GATE 処刑人、彼の地にて斯く断罪せり 作:ドレッジキング
そしてピニャブキ切れ。流石に帝国領内のイタリカに住んでいる市民を殺されれば彼女も怒るでしょう。
被害者の会のメンバーに帝国兵でもない一般市民であるイタリカ市民を襲わせている辺り、ロキの陰湿さが分かります。
武器を持った参加者達はゆっくりと地下空間の中央にある『門』の中に入っていく。由佳も自分が持つべき武器を手にして『門』の内部を移動していく。一体どれ位長いトンネルなのだろうか?もう大分歩いた筈なのに一向に出口が見えない。トンネル内には照明こそないが、トンネル内の壁は薄く光っているので、トンネルの先まで見えている。由佳は多くの被害者の会のメンバー達と共にトンネルを進んでいく。
そして長いトンネルのような空間を進んでいくと、前方に明かりが見え、街の中に出た。
「……ここが……特地……なのか……?」
「ついに…ついに来た……」
「ここは街中…?」
『銀座事件被害者の会』のメンバーは、イタリカでも人通りが多い場所へと出た。被害者の会の面々はイタリカの事など知らないが、自分達が特地に辿り着けたという事実に喜んだ。イタリカの民衆は、急に出現した『門』から人が出てきた事に驚いている様子だ。
「門から人が出てきたぞ…?」
「あれはニホン人じゃないか?ほら、自衛隊の人達と顔立ちが同じだ」
イタリカの人々は被害者の会のメンバーを指さしながら言う。そして『門』から出てきた被害者の会のメンバー達に近づいてきた。
その時だった。
「殺せぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!異世界人は皆殺しだぁぁぁぁぁぁ!!!!」
被害者の会のメンバーの男が支給された武器であるバットを振り上げながら猛然と自分の目の前にいるイタリカ市民に殴りかかっていく。そして被害者の会の男性はイタリカ市民の男の身体を何度もバットで殴りつける。
男の行動を見ていた他の被害者の会のメンバー達も、俺もつづけと言わんばかりに各々の持つ武器を片手に周囲にいるイタリカ市民に襲い掛かった。突然の出来事にイタリカの住民は驚き、逃げ惑う。
被害者の会のメンバー達はイタリカの住民達を次々と殺害していく。帝国への復讐と憎悪に囚われた被害者の会のメンバーは、イタリカの住民たちに理不尽に暴力を振るった。イタリカの住民は抵抗したが、被害者の会の面々に次々と殺害されていく。
イタリカの住民たちが被害者の会のメンバーを制止させようとしても、彼らの耳には届かない。イタリカの街中は大混乱に陥った。あるイタリカの住民は被害者の会の男に何度も包丁で刺され、また別の住民はハンマーのようなもので頭を殴打される。
そして騒ぎを聞きつけた伊丹や栗林達は街で暴れている被害者の会のメンバーを見て驚愕する。
「隊長…!見てください!街の通りに『門』があります!銀座に出現した『門』と全く同じものです!あの『門』から次々と武器を持った連中が出てきて、イタリカの市民を襲っています!」
「『門』から出てきているのは日本人だ!間違いない!奴等は銀座事件の被害者のメンバーだ!」
伊丹と栗林は目の前で繰り広げられる地獄絵図のような光景に絶句した。
「何なんだこいつらは……!?」
「まるでゾンビ映画じゃないですか!」
「冗談言ってる場合か!早く止めないと大変な事になるぞ!」
「分かってますよ!」
栗林は双眼鏡で『門』の方を見ると、『門』の向こう側から続々と武器を持った集団が現れ、イタリカの住人を襲っている様子が見えた。『門』から出てきている集団が持っているのは鉄パイプ、角材、金属バット、シャベル、ツルハシ、斧といった打撃武器だ。
「隊長、彼等を…イタリカの市民を襲っている彼等を射殺しますか?」
栗林は冷静に隊長である伊丹に指示を仰ぐ。自衛隊の装備であれば鈍器や鋭利な刃物しか持たない者達などあっという間に制圧できるだろう。しかし伊丹はそうしなかった。
「いいや、やめとこう。俺達に彼等を殺す権利はない」
「どういうことですか?」
「よく考えろよ。俺達自衛隊員はあくまで『自衛官』だ。俺達自衛隊が特地で虐殺なんかしたら、世論が黙っちゃいない。それに『門』から出てきているのは日本人で、見る限り民間人だ!俺達自衛隊が日本国民を射殺するなんて事は絶対やっちゃいけない!これは自衛隊に対する国民の信頼に関わる問題になるんだ!だから奴等を拘束して、然るべき場所に連れて行く!」
「隊長……!正論ですけど、銃を使わずに彼等を捕縛するつもりですか!?そりゃ俺達は格闘訓練は受けてますけど…」
「馬鹿野郎、そんなんじゃねぇよ!使うのはこういうやつだ!」
伊丹は自分の腰に装備しているスタンバトンを手で指し示すと、栗林は呆れたような表情をする。
「こんなもんを使ったら、イタリカの住民が怯えるでしょう!もっと別の武器を使って下さい!」
「じゃあお前ならどんな武器を使うんだよ?」
「私が使うのは催涙弾と火炎放射器ですね」
「催涙弾はまだしも火炎放射器は論外だろ!」
伊丹は栗林が口にした「ファイヤースターター機能付きの軍用ライター」「燃料に可燃性ガスを使用」という文言が書かれた商品名の書かれたタバコを見て、額に手を当てながらツッコんだ。栗林は不満げに口を尖らせる。
「だってしょうがないじゃないですか!これ以外に適当な武器が無いんですから!」
栗林はイタリカで暴れ回っている被害者の会のメンバー達を指さしながら言う。イタリカの住民達は、暴徒と化した被害者の会のメンバー達の無差別攻撃から逃れていた。住民達は悲鳴を上げながら建物の中に入っていく。
伊丹と栗林がいる場所も例外ではない。イタリカの住民達が次々と建物の中に入っていくのを見た伊丹は顔をしかめる。
「あいつら、イタリカの住民を皆殺しにする気だぞ!倉田、イタリカにいる他の自衛隊員にも連絡しろ!イタリカの市内で暴れている被害者の会のメンバーを捕縛する!」
伊丹が叫ぶと、通りにはピニャ率いる薔薇騎士団の面々が隊列を組んで被害者の会のメンバー達の前に立ちふさがる。そして馬に跨ったピニャは、被害者の会のメンバー達に突撃した。他の薔薇騎士団のメンバー達もピニャに続いて被害者の会のメンバー達に攻撃を加え始める。
「見ろ!ピニャ殿下が薔薇騎士団を率いて『門』から出て来た被害者の会のメンバーを攻撃しているぞ!」
伊丹が指差す方向を見た栗林と倉田は驚きを隠せなかった。
「いけない…!ピニャ殿下は彼等を殺す気です!あれじゃ我々が捕縛するより先にピニャ殿下と薔薇騎士団が彼等を皆殺しにしかねません!」
「クソッ……!こうなったら仕方ない……!俺達も行くぞ!」
3人の自衛隊員は『門』の方へ駆け出した。被害者の会のメンバー達は薔薇騎士の面々に次々と薙ぎ倒されていく。
「今のうちに早く逃げろ!」
「わあああっ!!」
「ひぃぃ!!」
「助けてくれぇぇ!!」
武器を持ったとはいえ、正規の訓練を受けているわけでもない民間人である被害者の会のメンバー達では完全武装をした薔薇騎士団の面々に勝つ事はできない。騎士団達は被害者の会の者達を次々と討ち取っていく。しかしそれでも帝国への復讐に燃える一部のメンバーは死をも恐れぬ覚悟でピニャと薔薇騎士団に立ち向かう。
鉄パイプや角材を持って、完全武装の薔薇騎士団の騎士達に挑みかかる被害者の会のメンバー達だが、薔薇騎士団の面々の容赦のない攻撃に次々と返り討ちになっていく。そしてその様子を見ていた伊丹は顔をしかめた。ピニャは馬に跨り、自分に群がってくる被害者の会のメンバーを馬上から攻撃を加えて次々と切り捨てていく。
そんな中、一人の男の子がピニャの前に立ちふさがった。年齢は10歳くらいだろうか?男の子は手に持ったナイフを突き出し、ピニャに向かって言う。
「お前が…お前等帝国が僕のパパとママを殺したんだ…!あの日、銀座で僕のパパとママは『門』から来た帝国兵達に殺された!」
男の子の叫びを聞いた栗林と倉田は驚いた。特に栗林は年端もいかない少年まで武器を持って戦おうとしている事に動揺する。
「子供…!?まだ10歳位なのに……!いけない、止めなきゃ!」
そしてピニャは男の子を真っすぐ睨みながら言う。
「帝国領内のイタリカで民を襲う事の意味、知っているのだろうな?妾は戦場なら子供であろうと容赦はしない!貴様のようなガキを殺める事に何の躊躇もないのだぞ!」
「うるさい!僕はお前等に復讐するまで死んでも死に切れないんだ!僕は……!絶対に帝国を許すもんか!!」
男の子はナイフを振り上げて猛然とピニャに向かっていく。
「やめろぉ!!」
伊丹は思わず叫び、栗林は悲鳴を上げる。
「ダメだ!殺されるぞ!」
しかし伊丹の制止の声も空しく、男の子はピニャに切りかかる。
「うわあああっ!!」
「ふんっ!」
しかしピニャが跨っている馬が、前足で男の子を吹き飛ばす。
馬の前足で蹴飛ばされた男の子は地面を転がり回る。そして馬から降りたピニャは倒れている男の子の腹に蹴りを入れた。
「グフッ……」
「いい加減にしろ!よくもまぁぬけぬけと大層な口を叩けたものだな!そんなに死を望むのならば望み通りにしてやるぞ!!」
「ハァ、ハァ……僕は、僕にはもうこれしか無いんだ!!お前等を…お前等を殺すまでは…!」
ピニャはイタリカの市民が被害者の会のメンバーに襲われているせいですっかり頭に血が昇っている。今のピニャは特地の覇権国家たる帝国の皇女としての顔を見せていた。そしてピニャは剣を抜いて男の子を殺そうとする。しかしそこに伊丹が割って入る。
「ピニャ殿下!やめてください!相手はまだ子供です!!」
「どけ伊丹殿!そやつはイタリカの市民を襲った賊の一人だぞ!!帝国に仇なす反逆者だ!例え子供でも殺しておかなければならん!」
伊丹は必死にピニャを止めようとする。
「やめてくださ……!?クッ!誰か、ピニャ殿下をお止めしてくれ!」
伊丹は助けを求めるかのように周囲を見回すが、他の薔薇騎士団の面々も皆それぞれ市民の集団を相手に奮闘していて伊丹の救援に回らない。そもそも薔薇騎士団の面々がピニャを止めるとは考えにくいのだが。
「ここイタリカは帝国の領内だ!こやつ等が『門』を通ってイタリカで虐殺行為を働けば、裁く権利は帝国側にある!伊丹殿は黙っていてくれ!」
ピニャは剣を振り上げ、今まさに男の子を切りつけようとしていた。その時、栗林が男の子を庇うようにしてピニャの前に立つ。
「ピニャ殿下、伊丹隊長、ここは私に任せてください」
そう言うと栗林は男の子の前に立つ。
「誰だよお前…!僕は皇女のピニャを殺すんだからそこをどけよ!!」
男の子は目の前にいる栗林に怒鳴る。
「ダメよ、君じゃピニャ殿下に勝てるわけがない」
「僕は復讐するんだ!その為にここまで来たんだ!邪魔をするな!!」
「……君は復讐の為にピニャ殿下の命を狙うの?もしそうなら私達は敵同士よ。悪いけど見逃すことはできないわね」
栗林は男の子に警告した。
そして栗林はしゃがんで自分の目線を男の子に合わせると、彼の目見てハッキリと言う。
「このままピニャ殿下に挑めば君は殺される。君のご両親が亡くなった事は本当に残念だけれど、だからと言って罪を犯すことは許されない。君のお父さんとお母様が悲しむわよ?」
「僕のパパとママは…帝国兵に殺されたんだ……!それがお前に分かるのかよ!」
10歳前後であろう男の子は憎しみに満ちた目で栗林に怒鳴る。男の子は手に持ったナイフを握り締める。
そしてピニャの所に向かおうとするが、栗林に静止される。そして栗林は男の子を羽交い絞めにして拘束した。
「放せよ…!」
「君はもう十分戦った。これ以上戦う必要はないの。それにまだ子供なのに、復讐の為だけに生きるなんて間違ってる。これからは平和な世界で生きなさい」
「お前はどうしてそこまで他人の復讐なんかを気にかけられるんだよ!?」
「……」
栗林は黙ったまま男の子を抱きかかえると、彼女の腕の中で男の子が暴れる。
「僕は復讐を諦められない……!」
男の子は涙を流しながら栗林の拘束を解こうとする。
「嫌だ……!僕は絶対、ピニャを殺してやる……!あいつだけは……!あいつだけは……!!」
栗林はそんな男の子を見てため息をつく。
「しょうがないなぁ……」
栗林は男の子に優しく声をかける。
「ねぇ、君の名前を教えてくれる?」
「……優太。野坂優太だよ」
「優太君ね。優太君、何なら私が優太君のママになってあげましょうか?」
「はぁ!?」
栗林の余りにも突飛な言葉に思わず優太は素っ頓狂な声を上げる。優太は栗林の言葉に耳を疑った。
「どういう意味だよそれ!?」
「そのままの意味よ。私はまだ彼氏はいないけど、恋人もいないから。優太君にはママがいないのよね?だったら私がママになってもいいじゃない」
栗林は92センチにも及ぶ自分のバストを優太の背中に押し付ける。栗林の胸を背中に押し付けられた優太は思わず顔を赤らめた。
「え~と栗林?お前ショタコンだったのか?」
伊丹は栗林の優太をあやす言葉に思わずツッコむ。
「ちょっと!!そんなんじゃありませんから!!隊長は黙っててください!!優太君、ほ~ら高い高ーい!!」
栗林は大声で叫ぶと、伊丹を無視して優太を空中に高く投げ上げた。
「ウワアァ!!」
優太は悲鳴を上げた。
「フハハ!さぁ来なさい優太君!!お姉さんが受け止めてあげる!!」
栗林がそう言うと、優太は地上に落下するが、栗林は優しく優太を受け止める。優太は恥ずかしそうに栗林から離れた。
「何するんだよ!僕は子供じゃないんだぞ!」
「はいはいわかったわかった。いいからこっちおいで」
栗林は優太を後ろから抱きかかえる。
「お、お姉さん…名前は?」
「私?私は栗林志乃。陸上自衛隊所属よ。階級は二等陸曹。よろしくね」
「じえい……りくじょう?にい……ちよう?」
「まぁそれは置いといて……。ねぇ君、ここは危ないから私と一緒に行きましょ?」
そう言うと栗林は有無を言わさず、優太を抱きかかえてフォルマル伯爵の屋敷まで走っていった。
「ピニャ殿下、なんとかなったようですね」
伊丹は優太を抱きかかえて走る栗林の後ろ姿を見ながらピニャに言う。
「喜ぶのはまだ早いぞ伊丹殿。イタリカの街ではまだ賊共が市民を襲っている!」
そう言うとピニャは馬に跨ると、イタリカで暴れる被害者の会のメンバーの鎮圧に向かった。
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被害者の会のメンバーは所持している火炎瓶に火を付けて、イタリカの市民や建物目掛けて投擲した。火炎瓶が直撃し、建物は炎上する。炎に包まれる街の中で、逃げ惑う人々とそれを狩る者達がいた。被害者の会のメンバーである。被害者の会のメンバーは帝国と異世界人への憎悪から、イタリカの市民に対して残虐だった。
親子連れを襲い、子供から先に撲殺する。女は強姦した後、殺害する。彼等は復讐のために、復讐相手を殺すために生きている。復讐相手が死ぬまで彼らは復讐をやめることはない。
イタリカの市民の内、実に数百名が被害者の会のメンバーに殺害されていた。銀座事件で帝国兵により家族や恋人を奪われた被害者の会のメンバー達は、自分達と同じ苦しみを帝国の人間にも味合わせるべく、イタリカの市民を虐殺していく。
「殺せ殺せーーー!!異世界人は皆殺しだー!!」
「「「殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せーーーー!!!」」」
「銀座事件を忘れるな!帝国は俺達の家族を…恋人を…友人を奪った!」
「今度は俺達が帝国に同じことをしてやる番だ!」
「そうだ!奴らを一人残らず殺してやる!」
「復讐だ!復讐だ!」
被害者の会のメンバーは完全に復讐という名の狂気に囚われていた。由佳の友人である雪奈は持っているマチェーテで次々とイタリカの市民を襲う。
「死ね…!死んでしまえ…!」
雪奈はイタリカの市民の女性の頭部目掛けてマチェーテを振り下ろし、即死した女性の身体を何度もマチェーテで切り刻む。
しかしそこに薔薇騎士団のメンバーであるハミルトンが駆けつける。ハミルトンは仲間の薔薇騎士団員と共に雪奈を取り囲む。
「大人しくしなさい!抵抗しなければ命までは取らない!」
「……煩い!帝国の人間は死ね!」
そう言うと雪奈はマチェーテを振り回し、ハミルトンに襲い掛かる。対するハミルトンも剣を抜いて応戦した。雪奈のマチェーテと、ハミルトンの剣がぶつかり合い、火花が散った。
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由佳は帝国の皇女であるピニャを探そうとイタリカの街を駆け回っていた。
「どこ?どこに居る?あの赤髪の女……ピニャ・コ・ラーダは…!!」
他の被害者の会のメンバー達はイタリカの市民を襲うのに夢中だが、由佳が狙うのは帝国の皇女であるピニャだ。そしてようやく馬に跨っているピニャを見つける。
「見つけた…!ピニャ・コ・ラーダ!!」
由佳が叫ぶと、ピニャが由佳の方を振り向いた。
「お主は由佳…。そうか、お主も『門』を通ってこのイタリカまで来たか」
由佳は手に持った鉄パイプを構えて臨戦態勢に入る。あの日、銀座事件で父、母、妹、兄が死んで以来、由佳の心はずっと憎しみで満たされていたのだ。帝国という巨大国家には一般市民に過ぎない自分など無力だとばかり思っていたが、ようやく復讐の機会が巡ってきたのだ。ピニャも由佳をじっと見据えている。そしてピニャは由佳に対してこう言った。
「……由佳、お主も今イタリカの街を襲っている賊どもの仲間なのか?」
「そうよ、私達は帝国に復讐する為にこの街に来た…!お前に…帝国の皇女であるお前に復讐できるんだから…!」
「あの時、ホテルで少しでも貴様に同情した自分が恥ずかしい。由佳よ、妾は帝国の皇女として帝国に刃を向ける貴様を討つ!」
今はあの時とは状況が異なる。由佳は被害者の会のメンバー達と共にイタリカに侵入し、市民を標的に攻撃しているのだ。自国民であるイタリカ市民を大量に殺され、完全に頭に血が昇っている。
そして由佳は鉄パイプでピニャに襲い掛かった。
「帝国は滅びろ!!」
「黙れ!イタリカの民衆を狙う賊め!ここで成敗してくれるわ!」
ピニャは愛馬に跨ると、乗馬鞭を握り締めて馬を走らせる。そして剣を抜いて、迫り来る由佳に向かって振り下ろしたが、間一髪で回避されてしまう。
「おのれ!」
ピニャは剣を振るう速度を上げる。一方、対する由佳は鉄パイプを振り回してピニャに向かっていく。騎士としての正式な剣術を学んでいるピニャにとって、鉄パイプを闇雲に振り回すだけの由佳など相手にもならなかった。しかし由佳はピニャの隙をついて攻撃を当てようとする。
(落ち着け……!落ち着いてあいつを殺すことだけを考えればいい……!大丈夫……!出来る……!殺せる……!)
しかし実力の差は明確だった。由佳はピニャの攻撃を回避するのに精一杯だ。しかしその時、由佳は突然バランスを崩して転んでしまう。
由佳は何が起きたのか分からなかったが、地面に何かが落ちていたのを発見する。それは由佳がピニャに突き刺そうとした鉄パイプの一部分であった。由佳は立ち上がろうとしたが、その隙を逃すピニャではなく、馬から降りて由佳に蹴りを入れた。
「ぐぅっ……!?」
由佳は吹き飛ばされるが、何とか受け身を取った。が、ピニャの配下である薔薇騎士団のメンバーが由佳を取り押さえて拘束する。
「放せ!放してよ!この女ぁ!殺してやる!殺してやる!」
由佳は暴れて薔薇騎士団の束縛から逃れようとしたが、やがて諦めたのか大人しくなった。
「……殺すんなら殺せば?」
由佳はピニャを睨みながら言う。するとピニャは拘束されている由佳の前まで来ると、由佳の胸倉を掴んで立たせる。
「いいか?貴様はイタリカ市民を虐殺した賊徒共に加担した。このまま貴様を楽に殺してやると思うなよ?」
そう言うとピニャは部下に指示を出し、由佳を何処かへと連れていった。
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ロキは自分の魔術で創造した『門』からイタリカの街に出て、イタリカの市民に対する虐殺行為を働いている被害者の会のメンバーと、彼等を制圧しようとしている自衛隊員達の様子をイタリカの建物の屋上から見物していた。そしてロキは独り言を呟く。
「自衛隊諸君、今イタリカで暴れている者達はお前達が生み出した『モンスター』だ。いや、正確にはお前達と日本政府が生み出した言う方が正しいか」
「彼等は本来戦う手段など持たん。どこにでもいる一般市民であり、あの事件が起きなければ普通の市民として一生を終える事になっていた者達だ。そう、全ては銀座事件が原因だ。彼等を『モンスター』に変えた決定的な要因がそれだ」
「日本政府は自国の利益を追求し、自衛隊は特地の文化や人々に感化され、その結果銀座事件の遺族達は復讐の鬼と化した。政府も、自衛隊も特地や帝国との関係を重んじるあまり、銀座事件の被害者達の現状や真実から目を背け続けた。最も、知りつつ見て見ぬふりをしていたのかもしれんがな」
「被害者の遺族達は日本政府や自衛隊が銀座事件で死亡した自分の家族や友人の無念を少しでも晴らしてくれるのではと甘い期待も抱いていたようだが、見事に裏切られた。日本政府が、そしてお前達自衛隊が彼等を裏切ったんだ。……違うとは言わせんぞ?」
イタリカの市民を襲う『銀座事件被害者の会』のメンバー達の間に統率や連携など無く、各々が帝国と異世界人に対する憎悪の念に駆られ、帝国人であり異世界人であるイタリカの市民に無我夢中で襲い掛かっている。一方、イタリカの市民を護るべく、伊丹が自衛隊員の指揮を執って被害者の会のメンバーの鎮圧に当たっていた。
被害者の会のメンバー達は伊丹達と同じ日本人であり、同時に民間人でもある為、自衛隊員である自分達が被害者の会の者達を射殺するわけにいかない。伊丹は隊員達に犠牲者が出ないよう、彼等を出来る限り無傷で捕縛するよう部下達に命令したのだ。しかしそんな伊丹の命令など関係ないとばかりに、ピニャと彼女の配下の薔薇騎士団の面々は容赦なく被害者の会のメンバーを次々と切り殺していく。
そしてロキはイタリカの街中に出現させた『門』を魔術で消し去った。被害者の会のメンバー達は自分達が特地に来た時の『門』が消失した為、動揺している。
「な、何で『門』が消えたんだ!?」
「どうして!?これじゃ日本に帰れないよ!!」
一部の被害者のメンバー達は『門』が消失した事で特地に閉じ込められる事態になった事に焦りを見せている。しかしロキにとってはどうでもよかった。元々被害者の会のメンバー達を焚き付け、イタリカを襲わせた時点で早々に切り捨てる算段だったのだから。被害者の会のメンバーに鈍器や近接用の武器ばかりを配って、飛び道具である銃火器を持たせなかったのも、ピニャを始めとした薔薇騎士団の面々に制圧されやすくする為だ。そして自衛隊は自国民である被害者の会のメンバーを射殺する事ができない。
「愚かな…。このイタリカの街に来た時点で日本への帰り道など存在しないというのに。失う物など何もないお前達にとっては、異世界人に復讐する事の方が大事であろう?」
ロキはイタリカの建物の屋上から『門』が消失した事に動揺している被害者の会のメンバーを見て呆れている。
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元々正規の兵士ではなく、戦闘訓練など積んでいるわけでもない被害者の会のメンバーが鎮圧されるのは時間の問題であった。銃器類も持たず、持っている武器といえば鉄パイプや角材などの粗末なものである。異世界人への復讐心と怒りだけで薔薇騎士団と自衛隊に勝てるはずもなく、イタリカの街で暴れている被害者の会のメンバー達の多くは薔薇騎士団の手によって討ち取られ、殺害された。
そして数時間後、被害者の会のメンバー全員が完全に制圧された。薔薇騎士団の面々が自衛隊員に捕縛された被害者の会のメンバーの引き渡しを伊丹達に要求し、自衛隊員と薔薇騎士団の間でひと悶着が起きていた。
薔薇騎士団の面々にとって、被害者の会のメンバーはイタリカの市民に襲い掛かった賊徒であり、彼等を伊丹達に引き渡すつもりなど毛頭なかった。伊丹は薔薇騎士団員達の要求を突っぱね、自衛隊はイタリカの市街地で暴れた被害者の会のメンバーを全員逮捕したと発表した。
「あの…伊丹隊長、イタリカの市民の被害はどの程度なんでしょうか…?」
「……おおよそ四百人以上が殺された。負傷者の数はもっと多い」
イタリカの街中は薔薇騎士団によって殺された被害者の会のメンバーと、被害者の会のメンバーによって殺されたイタリカ市民の死体で溢れていた。伊丹は目の前の光景を見て歯噛みする。
「ちくしょう…なんでこんな事になったんだ…。異世界人が憎いからってイタリカの市民を襲うだなんて…!俺達は何をやってるんだよ!?」
伊丹の隣では栗林がイタリカの惨状を目にして、顔を青ざめさせている。
「伊丹さん……」
「栗林、お前は何も言うなよ?これは自衛隊の失態なんだ」
栗林が伊丹の服を引っ張るが、伊丹はそれを制止する。栗林も自分の目の前で繰り広げられた悲劇にショックを受けたのか、黙り込んでしまう。銀座事件では多くの民間人が帝国兵によって殺されたが、今回の状況とは違っていた。銀座に出現した『門』から出てきた帝国兵達は軍人であり、正規の兵士達であったが、今回のイタリカでの暴動は意味が違う。
イタリカの市民を襲った被害者の会のメンバーは全員民間人であり、被害者の会のメンバーに殺されたイタリカ人も民間人である。つまりこれは民間人が民間人を襲い、虐殺したという事態なのだ。
「……隊長、憎しみってここまで人を変えるんでしょうか?『銀座事件被害者の会』の人達は銀座事件で大切な人を失い、帝国への憎悪に囚われていた。でもだからといってイタリカの市民を襲う必要はなかったんじゃないですか!?イタリカの市民は兵士じゃなくて民間人なのに!」
倉田は市街地に転がる被害者の会のメンバーとイタリカの市民の亡骸を見て叫ぶ。
「そうかもしれないな。だが、奴等はもう引き返せない所まで来てしまったんだ。復讐に生きる事を選んだ以上、復讐に生きられるだけの力を手に入れなければならない。それが例えどんな手段であってもな」
伊丹がそう言うと、富田が慌てて伊丹達の方に走ってきた。
「伊丹隊長!今回のイタリカを襲撃した『銀座事件被害者の会』のメンバーの中に由佳ちゃんがいたみたいです!由佳ちゃんは今、ピニャ殿下によって牢に囚われているようです!」
「何だって!?」
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薔薇騎士団に捕らえられた由佳は、イタリカの街の中にある薔薇騎士団の駐屯所に連れてこられ、冷たく位地下牢に閉じ込められた。由佳は着ていた衣服を全て剥ぎ取られ、一糸纏わぬ姿で天井から伸びる鎖に両手を繋がれている。ピニャは鞭を片手に由佳に対して尋問していた。
「貴様には聞きたい事が山ほどある。素直に答えれば命だけは助けてやる」
「誰が答えるもんか……。あんた達なんかに話す事なんて何もないわよ」
「……ふん、生意気な小娘だ」
そう言うとピニャは鞭を振り上げ、由佳の素肌に振り下ろした。
「きゃあああ!!」
ピニャは何度も由佳の体に鞭を打ち付ける。由佳の裸身はピニャの鞭によってミミズ腫れを起こしていく。
「うっ…… ああっ…… ぐぅ……」
由佳は苦痛の声を上げながら体を震わせる。
「さぁ、洗いざらい話してもらおうか。どうやってお前達はこのイタリカまで来た?以前、少しでもお前の境遇に情けをかけた妾が愚かだった。お前の仲間はこのイタリカの街に住む民を襲い、無慈悲にも殺した!!」
そう言うとピニャは由佳の身体に何度も鞭を打ち付ける。由佳は痛みに顔を歪ませながらも、毅然とした態度で言い返す。
「……先に攻撃してきたのは貴女達帝国でしょ?銀座に出現した『門』から沢山の帝国兵が出てきて、銀座にいた人達を大勢殺した。私の家族は銀座で帝国兵に皆殺しにされたのよ…!帝国さえ…帝国さえ来なければ今でも私の家族は生きていた…!!」
「お前の家族が殺された事は不幸な事故だ」
「ふざけないで!!貴女は……帝国は私の家族を殺しておいて、よくもそんな事が言えるわね!?」
「これは戦争なのだ。いちいち被害者一人一人の感情に流されていては戦争などやっておれん」
「貴女の都合なんて知った事じゃないわよ。いい?帝国がどんなに偉くて強くても関係ない。もしまた銀座の『門』が開いて、帝国軍が攻めてきたら、その時は私が殺しに行くから!覚悟しておきなさい!」
「ふん、貴様に何ができるのだ?無力な一般市民でしかない貴様が帝国に逆らおうなどと思い上がるな!!」
ピニャは由佳の顔面に拳を入れる。由佳は鼻血を流しながら顔を歪ませる。
「今回の事件で数百名ものイタリカに住む民が殺された。お前の仲間達は狂ったように武器を振り上げながらイタリカの市民を襲い、殺しまわった。よりにもよって帝国に暮らす民に手を出すとは…この意味が理解できていような?兵士ではなく民間人を殺しまわるという下種にも劣る行為、万死に値する」
「何言ってるのよ…。銀座の『門』から来た帝国兵達だって銀座にいた歩行者を…民間人を襲ったじゃない!!彼等は兵士でも軍人でもないのに…それなのに帝国の兵士は何の躊躇もなく殺した…!」
「あれは戦争だ。あの者達は敵を殺す事を職業としているのだ。奴等はプロフェッショナル。だが、お前達は違うだろう?お前達はあくまで民間人だ」
由佳はピニャの言葉を聞き、頭が沸騰しそうになった。
「あんなの戦争なんかじゃないわ!!ただの虐殺よ!!」
「何とでも言うがいい。いち民間人に過ぎんお前の怒りなど、国家間の駆け引きの前では無に等しいものと思え」
そう言うとピニャは地下牢を出ていく。去り際にピニャは「楽に死ねるなどと思うなよ?イタリカの街に土足で踏み入り、我が帝国の民に手を出した事を後悔させてやるからな!」と吐き捨て去っていった。
去っていくピニャを見て由佳はポツリと呟いた。
「あぁ……何て私馬鹿なんだろ……何の力もないのに復讐の為にこんな異世界に飛び込むなんてさ……」
由佳は暗い地下牢の中で一人、銀座事件で死んだ家族の事を思い出していた。翼龍に腕を噛まれ、高所から落とされて即死した父の明彦、多数の帝国兵達に殴る蹴るの暴行を受けて嬲り殺された母の沙苗、群がるゴブリン達によって身体を食われ、無惨な状態で絶命した妹の香織、行方不明になり、後日帝国兵による攻撃で死んだ事が明らかになった兄の壮一。
「お父さん…お母さん…香織…お兄ちゃん……私、もうすぐそっちに行く事になりそう……」
そうして由佳の意識は沈んでいった。
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銀座事件以降、銀座に出現した特地へと続く『門』は完全に自衛隊の管理下に置かれていた。特殊なシェルターで作られたドームで『門』を完全に囲った上で、ドーム内部には厳重な警備体制が敷かれていた。
ドームの内部では常時十名以上の自衛官が警備に当たり、ドームの外には常に二十人以上の隊員が詰めて警戒に当たっていた。そして警備をしていた自衛官の一人が、前方から高速でこちらに向かってくる飛行物体に気付く。
「見ろ…!何か黒い物体がこちらに向かってくるぞ!?」
その声に反応した他の自衛官達が一斉に前方を見ると、黒いアーマーを纏い、足の裏からブースターを出して飛行している人型の物体が、『門』の方に向かって突進してきている。自衛官達は向かってくる飛行物体を止めようとしたが遅かった。黒い人型の飛行物体は『門』を遮蔽してる隔壁を突き破り、そのまま『門』の中へと消えていった。余りにも突然の事だったので、自衛官達もどうする事もできなかった。
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翌日、由佳は両手を縄で縛られ、馬に跨って移動しているピニャに引っ張られながらイタリカの市中を引き回されていた。由佳は全裸のままイタリカの市中を歩かされており、周囲にいるイタリカの人々は引き回されている由佳の姿を見て眉を潜める。ピニャはイタリカの市民達に対して由佳がイタリカを襲撃した『銀座事件』被害者の会のメンバーである事を予め伝えていたのだ。
「生き恥を晒す気分はどうだ?妾は貴様を許さない。貴様には地獄を見せると約束しよう」
ピニャは引き回す由佳にそう言い放つ。由佳は屈辱と怒りに身を震わせ、歯を食い縛る。日本と異なり、人権意識の乏しい帝国ではこういった前時代的な刑罰方法が未だに存在しているのだ。覇権国家たる帝国の皇女であるピニャも、こういった罰を罪人に科す事を当然視している。地下牢でピニャに散々鞭で打たれた事により、由佳の全身にはミミズ腫れができており、彼女は涙を流していた。
「悔しいか?だが、お前がやった事は許される事ではない。貴様は我が帝国の民であるイタリカの住民達を仲間と共に襲ったのだからな。相応の報いは受けてもらうぞ?ハイッ!」
ピニャは乗馬鞭を振るうと馬は走り始め、両手を縄で繋がれている由佳は地面を引きずり回される。
「きゃあああぁっ!!」
由佳は悲鳴を上げるが、ピニャは気にせず馬を走らす
「さぁ、まだまだこれからだ!まだ序の口だと思えよ?」
ピニャはそう言って再び馬を走らせる
「嫌あああああっ!!誰か助けてぇっ!」
由佳は泣き叫ぶが、彼女の叫びを聞いても見物しているイタリカの市民は由佳に罵声を浴びせるだけである。
「まだ反省が足りないようだな!もっと打ってやるぞ!」
ピニャは馬を止め、馬を降りると、乗馬鞭で由佳の身体を叩く。
「痛いっ!止めてっ!お願いですからもう打たないで下さいぃ!」
由佳は泣きながら懇願するが、ピニャは聞き入れない。だが由佳を鞭で打つピニャを背後から伊丹が羽交い絞めにする。
「ピニャ殿下!もうやめてください!これ以上やれば由佳ちゃんが死んでしまう!!」
「ええい!離さぬか伊丹殿!この娘は仲間と共にイタリカの民を襲ったのだぞ!そもそもイタリカはニホンの法律が及ぶアルヌスとは違うのだ!!この娘がイタリカで犯した罪は重い!それに、こいつはまだ懲りていないようではないか!」
ピニャは暴れるが、倉田も栗林も必死に押さえる。
「落ち着いてください殿下!由佳ちゃんが銀座事件で家族を失った事は殿下も知っているでしょう!?」
栗林がピニャに言うも、当のピニャは聞き入れない。
「銀座事件と今回のイタリカ襲撃事件は別だ!帝国の臣民を手に掛ける事がどういう結果になるのか、その娘に教えてやるのだ!」
ピニャはイタリカの市民が被害者の会のメンバーに殺害された事に激怒していた。
「その娘の処遇は妾に任せてもらおう」
「ピニャ殿下…」
伊丹と栗林は由佳を救いたかったが、ピニャが聞き入れる様子はない。ハミルトンを始めとする薔薇騎士団のメンバーが、ピニャを羽交い絞めにしている伊丹を注意する。
「ピニャ殿下を放してください!早く!でないと私達が貴方を攻撃します!」
ハミルトンの言葉に従い、伊丹はピニャの身体から離れる。
「由佳よ、貴様は銀座事件で親兄弟を失った。貴様の境遇には妾も同情しよう。だがイタリカの民達を傷付けた罪は重い」
自分を見下ろしながら言うピニャを由佳は上目遣いで睨んでいる。
「何だその目は?まだ痛めつけられたいのか?」
そう言ってピニャは手にしている乗馬鞭を由佳に振り下ろす。
「うぐっ!」
由佳は顔をしかめて痛みに耐える。
「まだ懲りんようだな。なら次はもう少し強く叩いてやろう。」
ピニャは再び乗馬鞭を振り上げ、由佳の背中に叩きつける。
「きゃあああぁっ!!」
由佳は悲鳴を上げて地面に倒れ込む。人間が乗馬鞭で打たれれば皮膚が裂け、ミミズ腫れができる。由佳の全身は鞭で叩かれたことにより、ミミズ腫れだらけである。
そしてピニャは再度鞭を振り上げ、由佳を叩こうとする。
――――――――その娘から離れろ。
伊丹とピニャ達は声のした方向…上空に顔を向ける。そこには漆黒のアーマーを来た男が上空に浮かび、下にいるピニャ達を見下ろしていた。
「あれは…ウォーマシン!?」
「嘘…!?なんで特地にウォーマシンがいるの!?」
伊丹やピニャ達を見下ろしているウォーマシンのアーマーの胸部分には"髑髏"のマークが施されていた。
伊丹と栗林は上空を浮かんでこちらを見下ろしているウォーマシンを見て驚愕する。そしてウォーマシンの姿を見たハミルトンは身体を小刻みに震わせる。
「ひ…姫様…!あ、アイツです…!あの黒い鎧があの時薔薇騎士団の団員達を殺した犯人です!」
そう言ってハミルトンは自分達の頭上に浮かぶウォーマシンを指差した。
「何だと!?それではボーゼスとパナシュを殺したのも奴なのか!?」
「はい…!私はあの黒い鎧が二人を殺害する現場を見ました…!!」
ピニャは空に浮かんでいるウォーマシンを睨む。
『二度は言わん、その娘を解放しろ。さもなければ…』
『お前達を皆殺しにする』
――――――――――そして時間は自衛隊が最初に『門』の向こうに派遣された直後に遡る。
これにてプロローグは終わりです!
パニッシャーは原作でもウォーマシンアーマーを装着しているんですよねぇ( ̄ー ̄)ニヤリ
次回からは自衛隊が特地へと行った時の話になりますけど、パニッシャーさんはあんまり干渉できないかも…。
問題はパニッシャーがピニャを悪党認定するのかどうか微妙な所なんですよねぇ。ゾルザルとかモルトに関して言えば100パー処刑対象なんですけど。パニッシャーって善人は極力殺さないようにするし、間違って殺した場合は滅茶苦茶凹むわけですから(映画のウォーゾーンでも潜入捜査官間違って殺した事を引きずってたし)。