鋼鉄の心:亡霊との戦い   作:アイゼンパワー

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【やった】休みもらった【休める】pt3

755:名無しの戦略家

最近元帥閣下見ないな

 

756:名無しの戦略家

死んだんじゃないのォ〜?

 

757:元帥

今日も酒が美味い

 

758:名無しの戦略家

飲んだくれてるだけだったか

 

759:名無しの戦略家

もうすっかりダメ親父じゃないの

 

760:元帥

本日いただくのは5L産業用ウィスキーでございます

 

761:名無しの戦略家

なんか始まったぞ

 

762:元帥

これをジョッキにドーン!隣に砲弾がドーン!

 

763:元帥

そして手元にあるプラスチック爆弾のような味と形容される合成食料にありったけの唐辛子をかけます

 

764:元帥

………うん、不味い!

 

765:名無しの戦略家

不味いのかい!

 

766:名無しの戦略家

隣に砲弾がドーン!ってなんだよ

 

767:名無しの戦略家

ジョッキをドレッドノートの中に持ち込んどるんか?

 

768:名無しの戦略家

飲みながら戦うとか流石に草なんだが

 

769:元帥

何がいけないんだ何が

 

770:名無しの戦略家

何もかもがいけない

 

771:名無しの戦略家

前に飲酒運転するなよって言ったばっかりだろうが

 

772:元帥

気分が高揚してとても楽しいぞ!みんなもやってみるといい!

 

773:名無しの戦略家

この前酒飲みながら戦ってた狙撃兵の親友が死んだ

 

774:名無しの戦略家

酒飲みながら戦うのはNG

 

775:名無しの戦略家

冒険者資格剥奪されちゃう

 

776:名無しの戦略家

いい子のみんなは酒飲むなら家で飲もうね

 

777:元帥

また酒こぼしちまった……帰ったら整備員に怒られる……

 

778:名無しの戦略家

元帥ともあろうものが整備員に怒られるのを恐れてどうする

 

779:名無しの戦略家

もっと大胆にやれ!思いっきり汚してぶっ壊して思いっきり怒られろ!

 

780:元帥

いぇーい!サイコー!

 

781:名無しの戦略家

あーあ、酔ってる

 

782:名無しの戦略家

俺もウィスキー一本開けようかな

 

783:元帥

なんかセオがキレてる。何言ってるのか全然聞き取れんが酒が美味い

 

784:名無しの戦略家

飲むのやめろや……

 

785:名無しの戦略家

何言ってるのか理解する努力はしろ

 

786:元帥

うーん……誰かが死んでそれを憐れまれたのが気に入らないらしい

 

787:名無しの戦略家

誰かってあんたねえ……

 

788:元帥

酔ってるから誰が死んだのかわからん、ウハハハハ

 

789:名無しの戦略家

こんなのが国家元首だなんて嫌よ私

 

790:名無しの戦略家

レーナがキレられてるとこか

 

791:名無しの戦略家

感動的な場面だったなぁ

 

792:元帥

感動的だな……だが無意味だ

 

そういや戦いたくないやつはグラン・ミュール建設に送ってるはずなんだが強制的に戦わせるってなに?

 

793:名無しの戦略家

あれでしょ、また命令違反してる奴が出たんでしょ

 

794:名無しの戦略家

休暇終わったらもう一仕事あるよ!よかったね!

 

795:名無しの戦略家

保安局もご苦労ですな

 

796:元帥

あー帰って飲み直そ。今度は何にしようかな

 

797:名無しの戦略家

ワインにしたら?

 

798:名無しの戦略家

大正義ビール

 

799:名無しの戦略家

ルート・ビアでもいかがです?

 

800:元帥

>>799サロンパス飲ませようとするなや

 

801:名無しの戦略家

飲むサロンパスの悪名は世界を超えて伝わっているのか…

 

802:名無しの戦略家

というか前線地帯で酒飲めるんか?

 

803:元帥

ワシ権限で運び込ませてる

 

804:名無しの戦略家

職権濫用だ!!

 

805:名無しの戦略家

これこそ保安局の取り締まるべきものでは?

 

806:名無しの戦略家

や保安局無能

 

807:元帥

…………(ニッコリ)

 

808:名無しの戦略家

殺されるぞ

 

809:名無しの戦略家

強制労働させられそう

 

810:元帥

まま、ええやろ

 

811:名無しの戦略家

俺はレーナちゃんが“精神疾患”で自殺しないことを祈るぜ

 

812:名無しの戦略家

いくら元帥でも主人公の片割れを処するなんてことしないでしょ

 

813:元帥

有能だけどはっきり言って邪魔。箱入り娘っぷりがすごいからうっかり口滑らせて軍事機密話さないか心配で仕方ない。育て方次第ではこちら側に引き込むこともできそうだけど……どうしようかね

 

814:名無しの戦略家

引き込むんですよ、あんなに有能な白系種は珍しいですぞ

 

815:名無しの戦略家

まぁでもめんどくさいなら突き放すのもまた一興

 

816:名無しの戦略家

後継者に悩んでるなら後継者に仕立て上げるとか……

 

817:元帥

後継者に仕立て上げるのいいね

 

818:名無しの戦略家

最善手を取り続けるが為の流血姫(ブラッディ・レジーナ)。政治でも最善手を取ってくれることを祈る

 

819:名無しの戦略家

まだ決まったわけじゃないからほら

 

820:名無しの戦略家

民主主義()的な手続きを取らんといかんしね

 

821:元帥

政治体制に関してはもうとっくにファシズムなんだよなぁ…

 

822:名無しの戦略家

でしょうね

 

823:名無しの戦略家

だろうと思ったよ

 

824:名無しの戦略家

じゃなきゃここまで無茶苦茶できんからな

 

 

ーーー

サンマグノリア共和国、二区。国防庁准将執務室。

 

扉は突然開け放たれ、けたたましい音と共に壁に叩きつけられた。

 

「叔父様!元帥閣下が前線にいるなんて聞いていません!」

「ん?元帥閣下が前線に?………馬鹿なことを言うな」

 

レーナは執務室の中に踏み入るなりそう叫び、それに対してカールシュタール准将は一瞬驚いた顔をし、そのまま手元の書類に向き直った。

 

「君の勘違いじゃないか?」

「そんなわけは……!私は士官学校の入学式の時彼の声を隣で聞いていたんですよ!しかも彼は私が名乗っていないのに名前を当てたんです!」

 

准将は怪訝な顔をし、個人端末を持ち上げ、文字を打ち込んでスピアヘッド戦隊に関する情報を検索した。

 

「よし、それなら確かめてみようか。スピアヘッド戦隊、定員24名。今日一機壊れて…この前ので一機壊れて………おかしい。たしかに一機多い、誰だこいつは?」

「彼はパーソナルネームを<オッツダルヴァ>と……」

「そんな名前のプロセッサーは存在しない。…スピアヘッド戦隊のデータ最終編集履歴は一ヶ月前、元帥閣下が愛車を伴ってどこかへと出かけたのも一ヶ月前………もしかすると、もしかするかもしれん」

 

准将は突然椅子から立ち上がり、レーナの側まで歩き、彼女の肩を掴んで、言った。

 

「そのプロセッサーは何としても死なせるな。たとえ間違いだったとしても、彼が元帥閣下でなくともいい。いいな?」

「は、はいっ!」

 

 

 

翌日

 

『ハハハハハハ!そこは湿原だ間抜け!アッハハハハハ!』

 

<オッツダルヴァ>の笑い声が戦場に響き渡る。ドレッドノートを駆り、ドーザーブレードで近接猟兵型(グラウヴォルフ)の高周波ブレードを叩き折り、重量型の機体だというのに機動戦を繰り広げていた。

そして彼の笑いの対象となったのは<キルシュブリューテ>……カイエ・タニヤと言う少女であった。彼女の乗機であるジャガーノート改の四肢はズブズブと湿原の軟弱な地面に沈み、身動きが取れなくなっていた。

 

『湿原?ここに?…動けない…』

 

彼女の面前には戦車型(レーヴェ)が一機、珍しいことに脚も、砲塔も装甲も万全の状態状態で迫っていた。90mm砲は湿原の水に浸かってしまい動作不良、いわゆる弾詰まり(ジャム)を起こしていた。15mm機銃を乱射するも戦車型の堅牢な正面装甲を貫通することはできない。彼女にできることはただ一つだけ。

 

死に備えるだけであった。

 

『死にたくない』

 

 

 

 

その言葉と共に通信は断絶。

 

『ハハハハハハ!死んだ!死んだぞッ!ウハハハハ』

 

<オッツダルヴァ>の狂笑だけが戦場に響く。

死者を嘲笑い、レギオンと戦い続ける。斥候型(アーマイゼ)の残骸をその足元に踏み締め、210mm砲は戦車型に向かって水滴状の鉄塊を撃ち続ける。堅牢な脚部でレギオンを殴りつけ、戦場を駆け抜ける。

目の前に斥候型が立ったと思えば、次の瞬間にはドーザーブレードに押し潰され、潰れたアルミ缶のようになっていた。戦車型が立ったと思えば正面装甲が瞬く間に割れ、制御中枢に脚を一本突っ込んで掻き乱し、撃破する。その間も、高らかな笑い声を途切れさせることなく動き続ける。

 

『<オッツダルヴァ>!止まってください、第三小隊に合流して敵の裏に回ってください!』

『ハハハハハハ!アッハハハハハ!ワハハハハハ!』

『<オッツダルヴァ>!聞こえていますか?<オッツダルヴァ>!』

『もうダメだよ!このおっさんこうなったら止まりゃしねえ!』

 

ハンドラーの命令に逆らい、ただひたすらに暴れ続ける。騎手の命令を聞かない暴れ馬のように、手綱から解き放たれた狂犬のように。ただひたすらに撃ち、動き、殴る。持てるもの全てを持って戦う。

 

 

 

 

いつのまにかレギオンは撤退、そして<オッツダルヴァ>はようやく冷静さを取り戻した。

 

『ハハハ……ふぅ、酒を飲みながら戦うものじゃないな…こぼしてしまった』

 

そう言って彼が朗らかに笑う一方で、レーナはまた顔を覆って涙を流していた。

 

『戦闘、終了。戦隊各員…お疲れ様でした。キルシュブリューテのことは残念でした。もっと早く地図を見つけていれば、私が…もっとしっかりしていれば……!』

『……残念?』

 

青年の声が割って入る。

 

『あんたにしてみればエイティシックスの一人や二人、どう死のうが家に帰りゃすっかり忘れて夕食楽しめる程度の話だろ?そりゃこっちだって暇だったからさ、あんたの“自分だけは差別しません、ブタ扱いしません”って勘違いの聖女ごっこには付き合ってやったさ。だがな、こっちはたった今仲間が死んだんだァ……そう言う時まであんたの偽善には付き合ってなんかいられないってそれくらいわかれよ。』

『偽善……?』

『それとも何?仲間が死んでも何とも思ってないとか思ってる?ああ、そうかもね?僕たちはあんたみたいな高尚な人間様とは違う、人間以下の豚だものね?!』

『違う、違いますッ!私はそんなーー』

『違う?何が違うんだ?僕たちを戦場に放り出して兵器扱いして、自分だけ壁の中でぬくぬく高みの見物決め込んで、それがブタ扱いじゃなくって何だと言うんだよォッ!あんた、僕たちが望んで戦ってるとでも思ってるのかよ、お前らのせいでこの九年間で何万人も死んでるんじゃないか!』

 

セオは激昂し、レーナは心臓を抑え、うずくまる。

その後ろではすっかり出来上がった元帥が笑いながら茶々を入れる。

 

『ハハハ。そうだ、生きとし生けるもの全ては豚だ。愚かで、無価値なただの豚!その中から自らの腕をもって、価値をつける。下手に同情するんじゃあない!……君はハンドラーに向いていない、さっさと退役して嫁にでも行くんだな』

 

 

目の前にあるのは電源の切れた液晶板のみ、耳からは絶えず笑い声が響く。

 

『奴は弱いから死んだ。ただの豚だったから死んだ!ハハハ、弱いから死んだのだ!同情する余地などないッ!!アッハハハハハ!』

 

 

 

 

 

 

 

翌日、夜。

プロセッサー宿舎から西へ40km離れた地点。

 

「元帥閣下、ご無事なようで何よりです」

「ああ」

 

黒塗りの軍用トラックと高級車が止まっていた。

元帥の休暇はここで終わり、これからはまたもや地獄の書類仕事が待っている。書類を右から左へと流すだけの仕事、その途中におかしな所があれば指摘し、直させる。それだけの仕事。

しかし事情は変わったようだ。側近が地図と書類の数々を持って駆け寄ってくる。

 

「至急あなたのお目に入れたいものがあるんです。北部戦線のレギオンが異常な行動を起こしています。集結、散開、再集結を繰り返して、まるで演習を行っているかのようです」

 

元帥はカラーコンタクトレンズを目から外し、元帥位を示す階級章が縫い付けられたコートを纏いながら側近に問う。

 

「妙だな……レギオンはこれまで一度も演習はおろか、練習すら行ったことはない。違うか?」

「おっしゃる通りで、これは異常な行動です。予測所はこれを大規模な攻勢の前兆と考えています。然るに、軍の再編を将軍たちは求めています。」

 

元帥は一瞬服を着替える手を止め、考え込む。

 

「私としては、許可したいところであるが…装備は足りているのか?歩兵用の対戦車兵器は有り余っているとは思うが、それはレギオンに通用するものか?」

「工廠に問い合わせた所、公式見解としては“十分通用する”そうです。しかし敵の機動性により高い命中率は望めないと…」

「そうか……よし、承認印を持ってこい。」

 

まだ外していないレイドデバイスから声が流れ込む。

 

『戦隊各員、ハンドラー・ワンから話があるそうだ。繋いでやってほしい。』

 

秘書官の一人がレイドデバイスを取り外そうとするも元帥はサッと手を挙げ、それを制止する。

 

「時間がないわけでもない、聞いてやってもいいだろう?」

「そうですね…ヴラディレーナ・ミリーゼ少佐ですか?」

「ああ、それがなにか?」

「彼女は前々から問題行動を起こしていますから、ただ彼女が何を思っているのか聞きたいだけです……スピーカーモードにしても?」

 

元帥は何も言わず、ただ頭を側近に差し出した。

側近はそのまま耳の裏に位置するスイッチを切り替え、生体信号を音声として出力するように設定を変更した。

 

『ーー昨日も、これまでも本当にすいませんでした、私はハンドラー、ヴラディレーナ・ミリーゼです。あなたたちを人として扱っていなかった、それを自覚をしてもいなかったのは拒絶されても当然の振る舞いでした……それでももしまだ答えてもらえるのなら今からでも名前を……!』

 

「聞いたか?彼女はエイティシックスを人として扱いたいらしい、ハンドラーに向いてないな。」

「たとえプロセッサーでなく人を指揮するとしても、指揮官であれば非情な判断を迫られる時があるでしょうに…難しいですな」

 

セオと名乗るプロセッサーの語りを背景に、元帥は小声で側近と会話を交わす。

 

「このセオが言う白系種(アルバ)が誰だかわかるか?」

「いえ、その頃の記録は曖昧でして、発見は困難でしょう。」

 

そして着替えながら、ただただプロセッサーの名乗りと語りを聞いていると、元帥に向けた一言が発される。

 

『おっさん、どこにいるかわからんけどお前の番だぞ』

 

「どうやら私の番らしい」

「実名を名乗りますか?」

「何を馬鹿なことを、そんなわけないだろう」

 

『マクシミリアン・テルミドール、前にも言ったと思うがな。実はこの名前もエンブレムも貰い物なんだよ。あんたが興味を示すような話ではないと思うがね……』

『いえ!ぜひ、お時間があれば聞かせてください!』

『嬉しいことを言ってくれるじゃないか、今まで私の昔話を聞きたがったのはライデンだけだったよ。じゃあ、また今度な』

 

元帥はダミーのレイドデバイスを取り外し、通信を完全に切る。

 

「前線は楽しかったですか?」

「あぁ、それはもう楽しかったさ。たまには前線に立つのもいいもんだな」

「私としてはやめて欲しいのですがね……」

 

側近は苦笑しながらそう言った。しかし元帥の顔に懲りる様子などは一切ない。もうしばらくすればまた休暇と称して前線に立つだろう……しかし、それは遠い未来の話となってしまう。

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