GATE 処刑人、彼の地にて斯く断罪せり   作:ドレッジキング

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特地潜入編の2話目です。今回登場したキャラ達は固有名詞や名前こそ出していませんが、分かる人には直ぐに分かるでしょう。そして今後の展開の伏線にもなっております。(多重クロスのタグ必要かな…?(^_^;))


もう一つの『門』

アベンジャーズは特定の国には属さない自警団のような存在だ。そんなアベンジャーズは各国の法律のしがらみに囚われず、世界各地に飛び、ヒーロー活動をしているのだ。しかし今回の銀座事件から端を発する一連の騒動で、日本政府はアベンジャーズによる介入を嫌った。それ故にフューリーはパニッシャーに『門』の向こうの特地の調査を依頼したのだが…。銀座四丁目交差点から少し離れたビルの屋上にウォーマシンアーマーを装着したパニッシャーとドクター・ストレンジが立っている。陸上自衛隊が銀座に出現した『門』を通って2日、頃合いだと踏んだフューリーはドクター・ストレンジの協力でパニッシャーを『門』の向こう側の世界へと移動させる手筈となった。

 

「ストレンジ、アンタまで俺の任務に協力してくれるとは驚きだな」

 

「私としても銀座に出現した『門』と、その向こう側の世界には興味があるのだよ。あそこに見える『門』は間違いなく魔術的な力によるものだ。魔術が存在する世界であれば私の出番というわけだ」

 

そう言うとストレンジは詠唱を始め、手を大きく動かし、『門』の向こう側のポータルを開く魔術の発動を始める。パニッシャーはその様子を黙って見守る。

そしてパニッシャーとストレンジの前の空間が歪み始め、大きなポータルが出現した。

 

「これで『門』の向こう側の世界に行ける筈だ。私は一度『門』を通ってあちら側の世界に行き、座標をあちら側の世界に固定しておいた。君が特地に行く準備は出来た」

 

「それじゃ行くか」

 

そうしてパニッシャーはポータルの中へと入っていく。ポータルの中に入った瞬間、パニッシャーはアルヌスの丘に出た。周囲見回してみると、パニッシャーが出た地点から1km先に日本の銀座に出現したものと同じ形状をした『門』があった。パニッシャーは初めて見るアルヌスの丘の周囲を見回す。

 

「ここが『門』の向こうの世界か」

 

『どうやら到着したようだねパニッシャー。くれぐれも無茶な事だけはしないでくれとフューリーから言われている。まぁ、君がそんな要求に素直に従うとは思えないがね』

 

ポータルを隔てている状態ではあるが、ストレンジが念話でパニッシャーの脳内に話しかけてくる。

 

「分かっているのならさっさとポータルを閉じろ。指定した日にこの地点にポータルを開いて俺をそちら側に帰らせるんだろう?」

 

そう言うとウォーマシンアーマーを装着しているパニッシャーは、足の裏部分から噴出するブースターで空中を飛ぶ。

 

そして前方に広がるアルヌスの丘の平原を見て、驚愕した。大量の死体だ……それも人間のものではない鎧を着た騎士や兵士の骸が大量に転がっていたからだ。まるで戦争でもあったかのような光景だった。そしてパニッシャーはある事に気づいた。この丘に転がっているのは全て西洋の騎士や兵士が着ていたような甲冑だ。見渡す限り死体が広がっている。ゆうに10万は下らないだろう。パニッシャーは目の前の状況を推測し、眼下の平原に広がる大量の死体は、自衛隊の仕業であろうと考えた。自衛隊は世界でも有数の実力を持つ軍事組織である。古代や中世レベルの装備しか持たない帝国の軍隊など物の数にもならないだろう。かつて新大陸を征服したスペインと、現地のアステカやインカとの間にもテクノロジーの差があったが、自衛隊と帝国との間に広がる差はそれ以上だ。ここまでくれば一方的なジェノサイド以外の何物でもないのだが、パニッシャーは帝国兵がいくら死のうがどうでも良かった。

 

ウォーマシンアーマーにはアイアンマンスーツ程の高水準のテクノロジーは備えられていないものの、それでも遠方を見通す望遠機能、暗い場所でも先が見える暗視機能、赤外線によるサーモグラフィ機能は備えられている。この機能さえあれば2日前に『門』を通った自衛隊を発見する事は造作もない。しかもウォーマシンアーマーは超音速で飛行できるのだ。

 

フューリーからは「自衛隊に感づかれるな」とは言われているので、遠方から自衛隊の行動を監視するだけに留める事にした。自衛隊の部隊に追い付く事は直ぐにでもできるので、パニッシャーはアルヌスの丘の周囲を探索する。暫くアルヌスの丘の周囲を見回った後、アルヌスの丘の付近の森の方を調べてみる事にした。

 

「てっきりモジョーワールドやダークディメンションみたいな所を想像していたんだが、案外普通の世界だな」

 

そしてパニッシャーは暫く森の上空を偵察していると、森の中にとある物を発見した。

 

「……あれはアルヌスの丘と銀座を繋いでいるのと同じ『門』か?」

 

森の中にはアルヌスの丘にある『門』と、銀座の四丁目交差点にある『門』と全く同じ形状をした『門』があった。精巧なレプリカなのかと思い、『門』の前に降り立つパニッシャー。目の前の『門』は開かれており、内部には闇が広がっていた。

 

「進んでみるか」

 

パニッシャーは罠の可能性を考慮しつつ、慎重に『門』の先へと進んでいく。『門』の内部を暫く進むと、行き止まりになった。

 

「行き止まりか」

 

そう言いつつ、何気なく前方の壁に手を触れると、自分の手が壁を透過したのだ。

 

「すり抜けるだと…?」

 

パニッシャーはそのまま前に進むと、自分の身体が壁を透過し、謎の廊下に出た。

 

「どこだここは…?」

 

パニッシャーが出たのは近代的な廊下だった。近未来的な雰囲気すら醸し出しており、床には埃一つ落ちてなさそうだ。

 

「……『門』から来た帝国兵の装備を見る限り、文明レベルは古代か中世のレベルかと思ったが、連中にはこんな建築物を建てる技術があったのか?」

 

「技術レベルが釣り合っていない」。パニッシャーはそう思った。あんな甲冑を着込んだ兵隊やオークといったモンスターが、こんな建物を建てられる程の知識があるようには見えないからだ。

 

しかし銀座に出現した『門』とアルヌスの丘にある『門』の事を思い出すパニッシャー。全く異なる二つの世界を繋いでいるのを考えると、この廊下がある場所は特地とはまた異なる世界なのだろうか?そう考えた方が自然ではある。パニッシャーは長居は無用と思い、立ち去ろうとするが、不意に後ろから声を掛けられた。

 

「おや?君は誰だい?」

 

何とも可愛らしい声だと思い、振り返ると、そこには青と赤を基調とした服を着た黒髪の少女が立っていた。手には装飾が施された杖を持っている。年齢は12歳かそこいらだ。

 

「……君も彼等の差し金かな?ウチの大事なあの子と所長にまた手を出されるのは勘弁…」

 

「おい待て、俺は怪しいもんじゃないぞ」

 

「いや、その恰好で言われても説得力ないんだけどね…」

 

少女は杖を構えて戦闘態勢に入っている。目を吊り上げており、怒った顔も可愛らしい。

 

パニッシャーはウォーマシンスーツを着ている事を思い出し、スーツを脱ぐ。スーツを脱いだパニッシャーは髑髏のマークが施された防弾チョッキと、黒い服を着ていた。

 

「うーん、如何にも殺し屋って雰囲気だよ君」

 

「戦う気はない…と言っても信じてはもらえないか?」

 

今のパニッシャーの恰好と面構えを見れば誰でも警戒はするだろう。

 

「――落ち着き給え、彼には敵意はないらしい」

 

その時後ろから声がした。振り返るとそこには昔ながらの探偵服を着こみ、手にはパイプを持っている若い男だった。世界的に有名な某探偵の真似事でもしているのだろうか?とパニッシャーは思った。

 

「森の中にある『門』を通ったらこの廊下に出たんだ」

 

「……どうやら嘘は言っていないらしい。最も、我々に敵意はないと言っても君自身は危険な人間である事に変わりはないようだが」

 

青年は恐ろしい程の観察眼でパニッシャーの危険性を見抜いている。パニッシャーは目の前の青年の見透かしたような目が気に入らないようだ。

 

「会ったばかりの人間の本質を見抜いた気になるんじゃねぇよ、Mr.エルロック・ショルメ」

 

パニッシャーの言葉に青年は眉を僅かにひそめた。

 

「君は彼等とは関係ないんだね?」

 

「彼等もなにも、ここが何処かも分からんのだ。それじゃ帰らせてもらうぞ」

 

「あ!まだ話は終わってないよ!」

 

パニッシャーは少女の声を無視し、そう言うとパニッシャーは置いていたウォーマシンアーマーを装着し、先程廊下に出た場所の壁に触れる。すると先程廊下に出た時と同じくパニッシャーの手を透過し、パニッシャーは壁の向こうに吸い込まれるように消えて行く。

 

「彼、行っちゃったね…。誰だったんだろう?」

 

少女はパニッシャーが透過した壁に触れるものの、彼のように手は透過せずにそのまま壁に遮られている。

 

「恐らく我々のいる世界とは別の世界から来たのだろう。これは私の推測だがね」

 

「まぁ、君の推理は大体当たるからね」

 

 

 

***************************************************

 

 

パニッシャーは森の中にある『門』にまで戻ってきた。一体あの白い廊下と少女、青年は何だったのかは気になるが、とりあえず自分の任務に集中する事にした。そしてパニッシャーはウォーマシンに内蔵されている時計を見てみると、時間が2日以上進んでいる事が分かった。あの廊下にいたのは精々10分未満だ。なのに何故ここまで時間が進んでいるのだろうか?パニッシャーは状況を整理しようとする。

その時、空が割れんばかりの咆哮が響き渡った。何か巨大な生物…怪獣の鳴き声に近い。

 

「何だこの吠え声は…?」

 

パニッシャーはウォーマシンに内蔵されている探知システムで周囲を探索する。そして上空を猛烈な勢いで飛ぶ生物を見る。赤い体色をした巨大なドラゴンだ。よく見るとドラゴンの左前足が失われている。

 

「……せっかくこのアーマーを着ているんだ。アイツで試しても罰は当たらんだろう」

 

そう思い、パニッシャーは両手足のブースターを噴射し、空中を飛ぶドラゴンを追いかける。ドラゴンは巨体であるにも関わらず、猛烈なスピードで空中を飛行している。恐らく音速に達しているだろう。

 

ウォーマシンアーマーモデル8の性能テストを兼ねて、パニッシャーは前方を飛ぶドラゴンを追跡する。

 

「何の罪も犯していないドラゴンを攻撃するのは心が痛むがな」

 

 

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パニッシャーが巨大なドラゴン…炎龍を追跡するべく空を飛び立った後、森にある『門』の傍から『邪神』が出てくる。

 

「……パニッシャーがこの世界に来るとは想定外だったが、私の計画の支障にはなるまい」

 

そう言うとロキは目の前の『門』の中を進んでいく。

 

「私は私の仕事をするとしようか」

 

 

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巨大なドラゴンは暫く飛行すると地上にある森へと降下して降りる。そしてパニッシャーも地上の森へと降りた。パニッシャーは巨大なドラゴンに気付かれないように慎重に森の中を進む。それぞれが森に降りた地点で言えばドラゴンとパニッシャーとの距離は1km以上離れており、この距離であればドラゴンに気付かれる心配はない。パニッシャーは暫く森の中を探索していると、大きな泉を発見した。

 

「……ここは静かだ」

 

パニッシャーはそう呟いて、巨大なドラゴンを追跡するという事も忘れて泉の畔に座り込む。この場所はまるで楽園のような空間だった。小鳥のさえずりと木々のざわめきしか聞こえてこない。

 

「……ここは天国か?」

 

パニッシャーはそう思う程だった。泉を見てみると、誰かが泳いでいる。そして泳いでいた女がパニッシャーの存在に気付いた。女の肌は褐色だった。耳を見てみると、一般的なファンタジーに登場する「エルフ」のものと似ている。この特地に来て最初に出会った人間が目の前の女だ。褐色の肌色をしているエルフとくればダークエルフだろうか。

 

ダークエルフの女はパニッシャーに近付いてくる。警戒心が現れているらしく、顔が険しい。そして女は泉を出ると、一糸纏わぬ姿で堂々とパニッシャーの前に立つ。

 

「御身は何者か?我が名はヤオ。ダークエルフ、シュワルツの森部族デュッシ氏族。デハンの娘 ヤオ・ハー・デュッシ」

 

ヤオと名乗ったダークエルフ?の女はパニッシャーの方を見据える。

 

「パニッシャーだ」

 

パニッシャーはヤオにそう答えた。




パニッシャーさんのラッキースケベ展開キタ――(゚∀゚)――!!
(※パニッシャーさんはこの時点で炎龍がコダ村を襲った事は知りません。アルヌスの丘の平原の死体も帝国兵だと勘違いしてるし)
アーマーの性能テストという名目でドラゴンを狙うパニッシャーもアレですがw

次回からは炎龍戦開始。まだこの時点ではヤオの村は無事なんですよねぇ。
けどパニッシャーとヤオの相性ってどうなんだろう…?(;^ω^)

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