俺の幼馴染はハイパードジっ子兼ネガティブウマ娘です 作:たぬき田中
『♪君の愛バがズキュンドキュン踊りだしーーー♪』
「…………んぁ?」
気持ちよく寝ていた所、近くに置いてあった目覚まし時計から聞き覚えのある曲が部屋の中で響き渡る。それによって、目を覚ました俺は頭を掻きながら起き上がる。あのトレーナー、あんな見た目なのにこの曲をアラーム音に設定してるの?似合わないって。
「坊主、朝だ。起きろ」
「おはようございま…………え?」
「どうした?俺の顔になにか付いてるか?」
「いや………」
俺が起きたタイミングで、寝床を貸してくれた黒沼さんが部屋へと入ってくる。入ってくるのはいいのだが…………
黒沼さんはムキムキな肉体の下に………可愛らしい人参柄のエプロンを装着していた。
朝からそーゆーのいらんのよ。なんで、目を覚まして5分も経ってないのにダンディーな男の裸エプロンを見なくちゃいけないの!?だから似合わないんだって(2回目)
「朝飯が出来た。さっさと顔洗ってこい。」
「は、はい!」
黒沼さんの言葉に、俺はすぐに起き上がって洗面所で顔を洗い、テーブルへと向かう。
テーブルの上には良い感じに焼けてる食パンが2枚にハム付きの目玉焼き、ドレッシングがかかっているサラダといった朝食らしいメニューが並んでいた。この人、料理もできるんだ。もう無敵じゃん。
「これを食べて10分後にはここを出発する。それまでに準備しておくように」
「はい」
「よろしい。」
俺は返事をしてから、食パンにバターを塗って口に運ぶ。思った通り、美味い。あれ、でもこれって………。
「ん?何だ?」
「いや、間違ってたらすいませんなんですけど………このバターってヤギの乳から作ってます?」
俺の言葉に黒沼さんは驚いたような表情を浮かべる。
「よく分かったな。そのバターはこのトレセン学園で飼育してるヤギの乳を俺が加工して作ったものだ。」
「やっぱり………」
このバターの舌触りに風味で、ヤギの乳から作られたものだと感たが案の定そうだった。てか、このバターも黒沼さんの手作りかよ。イメージが湧かんて。
「ヤギの乳から作ったバターをよく食べてたのか?」
「まぁ、それには色々ありまして………」
どうして、俺がこのバターがヤギの乳から作られたものだと分かったのか。それは、ドトウが原因である。
数年前に俺とドトウは両親の知り合いが牧場をやってるということだったため、北海道まで遊びに行ったことがあった。
牧場では、牛やらヤギ、羊の動物が数多くおり、見ているだけで癒されるものだったのだが………
『か、カズくん!あ、あのヤギさん、どうやらお腹が痛いみたいですぅー!!』
と、ドトウが騒いでいたことがあった。彼女曰く、ヤギの目を見ると気持ちが分かるらしい。当時はこいつ、頭狂っとるんか?と本気で思ったが、ドトウが余りにも騒ぐからスタッフに声を掛けて様子を見てもらった結果、本当に胃の中に異常が見つかったのだ。獣医曰く、あと少し発見が遅れていたら大変なことになっていたとか。
そして、それ以降、ドトウは牧場の動物たちに好かれ、やがて山の王となった。その姿は流石の俺でも圧巻だと感じてしまうほどに貫禄のあるものだった。あの時のドトウの困惑した表情が未だに忘れられねぇ。急にヤギ達の王になっちゃったもんね。
そして、それがあってから定期的にヤギの乳で作られたバターが届くようになったのだ。
「ーーーとのことです。」
「そうか。同期の担当とそんな過去があったんだな。」
俺のエピソードを興味深そうに聞いた黒沼さんはそう呟くと、朝食を再開させようとする。
「ちなみに………黒沼さんから見てドトウは凄いんですか?」
「どういうことだ?」
「いや、俺……そこまでウマ娘に関する業界に詳しくなくて……。あいつがトレセン学園に入学してる時点で凄いっていうのはなんとなく知ってるんですけど………。トレーナー目線からして、ドトウはどうなのかなぁって思いまして。」
「なるほど。」
黒沼さんは俺の質問に対して少し考えるような仕草をする。そして、考えがまとまったのか、言葉を呟いていく。
「結論から言うが………メイショウドトウは俺からしても凄いウマ娘だと思う。」
「ーーーッッ!」
「メイショウドトウより優れた先行ウマ娘は育成次第だが、それほどいないだろう。いくつか課題は走ってる様子を見てる限りあるようだが、それを全て乗り越えた時、とんでもない存在になると俺は思う。」
「ドトウが………」
「だから、坊主。お前は誇っていい。強いウマ娘が傍にいることを。それはお前という存在を強くするきっかけにもなる。それだけは忘れるな。」
話はそれだけだ、と最後に口にして黒沼さんは食パンを豪快に頬張る。時間が推してるからだろうか、少しだけ早いような気がする。
黒沼さんの最後の言葉が頭の中で何回も何回もリピートしながら、俺も食パンを口にした。
☆☆☆☆☆
朝食を食べ終え、寮を出た俺と黒沼さんはトレセン学園のグラウンドへと足を運んだ。すると、そこには恐らく黒沼さんが担当してるウマ娘さん達が数人ほど準備体操していた。
「集合」
「「「「「「はい!」」」」」」
黒沼さんの一言で、ウマ娘さん達が一斉に横に1列となって並ぶ。え、軍隊?
「マスター。その少年は……?」
1列の中心にいるウマ娘さんが手を挙げ発言する。よく見ると、昨日黒沼さんとトレーニングしてたウマ娘さんだった。名前は確か……ブルボンさんだっけな。
「今日の雑用係だ。カズ、挨拶だ。」
雑用係って言っちゃったよ、この人。実際、そうなんだけどさ。もっと他に言い方無かったですか??
「雑用係のカズです。今日はよろしく……です??」
「「「「「「よろしくお願いします!!」」」」」」
威圧が凄いです。頭下げるだけでブワッと風きちゃったよ。前髪がうしろ言ってオールバックみたいになっちゃったよ。
「よし。それじゃあ、1500mダッシュ×5セットだ。死ぬ気で行ってこい!!」
「「「「「イエッサー!!!」」」」」
やっぱり軍隊じゃん。風格が違うもん。ここだけ、戦場に行く兵士みたいなテンションになってるもん。
「坊主、何してる?お前も仕事だ。今すぐに人数分のドリンクとタオルを用意してこい。」
走り出すウマ娘さん達を見送ったあと、黒沼さんが俺に向かって指示を出す。トレーニングが始まったからか、トレーナーとしての威圧が凄い。
「い、いえっさー。」
こうして、俺は黒沼さんによるウマ娘さん達のトレーニングの雑用が始まった。
☆☆☆☆☆
「あれ?あそこにいるのはカズくんですぅ〜?」
「どうやら、私たちのトレーニングが終わるまで黒沼くんのお手伝いするみたいだよ」
「えぇー!?な、な、なら!わ、私もカズくんのお手伝いに……!!」
「いやいやいや。ドトウが行ったら意味ないでしょ。早くジム行くよー。」
「そ、そんなぁ〜。」
「でも、ドトウがトレーニングいっぱい頑張ったらあの子も君のことを褒めてくれるかも………って、もういないじゃん。単純な子だなぁ〜」
☆☆☆☆☆
「ん?なんかドトウの声が聞こえたような?」
バシャバシャとトレーニングによって汚れてしまったトレセン学園の体操着をグラウンドの隅で洗っている最中にドトウが『そんなぁ〜』と叫んだような気がした。しかし、周りを見てもあいつの姿はない。え、怖っ。幻聴ってやつじゃん。
「坊主、終わったか?」
「はい、たった今。」
洗い終わった体操着を物干しに全部干し終えたところで、黒沼さんが声を掛ける。俺が干した体操着に目線を移し、「よし」と呟く。
「次は走るアイツらのタイムを測ってもらう。ストップウオッチを持ってグラウンドに向かえ。」
「イエッサー。」
あれ?なんかいつの間にか俺も染まってね?黒沼さん率いる軍隊の一員になってね?
俺はストップウオッチを手にしてグランドへと向かう。すると、もうウマ娘さん達は準備満タンの状態でスタンバイしていた。流石っすわ。
そして、走る彼女たちのタイムを測り、それを1人ずつ記録簿に記載し続ける。それを黒沼さんに渡して、結果を見て黒沼さんはウマ娘さん達にアドバイスを送っていた。
「お疲れ様でーす」
トレーニングが一区切りして、黒沼さん達は彼女達に休憩を言い渡す。彼女たちは休憩に入るが、俺の仕事は終わらない。彼女達にドリンクを渡さなければいけないのだ。
1人ずつドリンクを渡してる中、俺はあることに気づく。
「あの……」
「なんでしょうか?」
俺が話しかけたのは、ミホノブルボンさんだった。彼女は無表情でまるでサイボーグのような話し方をする。本当にウマ娘って個性的なのが多いよね。
俺は、とある場所に指をさして彼女に言葉を出した。
「ミホノブルボンさん、間違ってたらごめんなさいなんですけど………」
☆☆☆☆☆
「うー、疲れすぎて飯が逆に胃に入らねぇわ」
午前のトレーニングが終わり、昼休憩に突入したため、俺は黒沼さんの手作りお弁当を貰い、食べようとしたのだが、午前の激務によって食欲が湧かず、1口も食べられない状況にいた。めちゃくちゃ美味しそうな弁当なのに……勿体ない。
それにしても、本当に頑張ってるんだな、ウマ娘って。トレーニングを見学してて、その本気度が分かる。ドトウやエアシャカールさんもこれに負けないぐらいのトレーニングを日々積み重ねてるんだよな。
俺はこれまでに何かに本気になって行動した事がないから、そんな彼女たちを見てると羨ましく感じてしまう。
俺もこれを機に何か始めてみようかな。そうすれば、何かしら本気になれそうな気がするんだけど。
「ん?」
ボケーッとバカみたいに広いグラウンドを眺めながら、少しずつお弁当を口にしていると、そのグラウンドで何人かのウマ娘が並び、走る体勢をとる。どうやら、模擬レース的なのをするようだ。
そして、その並ぶウマ娘さん達の中にアドマイヤベガさんもいた。彼女がいるって分かった瞬間、頬が熱くなるのを感じた。本当に美人すぎる。
そういえば、こうやって走る彼女をしっかりと見るのは初めてだな。なんやかんやで、これまで見てたのはさらっとだったし。目に焼き付けておこう。
「…………は?」
しかし、アドマイヤベガさんを目に焼き付けたことによって、俺は最悪なことに気付く。おいおい、嘘だろ?
俺は思わず立ち上がる。それによって、折角黒沼さんが作ってくれた弁当が台無しへとなってしまったが、それどころじゃなかった。
そして、そのまま俺はグラウンドへと駆け出した。
☆☆☆☆☆
右を見ても、左を見てもウマ娘が真剣な眼差しで走る体勢を取る。スタート合図が出るまでのこの少しの緊張感は過去に何度も味わったことがあるが、未だに慣れることは無い。
例え模擬レースだとしても、アドマイヤベガは勝つ気でいた。彼女にとって模擬レースだとしても勝たなければならない理由があった。
そして、そのレースが始まる合図が響き渡ろうとしたその瞬間ーーー
「待って待って待って待って!!!」
「「「「ーーーッッ!?」」」」
アドマイヤベガたちの目の前に1人の少年がグラウンドへと乱入する。しかも、その少年はアドマイヤベガは見覚えがあった。
なぜなら、昨日ドトウから紹介された幼馴染だったからだ。因みに、彼女は彼の名前を覚えていない。そしてなぜか、自分の方をずっと見てきて少し不気味だと感じていたが。
中断した挙句に、なぜかドトウの幼馴染はアドマイヤベガの方へと向かう。その表情はまるで焦燥と怒りが合わさったようなものだった。
そして、彼は彼女の腕を強く握り、こう叫んだ。
「今すぐに貴女を保健室に連行します!!」
仕事終わったら、エアシャカールタグ追加します。(フラグ)
この作品において彼女の存在は大きいもの間違いなしなので。もし、されてなかったら怒ってください