鋼鉄の心:亡霊との戦い   作:アイゼンパワー

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なんか筆が乗ってしまったが、後半読みづらいかもしれない。


【至急】大攻勢来る【迎撃】

89:名無しの戦略家

いつ見ても全方位に敵がいるなぁ……

 

90:名無しの戦略家

完全に包囲されてるよな

 

91:元帥

来た!!

それはそうとしてスレタイ変えたよ

 

92:名無しの戦略家

何が来たのさ

 

93:元帥

レギオンどもだ!

 

94:名無しの戦略家

来たぞ来たぞ

 

95:名無しの戦略家

戦争だ戦争だ

 

96:名無しの戦略家

殺しだ殺しだ

 

97:名無しの戦略家

レニングラードから手紙を出してやろうか

 

98:元帥

東部戦線に大量のレギオンが詰め寄っている

モルフォの砲撃はすでに複数発着弾

すでに将官とプロセッサーを全員叩き起こしてある

 

99:名無しの戦略家

全プロセッサーを東部へ!

 

100:名無しの戦略家

いや、留守番部隊を残せ、陽動かもしれん

 

101:名無しの戦略家

レギオンがそんな上等なこと考えるか?

 

102:元帥

すでにモルフォの推定座標に対して対抗砲撃を開始、されど効力射を与えられず

 

103:名無しの戦略家

そりゃアホの遠さだからな、当たらん当たらん

 

104:名無しの戦略家

モルフォは今諦めろ、大軍に向かって撃て

 

105:元帥

次弾装填完了は二時間後 オワタ\(^o^)/

 

106:名無しの戦略家

諦めるなや!お前この数年間何のために頑張ったんだ

 

107:名無しの戦略家

帝国に死を!ギアーデに死を!じゃねえのか

 

108:元帥

誰が諦めたと?迎撃砲はすでに全力で射撃を行っている

斥候型(アーマイゼ)は壊滅、近接猟兵型(グラウヴォルフ)師団にも激しい出血を強いている

問題は戦車型と未知の新型

 

109:名無しの戦略家

回収型だ、一匹たりとも通すな

 

110:名無しの戦略家

回収型は脳髄回収専門の機体だ、一機通す度に千人死ぬと思え

 

111:名無しの戦略家

グランミュールは突破されたか?

 

112:元帥

第一はまだだが時間の問題

第二グランミュールはすでに砲撃を開始している

東部の全プロセッサーは壁内へと後退済み

現在西部のを国内を通して東部へ移動中

 

113:名無しの戦略家

陸の誇りは?

 

114:元帥

未完成!無理!あんなデカブツようやく動ける様になったばかりだぞ!北部から動かさなきゃならんし

 

115:名無しの戦略家

北部で建造してたんだ

 

116:元帥

おかげで北部だけ砲撃が激しかったぞ

 

117:名無しの戦略家

そんなことはいいからとにかく東部に動かせ、

 

118:元帥

補給部隊と一緒に移動させた

到着予定は三時間後

 

119:名無しの戦略家

どうやって壁外に動かすつもりだったんだ

 

120:元帥

補給部隊代わりに市街区のトラックを徴発して東部に向かわせた

もう戦略単位でやれることはない

 

121:名無しの戦略家

あとは現場の指揮官次第か

 

122:名無しの戦略家

迎撃砲を壁内に向けろ

 

123:名無しの戦略家

今回ばっかりは元帥閣下が前線に出るのは悪手だからな

 

124:元帥

グランミュール陥落

 

125:名無しの戦略家

ついにか

 

126:名無しの戦略家

市街地への侵入はなんとしても防げ

 

127:元帥

木端レギオンが数匹第二グランミュールを突破

治安維持部隊を出動

 

128:名無しの戦略家

治安維持部隊にやれんのか?!?!

 

129:元帥

治安維持部隊(対戦車砲部隊)なのでやれるとは言えなあ……

レーヴェ連中はまだ足止めできてるが……不味いかもしれん

西部の連中がつけば対処できる、数が足りる

 

130:名無しの戦略家

なんかシベリア師団の到着を待つモスクワみたいになったな

 

131:名無しの戦略家

あとは数だからな

 

132:名無しの戦略家

戦線維持をがんばれ

戦線さえ維持できればいける

 

133:名無しの戦略家

トラッキングでなんかできんのか

 

134:元帥

その手があったか

 

135:名無しの戦略家

お前なんのために予測所作った

 

136:名無しの戦略家

この前爆破されたろ

 

137:元帥

黒羊野郎は他の所にやったから大丈夫

 

138:名無しの戦略家

ならトラッキング使えや!!!

 

ーーー

 

 ハンドラー指揮所に警報が鳴り響いたと同時に、大勢の将校が補佐官を伴って指揮官の広場に雪崩れ込んだ。

 ハンドラーたちは指揮席に座り、地図を広げながらモニターに向かって命令を口々に叫んでいた。そしてその悲鳴じみた叫び声を上塗りする様に将官たちの、司令官たちの命令の声が響き渡っていた。

 

 「全兵力を東部戦線へ!」

 「東部戦線ポイント1から10の地雷を自爆させろ!プロセッサーを壁内へ!迎撃用意!」

 「第二グランミュールの要塞砲を用意!目についた所から撃て!」

 「正規軍を回せ!」

 「言われんでも回っとるわ!歩兵部隊も回せ!」

 

 まるでお祭りの様だった、最もその騒ぎの内容は数千万の命がかかった物だったが。

 

 「元帥閣下入室!」

 

 珍しく略章ではなく、無数の勲章をジャラジャラと胸の前にぶら下げ、制帽を深く被ったまま指揮所へと入って来た

 

 「状況報告!」

 

 元帥は帽子を取らず、無数の電話と地図の前にどかりと座り込んだ。

 

 「東部戦線のプロセッサーはグランミュール内へと後退済み。他の戦線においては現在配置しているプロセッサーと迎撃砲で事足りていますが東部は全然足りていません!グランミュールを突破されるのも時間の問題です!!」

 

 地図の上にくっきりと見える茶色の線に大きく赤いバツを描き、そのままポツポツと点線を描き、トーチカとバンカー、コンクリート製の塹壕線を終点として矢印を描いた。

 

 「東部のグランミュールは機を見て放棄させろ、第二グランミュールで迎撃!大型迎撃砲の状況は?余剰戦力は?」

 

 そう問われると、二人の将校がほぼ同時に口を開いた

 

 「大型迎撃砲……主任砲は先の砲撃に対抗して、おおよその射撃座標に対して射撃を開始しています。次弾装填完了は三時間後です!」

 「余剰戦力は正規軍重騎兵五十個師団、騎兵六十個師団。無人機師団は余剰なしです!東部正面戦線の崩壊は時間の問題です!」

 

 それに対して素早く元帥はタバコに火をつけながら命令を下す。

 

 「主任砲は死守、いいか?死守だ!全滅してでも守りきれ!兵員が全滅しても自動システムが最低限動かしてくれる!それと砲撃先を変更しろ、敵密集地にだ!砲撃諸元の計算は任せる。全余剰戦力は東部へ!」

 

 それを聞いた瞬間、将校たちは黒電話の受話器をひっつかみ、口汚く命令を口走った。

 「主任砲防御部隊へ通達!死守だ!死守命令が下った!死んでも守れ!」

 

 「ミサイル師団から通達!少数ながらも発射準備ヨシ!命令を待つとのことです」

 

 補佐官が電話を手に取ってまま元帥の方向に向かって叫んだ。

 元帥は少し逡巡したのち、地図を見つめて次の命令を下す。

 

 「移動要塞を動かせ!弾道ミサイルは敵の密集している場所を狙って撃て!敵指揮官の座標が分かり次第そこに向かって撃て!」

 

 「ミサイル師団に通達!発射諸元を伝える!座標は…………」

 

 一人の補佐官はすぐさま電話に向かって叫び出したが、一人の将官はその命令に何か思うところがある様だった。

 

 「移動要塞はまだ補給が済んでいません!動作テストはすでに済んでいますが、長距離を歩かせるとどうなるかは全くの未知です!」

 「ごちゃごちゃ言うな!命令に従え!移動要塞には補給部隊を追随させろ、どうせ足元に潜り込まれたら終わりだ!」

 

 しかしその反論はあっという間に説き伏せられてしまった。移動要塞……まだこの時は正式な名前はなかった……は建造が完了してはいるが、一歩動くごとに莫大な燃料を消耗することが確認されている。弾薬庫にもまた莫大な量をその懐に収めることができたが、その懐を満たすには数日の労働を必要とした。

 補給が済んでいないまま動かすのは無謀であり、いくら強力な移動要塞であっても壮大なこけおどし以外の何者にもなれないだろう。しかし今はその壮大なこけおどしが必要なのだった。なんとしても動かさなければならない。

 

 補給問題の解決策はただ一つ、補給部隊を随伴させ、補給をしながら移動をさせる。そうすることで大いなる陸の誇りは長距離の移動を可能とした。

 

 その命令を口走った瞬間、甲高い警報が指揮所中に響き渡った。

 

 「グランミュールは放棄!繰り返す、グランミュールを放棄!」

 

 黒電話に向かって命令を下した将官はすぐに顔を上げ、元帥の方を見た。

 

 「東部グランミュール突破されました!」

 

 その知らせが将官の間を駆け巡り、一部の将校は絶望的な表情を浮かべるが、すぐに持ち直した。

 

 「第二まで下がらせろ、奥に引き込め!」

 「補給が間に合いません!」

 「民間のトラックを徴発しろ!工場の生産を止めさせるな、二シフト制に変更しろ!フェルドレスの生産もだ、完成次第退役兵を、最悪素人を乗せて前線に出せ!」

 「第二グランミュールを数匹のレギオンが通過!」

 

 次の絶望的な知らせが指揮所の広場に響き渡ったのは前の知らせのたった数分後であった。

 

 戦場は前線であるが、戦場の趨勢が決まるのは前線ではない。後方の努力と精神、そして会議室で決まるのだ。戦略は尽くした、もはや私にできることはない。代役を立てて国民を、正規軍を鼓舞しなければ。そう考えながら少し頭を下げて、さらに考え込んだ。

 

 そうだ!彼女がいたじゃないか。正史では全てのプロセッサーを統括し、一斉に指揮して共和国防衛を部分的であれど成功させた流血姫。ヴラディレーナ・ミリーゼ。素晴らしい戦術家にして指揮官。プロセッサーの指揮は彼女に任せれば問題はないだろう。

 そして元帥は叫んだ。

 

 「ミリーゼ少佐をここに!」

 「ミリーゼ!ミリーゼはどこだ!」

 

 元帥の命令を聞いた将校……とある准将が指揮室に向かって声を張り上げると、他のハンドラーの青い軍服とは違う黒い軍服と、赤い差し色が入った髪が特徴的な少女が顔を出した。

 保安局が彼女の両脇を固めると、有無を言わさず担ぎ上げて元帥の前にどすんとおろした。

 まだ元帥の目の前まで無理やり連れてこられた状況をうまく理解できずにいる少女を前にしながら元帥は耳の後ろのスイッチに触ってそのまま命令を下した。

 

 「全プロセッサーに同調!」

 

 元帥が直接指揮をとっていた時代からはすでに多くの月日が経過していた。馴染みのプロセッサーは皆戦死するか壁内へと帰還し、一般人としての日々を過ごしているだろう。今の多くのプロセッサーにとって、これが電話以外では初めて元帥の声を聞く機会だった。

 

 「良いか!諸君!ここにおいて人民国防庁長官、共和国大陸軍総司令官として命令を下す!」

 

 決意と威厳に満ちた声がパラレイド回線に響き渡る。久々のプロセッサーに直接下す命令だ、そう思うと元帥の口角が僅かに上がった。

 

 「共和国国防庁長官令第一号!」

 「一歩も下がるな!」

 

 その返事は返ってこない、返せる様にしていない。ただただ回線に割り込んで命令を通達し、そしてすぐに切る。緊急時において指揮官は兵士一人一人のことを見てはいられない、声を聞いてはいられない。師団の充足率という形でしか兵士のことを見れなくなってしまうのだ。

 

 「以後プロセッサーの指揮はヴラディレーナ・ミリーゼ少佐に引き継ぐ!私は正規軍の指揮に専念する」

 

 同調を切るや否や、頭を上げた彼は元帥の気難しさをよく表した灰色の双眸を持ってミリーゼ少佐の同じく灰色の目を強く見つめた。

 ミリーゼ少佐もまた彼の目を強く、強く見つめ返した。

 騒がしい指揮所の中に生じた一瞬の沈黙の後、元帥はその重い口を開いた。

 

 「できるな?」

 

 ただの質問文であるのにも関わらず、ミリーゼ少佐には百トン、いや、キロトンあるいはメガトンの錘を両肩に乗せられた気持ちになった。今この瞬間から、プロセッサーの命は全て彼女の両肩にのしかかった。プロセッサーが壊れようが生き延びようが、全ての責任は彼女の双肩にのしかかっていた。

 だが、それを背負う覚悟はすでに済んでいた。

 

 「できます!」

 「よく言った!」

 

 顔を嬉しげに歪ませて両手を大きく叩き、立ち上がった。

 

 「諸君、プロセッサーに関する作戦権限はこれより全てミリーゼ准将(・・)に委任する。」

 

 元帥は彼専用の個人端末を渡し、ミリーゼに軽く使い方を説明した。

 

 「我々共和国は公表してはいないが、レギオンの動きを完全に把握している。指揮官機に関する情報は閲覧できないが、大体の位置関係は護衛の位置から割り出せるだろう。任せたぞ、准将。」

 

 准将位を示す肩章をミリーゼに向かって軽く投げ、元帥は数人のボディーガードとプレートキャリアを身につけた側近を伴って身を翻した。切り詰められたセミオートショットガンと儀礼用のサーベルを身につけ、骨董品の胸鎧を身につけて指揮所の玄関に停められている装甲車に向かって歩き始めた。

 

 「元帥閣下、何処へ?」

 「私は市街へ行く。戦略単位でできることは尽くした。今国民は私を必要としている。」

 

 戦争の勝ち負けは前戦における勝ち負けに限らない。

 フランスの様にたとえ全土が陥落し、傀儡国家として従えられようとも勝利を信じて戦い抜いた結果として大戦に勝利した例もある。“負けた”と国民と兵士が思ったその瞬間に勝敗は決まる。前線の士気は上々、であれば後方の士気を上げなければならない。

 

 「今、国民は私を、必要としている。」

 

 そう静かに呟いて、側近を伴って指揮所の門を潜って外へ出た。

 

 「元帥閣下退室!」

 

 補佐官の一人がそう叫んだが、もはや誰も聞いてはいなかった。将官は絶え間なく命令を飛ばし、ハンドラーたちも自分の管下にあるプロセッサーに素早く命令を飛ばしていた。ミリーゼは刻一刻と変わり行くレギオンの動向が映し出された個人端末を見ながら思考し、自分の管下のプロセッサーと他のハンドラーに対して命令を飛ばしていた。そうして指揮所は一つの巨大な生体コンピューターと化す。レギオンの頭脳より高い性能で、早い速度で思考が行われ、そして命令が実行される。時折り頭脳同士で衝突することもあるが、緊急事態を前にその衝突は妥協案として姿を変え、時折りより優れた案として共和国軍全体に行き渡った。

 

 前線の命運は指揮所に託された、もはや一刻の油断も許されない。




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