俺の幼馴染はハイパードジっ子兼ネガティブウマ娘です 作:たぬき田中
「久しぶりにカズくんとのお出かけですぅ〜♪」
今日はドトウと仲直りした記念でいつも行ってるショッピングモールへと2人で足を運んだ。久しぶりだからなのか、ドトウは凄く上機嫌だ。耳と尻尾がフリフリと揺れている。
しかも、彼女の要望で腕を組んでいるため、ドトウの胸が肩に直接当たっている。腕を組むこと自体は昔からしてることだから慣れているが、胸が当たるとなると話は別だ。この感触だけは何年経っても慣れることはない。複雑な気分だ。
「カズくん、時間は大丈夫ですかぁ?」
「おう。チケット自体は予約してあるからな。」
ドトウは心配そうに俺に質問する。今日、ショッピングモールに来た理由は、建物内にある映画館シアターで今日上映する映画を見るためだ。内容としては麦わらを被った海賊が海賊の王になるために奮闘する大人気アニメの映画だ。
「けど、ドトウは良かったのか?俺が誘っておいてあれだけど、この漫画、あまり知らないだろ?」
「は、はいぃ〜!だから、カズくんが誘ってくれた日にすぐに電気書籍で全巻買って読みましたぁー!」
マジかよ。あれ、100巻以上あんだぞ?誘ってからそんなに日が経ってないのに全部読んだのか?
「あと、アニメもエアシャカールさんと一緒に全話観ましたぁ〜!!」
まさかの1000話を超えるアニメとセットでかよ。余計にどんな時間の使い方したのか気になるわ。え?授業とかトレーニング中にもしかして見てた?
しかも、エアシャカールさんも一緒に観てたのかよ。ロジカルぶっ壊れの世界観だろ、あの作品。よぅ、最後まで観たな。
「ちなみに推しのキャラとかできた?」
ドトウはアレだな。あの海賊漫画のキャラで例えるならハートの海賊団船長の命の恩人キャラだな。あのキャラもドジ属性あったし。けど、めっちゃ良いキャラなんだよなぁ。死んで欲しく無かったなぁー。
まぁ、ドトウはシンプルにあの可愛いトナカイキャラとかが好きなんだろうな。
「わ、私は"花剣"さんが好きですぅ〜!!」
"花剣"!?…………"花剣"!?頂上の決戦で"鷹の目"と渡り合ってた白い髭の海賊団五番隊隊長のあの"花剣"!?何百という有名な登場人物がいる中でそいつ推すやつ始めてみたわ!!
「今回の映画で出てくるか、楽しみなんですぅ〜♪」
100%出る訳ねぇだろ。逆に今回の映画のテーマの流れで"花剣"なんて出てきたら困惑しか出てこんわ。喜ぶの、お前だけやぞ。
そんな感じのやり取りをしながら俺たちは予約していたチケットを購入。その後、ポップコーンとかドリンク等も一緒に購入してスクリーンの中へと入る。
「カズくん!ポップコーンとドリンク私が持ちますよ?」
2人分のポップコーンとドリンクを手にしている俺に向かってドトウは手を差し伸べる。ウマ娘だからこんなの持つのはおちゃのこさいさいなのだろう。
「お前に渡したらどうなるか、考えただけでも恐ろしいから俺が持つよ」
「す、凄い!!カズくんは見聞色の覇気を極めてるんですね!!」
「うん。お前のこと知ってるやつなら皆が確信的にたどり着く未来像だよ。見聞色の覇気すら会得してなくても分かっちゃう未来だよ。」
「そ、そんなぁ〜!!」
半泣き状態のドトウを放ったらかしにして、俺は指定席へと座る。あとからして、未だにぐすんぐすんしてるドトウが隣へと座る。
そして、すぐに映画本編が上映され、2時間近くの物語を俺とドトウは楽しんだ。
☆☆☆☆☆
「すげぇ面白かったな」
「はいぃ〜♪凄く面白かったですぅ〜♪」
映画を見終わったあと、ショッピングモール内にあるフードコートにてハンバーガーを注文した俺たちはそれをかぶりつきながら感想を言い合っていた。
「やっぱり、あの赤髪の娘のライブ映像が良かったな。歌手もあの有名な人がやってるし、迫力が凄かった。」
「だけど、結局"花剣"さんは出なかったですねぇ〜。ざ、残念ですぅ〜…………。」
だから、出る訳ないんよ。今回、赤髪の海賊団に関係のある物語だっつてんだろ。嫌だよ、そんなサプライズは。何を求めてんだ、お前はよ。
ペロリとハンバーガーを平らげた俺たちは適当にショッピングモール内をぶらぶらする。服屋にゲーセンにガシャコンコーナーなど、本当に適当に雑談しながら歩きまくった。
「あの、メイショウドトウさんですよね??」
「は、はいぃー。そ、そうですぅ〜!!」
歩いていると見知らぬ女性がドトウに話しかける。
「わー!私、メイショウドトウさんのファンなんです!!良かったらサインいいですかー?」
「え、え、えぇー!?」
どうやらドトウのファンだったようだ。あんだけ有名なレースで結果を残しまくってるんだ。知名度が高く、ファンがいるのも納得だ。
「え、メイショウドトウ?」
「わわ、ほんとだ!メイショウドトウさんがいる!」
「うわぁ、すっげぇ。でけぇ!」
1人の女性の興奮度に釣られて、他の人たちもドトウの存在に気づき、嬉しそうに近寄ってくる。あっという間に集団が出来てしまった。おい、最後に声を出したヤツ。それは声に出すな。
「わわわぁ〜」
唐突の出来事に慣れてないのか、ドトウはいつも以上に目をグルグルとさせ、困惑している。この反応を見続けるのも面白いから悪くないな、と思いつつ、見ていて可哀想になるから、助けの手を差し伸べに行きますか。
「すいませーん。困ってるんで落ち着いてくださーい。」
集団のファンに対して俺は声をかける。すると一斉に視線がこちらを向く。いや、怖っ。
「あの、貴方はもしかしてメイショウドトウさんの彼氏ですか?」
「ふぇ!?そ、それはですねぇ……」モジモジ
「あ、彼氏じゃないです」(即答)
「ふぇぇ!?」
ファンの質問に俺は即座に否定する。何万回と聞き飽きた質問だわ、それは。ドトウはただの幼馴染です。
「むぅー」
んだよ、むくれやがって。まるで俺のことが好きみたいな反応すんなよ。
「おっひょー!ドトウさんの嫉妬顔に対する鈍感幼馴染くんの組み合わせ!!これはこれで堪らんですぞ、デュフフフフ。次のコミケのネタはこれで決まり…………」
おい、なんか集団の中にどさくさに紛れて変なウマ娘がいるぞ。コミケの同人誌のネタにするんじゃない。赤字になるからやめとけ。
「こうして近くで改めて見ると、やっぱり胸ばか大きいな」
お前もいたのか、クラスメイト。なんでここにいるんだ、貴様は。とりあえず、ドロップキックして沈めとく。とりゃ!
「ウッホウッホ、ウッホーー!!」
ゴリラに関してはマジで知らん。そもそもなぜ、ここにゴリラがいる。ショッピングモール内だぞ。誰か驚けよ、通報しろよ。ドトウどころの騒ぎじゃないだろ、今。ドトウもドトウでゴリラとツーショ撮るんじゃない。なにゴリラ相手に律儀にファンサしてんだ、てめぇは。
すぐにまともな人が連絡してくれたのだろう。ショッピングモールのスタッフさんやら動物園スタッフやらが駆けつけ、騒ぎが落ち着いた。警察沙汰まで発展しなくて良かったわ。
☆☆☆☆☆
「ドトウのせいで疲れたわ」
「ご、ごめんなさいですぅ〜」
とぼとぼと重い足を引きずりながら家へと帰宅する俺とドトウ。どうして、こいつと出掛ける時は毎度毎度疲れるんだ。
ドトウの方に顔を向けると、いつも以上に申し訳なさそうな表情を浮かべていた。そんな顔されたら怒るにも怒れるわけない。
「なぁ、ドトウ。お前は嫌じゃないのかよ」
「な、何がですか?」
「俺と付き合ってるって第三者に言われること。」
付き合ってるの?と言われ慣れてるとは言ったが、それを言われてドトウ自身どう感じるのか、を聞いてなかったため、改めて彼女に聞く。俺みたいな一般人は別に言われたって大丈夫さ。だけど、ドトウは幼馴染だが、立場が違う警察沙汰手前までの騒ぎを起こすほどの人気ウマ娘になりつつある今、こういうので誤解を周りに与えるのは世間的に良くないと俺は考える。
「べ、別にわ、私はなんとも思ってないですぅ〜!!な、なんなら、わ、私は…………………カズくんのことがーーー!」
「ウホー!!!」
「ま、待って下さい、空○先生!!次回作の締切、もうすぐですよ!ちょ、逃げないで!誰かァァァ!!そのゴリラを捕まえろぉぉぉ!!!」
なんかドトウが真剣な表情で伝えようとしたところで、またしてもゴリラが近くを通り過ぎる。しかも、このゴリラ、ただのゴリラではない。あの大人気漫画の作者の方のゴリラだった。なんでだよ、どうしてこんな所で出てくるんだよ。作者の思考回路どうなってるの?(←メタ発言やめろ。)
「……………ふん!!!」
ドトウを通り過ぎた空○先生だったが、なぜかドトウは彼に近づき、ジャーマンスープレックスを綺麗に決める。そ、空○先生ぇぇぇ!!!見事に技をくらったゴリラは目を白くして、そのまま沈み、担当者という名の動物園スタッフにそのまま連行された。
「ど、ど、ドトウ!!何してんだよ、お前!!あんなんでも凄い人なんだぞ!!」
「し、知らないですぅ!!」
ぷいっと、ドトウにしては珍しくむくれていた。なんなんだよ、一体。
女子って本当によく分からんな。特にドトウに関しては尚更だ。と思いながら、むくれるドトウの機嫌を治しながら帰るのであった。