White Alteration   作:烊々

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前編

 

 ルウィー国領域内のダンジョンの雪原を進む、ルウィーの女神ブラン。

 ルウィーの女神候補生、双子のロムとラムもブランの後ろを着いて歩く。

 

「お姉ちゃん〜、ロムちゃん、ラムちゃん、待って〜……」

 

 そして、その後ろにもう一人の少女が歩いていた。

 少女の名は『レム』。

 数週間前に生まれてきた、ルウィーの三人目の女神候補生として知られている。

 見た目はロムとラムそっくり。三つ子と言われれば信じてしまうほど。身長はロムとラムよりほんの少し小さい程度、ロムとラムの丁度中間ぐらいの髪の長さで、ロムとラムの色違いの白いコートを羽織っている。その下に着ているのはおそらくロムとラムと同じワンピースだろう。

 

「おっと、少し急ぎ過ぎたわね。レムを待っててあげましょう」

「「はーい!」」

 

 ルウィーの女神たちとレムは、生まれてからあまり時間が経っていないからかあまり体力のないレムのペースに合わせ、ダンジョンの奥にゆっくり進んで行く。

 

「さて、今日はレムに、女神の仕事の一つである有害なモンスター退治を見せてあげるわ」

 

 ブランはホワイトハートに女神化し、巨大な戦斧を構える。

 

「わたしたちも行くわよ、ロムちゃん!」

「うん、ラムちゃん……!」

 

 続いて、ロムとラムもホワイトシスターに女神化し、魔法杖を構える。

 

「よく見ておけよレム。これが……私たち『守護女神』だ!」

 

 自分たちの何倍もの大きさを持つ『エンシェントドラゴン』に向かって行った。

 

「……」

 

 まだうまく戦えないレムは、そんな姉たちの戦闘を眺めていた。

 

 

 

 

 クエストから帰宅後。

 候補生の部屋で、ロムとラムは絵本を読んでいた。

 

「レムちゃんも一緒に読も?」

「ごめん、わたしこっち読みたいから」

 

 レムは、ルウィーの書庫から持ってきた古文書を読みだす。

 レムぐらいの見た目の年齢の少女が読めるとは思えない難易度の本をスラスラと読んでいくレムを見て、ロムとラムは目を丸くする。

 

「レムちゃん……すごい」

「なんで書いてあるの……?」

「えっとね、これは…………」

 

 そして、古文書の内容をロムとラムにもわかりやすく説明していく。

 

「レムちゃん、頭良いー!」

「すごいよ、レムちゃん……!」

「えへへ、ありがとう」

 

 どうやらレムは、ロムとラムには大きく戦闘力は劣るが、ブランに迫るどころか超える可能性があるほどの頭脳を持っているようだ。

 

「ねぇねぇ、レムちゃん!」

「なに?」

「もっと文字だらけの本をわかりやすく読んでよ!」

「お願い、レムちゃん……!」

「う、うん。頑張る」

 

 その後、レムはロムとラムに小説をところどころ解説などを交えてわかりやすく読みきかせるのだった。

 

 

 

 

 その日の夜。晩御飯の時間にて。

 

「ピーマン食べたくない〜!」

「苦いの……きらい……」

 

 おかずのハンバーグの付け合わせのピーマンに苦戦するロムとラム。

 

「ロム、ラム、好き嫌いしないでちゃんと食べなさい。ほら、レムを見習うといいわ」

「〜♪」

 

 嫌な顔をするどころか、ピーマンをフォークで刺し、口に運び、美味しそうに平らげるレム。

 

「む〜……」

 

 レムに姉としての威厳を示そうと、ラムは不満そうな表情のまま、ピーマンをフォークで刺して口に運ぶ。

 しかし、一つ食べてももう二つあり、ラムの手が再び止まる。

 

「ラムちゃん、頑張って。もう一つ食べたらもう一つはわたしが食べてあげるから」

 

 すると、横からレムが助け舟を出す。

 

「本当⁉︎ じゃあ頑張る!」

 

 ラムがなんとかもう一つピーマンを食べ、レムがラムの皿に残っていた最後の一つを平らげる。

 

「う〜ん。ピーマン美味しい」

 

 どうやら、レムはピーマンが好きなようだ。

 メインディッシュのハンバーグを食べる時よりも、サラダや付け合わせの野菜を食べる時の方がフォークが進んでいるところを見ると、野菜全般が好きなのだろう。

 

「えー、レムちゃんピーマン好きなの?」

「レムちゃん、わたしのピーマンも食べて〜……」

「いいよ」

 

 ブランは、そんな微笑ましいやり取りを穏やかな表情で見つめていた。

 

(レムがこんなにしっかりしてる子なのは驚いたわ。でも、そのしっかり者の妹のレムが、ロムとラムの成長の良い刺激になるでしょうね)

 

 実際に、それまで自由奔放だったロムもラムも、レムが来てからは少しずつしっかりするようになってきていた。

 先のクエスト時も、徹底して敵のモンスターにレムの方向へ攻撃を出させず、レムを守っていた。いつもはブランに守られていた二人が、自分で自分の身を守るだけではなく、自分の身を守った上でレムの身までちゃんと守り通したのである。

 

「ロムちゃん、ラムちゃん」

「なに?」

「ピーマン食べ過ぎてお腹いっぱいなっちゃった……わたしのハンバーグちょっと食べて」

 

(……ふふ、しっかり者だけど、やっぱりレムも子供なのね)

 

 

 

 

 ある日、ルウィー教会には、仕事の話し合いも兼ねてベールが来てきた。

 

「ベールさんいらっしゃーい!」

「ベールさんいらっしゃい……!」

「ロムちゃん! ラムちゃん! 会えて嬉しいですわ!」

「「むぎゅっ」」

 

 出迎えに来たロムとラムを思い切り抱擁するベール。

 数秒間、腕の中のロムとラムを堪能していたが、ブランからの重圧を感じ取るとその手を離す。

 

「……ぷはっ、相変わらずのだいなまいとぼでぃだね、ロムちゃん」

「柔らかいけど……苦しかった……」

 

 ベールから解放されたロムとラムは深呼吸する。

 

「……」

 

 そんな二人と打って変わって、レムはブランの背中に隠れながらおそるおそるベールの様子を伺っていた。

 

「……あら?」

 

 しかし、ベールと目が合ってしまい、ベールの興味は一気にレムに移る。

 

「そちらが例のレムちゃんですわね!」

「ええ、そうよ。レム挨拶しなさい」

「レム……です。よろしくお願いします……」

 

 人見知りなのか、しどろもどろな挨拶をするレム。

 ベールはそんなレムをじっと見つめていた。

 

「……ええ! よろしくお願いしますわ! わたくしのことはベールお姉ちゃんと呼「やめなさい」……もうブラン、わたくしの言葉を遮らないでくれませんこと?」

「あなたがレムに変なことを刷り込もうとするからでしょ。全く油断も隙もない……」

 

 呆れた表情で呟くブランを気にせず、レムのことをチラチラ見るベール。

 

「……さてさて、このままわたくしたちの妹たちと戯れたいのですが、先にお仕事がありますものね。さっさと済ませましょうブラン。ささ、執務室へ行きましょう」

「『わたくしたちの妹たち』じゃなくて『私の妹たち』よ。私だけの」

「一々細かいことを気になさるのですねぇ。そんなんだから器も胸も小さいんですのよ?」

「お前ぶっ殺すぞ」

 

 そんなことを言い合いながら、ブランとベールは玄関からブランの執務室へ向かっていった。

 

「行っちゃったね……」

「ベールさん相変わらずだなぁ……」

「レムちゃんのことずっとチラチラ見てたね」

「もしかして、レムちゃんがベールさんに連れて帰られちゃう⁉︎」

「わたしたちでレムちゃんを守ろう、ラムちゃん……!」

「そうだね、ロムちゃん!」

 

 そんなことを言いながら、左右からレムを抱きつくロムとラム。

 しかし、レムは何か別のことを考えているようだった。

 

「……ロムちゃん、ラムちゃん」

 

 そして、ロムとラムに真剣な表情で語りかける。

 

「大事な話があるの」

 

 

 

 

「……これで、ルウィーとの貿易の話は完了ということで、よろしいですか?」

「ええ、大丈夫よ。ラステイションを経由するから、ノワールにも話をつける必要があるわね」

「では、そちらはわたくしがなんとかしますわ」

「ありがとう、助かる」

 

 ブランの執務室で、たった今仕事の話を終えたブランとベールは、ベールが淹れた紅茶にルウィー名物ブラン饅頭を茶請けにしながら駄弁っていた

 

「それにしても、いつ見てもロムちゃんとラムちゃんは可愛いですわね」

「可愛いだけじゃないわ。最近は頼れるようになってきている。私の自慢の妹たちよ」

「そうですか。そういえば、ブランに一つ聞きたいことがあるんですけど」

「何?」

 

 ベールはティーカップを机に置き、ブランの目をじっと見つめる。

 

「あのレムちゃんって子、誰ですの?」

 

 

 

 

 ロムとラムは自室に戻り、レムから『大事な話』とやらを聞いてきた。

 

「ロムちゃんとラムちゃんはね、本当は一人だったのよ」

「一人……?」

「ロムちゃんとラムちゃんは双子じゃなくて、もっと強い一人の女神として生まれてくる筈だったの。けど、生まれてくる直前に、何かの拍子に二人に分かれてしまったの」

「そう……だったんだ……」

 

 レムがロムとラムの生い立ちを語る。

 

「そしてね、その別れた二人は元に戻すために生まれたのが、わたしなのよ」

「レムちゃんが……?」

「わたしはね、ロムちゃんとラムちゃんを一人に戻すことができて、そのために生まれてきたの」

 

 そして次は、レムは自身の生まれた理由を語った。

 

「だから、わたしの力で、元の一人の女神に戻ろう?」

「え、でも……」

「わたしたちの二人のうち、一人しか残らなくなっちゃうんだよね……?」

「今はお姉ちゃんがいるからいいけど、この先の未来、ロムちゃんとラムちゃんが女神になることがあったら、不完全な女神が収める国として、ルウィーが危ないことになるかもしれない……」

 

 ロムとラムは、今の自分たちではブランから守護女神の座を継ぐに至っていないことを自覚していた。

 だからこそ、レムの提案を拒否し切ることはできなかった。

 

「……お姉ちゃん、喜んでくれるかな?」

「もちろん、とっても喜んでくれると思うよ」

 

 レムは笑顔で応える。

 

「だから、わたしに任せて。ロムちゃん、ラムちゃん。それに、ロムちゃんとラムちゃんがまた二人に戻りたいなら、いつでも戻れるようにわたしがするから」

「そんなことできるの……?」

「できるよ。だってロムちゃんとラムちゃんの片方しかいなくなるなんて寂しいもん」

 

 永遠の別れではなく、一時的な合体にしか過ぎないことを理解すると、ロムとラムの表情が明るくなった。

 

「戻れるんなら、一回なってみようよ、ロムちゃん!」

「そうだね、ラムちゃん……! レムちゃん、お願い……!」

「わかった。じゃあ、二人のシェアクリスタルを出して」

「うん!」

「はーい!」

 

 ロムとラムは、自らのシェアクリスタルを現出させ、レムに差し出した。

 

 

 

 

「誰って、レムはレムよ。私の三人目の妹」

「ブラン、あなたに妹は二人しかいないはずでしょう……?」

「そんなわけないわ。ベール、レムを連れて帰りたいからって変な冗談はよして」

「冗談などではありませんわ」

「そうだ、あの子たちのアルバムがある。それを見ればあなたも納得すると思うわ」

「果たして、納得するのはどちらでしょうね?」

 

 ブランは自室の本棚のにある自分やミナやフィナンシェが時々撮っていた妹たちの写真のアルバムを開く。

 

「……嘘」

 

 しかし、そのアルバムの中の写真にはレムの姿は一つもなかった。

 そもそも、アルバムのタイトルにも『ロム、ラム』と書いてあるだけで、レムの名前などどこにもない。

 

「……どういうこと……?」

「ブラン……これではっきりしたでしょう?」

「……っ」

 

 ブランは頭に手を当て、レムとの過ごした日々を思い出す。

 ブランには、今までレムと過ごしてきた日々の記憶は確かにあった。

 

「そんな……」

 

 ベールは狼狽えるブランに気を遣い、それ以上問い詰めようとはしなかった。

 

「……わたくしはプラネテューヌに向かい、イストワールにレムのことを聞きに行きますわ。彼女に事情を説明すれば、レムちゃんについてのことも詳しくわかるでしょうし。それに、この奇妙な記憶違いの正体も突き止められるかもしれません」

「ありがとうベール……」

「では、レムちゃんについて何かわかったことがあったら連絡しますわね」

 

 ベールはルウィー教会を後にする。

 

「……レム、あなたは一体……?」

 

 

 

 

 レムは、差し出されたロムとラムのシェアクリスタルを吸収した。

 

「……ありがとうロムちゃん、ラムちゃん……そしてさようなら」

「「え?」」

 

 レムが吸収したシェアクリスタルに引き寄せられるように、ロムとラムの身体が光り、レムに吸収されていく。

 

「どういうこと⁉︎ ねぇ、レムちゃん!」

「今からわたしに吸われるあなたたちが知る必要はないよ」

「……っ、ラムちゃん!」

「ダメ! 抑えられない……っ!」

 

 ロムとラムの抵抗も虚しく、既にレムが起動した魔法は止めることはできず、二人は完全にレムに吸収されてしまった。

 そして、レムは取り込んだ二人のシェアクリスタルを使用し、レム自身のホワイトシスターへと女神化する。

 

「ふ……ふふ。ふはっ……ははははははっ!」

 

 そして、今までの幼な子の無邪気な笑顔からは考えられない歪んだ笑いを浮かべた。

 

「元は一人の女神……か。子供って、騙しやすくて楽だよねぇ……ぜーんぶ、てっきとうに考えたウソだってのに……ははっ! あははははっ!」

 

 その時、コンコン、とドアをノックする音が鳴る。

 

「ロム、ラム、レム、ちょっといいかしら?」

 

 ドアの向こうからブランの声が聞こえた。

 

「……おっと」

 

 レムは急いで変身を解除し、元の姿に戻る。

 

「入るわよ……あれ? レムだけ……?」

「うん」

「ロムとラムは?」

「わかんない。ロムちゃんもラムちゃんもどこかに遊びに行っちゃって……わたしだけ置いていかれたんだ」

「そう……あの子たち、出かける時は一言入れてからにしてっていつも言ってるのに……」

 

 そう言ってブランはドアの方に振り向き、部屋を出ようとする。

 

「……」

 

 レムは自身に背を向けたブランに気づかれぬよう、氷の杭を精製して思い切り振りかぶる。

 

「……っ」

 

 しかし、その杭がブランを捉えることはなかった。

 ブランはレムの殺気を察知し、ギリギリで回避したのだ。

 

「……うっそ。今の避けられるんだ……」

「イタズラ……にしては、タチが悪すぎるよな? 今のは明確な殺意があった」

 

 容赦なく自分を殺そうとしたレムに、敵対心を露わにするブラン。

 

「あーあ、バレちゃったかぁ」

「レム……! ……いや、お前は何者だ!」

 

 ブランの中にあった疑惑は確信へと変わった。

 レムは、自身の妹ではなく、自身の敵である何かだと。

 

「ロムとラムをどこへやった‼︎」

「どこへ? ここだよここ」

 

 言いながら、レムは親指で自身を差す。

 

「どういう……ことだ……っ⁉︎」

「バレちゃったからには全部教えてあげるね、お姉ちゃん」

「お前が……私をそう呼ぶんじゃねえっ!」

 

 ブランはホワイトハートへと女神化し、戦斧をレムへ向ける。

 レムも応じて女神化し、胸に手を当て。

 

「全ては、犯罪神様のために」

 

 呟き、ブランの戦斧を魔法防壁で受け止める。

 

「犯罪神……だと……?」

 

 犯罪神マジェコンヌ。

 かつて、ゲイムギョウ界を滅亡寸前まで追い込んだ、ネプギアとシェアの力で完全に討たれ消滅した邪神。

 

「お前、犯罪組織の残党か何かか⁉︎」

「その通り。わたしは犯罪組織で研究員をしていた者だよ。わたしの研究分野はマジェコンの開発生産じゃなくて、あなたたち女神の研究が主な内容だったね」

 

(女神の研究……私たちの妹を演じられるわけだ……!)

 

「『レム』っていうのはちゃんとわたしの本名だよ。でも、言うまでもないけど、わたしはあなたたちの姉妹でもなんでもないんだ。いやぁ、本当に苦労したなぁ、幼い子供のフリして、くだらなく妹のフリもしてさ」

「……っ!」

 

 犯罪神マジェコンヌの眷属である四天王を除いた犯罪組織の構成員は、主に二種類に分類できる。片方は、リンダやワレチューのような他に行き場のない者たちが成り行きで所属していた者。そしてもう片方は、今ブランの前に立つレムのように、心の底から犯罪神を信仰している者。

 犯罪組織の残党がまだゲイムギョウ界のそこかしこに蔓延っていることは、守護女神たちの中では周知の事実。しかし、ブランは残党がこんな大胆な事をしでかすとは思ってもいなかった。

 

「……っ、犯罪神はもういない! ネプギアが完全に倒したんだ! お前のやっていることは無意味だぞ!」

「そうだね。だから、新しく創るんだよ」

「創る……?」

「女神の力を使い、この国の人間全員を生贄にすれば、新しく犯罪神様を創り出せる。私の研究が導き出した答えだよ。このルウィーは犯罪神様の生まれた地。だからこそ、わたしはここを選んだの。あとはあなたの妹たちなら騙しやすかったってのもあるかな」

「……てめえっ!」

 

 妹たちを馬鹿にしたような物言いにブランは怒りを露わにする。

 しかし、同時に冷静さも取り戻し、レムから情報を聞き出すために、あえて手は出さず様子見する。

 

「最初はね、わたしの計画は犯罪神様の力の残滓だけじゃ限界があったから、研究は行き詰まってたんだ。そこに、救いの手が差し伸べられた」

「救いの手……?」

「一つは『タリの女神』とやらの力かな。なんとかプラネテューヌであの力の一部を回収したんだけど、タリの女神の力って万能でね。そのおかげで、人工女神であるこの身体を作り出すことができたんだ。そしてもう一つは、あなたたちが『暗黒星くろめ』と呼んでいた猛争事変の黒幕が残した『ネガティブエネルギー』。それが最後の鍵だったんだ。わたしはその力を解析し、彼女がかつて引き起こした世界改変を、なんとか小規模ながらもう一度引き起こしたんだよ。世界改変ってほど大掛かりなものじゃなくて、認識改変かな? 『ルウィーには三人目の女神候補生がいる』って感じに」

 

(……だから、ルウィーのアルバムにレムなんているはずがなかったんだな……! 私たちの認識がいじられてるだけだったから……!)

 

「そして、変化魔法を使うと魔力を感知されて違和感に気づかれる可能性があったから、あなたやその妹たちとそっくりになるように元の身体を捨てて、さっき言ったように人工生命体の女神として身体そのものを作り替えたってわけ。ま、ルウィーから一番遠いリーンボックスには認識改変の影響が弱かったから、リーンボックスの守護女神には違和感に気づかれちゃったんだよね。見た感じわたしのことをずっと警戒してたし。そして、お姉ちゃんに余計なことを吹き込まれたせいで、計画を前倒しするハメになっちゃった。まぁロムちゃんとラムちゃんの力はいただけたから良かったけどさ」

「……もう、黙れ」

 

 怒りが頂点に達し、そして聞きたい情報を引き出せたことから、ブランは斧を振りかぶり、レムを排除しようとする。

 

「良いの? わたしを殺せば、わたしの中のロムちゃんとラムちゃんも死んじゃうよ?」

「……っ」

 

 しかし、その言葉を聞き、一旦攻撃の手が止まった。

 

「……殺しはしねえよ。痛みは我慢してもらうしかねえけどな!」

 

 だが、すぐに妹を傷つける覚悟をし、再びレムに対して斧を振りかぶる。

 

「……"助けてお姉ちゃん"!」

 

 その時、レムの口からラムの声がした。

 妹の声を直接聞いたブランは、覚悟が揺らいでしまい、攻撃の手を直前で止める。

 

「ラム! 大丈夫か⁉︎」

「……な〜んて、声も出せちゃうんだよねえっ! 今のわたしは‼︎」

 

 しかしそれは、レムが吸収したラムから声質だけを借りたものに過ぎなかった。

 レムは大きく隙を晒したブランの腹部に手を翳し。

 

「『エクステンション』……!」

 

 掌から爆発魔法を発動する。

 

「がはぁっ……!」

 

 ブランは、ロムとラムの魔力を得たレムの魔法攻撃を不意にくらい、咄嗟に防御のため力を込める間もなく数メートル吹き飛ばされ、地面に倒れ込む。

 

「油断したねぇ……お姉ちゃぁ〜ん」

 

 レムは倒れ込んだブランに追い討ちをかけるように魔法攻撃『コメットシャワー』、『シャイニングレイン』、『ダークネスフォール』を次々と浴びせていく。

 

「ぐぁぁぁぁっ!」

「耐えるね。流石は守護女神ってところかな」

「……ちぃっ!」

 

 ダメージが重く、普通の女神化では負けてしまうと判断したブランは、掌の上にハイパーシェアクリスタルを顕現させる。

 

「それは、させないよ」

 

 しかし、レムはブランの腕を思い切り踏みつけ、変身を妨害する。

 

「うぁぁっ!」

「ロムちゃんとラムちゃんの力が馴染み切ってない今のわたしじゃ、流石にネクストフォームには勝てないだろうからねぇ!」

 

 倒れ込むブランの横腹に、何度も蹴りを入れるレム。

 

「ぐぅ……うっ……」

「安心しなよ。お姉ちゃんもシェアクリスタルごとわたしが吸収してあげるから。そうすればロムちゃんとラムちゃんと一緒だよ」

「……っ、『エターナルフォースブリザード』ッ‼︎」

 

 ブランは蹲りながらもなんとか魔力を絞り出し、レムに氷塊をぶつける。

 しかし、レムは魔法防壁を展開し、氷塊を完全にシャットアウトする。

 

「無駄無駄。お姉ちゃんの貧弱な魔力じゃ、大した威力にならないよ……ん?」

 

 魔氷が消えると、既にブランの姿はなく、教会の壁に大きな穴が空いていた。

 

「……逃げられたか。他の女神を呼ばれたら面倒だな。まぁいいか。こっちには人質が二人いるし。人質ならぬ女神質かな? あはは」

 

 レムはブランが逃げたであろう壁の大穴から外に出るが、ブランを追いかけようとはしなかった。

 

「ルウィーは堕ちる。このわたしが堕とす」

 

 そして教会の上に登り、ルウィーの街並みを見下ろす。

 

「全ては、犯罪神様のために」

 

 新しい妹と、候補生の成長。

 そんなものは最初からどこにも存在しない。

 あったものは、レムという狂人の野望だけだった。

 

 





 今作は数日後にちゃんと後編を投稿します。
 実は地の文では一言もレムを女神候補生とは書いてないんですよねこれが。
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