GATE 処刑人、彼の地にて斯く断罪せり 作:ドレッジキング
20××年8月
気温が30℃を超える真夏日の銀座に、家族と買い物に来ていた。由佳の父である明彦は大手家電メーカーの常務であり、今日は家族サービスという目的で銀座に来ていた。
由佳は8歳になる妹の香織、兄である壮一と共に銀座にある店を巡っていた。久しぶりに家族揃って買い物に行けて、由佳は気分が良かった。由佳は壮一、香織と共に洋服売り場にいた。兄の壮一は女物の服売り場に来て退屈そうだったが、当の由佳は可愛い季節物の服をどれにしようか悩んでいた。
「ねぇ、由佳。これなんかどうかしら?」
由佳の母親である沙苗が由佳に声をかける。
「ちょっとお母さん、今は買うか決めかねてるんだから話しかけないでよ」
「あら、ごめんなさいね」
「お姉ちゃん、こっちも見てよ」
「はいはい」
由佳は母親の相手をやめて、妹の香織が着ているワンピースを見る。
「やっぱり私も女の子だからこういう服を着たいなぁ」
香織が手に持っているのは白を基調とした花柄のワンピースだった。
由佳は少し考えた後、口を開いた。
「……そういえばお父さんが新しいパソコンを買ってくれるって言ってたっけ?」
由佳は家族に聞こえないように小さな声で呟き、香織が持っていたワンピースを手に取る。
「じゃあ、このワンピを買うわ」
「えぇー?こんなの似合わないよぉ」
「いいのよ。私にピッタリだと思うし」
「ふぅん、分かった。ねぇ、ママ、私もこの白いワンピ欲しい!」
「はいはい」
こうして由佳は家族と一緒にショッピングを楽しんだ。兄である壮一と一緒に店を歩いていると、不意に壮一が由佳に尋ねてくる。
「由佳、お前は彼氏とかいるのか?」
「ちょ!?お兄ちゃん、何で急にそんな事聞くのよ!」
由佳は顔を真っ赤にしながら答える。
「別にいいだろ。で、いるの?」
「……いないわよ」
「へぇ、意外だな。由佳ならすぐにできると思ったんだけどな」
「余計なお世話よ!」
由佳は腕を振り回しながら壮一に抗議する。由佳のクラスメイト達は彼氏が誰とかそういう話題を直ぐにしたがる。年頃の少女なのだから当たり前だが、由佳はどうもそういった話が苦手であった。由佳は中学2年生になった頃から男子生徒に告白される事が多くなったのだが、由佳はどうしても恋愛感情というものが理解できなかった。自分が男と付き合う姿など想像できないし、そもそも由佳には好きな男性がいない。
「早く良い男を見つけて、嫁に行かなきゃな♪」
兄の壮一は由佳をからかう。
「う、うるさい!!︎」
由佳は顔をゆでだこのように真っ赤に染めながら兄の言葉を否定する。
そして由佳と壮一は店を出ると、店の入り口には父の明彦が待っていた。明彦の隣には先に出ていた母の沙苗と、妹の香織がいる。そうして家族5人で銀座の通りを歩いた。歩いていると、父の明彦は由佳に対して16歳の誕生日プレゼントは何が欲しいと言ってきた。由佳は迷わず、「パソコン」と答えた。すると明彦は「そっか、由佳ももう高校生だし、パソコンくらい持っておかないとな」と言った。
「ねぇ、パパ。今度新しいパソコンを買おうと思ってるらしいけど、幾ら位するの?」
「そうだなぁ……20万円前後じゃないか?」
「そんなにするの!?︎わ、私の小遣いじゃ買えないよ…!orz」
「ハハッ、大丈夫だよ。俺が買ってやるさ」
「ホント!?︎ありがとう、父さん!大好き!」
「お、おい!由佳!人前で抱きつくなって!」
「フッ……」
「ちょっと母さん!鼻で笑わないでくれます!?︎」
「ハイハイ」
由佳は家族と一緒に銀座の通りを歩いていると、300メートルほど前方に、大きな『門』がある事に気付く。周りの通行人も、突然出現した『門』に驚き、人だかりができていた。中にはスマホで撮影している者もいる。
「お父さん、あの『門』は何だろう?何かのアトラクションかな?」
「いや、あれは本物のようだぞ」
「えっ?」
「ほら、周りを見てみろ」
由佳は辺りを見回すと、周囲の人々が一斉にスマホを取り出して写真を撮り始めた。皆、突然現れた『門』に注目しているのだ。
由佳は家族と共に『門』の近くまで行こうとする。
その時だった。『門』から出て来た数メートルはあろうかという巨人が棍棒を持って『門』の近くにいた通行人を潰したのだ。
「え…?」
由佳は目の前で起きた光景に脳内の処理が追い付かなかった。『門』から出て来た巨人は、ファンタジー系の作品で見るオークやオーガだ。そして『門』から出て来たのはオークだけではなかった。昔風の西洋式の甲冑に身を包んだ兵士達が続々と『門』から出てくる。そして『門』から出て来た兵士達は周囲にいた通行人を手当たり次第に襲い始めた。目の前で起きた白昼の殺戮に数えきれない悲鳴が上がる。
「逃げろ!!」
「キャァアア!!」
「助けてくれぇ!!」
「イヤァー!!」
銀座大通りは一瞬にして阿鼻叫喚の地獄絵図と化した。
「お父さん!!お母さん!!」
由佳は家族を捜して走り出す。しかし、家族の姿は見当たらない。
「お父さん!!どこぉ!!」
「由佳!!危ない!!」
父の明彦は、空から襲ってきた翼龍に腕を噛まれ、そのまま空中へと連れ去られた。
「お父さん!?」
「由佳!!逃げるんだ!!こいつはヤバい!!早く逃げろ!!」
明彦は空中から必死に娘の由佳に逃げるように叫ぶ。そして翼龍は明彦の腕を食いちぎると、明彦の身体は30メートル下のアスファルトの地面に落下した。明彦の身体は頭から叩きつけられ、即死していた。
「うわぁあああん!!おとうさぁぁん!!!」
「由佳!?」
母親の沙苗は娘である由佳の名前を叫びながら、パニックを起こしてその場から動けずにいた。沙苗は夫である明彦が殺されたショックで呆然としていたが、直ぐに我に返る。
「由佳、ここから逃げるわよ!!」
沙苗は由佳の手を引き、急いでこの場を離れようとする。周囲では『門』から出て来た兵士やモンスターが通行人を虐殺している。
「香織は…?お兄ちゃんはどこ…!?」
由佳は妹である香織と兄の壮一がいない事に気付く。
「香織と壮一はどこかで隠れてるはずよ!貴方は早くこの場を離れるのよ!」
「でも、香織が……!お兄ちゃんが……!」
「今は自分を心配しなさい!!︎」
「で、でも!」
「いいから行きなさい!!︎」
由佳は家族とはぐれてしまった悲しみと絶望感に苛まれるが、沙苗の言葉に従い、その場から離れて安全な場所を探した。
「お姉ちゃん助けて!!」
「香織!?」
由佳は妹の香織の助けを求める声に気付き、急いで周囲を見回す。そして香織の姿を見た瞬間、おぞましい光景がそこにあった。『門』から出て来たと思われるゴブリンの群れが香織の身体にかぶりつき、香織を食べているのだ。香織の全身は血まみれとなり、香織は断末魔の悲鳴を上げていた。
香織は必死にもがき、抵抗するが、ゴブリンの牙から逃れる事は出来なかった。
香織は由佳の方を見ると、必死に助けを求める。
由佳は怒りで頭がいっぱいになり、目の前の光景が信じられなかった。
由佳の中で何かが弾け飛んだ。
「私の妹を放せぇぇぇぇぇ!!!!」
由佳は落ちていた石を手に取り、ゴブリンの群れに向かっていく。
「オラァア!!」
由佳は石を投げた。その投げられた石は見事、一匹のゴブリンの頭に命中する。
「グギャ!?」
「うおりゃああ!!」
由佳はもう一匹のゴブリンに飛び掛かる。
「死ねぇええええ!!!」
「ゲェッ!?」
由佳は空手二段の腕前であり、素手でゴブリンを殴り殺した。そして由佳は近くにいる別のゴブリンを蹴り飛ばす。
「グアアッ!?」
ゴブリン達を全員殺した由佳は、変わり果てた妹の香織の姿を見て愕然とする。
「嘘…?香織?香織なの?」
由佳は妹の亡骸に近づき、そっと妹の頬を撫でる。
香織の目は見開かれており、口元には大量の血液が付着している。
由佳の目からは大粒の涙が流れ、やがてそれは滝のように流れ落ちる。
由佳は香織の遺体を抱きしめ、泣き叫んだ。
その時だった、『門』から出て来た兵士が由佳の腕を掴み、由佳を連れ去ろうとする。由佳はその手を払いのけると、兵士の顔面を殴った。
「離して!!︎」
「ぐっ!?︎」
「コイツ!!︎」
1人の兵士は拳で由佳を黙らせようとしたが、由佳は冷静に兵士の攻撃を避け、逆に兵士の顎に強烈な一撃を加えた。
「ガッ!?︎」
「許さない…お前達…許さない…!!」
「こいつ!!︎」
兵士は剣を引き抜き、由佳に斬りかかる。しかし、由佳は兵士の攻撃を軽々と避ける。
「当たらない……?」
「死ね……!!︎」
由佳は兵士の腹部に回し蹴りを放つ。
「ごはっ!?︎」
「まだまだぁ!!」
由佳は続けざまに兵士達を殴り続ける。しかし多勢に無勢。由佳は直ぐに劣勢に追い込まれてしまう。
「つ……強い……」
「大人しく我々についてこい」
兵士達はじりじりと由佳に近付いていく。が、そこに母である沙苗がモップを振り回しながら兵士達に向かっていく。
「私の娘に手を出すなァ!!」
娘である由佳を護るべく、母である沙苗は兵士達に立ち向かっていく。が、所詮は主婦である沙苗の力など鍛えられた兵士達の前では赤子同然だった。沙苗はモップをアッサリ取り上げられると、兵士達から殴る蹴るの暴行を受けた。沙苗の身体はたちまち傷だらけとなる。
沙苗は身体中から流れる血で真っ赤に染まりながらも、娘である由佳の事を心配した。
「嫌…お母さん…!」
由佳は兵士達に痛めつけられる母の沙苗を助け出そうとする。しかし沙苗は由佳に対して逃げるように叫んだ。
「由佳……逃げて……!」
「お母さん!!」
「いいから逃げなさい!!」
「で、でも!!」
「逃げてぇえ!!」
娘の身を案じる母の沙苗の叫びを聞き、由佳は全速力でその場を離れた。由佳の目からは涙が溢れ出す。
由佳は走る。ひたすら走った。しかし、後ろから追ってくる足音が聞こえる。
振り返ると、そこには由佳の後を追ってくる兵士達がいた。由佳は涙を流しながら走り続けた。
しかし途中でつまずいて転んでしまう由佳。由佳の背後には兵士達が迫っていた。もう駄目だ…そう思った時だった。由佳に迫っていた3人の兵士達は、横からきた黒いバンに跳ね飛ばされてしまった。
「え…?」
由佳は兵士達を跳ねた黒いバンを見る。そしてバンのドアが開き、中から漆黒のコートを纏った外国人が現れた。外国人が纏っている黒いコートの胸の部分には髑髏のマークが施されている。
「貴方は…誰…?」
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パニッシャーは床に倒れている物言わぬ遺体にタバコの吸い殻をかけた。この遺体はわざわざ日本にまで追いかけた末にようやく仕留める事ができたヤクザの親分のなれの果てである。殺しても殺しても悪党や犯罪者は湧き出てくる。終わりの見えない作業の繰り返しでも、パニッシャーは自分のやるべき事を見失わない。
パニッシャーは部屋のテレビでやっているニュースを見る。テレビでは臨時ニュースをやっており、アナウンサーが慌ただしく情報を伝えようとしている。
「えー、番組の途中ですが臨時ニュースをお伝えします。今日の午後、銀座の通りで正体不明の謎の『門』から多数の兵士と怪物が現れ、歩行者天国となっていた銀座で大量虐殺を行っております。逃げ惑う市民達が『門』から出現した兵士や怪物に殺され、銀座は大パニックになっております。現場から中継でお伝えします」
そしてテレビの画面には、甲冑を着込んだ兵士や、ゴブリンやオークといったファンタジーなモンスター達が銀座にいる人々を蹂躙している様子が映し出される。その光景を見た瞬間、パニッシャーは即座に行動を開始した。
パニッシャーは窓から外へ飛び出す。そして建物の下に停車させていた黒いバンに乗って移動し始めた。パニッシャーが目指すのは銀座四丁目の交差点付近。そこでは今も尚、帝国軍による殺戮が行われているのだ。しばらくするとパニッシャーは目的の場所に到着した。そこはまさに地獄絵図であった。
地面には兵士やモンスターによって殺された人々の死体が散乱していた。そして辺りには血の臭いが立ち込めており、パニッシャーは顔をしかめる。パニッシャーは車の屋根の上に立ち、双眼鏡で周囲の様子を窺った。
そしてすぐに異変に気付いた。
「あれは……?」
パニッシャーは双眼鏡のレンズ越しに、複数の兵士から逃げている少女の姿を発見する。パニッシャーはすぐさまバンに乗り、少女の方へと車を走らせた。そして少女を追いかけていた3人の兵士達を横から跳ね飛ばす。兵士達はパニッシャーの乗るバンに跳ねられ、地面に叩きつけられた。
「貴方は…誰…?」
少女はバンから出て来たパニッシャーに尋ねる。
「パニッシャー」
パニッシャーは短く答える。そして周囲から兵士やモンスターが集まってきているのを見ると、バンから二丁のM16を取り出し、近付いてくる兵士やモンスター目掛けて連射した。
M16から放たれる弾丸は兵士達の着ている甲冑や盾を紙細工のように貫き、兵士達は次々と銃弾に倒れていく。そしてパニッシャーはバンから更なる武器を取り出した。大型の火炎放射器である。パニッシャーは迫りくるゴブリンやオーク目掛けて数千度にもなる炎を浴びせた。
炎を浴びたオーク達は瞬く間に消し炭となり、兵士達も次々に焼かれていった。しかし、それでも生き残った兵士達は剣を構えてパニッシャーに向かっていく。
「邪魔だ」
パニッシャーは素早く腰からナイフを抜き取り、兵士達の首筋を切りつけた。兵士達は悲鳴を上げる暇もなくその場に倒れた。
「これで全部か」
周囲に敵がいないことを確認すると、生き残っている兵士がいる事に気付く。パニッシャーは負傷して地面に倒れている兵士の胸を足で踏むと、質問をする。
「答えろ、お前等は何処から来た?」
パニッシャーは地獄の底から響き渡るような声で兵士に尋問を始める。
「我々は……帝国の兵士で…アルヌスの丘から…来た……」
「目的は?」
「皇帝陛下の命令で……この土地を…征服する…為だ……!」
「ふざけた真似を」
そう言うとパニッシャーは持っていたナイフで兵士の耳をそぎ落とした。兵士は絶叫を上げて地面を転げ回る。しかしパニッシャーは手を緩めなかった。いきなり現れ、銀座にいた民間人達を一方的に殺戮した兵士達に対して、パニッシャーは冷酷非情な顔を見せる。楽に死なせるわけがない、
そう言わんばかりにパニッシャーは兵士の耳にナイフを突き刺す。兵士はパニッシャーの残虐さに恐怖する。自分達はただ命令に従っているだけなのに、なぜこのような目に遭わなければならないのか? 兵士は涙を流す。しかし、兵士の苦しみは終わらなかった。パニッシャーは持っていたジャックダニエルの瓶の蓋を開けると、液体を兵士の身体にかけはじめる。
「な、何をする!?」
「こうするのさ」
パニッシャーは持っていたジッポーライターの火を付け、ライターを地面に置く。そして近くにいた由佳に視線を向ける。由佳はパニッシャーの言おうとしている事が理解できた。
由佳は立ち上がると、倒れている兵士の近くに行き、置かれている火が付いたジッポーライターを手に取る。
「な、何をする気だ…!?」
兵士はライターを持った由佳を見て怯えた目つきで言う。
「こうするのよ」
由佳は感情の籠らない言葉で火が付いたライターを倒れている兵士に投げる。そしてライターの火が先程パニッシャーが兵士の身体にかけたジャックダニエルに引火し、兵士の身体は炎に包まれる。
「ギャアァァァァ!!」
兵士は断末魔の叫び声を上げ、地面に転がりまわった。その様子を見て、パニッシャーは口元を歪める。
「これが俺のやり方だ。悪く思うな」
パニッシャーは火だるまになり、地面を転がり回る兵士を見下ろしながら言った。
「俺と一緒に来い。死にたくなければな」
パニッシャーは由佳に言うと、由佳はパニッシャーが乗っていた黒いバンに乗り込む。そしてパニッシャーはバンを発進させ、銀座から離れていく。
「私のお父さんも…お母さんも…妹の香織も…奴等に殺された。お兄ちゃんはみつからなかったけど…何でこんな事になったの…?」
由佳は目から涙を流す。
「悪いな。俺にはこれしかできないんだ。仇はいつか討ってやる。だから今は我慢してくれ」
パニッシャーは運転しながら助手席に座っている由佳に言う。
「貴方は……どうしてそんなに強いの?」
由佳は尋ねる。
「強くなんかねぇよ。俺は俺のやりたい事をしているだけだ」
窓からバンの外を見てみると、複数の陸上自衛隊のヘリコプターが銀座方面に飛んでいくのが見えた。
「ふっ、この国の自衛隊もようやく出動か。行動が遅すぎだぜ」
パニッシャーは鼻で笑い、バンのスピードを速めた。
「……ねぇ、一つ聞いていい?」
「何だ?」
「私がもし…もし『門』の向こうから来た連中に復讐するとしたら…貴方は私を悪人だと思う?」
「やめておけ、お前にゃそういう事は向いてない。復讐しようとしても返り討ちに遭うのが関の山だ」
「……じゃあ貴方は?」
「俺か?そうだな……」
パニッシャーは少し考えると、由佳の方を向いて言う。
「俺は悪党で結構。それでお前さんみたいな善良な人間が助かるなら、俺は喜んで悪役になる」
「…………」
「お前さんの気持ちは分かる。だがそれはお前さん自身の身を滅ぼす事になるぞ?」
「それでも…それでも私は…それでも私は家族の仇を討ちたい…!!あいつ等に復讐してやりたいの…!!どこから来たのかなんて知らないけど、私の家族や銀座にいた人達を殺したあいつ等は絶対に許せない…!!」
由佳は怒りと憎悪と殺意がこもった言葉を言う。つい先ほどまで何処にでもいる普通の女子高校生だった由佳が、僅か二時間足らずでここまで変わるのか。パニッシャーは由佳にかつての自分を重ねる。
「……それでもやめておけ。復讐ってのは麻薬や大麻と同じだ。一度嵌れば抜け出すのは至難の業だ。そして大抵は破滅する」
「それでも……」
「それでもだ。それに復讐するにしても、まずは生き残らなきゃ始まらん」
パニッシャーは由佳の頭を撫でる。
「お前さんはまだ若い。これからいくらでもやり直しができる。だから、お前さんはお前さんの人生を生きろ。それが今のお前さんにできる唯一の事だ。分かったな?」
「……うん……」
由佳は涙を浮かべながら返事をした。
「よし、良い子だ」
パニッシャーは由佳の頭に軽くチョップする。
「それと、俺の事はパニッシャーだ」
「変な名前ね。それが本名なの?」
「……元の名前はとうに捨てた」
「ふぅん……」
由佳は興味なさげに言うと、窓の外を見る。
(お父さん…お母さん…香織…お兄ちゃん……私…どうしてもあいつ等を許せない……。『門』の向こうはどんな世界なのか知らないけど、チャンスがあれば…チャンスがあれば仇を討ちたい…!)
由佳は自分の手を強く握りしめ、唇を噛む。由佳の身体は小刻みに震え、唇からは血が出ていた。
「怖いのか?」
パニッシャーが尋ねると、由佳は首を横に振る。
「そうじゃないわ。ただ……悔しいだけよ」
「そうかい」
パニッシャーはそれ以上何も言わなかった。
何かパニッシャーさんが優しめになっちゃったかも(-_-;)
原作ではもっと不愛想な感じなんだけどな