俺の幼馴染はハイパードジっ子兼ネガティブウマ娘です 作:たぬき田中
これは、俺とドトウがまだ知り合って間もないの時のこと。
そして、10年という長い月日共に過した中で、俺が忘れられない過去の1つ。そして、俺がドトウと一緒にいるようになったきっかけでもあった。
『おーい、ドトウ。こっちこっちー』
『待ってくださいぃ〜!!』
『こっちだよー。早く早く〜』
『はいぃ〜、あっ!!』
ーーーゴッ
『もぅ、ドトウったら〜。また転んだのー?』
『…………』
『ドトウ?おいったら………』
ーーーたらー
『ち、血ぃ!?おい、ドトウ!?ドトウったら!!か、母ちゃぁぁぁぁぁん!!!』
ーーーピーポーピーポ
☆☆☆☆☆
あちこちから、視線を感じる。そりゃあ、そうだ。なにせ、大事なレースを無理やり中断させたのだから。多分、この後に色んな人に怒られるんだろうな。
けど、だからといって、ここを退くわけにはいかない。目の前にいるこの人を走らせる訳にはいかないんだ。
「離して。」
「嫌です。」
アドマイヤベガさんの言葉に俺は速攻拒否する。
「離してって言ってるの。言葉の意味を理解して。」
「
「ーーーッッ、どうしてそれを!!」
彼女の核心をついたかのような俺の発言に、アドマイヤベガさんは言葉を詰まらせる。そして、一気に表情に焦りを見せ始めた。
「おい、君!」
「………トレーナー」
そんな時、横から1人の清楚っぽい青年が姿を現す。彼女の反応からして、トレーナーだということが分かる。
「何をしてーーー」
「おい」
俺は今までに出したことの無いぐらいに低い声を出しながらグイッとアドマイヤベガさんのトレーナーのネクタイを掴む。俺の唐突な行動に、アドマイヤベガさんやトレーナーは驚きの表情を浮かべた。
「アンタ………、アドマイヤベガさんの脚のこと知ってたのか?」
「あ、脚?」
まるで知らないかのような反応をするトレーナー。そんな無頓着のような態度に俺の怒りゲージが徐々に上がっていく。
「脚だよ、脚!!彼女の右脚は今、危険な状態なんだよ!!」
「何だって!?」
すぐに彼女のところへと駆けつけるトレーナー。彼の言葉に、最初は抵抗していたアドマイヤベガさんだったが、観念したのか靴を脱いで、右脚を見せる。
「ッッ、これはーーー!?」
彼女の右脚は酷く腫れていた。その事が周囲にバレてアドマイヤベガさんは気まずそうに目を伏せる。
「アヤべ………どうして………。」
「……………」
トレーナーは顔を青くしながらアドマイヤベガさんに問いかけるが、彼女は顔を伏せたまま、何も言わない。
「アヤべ、模擬レースは中止だ。今すぐに保健室……いや、病院に行こう。」
すぐに車の手配をする、とトレーナーは口にして、スマホを手にする。しかし、アドマイヤベガさんは彼のスマホに手をかける。
「ダメ!」
「でも、それじゃあ、君が」
「ダメったらダメ!!私は走らなくちゃいけないの!!あの子ために……私は1番にならなくてはいけないの!!その為なら、脚なんて壊れたっていい!」
アドマイヤベガさんは必死にトレーナーに抵抗する。初めて見る彼女の姿に、トレーナーは言葉を失っていた。
しかし、俺はーーー
「……んなよ。」
「え?」
「ざっけんなよ!!何が脚なんて壊れたっていいだ!!冗談吐くのもそこまでにしとけよ!!」
俺の叫びに、アドマイヤベガさんは目を丸くする。そして、何だ何だと周りにウマ娘やトレーナーが集まっていく。
「何があってからじゃ、なにもかも遅せぇんだよ!!もし、そんな脚で走って転んだらどうする!?打ちどころが悪くて頭から血が流れたらどうする!?それを見たアンタのトレーナーや友達、報せを受けた家族はどうなってもいいってか!?自分のことだから何してもいいって勘違いしてんじゃねぇぞ!!」
「ーーーッッ」
俺はゼェゼェと荒い呼吸をしながら、アドマイヤベガさんを睨みつける。彼女の瞳には酷い顔をした自分が映っていた。やべ、思った以上に叫んだせいで喉が痛くなっちまった。
「坊主」
「………………黒沼さん」
名前を呼ばれ、振り向くと黒沼さんとミホノブルボンさんがいた。これは、死を覚悟した方がいいやつか?黒沼さんは何も言わず、俺の頭に手を置いた後に、アドマイヤベガさん達の方へと向かう。
「アドマイヤベガ。俺が言いたいことは分かるな?」
「………………」
「ごちゃごちゃ何も言わず、救急車が来るまで保健室で応急処置を受けに行け。」
「……………っ!!」
アドマイヤベガさんは悔しそうな顔をしながらも、何も言わずグラウンドから離れる。彼女のトレーナーも焦りながら彼女の後を追う。
「ウチの坊主が練習の邪魔して悪かった。この後、模擬レースをやるんだろ?どうぞ、続けてくれ。」
黒沼さんは周りにいるウマ娘やトレーナーにそう言って、俺の方へと向かう。多分、改めて説教食らうやつだな。
「カズ、お前はアドマイヤベガの所へ行け」
「はい?」
予想外の発言に、俺は思わず目を丸くする。
「保健室や病院に行った際、本人が何も言わなかった場合に第三者が怪我の状態を詳しく説明しなくてはならない時がある。今回の場合はあいつの脚の状態にいち早く気付いたお前はそれをする必要がある。だから、行け。」
「………わかりました」
黒沼さんに頭を下げ、学園内にある保健室へと向かおうとする。
「あと、カズ。」
「はい?」
「やはり、お前は……トレーナーとして素質を持っているぞ。」
「…………なんですか、それは。」
☆☆☆☆☆
カズが学園内に入るまで見送った黒沼。そこで、一緒に来ていたミホノブルボンが彼に声をかける。
「マスター、私から1ついいですか?」
「何だ?」
「誠に申し訳ないのですが……明日のトレーニング、お休みを頂いてもいいでしょうか?」
「お前からそれを言うなんてな。どうしてだ?」
「マスター、これを。」
「ッッ、それは」
ミホノブルボンがジャージをめくると、アドマイヤベガほどではないが、彼女の脚も少し腫れていた。病院に行く程ではないが、この状態でトレーニングを重ねていたら、とんでもないことになるのは事実だった。
「申し訳ありません。私の容量を超えた自主トレーニングを積み重ねてしまった結果、こうなってしまいました。」
「………そうか」
「あの少年は凄いですね。アドマイヤベガさんだけではなく、私の脚にも見た瞬間に気付かれました。」
「…………」
「ですが、私はアドマイヤベガさんと一緒でマスターに何も言わないつもりでした。しかし………先程の少年の叫びで私がいかに愚かな考えをしていたということに気付くことができました。…………申し訳ありません、マスター。」
「…………明日とは言わず、その腫れが治まるまでトレーニングは中止だ。他の子達も含めて」
「マスター………」
「だが、休みが終わったらいつも以上に厳しくいく。覚悟しておけ、ブルボン。」
「かしこまりました。」
☆☆☆☆☆
「ここだ………。」
保健室に向かおうとしたが、そもそも保健室の場所が分からずに迷子状態になっていたため、他のウマ娘さん達に聞きながら足を進めて、ようやく保健室らしき場所に辿りつくことができた。
それにしても、気まづいなぁ。俺、想い人にガチキレしたゃったんだよなぁ。絶対に嫌われたやつだよなぁ。でも、しょうがないじゃん。本当に危険だったんだから。
でも、ここで止まったら、何もかも終わってしまう。そうならないために、ここは覚悟を決めて、彼女に会わないといけないんだ。
「し、失礼しまーす。」
俺はゆっくりと扉を開けて、中を除く。すると、そこには…………
「え?」
「あ」
俺の目の前には着替えをしてたのか、下着姿のアドマイヤベガさんの姿があった。