GATE 処刑人、彼の地にて斯く断罪せり   作:ドレッジキング

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やった側は忘れても、やられた側は覚えている。


一人ぼっちの由佳

銀座事件から数週間が経過した後も、由佳は銀座事件の悪夢にうなされていた。あの日、由佳達はいつものように銀座の街を歩いていた。しかし、突然銀座に『門』が出現し、『門』の中から甲冑を着た兵士やゴブリン、オークといったモンスター達が出てきて、銀座にいる人々を襲い始めたのだ。由佳は無我夢中で逃げ回った。父の明彦、母の沙苗、妹の香織、兄の壮一は何処にいるのか分からない。しかし家族を見つける為、由佳はひたすら銀座の街中を走った。周囲では兵士とモンスター達が通行人を殺しまわっている。夢なら醒めてほしい、悪夢なら終わって欲しい、由佳はそう願いながら走っていた。

 

すると、前方に見慣れた顔を見つけた。それは兄の壮一だった。

由佳は行方が分からなかった兄を見つけ、安堵する。しかし兄は周囲にいた兵士達によって身体を細切れにされ、バラバラにされて殺されてしまった。

 

「お兄ちゃあああん!!」

 

由佳は泣きながら叫ぶ。

 

「お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!」

 

そして今後は妹の香織が助けを求める声が聞こえてきた。

 

「香織!?」

 

由佳は急いで声がした方に向かうと、そこには血まみれになった香織の姿があった。

 

香織の四肢は食いちぎられており、香織の身体は血の海に沈んでいた。

 

「香織!!しっかりして香織!!」

 

由佳は必死になって呼びかけるが、香織の反応はない。

 

「そんな…香織…死んじゃやだよ…!お姉ちゃんである私より先に死ぬなんて認めないわよ!!!」

 

すると、今度は兄の遺体が目に入ってきた。

 

「嘘でしょ……?こんなのって……こんなのって無いよ……!!」

 

由佳は泣き崩れる。

 

「お願いだから目を覚ましてよ……!起きなさいよ……!寝てる場合じゃないでしょ……?ねぇ……?」

 

由佳の悲痛な叫びが部屋に響く。

 

「ゆ、夢…!?」

 

目を覚ますと、由佳は自分の家の寝室のベッドで寝ていた。由佳のパジャマは汗でびっしょりと濡れており、呼吸も乱れていた。

 

「またあの時の夢を見たのね……」

 

由佳は大きくため息をつく。

 

「お風呂に入ろう……」

 

由佳はシャワーを浴びて着替えると、朝食を食べる為にリビングに向かった。

いつもならリビングに行くと、見慣れた家族達の姿があるのだ。しかし、もう家には由佳以外残っていない。由佳は銀座事件以降、一人ぼっちになった。

 

「おはよう」

 

由佳は家族に挨拶するが、当然返事は無い。

 

「今日も学校行かなきゃ……」

 

由佳はトーストと目玉焼きを食べ終え、身支度を整えると、家を後にして登校する。

 

由佳は授業中も、うわの空で、教室の窓から景色を見ていた。クラスメイト達も由佳が銀座事件で家族をいっぺんに亡くした事を知っており、由佳に話しかける事は無かった。

 

昼休みになると、由佳は屋上に出て、給水塔の上で体育座りをして、昼食をとる。

 

「はぁ……」

 

由佳は大きなため息をつく。

 

(私はこれからずっと独りぼっちなんだろうな……。友達なんてできないんだろうな……。きっと高校を卒業すれば私は就職して、結婚するのかな?)

 

由佳は自分でも何を考えているのか分からなかった。銀座事件以降、世論では『門』を通って来た異世界の存在に対する報復が叫ばれていた。国会では連日万単位のデモ隊が集結し、政府に対して異世界への報復を叫んでいる。しかしデモなど所詮は単なる「要求」であり、政府という機関に対して異世界への復讐をお願いしているだけの「他力本願」ではないだろうか?由佳はできる事なら自分の手で復讐してやりたいと思った。だが軍隊まで出せるような異世界人にとっては由佳などちっぽけな存在に過ぎない。いくら復讐しても無意味なのかもしれない。それでも由佳は家族の無念を晴らすべく、復讐の機会を窺っていた。

 

「はぁ……」

 

由佳はもう一度大きなため息をつくと、後ろを振り向く。

 

そこには一人の女子生徒が立っていた。

 

「何か用?」

 

由佳は女子生徒に声をかける。

 

「えっと……その……由佳ちゃん、隣、良いかな?」

 

由佳の隣にはクラスメイトの雪奈が座った。

 

「由佳ちゃん…ご家族の事は残念だったね…」

 

雪奈も由佳に対してかける言葉が見つからないのであろう。

 

「別に良いわ。もう慣れっこだし」

 

由佳は素っ気なく答える。

 

「そっか……」

 

「それで、何の用?」

 

「あ……あのね……もし良かったら……私と友達にならない?」

 

「は?」

 

「だって……私達は同じ被害者同士なんだから……仲良くしようよ」

 

「……そうね」

 

そう、雪奈も銀座事件で弟を亡くしているのだ。

 

「……うん、よろしく」

 

由佳は微笑みながら言った。

 

「あ、やっと笑ったね由佳ちゃん」

 

「そう?」

 

「そうだよ。由佳ちゃんは笑ってた方が可愛いよ」

 

「そう?」

 

「そうだよ。じゃあ改めて、よろしく由佳ちゃん」

 

「こちらこそ」

 

「ねぇ、由佳ちゃん。あの事件で家族や友人を亡くしたのは私と由佳ちゃんだけじゃないの。『銀座事件被害者の会』って知ってる?」

 

「名前位は聞いた事があるけど…。まさか雪奈ちゃんはその会に入ってるの?」

 

『銀座事件被害者の会』とは銀座事件の犠牲者の遺族達が結成した団体である。会のメンバー全員が『門』を通って銀座に現れた兵士やモンスターによって家族や友人を失っており、自分達の身内を殺した異世界人に激しい憎悪と怒りを向けている。被害者の会の会員は事件以降、日に日に増加し続け、今では10万人以上の会員がいる。被害者の会のメンバー達は連日国会の前で銀座に現れた『門』を通って現れた異世界人に対する報復を政府に対して呼び掛けていた。

 

「うん、入ってるよ。自分と同じ苦しみを持っている人達と、痛みを共有できれば楽になれるよ。会の人達も由佳ちゃんみたく異世界から来た連中に家族を奪われているわけだし」

 

雪奈の言葉に、由佳の目からは涙が流れる。そう、辛いのは自分だけではないのだ。自分と同じかそれ以上の苦しみと悲しみを背負って生きている銀座事件の犠牲者の遺族達がいる。

 

「そう……だよね……ありがとう……!私、もっと頑張ってみるよ……!」

 

こうして、由佳は『銀座事件被害者の会』に入会したのだ。




何か書いていて悲しくなってきた…( ;∀;)
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