鋼鉄の心:亡霊との戦い   作:アイゼンパワー

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投稿遅れて申し訳ないです


【至急】大攻勢来る【迎撃】part2

 85区の市街地は地獄だった。

 近接猟兵型(グラウヴォルフ)のロケットと長距離砲撃型(スコルピオン)の砲撃が降り注ぎ、斥候型(アーマイゼ)の機関銃が横合いから殴りつける鋼鉄の嵐が吹き荒れていた。

 

 もし、復讐心が国民の隅々に行き渡っていなければ、市民は白系種のあだ名である白豚らしく惨めに、無様に死んでいっただろう。

 

 

 

 だが今は違う。元帥が国民の心に注ぎ込んだ復讐心と敵意は憎悪へと変わり、行き場のない憎悪は狂乱へと変わり、寝転がる豚を暴れ回る猪へと変えた。

 

 

ーーー

 

「ドライバー!百メートル前進、砲手は二十度左へ砲塔を旋回!デカブツが見えたか?」

 「見えた!」

 「撃て!」

 

 大地が震える。小石が路面から跳ね上がり、フェルドレスとは段違いにうるさいエンジン音を響かせながらとある怪物が路地から姿を現す。四角い胴体には同じく四角い頭が乗せられていて、その頭からは長い鼻……もとい砲身が伸びていた。

 その長大なる砲身からは150mmの鉄塊が打ち出され、不運にも砲身が向けられた先に佇んでいた戦車型(レーヴェ)のターレットリングに食い込んだ。

 

 「Vive la République!(共和国万歳!)

 

 その歓声と共に、一機の戦車級(レーヴェ)が火柱を立てながら粉々に砕け散った。装甲板には蜘蛛の巣の様な亀裂が走り、砲塔は百メートル先まで吹き飛ばされた。八つの脚は脱力し、胴体はただその場にへたり込んだ。無事な部分は無く、全ての部品に甚大な被害が及ぼされていた。

 

 手を下したのはかつて陸の王者と呼ばれていた存在。かつて百年にわたって戦場を支配し、歩兵の骨の髄まで恐怖を叩き込んだ存在。

 

 街道上の怪物、戦車である。

 

 「ドライバー、そのまま前進!通信手、アリンコを見かけたら機砲を叩き込め!」

 「前進了解!」

 「通信手了解!」

 

 黒いカソックと白い聖布を首の周りに回した神父が車長席に座っている。ペリスコープを覗き、時にはハッチから頭だけを出して双眼鏡を覗く。

 

 「砲手!十時方向、見えるか!」

 「何も見えませんが?!」

 

 青い作業服を着た白系種がスコープを覗くが、土煙以外の何も見えなかった。

 

 「今!撃て!」

 

 車長は、神父はそう叫んで砲手の肩を蹴り付けた。

 

 「撃ちまァす!」

 

 轟音と共に鉄塊が飛び、真鍮製の薬莢が砲閉鎖機から転がり出して床に落ち、甲高い音を立てた。

 

 音速を超える速度で打ち出された鉄塊は風を纏って突き進み、土煙の先にいた戦車級(レーヴェ)の側面を貫いた。戦車級(レーヴェ)は炎をあげながら停止したが、まだレンズが光っており、砲塔もゆっくりと旋回していた。

 

 「次!弾種APHE(徹甲榴弾)!ターレットリングを狙って撃て!」

 「撃ちまァす!」

 

 轟音と共にもう一発の砲弾が砲身から飛び出した。今度は砲塔に命中したが、貫通することはなかった。しかし砲塔の下向きの傾きで跳弾し、砲塔と車体の隙間にしっかりと食い込み、爆発した。

 

 「もう一発!APHE、撃て!」

 「撃ちまぁす!」

 

 もう一発の砲弾が車体の側面に撃ち込まれ、今度こそ戦車級を完全に沈黙せしめることができた。

 

 「ドライバー、一時半方向に曲がれ、目標は戦車級二機!」

 「一時半方向に方向転換、了解!」

 

 スーツを着たまま戦車に乗り込んでいたタクシー運転手はドライバーとして驚くほど滑らかに戦車を操ることができた。一時方向に車体を傾け、相手に向ける装甲板の角度をより大きくし、実質装甲厚を厚くする。

 

 「砲手、弾種APC(被帽付き徹甲弾)!エンジンを止めろ!」

 「了解!」

 

 一発の砲弾が戦車級のエンジンを抜き、恐るべき八本脚の進行を止めた。しかしもう一騎の戦車級はその脚を動かして正面を戦車に向けた。

 

 「ドライバー、右に回り込め。弾薬庫はそっちのはずだ!」

 「了解!」

 「砲手、砲塔側面を狙え、とどめを刺せ!」

 「撃ちまぁす!」

 

 自動装填機が砲弾をこめると同時に砲閉鎖機を跳ね上げ、トリガーを引く。

 そうすると装薬があっという間に燃焼し、燃焼ガスが砲機関部を満たし、弾頭をライフリングが掘り込まれた砲身に押し込み、そのまま紡錘状の鉄塊を敵に向かって送り出した。

 

 「腕がいいぞ!砲手!」

 

 戦車級が爆発四散するのを確認すると、神父はそう口走った。

 

 「どうも!」

 

 砲手がそう感謝を告げると、神父は間髪入れずに次の命令を下した。

 

 「次!」

 「撃ちまぁす!」

 

 もう一発のAPCが空を切って進み、戦車級に命中はしたが、正面装甲にあえなく弾かれてしまった。

 

 「ドライバー、急げ!」

 「最高速です!」

 

 ドライバーは両側のレバーを目一杯押し込み、最高速度で戦車級の側面に向かって前進していた。

 しかしその最高速度でも、戦車に比べると高い機動性を売りにして導入されたフェルドレスに比べると遅いものだった。

 戦車級の砲身は戦車に向けられ、一本の矢が戦車を地に縫い留めるべく空を切った。

 

 「間に合わん、衝撃に備えろ!」

 

 瞬間、車内を掻き回すような衝撃が四人の乗員を襲った。まだ若い通信手は車体正面に据え付けられた機関砲のグリップを強く握りながら悲鳴を上げた。車体側面は大きくへこみ、APFSDSの尖った頭が装甲板から顔を出している。あと少しでこの鋼鉄の棒が装甲を完全に貫通し、

 

 「弾種APC、応射!」

 「撃ちまぁす!」

 

 轟音、しかし今回の砲弾は斜め下に飛び戦車級の胴体に当たることはなかった。しかし八本の脚の内二本を弾き飛ばし、動きを大きく遅らせた。その機動力の低下は、一対一の戦闘においては致命的である。履帯がゴロゴロと転がり、生物感が一切ない怪物はゆっくりと、しかし確実に前進し、大いなる陸の王者は戦車級の横っ腹を捉える。

 

 「回り込めたな。よくやった、ドライバー!よく狙え!APHE、エンジン、撃て!」

 「撃ちまぁす!」

 

 自動装填機のがこんという音とともに弾薬が砲身に込められ、弾頭が空を切った。

 今度はしっかりとエンジンを燃料庫ごと貫き、もうもうと黒煙をあげさせた。しばらくすると炎が弾薬庫に回ったのか戦車級は大爆発を起こす。

 

 「よし、これで貴様らはエースだ!誇れ!」

 

 神父はそう言って小隊総員のチームワークを褒め称え、履帯を転がしながら戦車は進む。しかしながら脅威はまだ去ってはいなかった。第二グランミュールの要塞線は大口径の要塞砲から小口径の機関砲まで持ちうる全ての武器を休まずに撃ち続け、九十九パーセントのレギオンの足止めに成功していたが、一パーセントのレギオンは銀色の脚で大地を踏み締めながら要塞線を通過してしまっていた。

 

 そのうちの一匹が戦車の背後にいる巨大な影が六本の足で立っている重戦車級(ディノザウリア)だ。第二グランミュールを通過した部隊の指揮機に当たる。その冷たい頭脳は155mmの主砲と75mm副砲が積まれた砲塔を回し、戦車のエンジンと燃料庫が収まっている区画を狙いすましていた。

 

 だが重戦車級(ディノザウリア)にも気づかないことはあった。その背後に黒い人影が忍び寄り、建築物解体用の高性能爆薬が詰まった樽が身体の下に置かれたことに。

 

 次の瞬間、轟音と共に衝撃波が空気を切り裂き、辺り一帯のガラスが粉々に砕けた。重戦車級(ディノザウリア)はまるで爆竹の上に置かれたバケツの様に軽やかに空を舞い、そのままバラバラに砕けながら上下逆さまに着地する。なんとも無様な最期であった。

 

 「Vive la République!(共和国万歳!)

  「Vive la victoire!(勝利万歳!)

 

 そう口々に叫びながら無数の男女が廃墟の中から姿を現し、背に負ったガスタンクに繋がったガス溶断機から青い炎を迸らせながら重戦車級に組み付き、装甲板を一枚づつ剥ぎ取って爆薬を仕掛け、内部組織を粉々に破壊する。

 神父はハッチから身を乗り出し、後ろを見た。

 

「ドライバー!超信地旋回!」

「了解!」

 

 直ちに戦車は左右の履帯を互いに逆回転させ、車体を廃墟の中から立ち上がった人々に向けた。

 

 「通信手、背後!」

 「はい!」

 

 車体正面の20mm機関砲が人々に吠え立てた。正確にはその背後から迫ってきていた斥候型(アーマイゼ)に向けてだが。

 音速を超える速さで砲身を飛び出した20mmの徹甲榴弾の嵐は易々と薄い装甲を噛み砕き、斥候型(アーマイゼ)はすぐさま無様な姿を晒す羽目になった。

 

 人々はすぐさま振り返り、自分たちを襲おうとしていた脅威が戦車によって排除されたことを確認すると、今度は斥候型を解体しにかかった。

 

 「板金屋!これで貸し借り無しだ!」

 

 神父はハッチから身を乗り出したままそう叫び、板金屋と呼ばれた人々に少し不器用な謝意を伝えた。

 

 「気にすんな!」

 

 廃墟から立ち上がった人々はレギオンに攻められている最中であるにもかかわらず、勇敢にも注意を引くであろう手作りの連隊旗を掲げた。

 

 「俺たち共和国民に不可能はないのさ!」

 

ーーー

 

 レギオンにとってはなんともやりにくい戦いだ。

 高く聳え立つビルや道の両側に立つ家々にはゲリラが潜み、油断すれば高性能爆薬で空を舞う羽目になる。斥候型(アーマイゼ)ですら潜り込めない路地や隙間には溶断機か油圧カッターを握った人々が虎視眈々とレギオンをバラして“資材”を回収する機会を狙っていた。

 大通りのあちこちには鉄骨やレギオンの構造材を用いたチェコのハリネズミが置かれて大型のレギオンの通過を妨害し、そのそばには必ず爆薬か火炎瓶を隠し持った市民が待ち伏せていた。

 

 防衛戦はうまくいっている。被害は85区にとどまっており、死者は出ているが死体は全て後方に輸送されて弔われた。街中からはスピーカーが全て回収され、レギオンに向けてただただ元帥の録音された演説を繰り返していた、まるでそれが何か効果を生むかの様に。もちろんのことだが、なんの効果もない。ただそれによってのみ、市民の士気は保たれていた。

 

 『諸君!白系種の諸君!祖国の防衛は我々自らの手で行われなければならない。諸君、白系種の諸君!悪しきギアーデに死を、魂なき戦争機械に死を!』

 

 「諸君!我々は耐えている、ギアーデの暴虐、死すべき邪悪の軍勢と対面してなお我々は耐えている!勇敢なるサンマグノリアの市民、熱烈なる革命の子らよ!前進せよ!帝国主義者の魂なき殺戮機械は共和国の領土から全て消え去らなければならない!市民の諸君、前進せよ!諸君らの勇気と抵抗によってのみ共和国は耐えているのだ!市民の諸君!聖女マグノリアの意志と共に進むが良い!サンマグノリアは勝利する!85区の廃墟の中から我々は勝利と共に再起する!85区区民の諸君!勝利を!」

 

 『勝利を!』

 

 スピーカーから響き渡る録音された演説と共に装甲車の上に元帥は立っていた。腰に差したサーベルを右手で抜き放ち、左手を固く握りしめてグランミュールの方向を指差し、まるで機械のように口からは滔々と演説を垂れ流しながらも戦いに加わっていた。

 

 レギオンはすぐそこまで迫ってきている。鉄条網とチェコのハリネズミの向こうには斥候型(アーマイゼ)の大群が85区を、その背後にあるリベルト・エル・エガリテを目指して進軍している。

 

 数匹だと言ったな。野郎、嘘を吐きやがったな?

 

 シワが深く刻まれた老齢の軍人には似合わない明るい笑顔を顔に張り付けながら彼は脳裏でそう考えた。遠くでは要塞砲の砲声が鳴り響き、足元では古い30mm機関砲の砲声が轟いている。家具や車をかき集めて作られた急造のバリケードの後ろには無数の市民が蹲り、爆弾をその腹に抱えて突撃の時をいまか今かと待ち構えている。少し遠くに目をやると、巨大な何かが遠雷のような足音を轟かせながら東部戦線に向かって歩いているのが見えるが、その巨大な何かが戦場に辿り着く頃には戦闘はもう終わっているだろう。

 

 装甲車の中に隠れていた側近から端末を受け取り、正規軍砲兵隊からの通達に目を通すと考えを変える。

 

 ああ、クソ。そんなことはどうでもいいか。着弾と同時に突撃だ。

 

 変えざるを得なかった。砲撃座標はバリケードの真ん前、レギオンがひしめく広場のど真ん中である。砲撃が歩兵にとっての脅威である斥候型を一掃し、機体の数を減らすと同時に突撃して爆薬を投げ飛ばしてさらに主要なレギオンを減らす。完璧ではないがよくできた作戦である。全く、二回の砲撃で済ませればいいものを。

 

 市民に成功経験を積み重ねさせることによって自信をつけさせ、さらなる士気の向上、そして戦争協力度の上昇へと繋げる。発案者はそう考えたのであろう。そして事態は概ね思惑通りに進んでいた。

 

 轟音と共に何発もの砲撃が目の前に着弾すると元帥は首から下げたホイッスルを口に咥えて吹き鳴らす

 

 「Vive la République!(共和国万歳!)agression!(突撃!)

 「Vive la République!(共和国万歳!)houraaa!(バンザーーイ)

 

 数百の市民が成型爆薬を抱えてバリケードから飛び出し、レギオンに向かって駆け出す。その目は血走っており、口からは涎が垂れ、鼻からは白い息がごうごうと吹き出す。完全に狂っていた。

 

 バリケードの後ろからは相変わらず機関砲の砲声が轟き、レギオンの胴体を精確に貫き、歩兵を支援する。戦車級がいないことは全くの幸運だった、この急造のバリケードは戦車級の火力には耐えれないし、機関砲程度では分厚い装甲を貫くこともできない。

 

 そう考えるながら戦場に目をやると数少ない生き残りの斥候型や近接猟兵型が陣形を組み直し、形勢を立て直そうとしていた。そうは行くか、クズどもめ。すぐさま二度目のホイッスルを吹き鳴らして号令を下す。

 

 「投擲!」

 

 成型爆薬を抱えた市民達は一斉に爆薬を放り投げてすぐさまその場に倒れ伏す。何名かは7mm弾に撃ち抜かれて死んだがそれは些細な問題だった。

 

 爆発と共に斥候型は紙屑のように空を舞い、近接猟兵型はなんとか避けられたが爆風に煽られて多くの機体は転倒したところを装甲車の機関砲か対空砲に貫かれた。

 

 「またしてもサンマグノリア共和国の偉大なる勝利である!勝利の積み重ねによって我々は完全な勝利へと至るのだ!」

 

 少数のレギオンの壊滅とそれに伴う撤退を見ると、元帥は口を開いた。そしてその口から出てきたのはやはりプロパガンダである。強く、優しく、承認を言葉で伝え、国民の心を撫で付ける。そして自分の思い通りに動かす。

 

 「諸君!軍は間も無く到着する!正規軍の到着と共にこの攻防戦は終わりを告げる。諸君は85区を守り抜いた英雄である!諸君!85区の英雄達よ!ギアーデに完全なる懲罰を下すのであれば、より偉大なる栄誉をその手にしたいのであれば、軍に入ろう!軍へ!そして勝利へ!サンマグノリアの終わりなき栄光を守ろう!」

 

 サンマグノリアの栄光などとうに潰えていた。聖女の掲げた自由も博愛も平等ももはや存在しない。博愛と平等は先代大統領によって踏み躙られ、自由は現大統領代理である元帥によって粉々に砕かれた。だが国民は聖女の意思がまだ存在すると信じている、彼女を処刑したのも国民自身だというのに。

 

 であれば私は国民に寄り添わなければならない。聖女の意思があると叫び、五色旗を振りかざす。それで付き従ってくれるのであれば、それで戦争が遂行できるのであれば、それでいい。

 

 「閣下、指揮所から。」

 

 装甲車の中に戻り、有線電話の受話器を耳に当てると、すぐに電話口の向こうから報告が聞こえてきた。

 

 「閣下、レギオンが撤退を開始しました。至急お戻りください。」

 

ーーー

 

 「キュクロプス、右の丘へ向かってください。」

 「准将閣下、またあの超長距離砲撃です!密集していた三個戦隊がまとめて壊滅しました!」

 「補充の戦隊を向かわせてください。」

 「北部戦線にてスコルピオンによる効力射、六十から六十九番砲兵陣地が壊滅!使用不能!」

 「ドレッドノートを装備している戦隊を向かわせて、支援砲撃を行わせてください。」

 「東部戦線にて五個戦隊が壊滅、至急増援を!」

 「南部戦線崩壊!グランミュールまで後退します!」

 

 レーナは自分の心に驚いていた。

 

 八個戦隊。二百人がまとめて死んだというのに、小波一つ立たなかった。

 

 なんでだろう、悲しみがちっとも湧き出てこない。感覚が繋がっていたというのに、二百がまるでただの数字のように思えた。最後の声まではっきりと聞こえたというのに。

 

 これでは他のハンドラー、他の将校と同じではないか。エイティシックスが死んでも“壊れた”と言って損害として報告し、戦死者として認めようとしないおじ様と同じだ。エイティシックスを部品と呼び、その気持ちを気にかけようともしない他のハンドラーと何も変わらない。

 

 キュクロプス達以外とのプロセッサーとの連絡を取る暇はなかった。指揮卓の上では戦隊なんてアイコンの一つに過ぎず、戦隊に所属するプロセッサーはコールサインすらわからない。ただ、戦隊充足率、二十五人中何人が生きているのかしかわからない。

 そうか、おじ様は、将校はみんなこんな画面しか見ていないんだ。誰も死人のことなんて気にしていない。ただ前線に貼り付けられる戦隊の数が減ったこととその対処を考えている。私もその一人だ。

 東部戦線は今の所小康状態にある。全戦区においてレギオンの増援は途切れているが共和国大陸軍(グランダルメ)の増援は途切れない。ミサイル師団の怒りは気まぐれに敵を打ち、砲兵隊のロケット弾と榴弾は前線に絶え間なく降り注ぎ、騎兵師団と無人機師団の剣戟の音とと砲声が後方にまで届いている。

 無人機師団の被害は甚大なれど正規軍重騎兵師団と騎兵師団の被害は軽微、保安局の被害は皆無だ。自発的に組織された市民兵の被害もまた甚大である。

 85区では散発的な戦闘が未だ発生しており、余剰戦力となったプロセッサーが区内に展開し、治安の維持と残存レギオンの駆除を開始した。

 

 「准将殿、無人機師団の欠員はどうやって埋めるつもりかね。」

 「どうやって……?」

 

 銀というよりも白髪が目立つ大将が葉巻を燻らしながらそうレーナに問うた。無人機師団は有色種のみによって編成されており、その有色種の数も減っている。もはや欠員の補充は不可能なほどに。市民権を得た有色種は軍に戻ろうと正規軍に編成され、無人機師団には絶対に編成されない。機体は一日二日もあれば十機は生産されるが人は師団に編成できるまで十五年はかかる。人とは軍において最も貴重であるが、最も損耗率の高い資産である。

 

 少し考えてレーナは答えた。

 

 「補充する必要はないでしょう、元帥閣下はもう無人機師団を必要としていない。」

 「は?」

 「無人機師団の欠員を補充する必要はありません、補給は継続してください。欠員の補充は戦隊の統合で解決しましょう。」

 

 表情筋ひとつ動かさず、銀髪の少女はそう言った。

 

 「ふん……了解です、准将殿。」

 

 白髪の大将は不機嫌しそうに鼻を鳴らし、補佐官に耳打ちした。

 

 「共和国は勝利しなければならない……」

 

 元帥の言葉だ。エイティシックスが今の立場に押し込められた責任は単にギアーデにある。ギアーデの暴虐を打ち破る日は近い、エイティシックスはもう必要とされないだろう。

 そしてその勝利のために、何人が、何万人が命を捧げるのだろうか。その恐ろしい流血は果たして得られる結果に見合うのだろうか。

 

 ただ流血のみが、全ての問題を解決する。

 

 レーナはそう心の奥底で考えた。そう考えなければ、今までの犠牲に耐えることはできなかったのだ。

 

ーーー

433:名無しの戦略家

全戦線においてレギオンの増援が途切れた!今だ今だ攻めろ攻めろ

 

434:名無しの戦略家

攻めるに攻めれんぞ、師団数が少なすぎる

 

435:名無しの戦略家

無人機師団壊滅が痛いな

 

436:元帥

別に正規軍の騎兵師団とかで攻めてもいいけど……八十師団くらいしかないから怖いんだよなあ

 

437:名無しの戦略家

周り全部正面だから兵力もその分必要だしな

 

438:名無しの戦略家

でも今現在の状態で八十個師団あるなら大規模徴兵に切り替えたら四百師団くらい作れそう

 

439:名無しの戦略家

意外と人的資源あるんだな

 

440:元帥

曲がりなりにも大国だったからね

それよりも増援は途絶えたけど多分これ第二波準備してるだけだ

 

441:名無しの戦略家

第一波でこれなのにどうすんの

 

442:名無しの戦略家

ここで攻めて、奴らを分断して各個撃破するべきでは

 

443:名無しの戦略家

そんなにうまく行くか?ドクトリンは優勢火力だぞ、機動戦の真似事ができんのか?

 

444:名無しの戦略家

この国機甲師団しかないのになんで戦車にバフかかる機動戦を選ばなかったんですかね

 

445:元帥

優勢火力は突破力と火力がとんでも無かったから……

 

446:名無しの戦略家

まあな

 

447:名無しの戦略家

平推しできる戦力があればそりゃ強いが

 

448:名無しの戦略家

平推しできる戦力がなくても強いぞ!

 

449:名無しの戦略家

まあ、足は遅いけど突破力自体はあるし包囲して各個撃破は悪い案じゃないと思う

 

450:元帥

了解、とりあえず無人機の連中はミリーゼに任せたから正規軍使って戦うわ

 

451:名無しの戦略家

戦いは選べよ

 

452:名無しの戦略家

うっかり硬い場所に突っ込むと大変だぞ(三敗)

 

453:名無しの戦略家

どこに何を突っ込んだんですかねえ

 

454:名無しの戦略家

レニングラードに二個軍団を突っ込んだ

 

455:名無しの戦略家

あーーー

 

456:名無しの戦略家

あそこは連絡線切ってもだいぶ保つから直接市街に乗り込みたかったんだろ?わかるぞその気持ち

 

457:名無しの戦略家

連絡線切るの忘れた上で突っ込ませた

 

458:名無しの戦略家

ドアホ!!!

 

459:元帥

そうだよなあ、ちょっと考えてから攻勢計画書くわ

 

460:名無しの戦略家

釣り野伏せとかは

 

461:名無しの戦略家

レギオンはその手にゃ乗らんだろ、敗走してるように見せかけたところで背後にはもっと強力な要塞線があるだけだし

 

462:名無しの戦略家

多分攻め込んで分断したほうが早い

 

463:名無しの戦略家

一個師団包囲するのに何個師団使う羽目になることやら

 

464:元帥

コスパ悪いな〜〜〜

 

465:名無しの戦略家

戦線突破がもう簡単じゃないからね

 

466:名無しの戦略家

しかもレギオン連中のことだから全戦線に均等に戦力配置してそう

 

467:名無しの戦略家

やりづら〜〜〜〜

 

468:元帥

なんでこっちが優勢火力喰らってるんですかねえ

 

469:名無しの戦略家

相手の方が今は優勢だから

 

470:名無しの戦略家

火力優勢取られてる上に航空優勢も取られてるから

 

471:名無しの戦略家

航空優勢さえ取れればだいぶ違うんだけどな

 

472:名無しの戦略家

近接航空支援は神だぞ

 

473:元帥

航空優勢取れても飛ばせるかなあ

 

474:名無しの戦略家

あのちっさい蝶々を吹っ飛ばしてようやく航空優勢だぞ

 

475:名無しの戦略家

小さすぎて空戦できなくない?

 

476:名無しの戦略家

あれを対空砲で撃つのも無駄っぽいし

 

477:名無しの戦略家

対空ミサイルあんなんに使いたくねえし

 

478:名無しの戦略家

いやー困った

 

479:元帥

本当に困った、今時止めて頭抱えてる

 

480:名無しの戦略家

時止めれんの!?!!?!

 

481:名無しの戦略家

hoi4の一時停止な、思考だけ止まらない感じの

 

482:元帥

何もできないけど頭を抱えるくらいはさせてくれるのがhoi4クォリティです

 

 




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