呼ぶ。
「おー、トレーニングお疲か………れ………」
振り向きざまに声をかけようとしたが、最後まで上手く喋ることが出来なかった。
なぜなら、ドトウは1人ではなく3人のウマ娘さんを連れてやって来たのだが………
「あ………………あ…………!!!」
まさか………こんなことってあるのだろうか。
「か、カズくん!!ど、同期の方をしょ、紹介しますねぇ〜!!」
ドトウから紹介された彼女はキリッとした赤い瞳にポニーテール、そして左耳には青い耳カバーを装着しているのが特徴的で………
あのグラウンドで一生懸命に走っていて、俺が心の底からもう一度会いたかったウマ娘だ。
「アドマイヤベガよ。よろしく」